「というわけで、如月重工は無事! 全ての機能をフランスに移すことが出来ましたー!」
「「「「お~!」」」」
「それでは如月重工の、そして私達の新たな門出を祝って、かんぱ~い!」
「「「「「かんぱ~い!」」」」」
日本の
音頭をとった刀奈の言う通り、俺達も新しくフランス国籍を取得したことで、新たな人生を歩むことになるわけだ。
「それにしても、フランス政府も動くの早かったね~。かんちゃん達が新工場を視察した翌週には、私達の分の国籍まで用意してたんだよ~」
「そうね。よほどお嬢様や簪様を自国民にしたかったんでしょう」
そう分析する布仏姉妹を含め、ここにいる全員、つまりフランス工場に移籍する連中分の国籍を用意するとか、虚さんの言う通り刀奈達を取り込むのに必死だったんだろう。
立食式(デリバリーの食い物をテーブルに並べただけ)の祝宴に、関係者一同グラスと皿を片手に談笑する姿がちらほらと。
「りーくくん♪」
「おう、乾杯の音頭ご苦労さん」
「そう思うなら、労いの言葉だけじゃなくて態度でも示して欲しいな~」
「態度ねぇ……ほい、あ~ん」
「えっ? あ、あ~ん……///」
皿に乗ってたフライドポテトを差し出したら、頬を赤らめてパクッと俺の指ギリギリのところまで口の中に。
「んぐんぐ……」
「りったん、学園でもそれやって大騒ぎになったよね~」
「やったな。あの時は簪相手だったけど」
「コロッケ、大変美味しゅうございました」
なぜそこで敬語? 学食でやって、周りの生徒がブラックコーヒー買いに走ったのは記憶に新しい。
それにしても刀奈、そんな顔赤くするほどか? 簪みたいに『嫁として当然!』みたいな反応もあれだけど。
と、そんな俺達に近付く影……なんてことはない、招待していたアルベールさんだ。
言っとくが『フランス大企業の社長を呼ぶのに、料理がデリバリーでいいのか?』なんて野暮なこと聞くなよ? 『たまにはKF○を食べるのも悪くない』って言ったのアルベールさんだし。
「いやぁ、君達は相変わらず仲がいいね」
「婚約者ですから(フンスッ」
「ははは……どうやらシャルロットのつけ入る隙は無さそうだね」
アルベールさん、どうしてそこで娘であるデュノアの名前が出てくるんです?
「彼女なら、一夏に惚れてるじゃないですか」
「そうなんだけどね。まあ一父親としては娘の意思を尊重するし、IS業界の人間としては希少な男性操縦者である織斑君と縁があるのはいいことだよ。けど経営者、一商人としては宮下君との繋がりを重視していた面もある」
「ぶっちゃけますね」
「本心だよ。これ以上は、私が背中から刺されそうだから止めておくが」
チラッと向けた視線を追うと、刀奈と簪が……お前ら、なんつー顔してんだよ。
「浮気はダメ」
「陸君、私と簪ちゃんだけで満足してちょうだい」
「お前ら、俺を一夏のようなハーレム野郎だと勘違いしてないか?」
「ああ、そういえば彼に好意を持っている子が、シャルロット以外にも複数いるんだったか。……ふぅ、娘の恋は前途多難のようだね」
アルベールさんが苦笑いを浮かべているが、
なんて、デュノアの恋愛事情を肴にしてたのが悪かったんだろうな。
「お父さん!」
――カーンッ!
