お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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二学期開始~学園祭
第33話 休み明けなのにドタバタしてんなぁ(他人事)


 夏休みが終わり、2学期初日の教室は帰省した生徒達のお土産交換会の場となっていた。

 IS学園に入って初めての長期休暇とあって、生徒達も周囲が色々変わっていたという。

 

『今まで話したことも無かった同級生が、急に連絡してきてさー』

 

『私も、突然『前から好きでした!』とか告白されたよ。いや、中学校時代同じクラスだっただけじゃん』

 

『なんか、私個人でなくて『IS学園の生徒』としか見てないってバレバレなんだよね。おかげで前々から仲良かった子達と出掛けた日以外は、ほとんど家に引きこもってた』

 

 と、一部の生徒は面倒な現実を分からされる休みにもなっていた。

 それでも大部分の生徒(主に日本人)は、中学時代と変わらない夏休みを満喫したと言えた。

 

 そんな中、特大の出来事に巻き込まれた人達(震源地も含む)も存在していた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

■織斑千冬の場合

 

 

「だから、私はもう国家代表にならないと言っているではないですか! 他に候補がいない? そんなの、私が関知するところではありません! そもそも野崎さんに逃げられたのは倉持技研に原因があるんですから、貴方方が倉持と協議して決めてください! ではっ!」

 

 職員室に設置された電話の受話器をガチャンッ! と叩きつけるように置くと、椅子の背もたれに寄り掛かった。しんどい……今朝から何度目だ?

 

「お、お疲れ様です……」

 

「ああ、本当に疲れた……」

 

 真耶が手渡してくれたコップを受け取り、中の水を仰ぐ。いつものコーヒーでないのは、今の私の状況を察したからだろう。

 

「今度はどこからだったんです?」

 

「IS委員会だ」

 

「はぁ……候補生養成所所長から始まって、IS省、内閣府、そしてとうとうIS委員会ですか」

 

 そう言って真耶が指折り数えるだけ、今朝から私の下に電話がかかってきたのだ。しかも合間合間に『今こそ、千冬様が再び天下に立つ時です!』という女権団の戯言も聞かされる羽目になった。

 

「それもこれも、更識の発表が原因か……あいつが悪いわけではないのだが」

 

 

 

 日本時間の早朝、フランスで行われた記者会見は世界中に衝撃をもたらした。

 

『本日を持ちまして、如月重工は拠点を日本からフランスに移転いたします』

 

 カメラの前に立つ更識姉の宣言で、記者達からどよめきが起こる。それはそうだ、日本トップクラスのIS開発企業が他国に移ると言うのだから。

 

『それと同時に私、更識楯無も国籍を日本からフランスに変更いたします。そのため、併せて日本の国家代表も辞任する予定です』

 

 先ほどと同じか、さらにどよめきが大きくなる。すかさず、記者の一人が挙手をした。

 

『ル・フェガロです。拠点を移すということは、如月重工はフランス企業になるということでしょうか?』

 

『その通りです。これまで弊社が販売した製品のアフターサービス等は引き続き行いますが、窓口も含め全てフランスに移転させます』

 

『それは先日発生した、如月重工の工場爆発事故に関係するのでしょうか?』

 

『はい。関係というより、それが主な理由です。あの事故により、日本での操業は不可能となりました。そのため、運よくデュノア社と進めていた合弁企業の設立計画、そのための新工場兼事務所を使わせていただくこととなりました。これについては、デュノア社のアルベール氏とも話が付いております』

 

 それが、質疑応答の最初で最後となった。

 あまりの内容に記者達も頭の中が真っ白になったのか、他国(英と独)の記者も口をパクパクさせるだけで記者会見は終わったという。

 

 

 

 この会見内容が日本に流れてきたのが今朝早く。そこから日本の関係各所、特に経済産業省とIS省は大騒動らしい。

 さもありなん。経産省からすれば、金の卵を産む鶏である如月重工がいなくなったのだから、来年度の税収は大悪化確定だ。そしてIS省は喫緊の問題で、国家代表が不在になってしまった。

 後釜に候補生の野崎さんがいれば良かったのだが、これもだいぶ前に『候補生辞めて、就職しました!』と私宛に連絡が来ていた。他の候補生では、次のモンド・グロッソは初戦敗退が目に見えている。

 

「だからと言って、引退した私を引き戻そうとするな……」

 

「あはは……まぁ、織斑先生に頼りたくなる気持ちも分かる気がしますが」

 

