お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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サブタイ、どこかで見たことがある? 気のせいじゃないかなぁ?(すっとぼけ


第39話 学園祭開幕~宮下陸の場合~

 学園祭当日。生徒達がクラスや部活動の出し物の準備で校舎内を走り回っているであろう中、俺と簪は通常営業で寮の食堂で朝飯を食っていた。

 

「ずるるるる~」

 

「学園祭当日だろうと、簪はかき揚げうどんなのな」

 

「うん、これは何があっても変わらない。全身浴派なのも」

 

「おう……」

 

 なぜかキランッと眼鏡の縁を光らせながらうどんをすする相方に、二の句が継げねぇ……別に何も支障が無いからいいが。

 

「それにしても、こんなにゆっくりしてていいの? EOSのアリーナへの搬入は昨日で終わってるとはいえ」

 

 そこで言葉を切って、簪がちらりと周囲を見渡す。食堂には俺達以外の生徒はいない。今頃他の連中は最後の準備に追われてるんだろう。けど、

 

「いいんだよ。実際、あとやることなんて無いし。あるとしたら……開会式に出るぐらいだろ」

 

「え、出ないの?」

 

 簪が驚いた顔でこっちを見てきた。えっ、出来る気でいたのか? むしろ俺の方がビックリだわ。

 

「だって前回(前世)だって出てなかっただろ」

 

「それはそうだけど……」

 

「なんだよ、口ごもって」

 

「お姉ちゃん、絶対拗ねるよ?」

 

「……」

 

 想像して、すこ~しだけ左手が震えた。

 

『どうして陸君達開会式出なかったのよぉぉぉぉぉ! うわぁぁぁぁぁぁ!』

 

 人の目を全く気にせず、俺と簪の目の前で仰向けになって手足をばたつかせて泣き出す17歳児を……

 

「……開会式、出るか」

 

「うん」

 

 意思の疎通が成り、俺達はいつも通り――さっきよりはペースを上げて目の前の飯を食べ切ると、そそくさと食堂を出て行った。

 刀奈、仙人になったはずなのに精神年齢はむしろ下がった気がするのは俺だけか……?

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

『それではこれよりIS学園、学園祭の開催を宣言しちゃいま~す!』

 

 

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」

 

 

 ……このやり取りのためだけに講堂に集められた俺達は一体?

 

「陸、気にしたら負け」

 

「オウソウダナ」

 

 棒読みな返事をしつつ持ち場であるアリーナに向かう途中、1年1組の前を通ることになるんだが――

 

「あの織斑君の接客が受けられるんでしょ!?」

 

「しかも執事服姿で!」

 

「それだけじゃなくて、ゲームもあるらしいよ?」

 

「しかも勝ったら写真も撮ってくれるんだって! ツーショットよ! これは並ぶしかないわ!」

 

 前外史から一言一句変わらぬやり取りと、長蛇の列が。おいおいついさっき開会宣言したばっかだろ! 早すぎね!?

 

「ただでさえ織斑先生の弟(姉の七光り)で有名な織斑君だから。しかも臨海学校(陽炎襲撃)の件もあって、さらに人気が出てる」

 

「なるほどな」

 

 簪のセリフから感じた不穏な雰囲気(ヤバめなルビ)は敢えて無視していると、

 

「あれ? 二人とも、どうしたの?」

 

「おうデュノア」

 

 メイド服姿のデュノアと出くわした。どうやら客引きをするために出て来たようだが、客引き必要か? これ。

 そんなデュノアをじーと見つめる簪。

 

「えっ、あの……」

 

「デュノアさん、織斑君と同じ執事服だったらもっと客寄せ出来てたかも」

 

「うわぁぁぁぁぁん!」

 

 おいぃ!? なんかデュノアが膝から崩れ落ちたんだが!?

 

「更識さんにまで言われたぁぁぁ! どうして僕がメイド服じゃダメなのさぁ! 僕だって、僕だって可愛いフリフリの服着たっていいじゃないかぁぁぁぁ!」

 

「簪、どうやらデュノアの逆鱗(弱点)に触れたようだぞ」

 

「……」

 

 号泣一歩手前のデュノアに、簪も『あっ、やべっ』みたいな表情で視線を逸らす。いやこれどうすんだよ……

 

「おーいシャル、客引きは必要なさそうだって鷹月さんが……ってどうしたんだよ!?」

 

「織斑君、ちょうどいいところに。あとはよろしく」

 

「はっ? 一体どういう――」

 

