お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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1か月も更新が開いた割には、絞り出したような内容でスマソ。


第34話 主よ(ポンポンペインを)憐みたまえ

 宮下陸は激怒した。必ず、かのIS学園上層部の横暴を除かなければならぬと決意した。陸には政治的判断がわからぬ。陸は、機械馬鹿である。機械を作り、ミステリアス・レイディに組み込んだり周辺国に売り捌いたりして暮して来た。けれども理不尽に対しては、人一倍に敏感であった。

 

 ……この世界に来て初、今回陸は何に怒ってるのか。

 

「俺が4組のクラス代表ってどういうことっすか!?」

 

「まあまあ、ちゃんと説明するから一回席に着いてね?」

 

 エドワーズ先生に窘められ、渋々陸が自席に戻る。

 というか私も聞きたい。なにせ2学期初のSHRでいきなり『今日からこのクラスの代表は、更識さんから宮下君に代わりました』なんて言われたら。

 当事者である私や陸は当然として、他のクラスメイトも『え? なして?』って顔で固まってる。

 

「その前に、皆さんに連絡しておくことがあります」

 

「「「?」」」

 

「更識さんと宮下君ですが、本日を以てフランス人になりました」

 

「……」

 

「……」

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

 エドワーズ先生、サラッと言ったけど今言う必要ありました?

 

「更識さんと宮下君、フランス人になったって!」

 

「どういうこと!?」

 

「はいはい、その辺もきちんと説明するわよ」

 

 パンパンと先生が手を叩いて場を静める。すると、元々フランスから来ていたクラスメイトが思い出したように

 

「そういえば、2人が所属してる如月重工がデュノア社と手を組んだって話……」

 

「そう、そこに繋がるのよ。正確には、如月重工は昨日付でフランス企業になった。そうよね?」

 

 話を振られ、私も陸も正直に頷く。そこから私達もフランス国籍を取ることになったと説明すると、半数は納得、残りはまだ疑問って顔になった。

 

「でも先生、それと宮下君が4組のクラス代表になることと、どう関係があるんですか?」

 

 その問いに先生が答える前に、陸が『あ~、そういうことか』って嫌そうな顔で声を出した。

 

「先生、この代表替え、日本政府の意向じゃないですか?」

 

「あらら、正解よ」

 

「え? 日本政府?」

 

「どうして政府が、宮下君をクラス代表にしようとするの?」

 

 すると納得してた生徒もまた疑問に首を傾げる。私も首を傾げ……あっ

 

「陸を代表にしたいんじゃなくて、"私を代表から降ろしたい"だけ?」

 

「更識さんもいい勘してるわね、正解」

 

 そこからの説明は、私と陸が想像した通りだった。

 

「1学期のクラス対抗戦で、更識さんは織斑君を倒して優勝した。これについては今更よね」

 

「ですね。同じ第3世代機だったとしても、素人の一夏と企業のテストパイロットをしている簪じゃ比べるまでもない」

 

「織斑君の機体を作った倉持技研は発狂してたらしいけど、政府はまだ冷静だったそうよ。『"日本人"が、"日本製の機体"に乗って優勝したのだから」

 

 そこまでを聞いて、勘のいい子達が『それってまさか~……』って顔になる。うん、たぶん予想通りだと思う。

 

「けど今回、更識さんがフランス国籍&如月重工もフランス企業になったから……」

 

「そういうことだよ。俺なら簪よりは弱いし、機体も第2世代のカスタム機だから、今度またクラス対抗戦をやったら日本人の一夏がっ、日本企業である倉持技研の機体に乗ってっ、優勝出来ると考えたんだよクソがっ!」

 

 自分で最後まで説明すると、陸はケッと吐き捨てた。

 う~ん、さすが日本政府。さすが倉持技研。やることが汚いというか、子供臭い。

 そもそも織斑君の白式"ごとき"で、陸の陰流に――ソフィアーの存在を知らないからだろうけど――勝てると思っているところが度し難い。

 

「まあ、宮下君が説明した通りよ。ちなみに聞いた話では、政府の他に倉持からも連絡が来たそうで『やっぱりあの機体は不正なものを積んでるに違いない! でなければ我が倉持が開発した白式が負けるはずがないんだブヒィィィィィ!(原文ママ)』って言われて学園長が困惑してたらしいわ」

 

「「「「うわ~……」」」」

 

 2学期最初のSHRは、クラス全員のドン引きで幕を閉じた。そして決定は覆らず、陸が4組のクラス代表になった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「というわけで、むしゃくしゃしたのでミステリアス・レイディを改造しまーす」

 

「訳が分からないわよ!?」

 

 放課後の第3アリーナで、強制連行された刀奈にツッコまれた。連行したのは誰かって? 俺と簪だけど何か?