「何のための養成所なんだと……いっそ、山田先生が復帰して代表になりませんか?」

 

「私がですか? さすがにもう無理ですよぉ。それに今IS学園の先生を辞めたら――」

 

「辞めたら?」

 

「一夏君とのスクールライフを満喫できません」

 

「周りに他の先生方がいないからってぶっちゃけたな!?」

 

――プルルルルッ

 

「あっ、また鳴ってますよ」

 

「今度はどこからだ……?」

 

 真耶の爆弾発言を都合よく逸らすかのように電話が鳴り、私は嫌々ながらも受話器を手に取った。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

■シャルロット・デュノアの場合

 

 

 1年1組の教室では、相川さん達を筆頭に夏休み中の思い出話に花を咲かせていた。

 僕もあの輪の中に……入れたらどんなに良かったことか……

 

「シャル、おはよう」

 

「ああ一夏、おはよう」

 

 一夏が教室に入ってくると、クラスメイト達も一夏にターゲットを変えた。

 

「織斑君、織斑先生が国家代表に返り咲くって本当!?」

 

「へっ? 千冬姉が? なんで?」

 

「織斑君、知らないの?」

 

「???」

 

 本当に知らないようで首を傾げる一夏に、近くにいたセシリアが説明を始めた。

 

「今朝、日本の国家代表が辞任を表明しましたの。それで、後任に織斑先生をという話が上がっていますの」

 

「へぇ、そんなことがあったのか」

 

「織斑君は何も聞いてないの?」

 

「聞いてない。でも千冬姉、そんな話を受けるかなぁ? きっと『自分から捨てた肩書にまたしがみ付くなど、情けないにも程がある』とか言いそう」

 

「え~、せっかくブリュンヒルデ復活かと思ったんだけどな~」

 

 一夏が否定したことで、他の子達が残念だと言いながらワラワラと解散していく……かと思ってたんだけど

 

「あっ、そういえばデュノアさん」

 

「え、何?」

 

「デュノア社が第3世代機の開発に成功したって本当?」

 

「ええっ!?」

 

「とうとう出来たんだ!?」

 

 興味を失っていた子達が、一夏から僕のところに集まり始める。えっちょっ、取り囲まれてるようで怖い怖い怖い!

 

「ど、どこからそんな話を……」

 

「どこって、記者会見してたよ? あの国家代表辞任の後で」

 

「おとうさぁぁぁぁぁぁん!?」

 

 聞いてない! 僕聞いてないよ!? だって『発表は如月重工の件の後で』って……って後だぁぁぁぁぁ!

 

「あれ、なんか聞いたらマズかった?」

 

「いや、そうじゃないけど……」

 

「どしたん話聞こか?」

 

「え?」

 

 佐竹さん、僕が日本語をうまく理解してないだけかな? 10代女子の言葉じゃなかった気が……でも聞いてもらおうかな……?

 

「僕、夏休みにフランスへ帰国したんだ」

 

「うんうん」

 

「そこで、いきなりお父さん、デュノア社の社長に第3世代機の試作機に乗せられて」

 

「うんう……うん?」

 

「そこから2週間、みっちり慣熟訓練を積むことになって」

 

「えぇ……?」

 

「初日にい……クラスメイトの家に遊びに行った以外、ずっと会社のアリーナで缶詰だったんだよね……」

 

「こ、これは酷い……」

 

 正確には如月重工の移転パーティに呼ばれたけど、あれも宮下君や更識さんに弄られてたし……更識さんってば、一夏ともうし、しし、"シた"かって……馬鹿じゃないかなぁ!?///

 

「ま、まぁとにかく、次のIS実習でお披露目になると思うから、楽しみにしててよ」

 

「そ、そうだね。それとデュノアさん……ドンマイ」

 

 僕の肩をポンポンと叩いて、佐竹さんは自分の席に戻っていった。

 はぁ……更識さん達と知り合ってから、傍観者とはほど遠い存在になっちゃったよね……

 

「はーい、皆さんSHRを始めますよ~」

 

 がっくり項垂れる暇も無く、一夏を誑かすオッパイ星人山田先生が教室に入ってきた。あれ? 織斑先生がいない。

 

「山田先生~、織斑先生はどうしたんですか~?」

 

 のほほんさんが挙手して質問すると、山田先生は困った顔で

 

「その、ですね~……織斑先生は今朝から体調不良でして……」

 

「あっ、それなら今日はお休みですか~?」

 

「そうなります……胃薬の錠剤、ラムネみたいに噛み砕くところ初めて見ました

 

「山田先生、何か言いました?」

 

「い、いいえ! なんでもないですよ! それでは今日の連絡事項から――」

 

 ……後半、聞こえなかったフリした方がいいのかな?