「グッドラック」

 

「えっ、ちょっと更識さん!?」

 

 都合よくひょっこり教室から出て来た一夏にデュノアを任せ(押し付け)ると、簪に腕を引っ張られて一目散に逃げだした。それから少しも経たないうちに

 

「あっ! 織斑君だ!」

 

「織斑君! 出ちゃダメって言ったでしょ!」

 

「混乱具合が増すから!」

 

 カメラを向ける生徒と、整理スタッフ達に揉みくちゃにされる一夏withデュノアなのであった。

 

「簪、人の心とか無いんか?」

 

「うん、研修中(シギュンさん)に持ってかれちゃったから」

 

 なら仕方ない、うん。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 万難を一夏に任せ、俺達は少し遅刻したもののアリーナに――

 

「こ、これがEOSなのか!?」

 

「全くの別物じゃないか!」

 

「すげー! IS以外にもこんなのが作られてたんだな!」

 

 1組に負けず劣らず、こちらもアリーナの内周をぐるりと1周しそうなほどの列を成していた。ちなみに、並んでいるのはチケットで入場した一般客がほとんどだ。あとIS関連企業の人だったり、各国の政府関係者だったり。

 

「宮下君と更識さん! 遅いよぉ」

 

「わりぃ、ちょっと1組の前がすごくてな」

 

「あ~、織斑君効果、すごそうだもんね~」

 

 非難していたクラスメイトも、一夏のことを口にしただけで納得したように頷いた。ご理解いただけたようで何より。実際は簪が誤って、デュノアの逆鱗(起爆装置)に触れちまったのが原因だけど。

 

 そうこうしてる間にも、客が10分毎に交代でEOSに試乗していく。最初こそ操作に戸惑っているようだが、すぐに要領を得て走ったり飛び跳ねたり、ペイント弾を装填したマシンガンで撃ち合ったりして楽しんでいた。

 

「やっぱり、事前に着替えてもらって正解だったね」

 

「だな。一応ペイント弾の中身は落ちやすいものにしてあるが、まさか服や顔面をカラフルに染めたまま残りの出し物を回るわけにもいかんだろうし」

 

「ここ以外だとすごぐシュールだけど」

 

 簪、それを言ったらおしまいだ。確かに全身撥水性抜群のピッチリスーツとか、EOSに乗ってなかったらヤバい人だが。

 ちなみに顔面にペイント弾が当たった時用に、ピットのシャワー室も使えるようにしてある。もちろん男女分けた上でな。使用比率? ざっと95:5だが何か?

 

「ウチの生徒も含め、女性客のほとんどは今頃1組に並んでるだろうしねぇ」

 

「うん。しかも学園の生徒で、EOSに興味ある人は少ない」

 

「普段から授業でISに乗ってるとなぁ」

 

 EOSはどう頑張っても、ISの下位互換だからな。今載せてるISコアも超劣化版だし。このコアすら載せてなかった従来版なんか、言うに及ばずだ。

 それでもEOSに乗ろうと思う生徒がいるとすれば、将来ISに乗れない諦めている負け組か、またはISパイロットのパイが極小だってことに気付いてる現実主義者か。

 

――ズブッ

 

「うごぉっ!?」

 

「陸、ぼーっとしてないで。お客さんが着替えた後のスーツ回収の仕事がある」

 

「わ、分かったから、脇腹に指をぶっ刺すのは止めてくれ。地味に痛いから」

 

 簪にも急かされたし、お仕事を始めるとしますか。あーめんどくせ。(心の本音)

 

 

 

 ピットに積まれた使用済みスーツをカートごとランドリーに持って行き、洗い終わったものをこれまたカートごとピットに戻すだけの簡単なお仕事――

 

「辛い……」

 

 洗濯自体は機械で自動な分楽だし、ピットとランドリーの往復も鍛錬の内にも入らない。

 けどよぉ……単調過ぎるんだ。正真正銘ただの人間だった頃、パン工場であんぱんにひたすら黒ゴマを付けるアルバイトをやった記憶が蘇りそうだ。うっ、頭が……!

