「却下だ!」
「どうしてですか?」
「どうしても何もあるか! IS学園らしいことをしろとは言わんが、『休憩所』とか舐めているのか!?」
職員室で、俺と織斑先生がこんな問答をしている理由は言うまでもない。学園祭の出し物についてだ。
4組の出し物が『休憩所』に決まり、エドワース先生が職員室に戻っていったと思ったら、速攻で戻ってきた。
「ごめんなさ~い、学年主任の織斑先生から却下されちゃった~」
「「「え~~」」」
「「「残当」」」
両手を合わせて謝る先生に、クラス内は残念半分納得半分という感じに。で、俺は残念派だったから織斑先生に直談判しに行った。ただでさえ当日、エキシビジョンとか面倒があるのに、クラスの出し物ぐらい楽させろや。
「それとこれとは話が別だ。というより1組を見習え。きちんと喫茶店をやるし、織斑も参加するんだぞ」
「一夏が執事の真似事で苦労するからと言って、俺まで同じ苦労をしろと?」
「そこまでは言って……どうして奴が執事をすると知っている?」
「あの1組が、ただの喫茶店なんかするわけないじゃないですか。絶対一夏を見世物にするって確信がありますよ」
「おぅ……」
前外史がそうだったし、今回もそうなるだろうと根拠は無いが何故か確信だけはあった。で、織斑先生の反応を見るに当たりっぽいな。
「とにかくだ、もう少しマシな企画を持ってこい。もし何も出て来なかったら、4組も1組と同じ『コスプレ喫茶』にするからな。もちろん宮下は執事役だ」
「横暴!?」
おい待てふざけんな。俺の執事姿なんて誰が求めて……刀奈と簪以外、誰が求めてるってんだよ!? ていうか執事役で接客とか冗談じゃねぇぞ!
「嫌なら企画を持ってこい。話は以上だ、ほら教室に戻れ」
「ぐぬぬぬ……」
そうして俺は『なんの成果も! 得られませんでした!!』状態で職員室を追い出された。チクショウ……
ーーーーーーーーー
教室に戻った俺は、クラスメイト達に出し物の決め直しを伝えた。まあ、織斑先生が決定を覆すとは誰も思ってなかったようで、めでたくSHRは延長戦に突入した。
「とは言ってもね~」
「1組がコスプレ喫茶で、2組も中華喫茶でしょ? これでウチらも喫茶店しても、ねぇ?」
「いっそ、こっちも宮下君に執事役を――」
<●><●>
「すんませんでしたぁ!」
俺と一夏を執事ペアルックにしようとほざく国賊は、簪の睨み付けで沈黙したようで何より。
「でも更識さん、宮下君の執事姿とか見たくない?」
「……興味はある。けど、陸が私とお姉ちゃん以外にご奉仕するのはNG」
「独占欲強っ!」
「そんな理由かよ……言っとくが、お前ら姉妹の前でも着ないからな?」
「( ́・ω・ )そんなー」
そんなあからさまにガッカリすんなよ……
「話を戻すぞ。というか、一応俺に一つ案があるんだが」
「おっ、さすが新クラス代表!」
「なになに?」
ここで前回と同じ『仮想世界でIS体験』を――装置を作る手間はもはや諦めて――提案してもいいんだが、どうせ手間が増えるなら、今回新しいものをやってみるかと教室に戻るまでの間に考えていた。
「その前に……エドワース先生、この学園に『
「宮下君、よく知ってるわね。先日、実稼働データ収集の目的で10機が送られてきたわ」
「EOS? なにそれ?」
俺が知ってたことに驚きと呆れ顔の先生に対して、簪以外の生徒はEOS自体を知らないようだ。まあ知ってたらマニアだろうが。というわけで、俺が軽く説明することになった。
EOS。正式名称は『
とはいえ、比較するのも烏滸がましいほどに、EOSとISとの間には絶望的な性能差がある。
まず初めに、エネルギー問題だ。30kg近いバッテリーを背負っておきながら、最大活動時間がわずか10分ちょっと。一夏の白式なんか目じゃないぐらい燃費が悪い。
その燃費の悪さに付随して、パワーアシスト機能を常にオンにしておけないのも大きな問題だ。ただでさえISみたいな操縦者の動きを先読みしてくれない後追いアシストなのに、それすら付けっぱに出来ないという。
まだまだあるぞぉ、PICが無いから銃器を撃つと反動制御がヤバいとか、シールドに回すエネルギーどころかシールド機能すらないとか、とどめに『空を飛べない』ってのもあるか。
「「「うわ~……」」」
「それ、使えるの?」
「ぶっちゃけ、男でも搭乗出来る以外、ISに勝ってる点は無いな」
むしろ、ISが色々チート過ぎるんだよ。ホント、束はなんつーもんを作ったんだか……小型太陽炉を作ったお前が言うな? 知らんな。
「それで、そのEOSの搭乗会でもするの?」
「そういうこった。まあもちろん、すこ~し手を加えるが」
「手を加えるって、ちゃんと元に戻せるのよね? 先生嫌よ、後でお偉方に怒られるのは」
「大丈夫ですって、1度『着脱』の両方やったことありますから」
「まあ、それなら……」
エドワース先生も納得したようだし(ぐいっ)ん? なんだよ簪。
「陸、私それ知らない。いつ?」
「いや、それは企業秘密というか」
「今夜お説教」
「解せぬ!」
EOSを触ったの前外史でのことだから、ここじゃ話せねぇんだって! それでお説教とか酷すぎるってぇ!