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

■倉持技研の場合

 

 

「如月がフランスに逃げ込んだか」

 

「これで我々が、正真正銘日本のトップ企業となったわけだ。倉持技研も安泰だな」

 

 倉持技研の第1研究所に併設された本部。その会議室で、倉持の上層部――主に第1研究所の人間――は喜びに沸いていた。

 

「男性操縦者の片方を逃したのは残念だったが、こちらにはブリュンヒルデの弟がいる。それに如月風情では、デュノアのラファールを猿真似するのが精一杯だろう」

 

 陽炎やミステリアス・レイディ、レッド・スコルピオという実例があるにも関わらず、彼等は如月重工を過小評価していた。『自分達より優れた企業があってはならない』という、ある種の宗教染みた思想で凝り固まっているのだ。

 ゆえに、彼等は如月重工や更識姉妹、宮下陸がフランスに渡ったことを全く問題視していなかった。先ほども役員の一人が口にしていた通り、邪魔な競合他社が消えて喜ぶ有様である。

 

 そんな喜びの中でも、一つだけ彼等を悩ませるものがあった。

 

「しかし……国家代表の件は面倒ですな」

 

「ああ、そのことか。IS省も『お前達が代表候補生と揉めたせいで、次期代表に推せる人材がいなくなった』などと逆ギレしおって」

 

「まったくです。自分達の職務を棚に上げ、我々に叱責などとは……」

 

 打鉄弐式の開発凍結と野崎が候補生を辞めた件を、倉持は全く悪いと思っていない。むしろ織斑一夏(ブリュンヒルデの弟)の専用機に全力を注ぐ方が重要であり、()()()()()()の専用機など重要度は最低と考えていた。

 

 

 

 現実の見えてない老害達から少し離れた場所で、第1研究所の所長が背後の部下に確認を取った。

 

「第2の方は?」

 

「順調です。あのヘンタイが辞職したそうで、あちらの機材や資料は全て第1研究所が接収しました。白式関係の情報を整理するのに少し時間がかかりますが、それが完了すれば」

 

「うむ」

 

 部下からの報告を受けて、第1研究所の所長は笑みを浮かべた。

 元々白式の()()をしていたのは第2研究所であり、第1は打鉄弐式の開発が凍結(放棄)されてから第2に茶々を入れていた。そして篝火ヒカルノの辞任をきっかけに、本格的に乗っ取りを行ったのだ。

 

「日本はIS発祥の地。そして倉持技研が()()()()のIS開発企業。つまり我々第1研究所が、世界のIS開発をリードする存在となるのだ」

 

「素晴らしいですね」

 

 所長も部下も、そのような妄想を本気で信じていた。否、レイモンドという病原菌に幾度となく接触したせいで感染し、脳を完全に犯されていた。こうなると、今の政府与党も感染が疑われるだろう。

 

――バンッ!

 

「た、大変です!」

 

「なんだね、騒々しい」

 

 喜びに水を差された老害達が、突然会議室に飛び込んで来た若手社員に怪訝な視線を向ける。しかし若手はそれどころではないとばかりに

 

「き、如月重工が……!」

 

「如月がどうしたというのかね? やはり異国では水が合わずに倒産したかね?」

 

 

「如月が……『量産型第3世代機』を発表しました!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 如月重工が『量産型第3世代機』を発表したことで、世界の反応は3つに分かれた。

 

 

■陽炎購入国の場合

 

 

「キサラギが、とうとう第3世代機を発表して来たか」

 

 とある国の高級将校は、発表された量産型第3世代機『不知火』のスペックシートに目を通していた。

 

「各種性能は陽炎の正統進化。武装は陽炎で使用可能だったものに加えて荷電粒子砲、それとマイクロミサイルか。しかもミサイルは個別に目標を設定可能」

 

「将軍、どうなさいますか?」

 

「この性能は是非とも欲しい。しかし、予算がなぁ……」

 

 この国は今年、第2世代への全機切り替えが完了したばかり。そこに来てまた第3世代機への切り替えとなると、今残っている予算では厳しい。そして議会に追加予算を承認させるのはさらに難しい。

 そんな将軍の悩みを解決したのは、部下が差し出した資料だった。

 