 

「宮下くーん、休憩入っていいよー」

 

 声を掛けられ、おもむろに時間を確認。おぉぅ……3時間がこれほど長く感じたことがあろうか(反語)

 

「やっとかぁ……」

 

「陸、ずいぶん疲れてる?」

 

 列整理をしていた簪は首を傾げるが、マジで辛かった……

 

「そんなに?」

 

「パン工場であんぱんにひたすら黒ゴマを付けるバイトぐらい」

 

「うわぁ、それは辛いわ」

 

「???」

 

 他のクラスメイト達が『それは勘弁』みたいな反応をする中、簪だけが引き続き首を傾げる。そりゃ、更識家のご令嬢がパン工場で働くシーンなんかあるわけもない。共感は得られんだろう。というかむしろ、他の連中から共感を得られるとは思わんかったが。一応この学園、外部から見たらお嬢様校だろ。

 

「それなら、VRで体験出来るように――」

 

「堪忍してつかぁさい」

 

 なぜか簪に止められた。解せぬ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 (当然の如く簪も一緒に)休憩に入ると、さっそくある意味強制イベントが発生していた。

 

「ち、違うんです! 嬉しさのあまりちょっと暴走しただけでぇ!!」

 

 校門前で赤髪の青年を取り押さえる虚さんに遭遇したりとか。

 

「これは一体?」

 

「宮下君! 簪様も! 不審者を捕らえるのに協力を!」

 

「いや、怪しいものじゃないんだ。信じてくれ……」

 

 地面にうつ伏せ状態で上から虚さんにのしかかられている赤髪が、無事な腕で携帯端末を掲げる。知ってはいるが、念のため画面に映ったものを確認する。

 

「ん~……虚さん、こいつチケット持ってます」

 

「ええっ!?」

 

 驚いた虚さんが、慌てて俺と同じように画面を確認する。そこには学園生徒に1枚配布された、入場チケットの電子データが。

 それを認識した瞬間、シュバッと音が聞こえそうなほど高速で赤髪から飛び退いた。すげーアワアワしてる。

 

「す、すみません! てっきり学園に忍び込もうとする不審者かと!」

 

「いてて……いえ、こちらこそ、校門の前で大声上げてましたし……」

 

 話を聞くにこの男、校門前で『ついに、ついに! 女の園、IS学園へと……来たぁぁぁぁぁぁ!』と絶叫したところ、入場者のチケット確認係をしていた虚さんに不審者認定されたらしい。そりゃ不審者だわ。

 そして今更だが、こいつは一夏のダチである五反田弾。虚さんの彼氏になるかもしれない男だ。少なくとも前外史ではそうなったし、正史でもそうなるらしい。

 

「虚さん、お詫びにこの人に学内を案内するべき」

 

「え?」

 

「か、簪様!?」

 

「おっとぉ?」

 

 簪の突然の提案に、弾は目が点、虚さんが露骨に慌て出す。おいおい、あまりにも突拍子が無さすぎだろ。いやでも、ありっちゃありか?

 う~ん……乗るか。

 

「確かに、それなりに人通りのある校門前で、不審者扱いしちゃいましたからねぇ。この後も彼が変な目で見られないように、フォローは必要かと」

 

「み、宮下君まで……」

 

「ということなんだけど、貴方はどう?」

 

「お、俺?」

 

 突然話を振られた弾の目が泳ぐが、何か決心したかのように

 

「ご、御迷惑でなければ、お願いできますか?」

 

「!?///」

 

 虚さん、顔真っ赤になるの巻。すっげー分かりやす!

 

「は、はい……私でよければ……」

 

 そんなやり取りを経て、顔を赤くした1組の男女が校舎のある方へ歩いていくのだった。うへぇ、近年稀にみる甘ったるい展開。簪の方を向くと、にっこりと笑っていた。

 

「これで虚さんも、私達がイチャラブしてても文句を言えなくなった」

 

「お前なぁ……」

 

「陸は思わなかった?」

 

「……思った」

 

 いやだって、俺が簪や刀奈とイチャイチャしてるところに出くわす度、形容しがたい顔するんだもの。前外史と一緒の流れになったのと同じぐらい、虚さんが同じ穴の狢になって安心したわそりゃ。

 

 

 

 その後、休憩時間の被った刀奈のその話をしたところ

 

『そんな美味しい場面に、どうして私は参加出来なかったのよぉぉぉぉぉ!』

 

 案の定、仰向けになって手足をばたつかせて泣き出す17歳児になった。場所が生徒会室内で良かった……




人に甘えることを覚えた(覚えてしまった)更識家なんちゃって当主の図。
自分の中では、刀奈って距離が一定以下になるとお姉さん節を維持出来なくなる感じ。

虚さん、待望の春が来る。(秋だけど)
なお、妹の方にも来る模様。(次回以降)


次回は言うまでもなく一夏編を予定してます。
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