「おぶっ!」
アルベールさんの頭にプラスチック製の盆がクリティカルヒット! 投げた張本人であるデュノアが、ワンピース姿なのに『ズンズン!』という擬音が聞こえてきそうな勢いでこっちに近付いて来た。
「僕のことで盛り上がるのはやめてよ!」
「す、スマン」
「はぁ……宮下君も更識さんも、今の話は忘れてね」
「忘れるも何も、デュノアさんが織斑君に夢中なのは公然の秘密」
「それでも!」
「前向きに検討を重ねた上で善処します」
「もー!」
頬を膨らませてプンスカ怒るデュノアだが、簪のスルースキルで見事に流される。まあ本人からしたら恥ずかしい話なのかもしれんがな。
「ところで話は変わるが、デュノアの専用機、変わるんだって?」
「あ、うん。そうなんだ……ってそれも聞いたよ! 宮下君がウチに設計図を売却したって!」
「うむ、おかげで第3世代機『リィン・カーネーション』は完成目前だ。それもあって、シャルロットには機体受領と最終点検のため帰国させたのだが……宮下君もそれを知って、娘にも招待状を送ったのだろう?」
「ですね」
「ああ、こんなにトントン拍子で話が進むなら、僕がわざわざ男装してIS学園に編入した意味って……」
デュノアがガックリ項垂れるのも分からなくは無いけどな。まさかデュノア社再生RTAの最適解が『宮下陸に接触して第3世代機の設計図を売ってもらう』なんて、周回してないと気付かんだろう。
「とにかくこれで、デュノア社もイグニッション・プランに参加できますね」
「あ、お姉ちゃんが戻ってきた」
「陸君には後でオムレツをあ~んするとして「するのかよ」、しばらくはデュノア社の方々にお世話になります」
「いやいや、こちらこそよろしくお願いしますよ。……実を言うと、政府の方からも『日本に更識姉妹と宮下陸を奪われないよう、全力で対応してくれ!』と言われておりますので」
うわ~、とうとう如月重工名義じゃなく、名指しされちまったのか。刀奈と簪の操縦技術と専用機は、各国ともに喉から手が出るほど欲しいだろうからな。
「陸、たぶん政府が一番欲しがってるのは陸」
「は? 俺?」
「それはそうよ。簪ちゃんのレッド・スコルピオはともかく、私のミステリアス・レイディなら陸君の力で量産可能でしょ?」
バサッと広げた扇子には『無限の生産』の文字が。
「それでなくても、陽炎や不知火の開発は、陸君の力によるものが大きいのだし」
「というか、陽炎に関してはほぼ陸一人で作ったようなもの」
「ISを一人で開発って……お父さん、とんでもない人と知り合いになったんだね……」
「言うなシャルロット。そういうお前だって、同じ学園の同期なのだろう……?」
なんかデュノア親子にドン引きされてるんだが。解せぬ。
「ま、まあともかくだ。フランスに移った如月関係者の内、君達3人は特に重要人物として認識されているわけだ」
扱いとしては政府要人と同レベルだそうだ。工場の周辺も、GIGN(憲兵隊所属の対テロ部隊)が常時巡回する予定らしい。
「う~ん、日本での扱いとは大違い」
「そうねぇ。政府が倉持推しだっていうのが最大の理由なのだけど」
「各国に陽炎売った利益から払った税金で打鉄作った時は、何の冗談かと思ったけどな」
ちなみにその性能とラファール・リヴァイヴより後発という立場から、打鉄は国内の一部にしか配備されていない。IS学園とか自衛隊とか、政府の息が掛かってる場所限定だ。
「……もしかして、日本政府ってバカ?」
「そうだよ?」
デュノアですら呆れた顔でバカ発言をしてしまうぐらい、今の与党には見る目が無い。"あのレイモンド"を抱えてる時点でお察しだが。
だからというか、正直日本以外ならどこに移住しても良かったんだよな。中国やロシアのような共産圏じゃなければ。ロシアは共和制? 表向きはだろ?
「つまりお父さんとの縁が無かったら、別の国に移ってたかもしれないと」
「そういうこと。自由に商売出来るならどこでも、ね。確かオーストラリア案もあったわね」
「あったな。あの国は自前で鉱物資源が揃えられるメリットがデカい」
「第3案ぐらいだったはず」
懐かしいなぁ、更識家と布仏家で案を出し合ってた頃が。
ささやかな祝宴が終わり、工場と一緒に建てた居住エリアの一部屋で休んでいると、刀奈が携帯端末をカバンから取り出した。
「そういえばまた話を変えちゃうんだけど、少し前にIS開発の経験者を新規採用しようって話があったじゃない?」
「あったね。あちこちの求人サイトにも広告出した」
それは俺も覚えてる。IS学園に入学して俺や簪がいない期間が長くなるだろうから、IS開発部門を任せられる人を探してたんだよな、主任待遇で。
「それで、いい人が見つかったの?」
「ええ、経歴とか技能が素晴らしかったから人事部が採用したらしいんだけど……」
なんだよ、歯切れが悪いな。と思ってたら、携帯端末を俺達の方に画面を向けた。
「この人なのよね……」
「……」
「……」
「「HENTAI?」」
それ以外形容のしようがねぇよ! なんだこのISスーツに水中眼鏡付けたヤベェ奴は! こいつがIS開発の経験者? ウッソだろオイ!