「それなのですが、どうやら陽炎採用国限定でキャンペーンを行うそうです」

 

「キャンペーン?」

 

「はい。不知火購入に対し、同数の陽炎を引き取る代わりに値引きを行うと」

 

「つまり陽炎を下取りすると?」

 

「そのようです」

 

 将軍は資料に書かれた下取り価格を見て、再度頭の中で電卓をたたき直す。

 

「1機だけであれば、下取り分も合わせて予算内で購入出来るな。その後は議会に新型の性能を披露して、追加予算を申請するか」

 

「それが最善かと」

 

 こうして1国、また1国と、主にASEAN加盟国が不知火を買っていくのだった。

 

 

■ラファール購入国の場合

 

 

 ラファールを配備していた国は悩んでいた。

 最新の第3世代機は欲しい。しかし自国に配備されているのは陽炎ではないため、下取りの対象外。しかもイグニッション・プランが完遂した時、そちらの第3世代機を買わないのは外交上問題がある。

 

「う~む、どうしたものか……」

 

 南欧の某国もまた、国防次官が頭を抱えていた。(名目上、アラスカ条約で否定しているが)国防力に直結するISの性能、限られた予算、外交。どれも軽視できない問題である。

 そんな次官を救ったのは、この国を担当しているデュノア社の営業であった。

 

「実は弊社で、このようなものが……」

 

 営業の男が次官に差し出した資料には『ラファール・リヴァイブEX』と書かれていた。

 最初こそ渡された資料を流し読みしていた次官だったが、内容が核心部分へ進むにつれて目が見開き、最後にはガタッと椅子から立ち上がった。

 

「2.5世代への改修キット!? しかも"不知火と同じ荷電粒子砲とマイクロミサイルを装備!?」

 

「弊社が如月重工と提携しているのはご存じかと。今回の改修キットは、共同開発第1号となります」

 

 ラファール由来の機動性は強化され、今まであまり装備していなかった近接武装を追加してオールレンジで戦える機体に。

 ラファールと陽炎を足して2で割り、そこに不知火の要素を追加した性能を発揮すると、資料には書かれていた。

 

「今はラファールを改修して凌ぎ、イグニッション・プラン完遂後は採用された第3世代機を改めて購入されるのがよろしいかと」

 

「うむ……」

 

 回答を濁す次官だったが、その顔はすでに男の提案を飲むと伝えていた。

 

 

 この改修キットは陸が提案したものだった。

 

『このまま不知火を発表しても、陽炎のユーザー国しか買わないのは目に見えてる。なら、デュノア社に恩を売るついでに、欧州とアフリカ圏でも儲けさえてもらおうぜ』

 

『うん、それがいい』

 

『陸君ってば、意外と商売人ね~』

 

 これによって如月重工は、荷電粒子砲やマイクロミサイルのロイヤリティをデュノア社から受け取る契約を結ぶこととなった。

 

『というのは建前で、単純にラファールを弄る大義名分が欲しかった』

 

『陸(君)らしい(わ)』

 

 この誕生秘話を知る者は少ない

 

 

■ファング購入国の場合

 

 

 アメリカ製第2世代機『ファング』を使用している南北米大陸の国家では――

 

「第3世代機か……」

 

「おうメキシコ」

 

「あ、アメリカッ!」

 

「お前まさか、俺らのファングからジャップの機体に乗り換える気じゃねぇだろうな?」

 

「そそそ、そんなことはっ」

 

「そうだよなぁそうだよなぁ! お前らが次に買うISは、アメリカが開発中のファング・クエイク。だろ?」

 

「……おう」

 

 良くも悪くも、他勢力が潜り込むスペースは無かった。




■織斑千冬の場合
今作では、まだ重婚許可は出ません。だからまーやん、一夏とゆっくりエチエチしていってね!
ちーちゃん、新しいポンポンペインだよ~♪

■シャルロット・デュノアの場合
前作よりもデュノア社との繋がりが多くなったため、シャルの出番(胃痛)も増える予定です。ちーちゃんと仲良し~♪

■倉持技研の場合
クズゥゥゥゥゥゥいッ 説明不要!!

■各国の場合
如月重工がガッツリ儲けつつ、デュノア社もそこそこ設けた模様。
それでも勢力図が変わらない米帝様、さすがやでぇ……


オリ主がウズウズしてるので、次回は新武装を出しましょうか。

作者の意思が!読者の無意識が!シャル虐を望んでいるのだ!!
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