 

「100歩譲って改造するのはいいとして、どうしてアリーナにいるの? 普通、整備室とかじゃないの?」

 

「それは私も思った」

 

「まさかここで突貫工事するつもり~?」

 

「もちろん、そんなつもりはない」

 

 刀奈、簪、のほほんの3人が思っているようなことはしない。なぜなら……

 

「だってもう、新装備はミステリアス・レイディに追加済みだから」

 

「はいぃ!? 陸君、いつの間に!?」

 

「新装備を陰流の拡張領域に量子化して、コアのネットワークを通じてミステリアス・レイディに回収してもらってな」

 

「そ、そんなこと出来るの!?」

 

 実際出来た。ただ、送受信する両方でコア人格が発現してないと使えない手だが。ぶっちゃけ陰流(ソフィアー)レイディ(イヴ)、あとはスコルピオ(ランディ)の間でしか使えない手だな。

 それを聞かされて、刀奈がレイディのステータス画面を開いて確認し始める。

 

「あっ、あった」

 

「かんちゃ~ん、りったんがまたIS史のページに書き込まれちゃったよ~」

 

「それも今更。それでお姉ちゃん、新装備って何だったの?」

 

「ちょっと展開してみるわね。……危ないものでありませんように」

 

 な~んか信用されてないようだが、刀奈の何も持っていない左手に格納されていたものが展開されていく。

 そして展開が完了したものを見て、3人とも拍子抜けしたような表情になった。

 

「銃、よね?」

 

「うん、銃だね」

 

「しかも、拳銃型だ~」

 

 刀奈の手には、陽炎の標準装備であるハンドガンよりやや小型な拳銃型武装が収まっていた。

 完全にキョトンとしていた刀奈だったが、ハッと我に返ってその拳銃の詳細を調べ始めた。

 

「武装名は……『キリエ』?」

 

「正式名称は『Kyrie eleison(キリエ・エレイソン)』だがな。長すぎるから省略した」

 

「どういう意味~?」

 

「確か『主よ 憐れみたまえ』っていう、賛美歌の歌詞の一文だったはず」

 

「はえ~……りったんらしくない」

 

「うっせ!」

 

 たぶんツッコまれるとは思ってたが、まさかのほほんに言われるとは……! いや、俺らしくない自覚はあるんだが。

 

「それで、このキリエの試し撃ちをするためにここに来たってこと?」

 

「そういうことだ。しかも対戦相手を快く引き受けてくれたやつもいる」

 

「僕は快く引き受けたつもりはないんだけどっ!?」

 

 そう、ここにいるのは俺達いつもの4人だけじゃない。

 夏休み中にロールアウトしたフランス製第3世代機『リィン・カーネイション』に乗ったデュノアが待機していた。なんかすっごい怒ってるが、俺なんかやっちゃいました?

 

「でもアルベールさんからも言われてるんだろ? 『如月重工製ISとの模擬戦データが欲しい』って」

 

「うぐっ! ……い、言われてるけど」

 

「なら好都合だろ? せっかく楯無さんとの模擬戦が出来るんだから」

 

「りった~ん……」「陸君……」「陸……」

 

 そこ、俺にそんな視線を向けるな。

 

 という茶番(今までのは茶番だ、いいな?)が終わり、刀奈とデュノアがアリーナ中央の上空まで上がる。

 

「こうなったら、もうやるしかありませんね……」

 

「そうねぇ、こちらとしてもデュノア社製の第3世代機の性能は気になってたから、ちょうど良かったと言えば良かったかも」

 

「はぁ……」

 