最終的に、4組の出し物は『EOS試乗会』となり、織斑先生からも許可が出た。そして
「主文、被告人はEOSの改造経験を黙っていた。よって私とお姉ちゃんに食事中『あ~ん』を行うこと」
簪裁判長による、東京裁判もびっくりの判決が下された。『あ~ん』って……
「異議あり!」
「却下します」
「なら控訴――」
「この裁判には控訴も上告もありません」
「つーか刀奈は弁護人のはずじゃ?」
「私も陸君に『あ~ん』して欲しいし~」
「司法が死んでる!?」
ーーーーーーーーー
翌日。IS実習の隙間時間をもらい、EOSの現物を2機、アリーナに持ち込んだ。
「なんか、すごいメカメカしいね」
「総重量はISの方があるけど、それでも機動性で負けてるって話だったよね」
「これに乗って喜ぶお客さん、いるのかなぁ?」
IS以上にアーマーというか金属の塊感があるEOSを見て、4組生徒達は微妙な顔だ。言ってることは正しいぞ――俺が改造する前のものなら。
「さて……誰か試しに乗ってみてくれ」
「ええっ?」
「これに?」
「実際、どれぐらいISと違うか体感してみた方がいいだろ?」
「それは、まあ……」
昨日俺が散々性能をディスったからか、皆乗り気じゃないようだ。けど最後には1人が選出され、2機ある内の1機に乗り込む。
そして乗ってすぐ、苦情に近い感想が出てきた。
「くっ、おっも! ISと同じだと思って動かそうとしたら、全然動かないよこれ!」
「だよなぁ。そんで、ほい」
「いたっ! ホントにシールドないの!? それなのにISと同じように生身が露出してるの!?」
足元の石ころを拾って投げつけたら、何にも弾かれることなく太ももに直撃したことに滅茶苦茶驚いていた。当然、ここまでの流れを見ていた他の生徒達も唖然としてる。
この性能で、本当に平和維持活動とかさせるつもりなのか? 国連さん。
そんなEOSを降りてもらって、もう1機の方に乗ってもらう。
「あれ!?」
「どうしたの?」
「なんか、さっきより身体が動くんだけど! さっきの機体と別物!?」
本人が言うように、2機目に乗った瞬間、まるで自分の身体のように……は言い過ぎだが、スムーズな動きを実現していた。おっ、歩行だけじゃなく走れもするのか。いい感じだな。
「これでシールドと飛行能力があれば、ほぼISだよこれ」
「あ~、その2つはどうしようも無かった。それも解決しようとしたら、先生からのオーダーである復元が出来なくなる」
「確かに、シールド用の装置やスラスターも付けたら完全に別物になっちゃうもんね」
よっ、と声を出しながら降りると、他の生徒達が自分も試すとEOSの周りに集まってきた。さっきまで敬遠してたくせに、現金な奴等だ。気持ちが分かるが。
「ねえ陸」
「ん?」
「あのEOS、結局どんな改造をしたの? エドワース先生に格納庫へ案内してもらってから持ち出しまで30分も無かったし、簡単な改造だったんだろうけど」
「ああ、それな」
大っぴらに話せる内容でもないから、俺はISのプライベート・チャネルを使ってその問いに答えた。
「(劣化版ISコアを積んだ)」
「こっ! げほっ! げほっ!」
大丈夫か簪? めっちゃ噎せたが。
「なんてもの積んでるの!? えっ? どこから調達したの?」
「今回用に作った」
「わざわざ!?」
かつて前外史で試しに作ってみたものの、ブラックボックス部分を推測で作ったがために正規品の50%程度しか性能が出なかった劣化品。それをEOSに積んでみたのだ。
本当ならきちんとした代替品コアも用意出来たんだが、さすがにそれを積むと性能が上がり過ぎて、ISコアを積んだことが露見するかもと思い断念した。で、仕方なくわざわざ劣化版を用意したわけだ。
「陸」
「ん?」
「今夜もお説教」
「……またかよ」
学園祭の出し物として耐え得る性能にしただけなのにこの仕打ち、解せぬ。
「これ、外にバレたらすごい揉めそう。倉持とか日本政府とか倉持とかIS委員会とか倉持とか」
「その辺は大丈夫だろ。織斑先生が胃薬飲みながら揉み消してくれる、はずだ」
『宮下ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
どこかで織斑先生の呪詛が聞こえた気がしたけど、気のせいだな気のせい。
休憩所棄却(残当
そして、前作では全く話題に出なかったEOSの出番となりました。
原作でも8巻でちょっと乗った以外、11巻で黒兎隊が乗った挿絵があったぐらい。影うっす。
劣化版ISコアの活用法
もし学園外にバレても、休憩所を却下したちーちゃんが悪い。(責任転嫁