「篝火ヒカルノ、前職は……倉持技研第2研究所? お姉ちゃん……」
「まあ、そういうことよ……たぶん、あの頭レイモンドの記者会見を見て、泥船から逃げ出してきたんでしょうね」
「ああ、納得……」
しかも履歴を見直せば、第2研究所の所長だったっていう。さらに元・副所長も助手待遇で引き抜いたって書いてあるんだが、そうなると今の第2研究所はレイモンドの独壇場ってことか。……地獄だな。
ん? 確か前外史じゃ、一夏が白式のデータ採取で倉持の第2研究所に行くって流れがあったはずなんだが……白式、これからちゃんとメンテとかしてもらえるのか?
――pipipi!
ん? なんか着信が来てるぞ。
『ちょっとたっちゃん! あっ、りったんとかんちゃんもいる! ねぇねぇ、あの変態を採用するってどういうこと!?』
通話ボタンを押して速攻、束の声が大音量で流れてきた。
そういえばお前も、新工場の地下エリアに引っ越したんだよな。アルベールさん達がいる関係で、祝宴には呼べなかったけど。
「束さん? あの変態って」
『あのISスーツに水中眼鏡の! えっと……そう、篝火!』
「知り合いか?」
『中学時代の同級生だよ! 束さんの黒歴史だけど!』
黒歴史って。いや、あのHENTAIと同窓って結構な黒歴史か。
「でも残念、すでに採用して配属も決まった後だ」
『うえ~……』
「しかもIS開発部主任」
『あっ、束さんの宇宙開発とか無関係か。よかったよかった♪』
すっげぇ安堵しているのが、声だけでもよく分かる。というか、束がこれだけ嫌がるって、この篝火ってHENTAI、本当に大丈夫なのか……?
ーーーーーーーーーーーーー
夏休みもあと数日を残すのみになった頃、俺は実家である織斑家の庭、ウッドデッキの縁に座って夜空を見上げていた。
「ISを動かせるようになって5か月か、時間の流れは早いなぁ」
受験するはずだった藍越学園の試験会場と間違えて、IS学園の試験会場に迷い込んだ。全てはあそこから始まったんだ。
(あれが無かったら、俺はどんな生活をしていたんだろう?)
普通に藍越学園の受験して、無事合格していたら。本来あるべきだった未来なんだろうけど……
「一夏君」
「真耶さん」
今日も家に来てくれた真耶さんがやって来て、俺の隣に座る。箒達がいないから、今は一夏君呼びだ。IS学園に入るまではそれがデフォだったのに、今は少しむずがゆく感じる。
「どうしたんですか? 空を見上げて」
「いえ、もし俺がISを動かしてなかったら、どんな学校生活だったのかなあって」
「ああ、それは確かに考えちゃいますよね」
俺の話を聞いて、真耶さんも納得したように頷いてはズレた眼鏡を定位置に直す。けどまぁ……
「後悔、してますか?」
「それが全く。色々な事件やアクシデントに巻き込まれたりしましたけどね。それでもなんだかんだ言って、IS学園での生活が気に入ってるんだと思うんです」
箒の竹刀や鈴の青龍刀(ISの部分展開)、セシリアのレーザーライフル(部分展開)、シャルのアサルトライフル(部分展開)、ラウラのでっかいナイフが怖いとは口にしない。あれ、なんかデジャヴな内容……
「けど、一番の理由としては……」
「えっ、きゃっ!」
隣に座る真耶さんの腰に腕を回す。本人は童顔だと気にしている可愛い顔が目の前まで近付く。
「真耶さんと一緒にいられる時間が増えたことです」
真耶さんを好きになる前なら『キザっぽいな』と鼻で笑っていたセリフだけど、今なら本心でそう言える。誰かを好きになるって、こういうことなんだな。
「一夏君……」
「真耶さん……んっ」
「ん……❤」
無意識にお互いの手を恋人繋ぎしながらするキスはこの夏一番の、忘れられない思い出になると思う。
祝・日本脱出!(笑)
そしてシャルロットの新機体フラグが立ちました。と言っても、原作から4か月ぐらいしか前倒しされてないという。
あれ? このタイミングで如月が量産型第3世代機の不知火を出したら……見なかったことにしよう。
篝火ヒカルノ正式採用。
今後、束とのテルミットばりの化学反応にご期待ください。
一夏×真夜。
この世界線の一夏には、真耶一筋で突っ走ってもらう予定です。
メインヒロイン達は……後々考えます。(思考放棄