お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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ここでオリチャーをひと垂らし


第35話 こんなの俺のデータにないぞ!?

「はぁ……」

 

「おーいシャル? 大丈夫か?」

 

 一夏が声をかけてくれてるけど、正直返事をするのもしんどい……なぜって、まーた宮下君のトンデモ発明に振り回されて、ロールアウトしたばかりの専用機が半壊したからだよ!

 と、一夏に愚痴っても仕方ないから、黙ってるしかないんだけどね。……下手に喋って、僕が失禁したことがバレたらことだし。

 

「よーしお前達、席に着け」

 

「SHRを始めますよー」

 

 教室に織斑先生と山田先生が入ってくると、一夏を始め立っていた生徒達が自席に戻っていく。はぁ、僕も顔を上げないと。

 

「まず連絡事項ですが、この後全校集会がありますから、講堂に集合してくださいね」

 

「先生、集会って何をするんですか?」

 

「えーっとですね、例年通りなら、生徒会から学園祭についての説明があります」

 

「学園祭かぁ」

 

「IS学園の学園祭って、どんなだろうねー?」

 

 山田先生の説明に、周りがざわざわし始める。

 学園祭かぁ……デュノアを名乗る前に通ってた学校は小さくて、そういったイベントとは無縁だったな。

 

「……(チラッ」

 

「?」

 

 うん、決めた。絶対一夏と学園祭を見て回ろう。そのためにも、箒達を……いや、山田先生を出し抜く計画を――

 

――パァァンッ!

 

「あいたぁ!?」

 

「デュノア、いつまで惚けている。お前もさっさと講堂に行け」

 

 お、織斑先生の出席簿が痛い……ってぇ! 教室中を見回しても先生と僕以外誰もいない!? 僕、そんな長い時間考え込んでたの!?

 

「なんだ、もう一発叩かれないと動けないか?」

 

「だ、大丈夫です!」

 

 ガタンッと椅子から立ち上がると、急いで教室を出――

 

「廊下を走るな!」

 

――ガンッ!

 

「ぎゃふんっ!」

 

 お、織斑先生……出席簿はそうやって投げて相手にぶつける投擲武器じゃないですよぉ……

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 『キリエ』の動作テストをした翌日。SHRが終わってすぐに、俺達は講堂に移動させられた。

 

「この時期だと、学園祭絡みか?」

 

「多分そう」

 

 俺の予想に簪が頷く。まあ、全校生徒を集めて話す内容なんて、それぐらいなもんだろ。

 そうやって俺達も含め生徒達がざわざわしていると、壇上に虚さんが現れる。

 

『それではこれより、全校集会を始めます。会長、どうぞ』

 

『はぁい、みんなおはよう』

 

 虚さんの入れ替わりで、刀奈が壇上に上がってマイクを受け取る。この辺りは記憶の中とほとんど変わらずだな。

 

『さて、今日みんなに集まってもらったのは他でもない、今月の一大イベント学園祭についてよ』

 

「やっぱり学園祭なんだ」

 

「例年通りね」

 

 主に上級生のゾーンから、納得の声が聞こえてくる。余程のことがない限り、毎年今頃にやってるからな。そりゃそんな反応にもなるか。

 

『学園祭では毎年各部活動ごとに催し物を出し、それに対して投票を行って、上位には特別助成金が出る仕組みです』

 

 そうそう。けど今年は一夏(部活未所属)がいるから、そのあいつをダシにして――

 

『これについては例年通り行います』

 

「「はい?」」

 

 思わず簪と一緒に変な声が出た。

 えっ、やらないのか? 『各部対抗織斑一夏争奪戦』を?

 

「だけど、今年は特別イベントと思うわ。その内容は」

 

 困惑する俺と簪をそのままに、刀奈が持っていた扇子を横にスライドさせる。すると空中投影ディスプレイが浮かび上がり――

 

 

『織斑一夏vs宮下陸 男性操縦者エキシビジョン』

 

 

「「はぁぁぁぁぁ!?」」

 

「「「「え~~~~~~っ!?」」」」

 

 おい待て刀奈! 俺何も聞いてねぇぞ!? お前の妹()だって目が点状態で固まってるし!

 

『1学期の学年別トーナメントが中止になっちゃったでしょ? それで色々なところから『男性操縦者の試合データが欲しい』って要望が出てるのよね~』

 

「いやまあ、言いたいことは分かるが」

 

 俺はある程度納得した。で、一夏も遠目から見てゲンナリしてた。あいつ、ただでさえクラス代表とかなのに、さらに当日はエキシビジョンにまで参加しないといけないとは……南無南無

 

「陸」

 

「ん?」

 

「陸も2学期からクラス代表だから、織斑君と同じ境遇」

 

「……エドワース先生、ちょっとトイレに」

 

 先生に断りを入れて、そそくさと講堂の外に。

 

 ……

 

「クソがァァァァァァァ!!」

 

――バキィィィッ! パキパキ……ドゴォォォォォッ!

