6/28追記:
デュノア社から盗まれたISが間違っていたのを修正。
感想でのご指摘サンキューです。
『みんな、先日の学園祭はお疲れ様~……』
「……」
『はぁ……まぁそうなるわよね~……』
学園祭の翌日、またもや全校集会が行われたわけだが、壇上の刀奈を含めて全員が微妙な顔をしていた。
理由は言うまでも無いだろう、俺と一夏のエキシビジョン中に起こった乱入事件だ。
『おそらくSHRで先生方にも説明されたと思いますが、昨日のエキシビジョン中に起こった内容については、箝口令が敷かれることとなりました。皆、間違っても学外で話しちゃダメよ? お姉さん、さすがに庇い切れないから』
「怖っ」
「なんで箝口令なんか……」
刀奈の言葉に、聞いてる生徒達は様々だ。外で口外した際のペナルティを恐れる者、箝口令が敷かれたこと自体に反感を持ってる者。ちなみに俺や簪は後者だ。
ちなみに観客席にいた一般客に対しては『あれは一種のサプライズ、ドッキリみたいなものですよ』と言ってるようだ。そんなの信じるはずない……と思いきや、普段からISを使ったテロなどは徹底的に情報操作されてる影響なのか、わりと簡単に信じたようだ。ウッソだろオイ……
というわけで、エキシビジョンで起こったことは全部演出として処理された。そう、
『なので、宮下君と織斑君の模擬戦中に公開された"あれ"も、表向きは『演出』ってことだからよろしくね~……』
もはや露骨に嫌な顔を隠さない刀奈に、壇下の俺達はどんな顔をすればいいのやら。
"あれ"、つまり倉持からの『要求』のことだ。連中、これ幸いにと自分達がやらかした証拠自体を『演出』で誤魔化しにかかってきやがった。しかも『ISが犯罪に使われたと知られるなんてとんでもない!』とか言い出す国際IS委員会どもがしゃしゃり出てきて、あっという間にKONOZAMAというわけだ。思わず舌打ちしたくな『チッ』おい刀奈っ! マイクに乗ってるってぇ!
『フランス政府も、もうちょっと頑張って欲しいもんだわ~……それじゃあ、全校集会はこれで終わり。みんなかいさ~ん』
『えっ、あ、ちょっと会長!?』
不機嫌さを前面に押し出しながら刀奈が壇上を降りると、そのまま講堂を出て行ってしまった。慌てて手を伸ばしたものの固まる虚さんが哀愁を誘う。
『えっと……それではこれで、全校集会を終わります……』
すっげーグダグダに終わった全校集会に、どうするか迷いつつもパラパラと生徒達が行動を後にしていく。俺も出ていこうとしたところで、チラッと教師陣を見た。エドワーズ先生を含め、大半は口元が引き攣っている。そして山田先生はあわあわと慌て、織斑先生は手で目を覆いながら天を仰いでいた。
「陸、戻ろ」
「おう」
簪に袖を引っ張られ、止めていた脚を再度動かし始めた。
ーーーーーーーーーーーーー
――コンコン
「宮下、話がゲホッ! ゲホッ!」
全校集会があった夜、宮下と更識の部屋のドアを開けたら、出迎えと言わんばかりの煙がやって来て噎せたんだが!?
「織斑先生?」
「あ~、煙が外に漏れるとマズいんで、さっさとドア閉めてください」
何が何だか分からんが、とにかく部屋の中に入ってドアを閉めた。そして宮下達の声がする方――煙の発生源――に向かっていくと
「……何をやってる?」
「何って、見ての通り焼肉ですが?」
「ガツガツムシャムシャ……!」
「お姉ちゃん、落ち着いて食べて」
「これが落ち着いてられるかー!」
床に敷かれたカーペットの上にローテーブルが置かれ、そのテーブルの上にはホットプレートと肉や野菜の盛られた皿と茶碗。それを宮下と更識姉妹の3人が囲んでいる。しかも更識妹の隣には、5合炊きぐらいの炊飯器まで。
確かに宮下の言う通り、一般的な焼肉風景だな。……ここがIS学園の学生寮でなければ。
「陸君! タン塩追加で!」
「自分で焼きなさいって。あと織斑先生が来てるんだが」
「だからなに!? 今日はお姉さん、誰が何を言おうとやけ食いするって決めてるのよっ!」
「……だそうなので、話は俺と簪で聞きますんで」
「あ、ああ……」
更識姉が宮下を下の名前で呼んでたことはスルーしておくか。……そもそも、3人同部屋にごり押ししてた時点で察してはいたが。
「それで、先生は何の用があってここに?」
「うむ……今朝の全校集会で、更識姉が荒れていただろう? だから様子を見に来たんだが……」
「まあ、見ての通りですね」
宮下の言う通り、見たままだな。せっかくの牛タン(ネギ塩付き)をカルビ(油たっぷり)で巻いて食べるなんて、正気の沙汰では無いだろう。
「あ~も~悔しい! あの『要求』の件を使って、倉持をボコるチャンスだったのにー!(ハラミをコーラで流し込む)」
「お姉ちゃんが手に入れた"証拠"でもダメだったもんね(タンは何も乗せずレモン派)」
「証拠?」
更識妹から出て来た単語に首を傾げると、宮下が携帯端末を寄こしてきた。
「楯無さんが手に入れた、倉持のやらかしの証拠ですよ」
渡された端末に映し出された内容を流し読む。……こ、これは!