 やる気になった(開き直った)刀奈に対して、デュノアはまだモチベが上がっていないようだ。仕方ない、オープン・チャネルをオンにしてと。

 

『デュノア、この模擬戦が終わったら、前に一夏から聞いたあいつが好きな料理の情報を――』

 

『すぐ終わらせるから用意しといて!』

 

「……おう」

 

 大変よい食いつきで。でも残念、あいつは巨乳スキーだ。

 

「楯無さん、よろしくお願いします!」

 

「え、ええ……陸君、私にも何かご褒美よろしくね」

 

『ええ~……『私と陸が共同でカップケーキを作る』えっ、簪と作んのか?』

 

「みなぎってきたぁぁぁぁ!!」

 

 餌に釣られたフランス人(刀奈とデュノア)が、拳銃とショットガンを持って対峙する。そして試合開始の合図が鳴った。

 

「夏休みを慣熟訓練に潰された成果を!」

 

 最初に動いたのはデュノアだった。おっ、速いな。結構距離が開いてたはずなのに、もうショットガンの有効範囲に潜り込んでら。

 

――ガンッ! ガンッ!

 

 だがさすが刀奈、全弾回避したようでSEも全く減っていない。

 

「おっとっと! さてさて、陸君の新武装、一体どんな威力なのやら……」

 

 ショットガンの散弾とアサルトライフルの弾丸を回避しながら、普段使わない拳銃型武装を構え、デュノアに狙いを定める。そして――

 

――ガァンッ!

 

 デュノアの攻撃より少し大きい発砲音とともに、銃口から13mm弾が飛び出し、リィン・カーネイションの左スラスターに向かって飛んでいく。

 

「そのくらいの弾1発ぐらいなら……」

 

――ゾンッ!

 

「……ふへ?」

 

 1発ぐらいなら大丈夫だと高を括っていたデュノアの口から、素っ頓狂な声が出た。

 まあそうだろうな、なにせ弾丸が当たった箇所とその周辺、もっと言えば弾を中心に半径10cmの球体範囲が

 

 ごっそり消滅したのだから。

 

 でまぁ、そんな大穴が開いたスラスターが真っ当に動くわけも無く、

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 バランスを失ったデュノアが真っ逆さに落ちていき、地面に直撃――ギリギリのところでレッド・スコルピオを展開した簪にキャッチされた。

 

「はい、ナイスキャッチ」

 

「陸、さすがにシールド貫通する武装はダメだと思う」

 

「そうか? 零落白夜を参考にして、貫通弾的なのを作ってみたんだが」

 

 これが反則なら、一夏の白式自体が反則になるだろ。いや、IS委員会が矛盾だらけの難癖付けてくる可能性もあるか、前の外史みたいに。

 

「ところでデュノアさん」

 

「は、はい?」

 

 キャッチされた――お姫様抱っこ状態のデュノアに、簪が

 

「もしかして、漏らした?」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 とどめを刺した。

 

「あんな空中落下したら仕方ないよ~。だからかんちゃん、でゅっちーの内腿が濡れてても指摘しないのが――」

 

「やめてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 のほほん追撃はやめろぉ!(ナイスゥ!)

 

 

「えっ、何この状況……」

 

「うん、気にしなくていいから」

 

「そ、そう? なら陸君、ご褒美のハグ」

 

「ここで?」

 

「はよはよ」

 

 泣き崩れるデュノア、それを囲む簪とのほほん、刀奈とハグをする俺。なんだこのカオスは……

 

 

「何だこのカオスは……!?」

 

 

 あっ、織斑先生、見回りお疲れ様でーす。

 

「もうやめてくれぇ……私はただ、更識姉から話を聞きたかっただけなのに……」

 

 そう言いながら織斑先生は懐から胃薬を出して水無し服用をキメると、後で職員室に来るよう刀奈に伝えてアリーナを出て行った。




というわけで、本作のポンポンペイン役であるシャルと千冬回でした。(チガウ

実際前作の俺ヒルデでも、終始簪無双でしたからね。そういったわけで、他のメインキャラにも出番があるようにしてみた次第です。(ただし勝てるとは言ってない)


シャルを本作のお漏らしキャラにしようかと画策していたり……
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