 

「な、何今の音!?」

 

「なんか、木材が折れる落したよ!?」

 

『あ~、みんな大丈夫よ。宮下君が怒り狂って通路樹を殴っただけだから』

 

「殴った!? 素手であんな音出るの!?」

 

「というか、折れたよね? 拳で樹を折ったよね!?」

 

 講堂内がざわめいてるみたいだが、色々我慢出来なかった。反省もしてるが後悔はしていない。

 

『あっ、織斑先生――』

 

『宮下、聞こえてるな? 後で生徒指導室まで来い』

 

「……うぃーっす……」

 

 聞こえてないだろうが、返事はしておこう。……もし聞こえてて返事しなかったら、出席簿が飛んできそうで怖いから。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 んで、織斑先生(出席簿)が怖いから素直に生徒指導室にやって来たら、中には織斑先生の他にも刀奈がいた。

 

「まずはそこに座れ」

 

「うっす」

 

「返事は『はい』だろ?(ビュンッ)」

 

「はい……」

 

 とりあえず、出席簿でソニックブームが出そうな素振りは止めていただきたい。

 そうして言われた通りパイプ椅子に座ると、刀奈がそそくさと俺の隣に移動してきた。

 

「今日は私が簪ちゃんの代わりね」

 

「はぁ……まあいい」

 

 俺達に対してため息をついた織斑先生だったが、腹を軽く擦っただけで話を進めるようだ。

 

「まずは通路樹の件だが、学園から後で請求が来るから覚悟しておくように」

 

「あれについては、お姉さんも擁護しづらいわね~……」

 

 だろうな。仕方ない……んだが、ちょっとやり返してもいいよな?

 

「了解です。まあ、自分でやらかしたもんなんで。……ちなみに、いつだったか凰が1組の教室で衝撃砲をぶっ放した修繕費って誰が出したんですか?」

 

「ぐふっ! ……宮下お前、分かってて聞いてるだろ?」

 

「もちろん」

 

「ぐぉぉぉぉ……!」

 

 言いたくても言えない、そんな状況にもがき苦しんだ挙句、織斑先生の懐から胃薬の瓶が出てきた。で、水無しで飲むのか。

 

「んっぐ……ふぅ。分かった、学園の維持費からはみ出した分を払えばいい」

 

「了解です。やっぱり篠ノ之達が壊した分は学園持ちでしたか」

 

「これ以上聞くな……」

 

「あはは~……」

 

 俺を注意するために呼び出した先生はぐったりと机に突っ伏し、刀奈の口から苦笑いが漏れる。

 篠ノ之のやらかしに関しては、姉である束が関係してるんだろう。おそらく下手に損害請求して『姉である篠ノ之束の報復』を恐れてるんだろう。

 そして、篠ノ之に請求しない選択をすると、他の専用機持ちについても『どうしてウチだけ!』と言われかねないと。

 

(当の本人は、そんなの全然気にしてないんだけどなぁ)

 

 束のことだ、今頃は太陽光発電自律制御型無人機――前外史で『アンサラー』と呼んでた機体を、ウッキウキで組み立ててる真っ最中だろう。受信アンテナ? フランスに移転した翌日には試作品を動かしてたよ。

 というわけで、学園上層部の懸念は全くの無意味なんだよ。束の存在が機密事項だから言えないけど。

 

「そ、それとだな」

 

「はい」

 

「『キリエ』は正式に禁止武装となった」

 

「KUSOGA!」

 

「残当」

 

「いや、あれは仕方ないわよ」

 

「俺を裏切るのかパイセン!?」

 

「誰がパイセンよ! 久々に言われたわ!」

 

 なんだよ刀奈まで……ちょっと白式の零落白夜を真似して、シールドを抜けるようにしただけだろ。きちんと装甲外()()()()()()()()()ようにして、安全面も考慮したっていうのに……

 

「次に更識姉だが……あのエキシビジョンを要求したのは、倉持技研だな?」

 

「……そうですよ~」

 

 その瞬間、刀奈が頬を膨らませて俺の腕にしがみ付く。

 

「宮下君を4組のクラス代表にするようごり押ししたと思ったら、すぐにこれですよ」

 

「第2世代機に乗る宮下が相手なら、第3世代機に乗る一夏が勝つと?」

 

「そういうことだと思いますよ。正確には、『"如月が作った第2世代"が相手なら、"倉持が作った第3世代"が』でしょうけど」

 

「度し難いな」

 

「ええまったく」

 

 はぁ~~……と、3人同時にクソデカ溜め息が出た。

 正直ISに関しちゃ俺はクソザコだが、それでも()()一夏には負ける気がしないな。前外史の――白式が『第二形態移行(セカンド・シフト)』して、卒業後に自衛隊のIS部隊に所属しながら篠ノ之流剣術を免許皆伝した――一夏になら負けるかもしれんが。

 少なくとも、倉持が追加武装すら満足に付けられない現状、ブレオン仕様の白式相手に負ける道理がない。近付かれないよう間合い取りに失敗しなきゃ、アウトレンジからちまちま銃撃して勝てるし。

 

 

 

 結局、日本政府と倉持の汚いところを再確認するだけで、生徒指導室での話は終わった。織斑先生が相変わらず腹を押さえて部屋を出ていくのが印象的だったな。

 さて、差し当たってはエキシビジョン前に鍛え直すか。今は体が鈍らない程度の修練だが、本格的に――

 

 

「それじゃあ、4組の出し物は『休憩所』でいい?」

 

「「「「異議なし!」」」」

 

 

 教室に戻ったら簪が俺の代わりをして、クラスの出し物が休憩所になってたでゴザル。

 えっ、マジで? 教室に長椅子とウォーターサーバーを置くだけ? ガチの休憩所じゃん。やる気ね~……

 

「(仕方ない、もう『仮想世界潜入ゴーグル』を作るのに地獄見たくない)」

 

「(あ~……確かに)」

 

 そうだった。前外史の学園祭で『仮想世界でIS体験』――仮想世界にダイブできる装置を使って誰でも、俺や一夏以外の男でもIS体験が出来る――をやったんだが、土壇場でゴーグルの追加発注が入って簪と一緒にデスマーチをやったんだったな。うん、俺もあれはもういいや。

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