「倉持技研と、女性権利団体の密談の内容……しかも、デュノア社から盗まれた研究用の陽炎を倉持が手に入れ、女権団に引き渡しただと!?」
しかもその盗品の陽炎で、臨海学校襲撃!? くそっ! あの襲撃は束が宮下を襲うために女権団を利用した、自作自演かとも思っていたが……
「なんてことだ……それで、これをフランス政府に?」
「出したんですが、倉持があっさり罪を認めまして」
「ほう?」
あの倉持なら、冤罪だ捏造だと騒ぎ立てると思っていたのだが。
「ですが、第2研究所の所長がトカゲの尻尾をして終わってしまいました」
「第2の所長?」
「レイモンドです」
「奴か……というか、あれが第2研究所の所長? ウッソだろオイ!?」
「いや、なんで弟の専用機作ってる企業のこと知らないんですか……」
やめろ宮下っ! そんな目で私を見るなぁ! わ、私だって、学年主任兼警備主任として色々やることが……ゴニョゴニョ
「というか、俺達より見に行かなきゃならん奴がいるんじゃないんですか?」
「織斑君、凹んでると思います。大人の汚い世界とか知らないチェリーボーイだから」
「簪、それ意味違う」
「ガツガツ……!(我関せずで白米3杯目突入)
「……そうだな」
確かに宮下や更識妹の言う通り、私が見るべき奴は他にいるか。
「邪魔をしたな」
スッと立ち上がり、部屋を出ようとしたところで思い出して振り向いた。
「更識姉」
「ふぁい?(口の中に白米を含みながら)」
「同じ女からの忠告だ。……肉より米の方が太るぞ」
「ごふっ!」
「うわっ! お姉ちゃん汚い!」
更識姉が米を吹き出すのを確認して、私は今度こそ部屋を後にした。
……昔私も、奴と同じように米をやけ食いして翌日後悔したからな……。
ーーーーーーーーーーーーー
「はぁ……」
夕食後、俺はベッドに寝転んで天井を見上げていた。
シャルが女だとカミングアウトしてから1人部屋になって、いつもの光景なはずなのに、今日はなぜか頭の中がモヤモヤしている。
「理由は、分かってるんだ……」
昨日の学園祭で行われたエキシビジョン、あれが原因だってことぐらいは。
「今の俺じゃ、陸には勝てない」
PICを止めるとかいう、
それ自体は仕方ない……とは言わないが、納得はしている。けど、問題は……
――コンコン
「はい?」
「一夏」
「千冬姉?」
部屋に入ってきた千冬姉は、いつもと同じスーツ姿で……
「……千冬姉、なんか臭うぞ?」
「デリカシー!(スパァンッ!)」
「いってぇ!」
「宮下達が肉を焼いてる場面に出くわしてな。そこで匂いが付いたんだろう」
「ソ、ソウデスカ……」
それならそうと、先に言ってくれよ……そしていつも持ち歩いてるんだな、その出席簿。
「はぁ……昨日色々あったから様子を見に来たんだが、ノンデリの弟には別にOHANASHIが必要か?」
「い、いえっ、結構です!」
すぐさまベッドから立ち上がり、直立不動で敬礼していた。いやだって、千冬姉のOHANASHIとか怖すぎ……
「それで、さっきまで天井の染みを数えてたのは」
「数えてない! ちょっと考えごとをしてただけだ!」
「ほう、考えごとか」
「……千冬姉、俺って世間知らずだな」
「今更か」
「ぐふっ!」
へ、返答に容赦がねぇ……
「今回の件で、色々見え方が変わったか?」
「……ああ。世の中の汚い部分、俺が見えてなかった……いや、違うか。『見ていなかった世界』を知った」
それと同時に、俺の中に色々な思いが今も渦巻いている。
俺や千冬姉、真耶さんを嵌めた倉持技研に対する怒り。その倉持に今まで苦しめられてきたであろう、陸達のことを気にしていなかった申し訳なさ。そもそもISのことを何も知らないのに専用機を渡されると言われた時、力を得たとした思わなかった、かつての自分自身への情けなさ。
「なぁ、千冬姉」
「何だ?」
「俺が、"こいつ"を持っているべきなのか?」
そう言って差し向けた左腕、
俺もまさか、こんなことを言うなんて思わなかった。
白式が悪いんじゃない。白式を
「今の俺に、白式は相応しくない」
「一夏……」
「白式だって迷惑だろ、自分を信用出来なくなった相棒なんて」
もしかしたら白式の方も、俺に愛想を尽かしかけてるかもな。『
「一夏」
「あ、ああ」
真剣な顔を俺に向ける千冬姉に、思わずどもる。
「お前が白式に相応しいかどうか、私には答えられないし、判断は出来ない」
「そう、だよな」
「だが、お前の気持ちは伝わった。だから、一夏」
ポンッと千冬姉の両手が俺の両肩に乗る。
「私と一緒に、日本人をやめよう!」
倉持の不正、有耶無耶にされる。
憎まれっ子世に憚る、とはまさにこのこと。
ちなみに裏設定として、トカゲの尻尾切りされたのはレイモンドの子飼いの部下(駒)で、レイモンドがやらかした時のために実家が用意したヤクザ崩れ(破門済み)。
皆さんお待ちかね焼肉回。
今作では刀奈がガツ食いしてます。ある意味一番苦労したからね、仕方ないね。
でも太る(確信
ちーちゃん、自由国籍に手を出す決意を固める。
原作でも倉持の所長がヒカルノ(同級生かつHENTAI)だと言及してない(知らない?)ことからも、その辺興味ないんでしょうね。
そしてこれ以上レイモンドと付き合いたくない(弟を巻き込みたくない)ことから、日本脱出を決意しています。
次回からキャノンボール・ファスト編、一夏の所属はどうなるのか? ご期待ください。
あっ、本編でカルビを網で焼いてない……