お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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学園祭編、今話で終了となります。

6/28追記:
デュノア社から盗まれたISが間違っていたのを修正。
感想でのご指摘サンキューです。


第43話 Dies irae ~怒りの日なる彼の日は、カルビを網で焼くべし、 ダヴィドとシビルとの告げし如く~

『みんな、先日の学園祭はお疲れ様~……』

 

「……」

 

『はぁ……まぁそうなるわよね~……』

 

 学園祭の翌日、またもや全校集会が行われたわけだが、壇上の刀奈を含めて全員が微妙な顔をしていた。

 理由は言うまでも無いだろう、俺と一夏のエキシビジョン中に起こった乱入事件だ。

 

『おそらくSHRで先生方にも説明されたと思いますが、昨日のエキシビジョン中に起こった内容については、箝口令が敷かれることとなりました。皆、間違っても学外で話しちゃダメよ? お姉さん、さすがに庇い切れないから』

「怖っ」

「なんで箝口令なんか……」

 

 刀奈の言葉に、聞いてる生徒達は様々だ。外で口外した際のペナルティを恐れる者、箝口令が敷かれたこと自体に反感を持ってる者。ちなみに俺や簪は後者だ。

 ちなみに観客席にいた一般客に対しては『あれは一種のサプライズ、ドッキリみたいなものですよ』と言ってるようだ。そんなの信じるはずない……と思いきや、普段からISを使ったテロなどは徹底的に情報操作されてる影響なのか、わりと簡単に信じたようだ。ウッソだろオイ……

 というわけで、エキシビジョンで起こったことは全部演出として処理された。そう、()()だ。

 

『なので、宮下君と織斑君の模擬戦中に公開された"あれ"も、表向きは『演出』ってことだからよろしくね~……』

 

 もはや露骨に嫌な顔を隠さない刀奈に、壇下の俺達はどんな顔をすればいいのやら。

 "あれ"、つまり倉持からの『要求』のことだ。連中、これ幸いにと自分達がやらかした証拠自体を『演出』で誤魔化しにかかってきやがった。しかも『ISが犯罪に使われたと知られるなんてとんでもない!』とか言い出す国際IS委員会どもがしゃしゃり出てきて、あっという間にKONOZAMAというわけだ。思わず舌打ちしたくな『チッ』おい刀奈っ! マイクに乗ってるってぇ!

 

『フランス政府も、もうちょっと頑張って欲しいもんだわ~……それじゃあ、全校集会はこれで終わり。みんなかいさ~ん』

 

『えっ、あ、ちょっと会長!?』

 

 不機嫌さを前面に押し出しながら刀奈が壇上を降りると、そのまま講堂を出て行ってしまった。慌てて手を伸ばしたものの固まる虚さんが哀愁を誘う。

 

『えっと……それではこれで、全校集会を終わります……』

 

 すっげーグダグダに終わった全校集会に、どうするか迷いつつもパラパラと生徒達が行動を後にしていく。俺も出ていこうとしたところで、チラッと教師陣を見た。エドワーズ先生を含め、大半は口元が引き攣っている。そして山田先生はあわあわと慌て、織斑先生は手で目を覆いながら天を仰いでいた。

 

「陸、戻ろ」

「おう」

 

 簪に袖を引っ張られ、止めていた脚を再度動かし始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

――コンコン

 

「宮下、話がゲホッ! ゲホッ!」

 

 全校集会があった夜、宮下と更識の部屋のドアを開けたら、出迎えと言わんばかりの煙がやって来て噎せたんだが!?

 

「織斑先生?」

 

「あ~、煙が外に漏れるとマズいんで、さっさとドア閉めてください」

 

 何が何だか分からんが、とにかく部屋の中に入ってドアを閉めた。そして宮下達の声がする方――煙の発生源――に向かっていくと

 

「……何をやってる?」

 

「何って、見ての通り焼肉ですが?」

 

「ガツガツムシャムシャ……!」

 

「お姉ちゃん、落ち着いて食べて」

 

「これが落ち着いてられるかー!」

 

 床に敷かれたカーペットの上にローテーブルが置かれ、そのテーブルの上にはホットプレートと肉や野菜の盛られた皿と茶碗。それを宮下と更識姉妹の3人が囲んでいる。しかも更識妹の隣には、5合炊きぐらいの炊飯器まで。

 確かに宮下の言う通り、一般的な焼肉風景だな。……ここがIS学園の学生寮でなければ。

 

「陸君! タン塩追加で!」

 

「自分で焼きなさいって。あと織斑先生が来てるんだが」

 

「だからなに!? 今日はお姉さん、誰が何を言おうとやけ食いするって決めてるのよっ!」

 

「……だそうなので、話は俺と簪で聞きますんで」

 

「あ、ああ……」

 

 更識姉が宮下を下の名前で呼んでたことはスルーしておくか。……そもそも、3人同部屋にごり押ししてた時点で察してはいたが。

 

「それで、先生は何の用があってここに?」

 

「うむ……今朝の全校集会で、更識姉が荒れていただろう? だから様子を見に来たんだが……」

 

「まあ、見ての通りですね」

 

 宮下の言う通り、見たままだな。せっかくの牛タン(ネギ塩付き)をカルビ(油たっぷり)で巻いて食べるなんて、正気の沙汰では無いだろう。

 

「あ~も~悔しい! あの『要求』の件を使って、倉持をボコるチャンスだったのにー!(ハラミをコーラで流し込む)」

 

「お姉ちゃんが手に入れた"証拠"でもダメだったもんね(タンは何も乗せずレモン派)」

 

「証拠?」

 

 更識妹から出て来た単語に首を傾げると、宮下が携帯端末を寄こしてきた。

 

「楯無さんが手に入れた、倉持のやらかしの証拠ですよ」

 

 渡された端末に映し出された内容を流し読む。……こ、これは!

 

「倉持技研と、女性権利団体の密談の内容……しかも、デュノア社から盗まれた研究用の陽炎を倉持が手に入れ、女権団に引き渡しただと!?」

 

 しかもその盗品の陽炎で、臨海学校襲撃!? くそっ! あの襲撃は束が宮下を襲うために女権団を利用した、自作自演かとも思っていたが……

 

「なんてことだ……それで、これをフランス政府に?」

 

「出したんですが、倉持があっさり罪を認めまして」

 

「ほう?」

 

 あの倉持なら、冤罪だ捏造だと騒ぎ立てると思っていたのだが。

 

「ですが、第2研究所の所長がトカゲの尻尾をして終わってしまいました」

 

「第2の所長?」

 

「レイモンドです」

 

「奴か……というか、あれが第2研究所の所長? ウッソだろオイ!?」

 

「いや、なんで弟の専用機作ってる企業のこと知らないんですか……」

 

 やめろ宮下っ! そんな目で私を見るなぁ! わ、私だって、学年主任兼警備主任として色々やることが……ゴニョゴニョ

 

「というか、俺達より見に行かなきゃならん奴がいるんじゃないんですか?」

 

「織斑君、凹んでると思います。大人の汚い世界とか知らないチェリーボーイだから」

 

「簪、それ意味違う」

 

「ガツガツ……!(我関せずで白米3杯目突入)

 

「……そうだな」

 

 確かに宮下や更識妹の言う通り、私が見るべき奴は他にいるか。

 

「邪魔をしたな」

 

 スッと立ち上がり、部屋を出ようとしたところで思い出して振り向いた。

 

「更識姉」

 

「ふぁい?(口の中に白米を含みながら)」

 

「同じ女からの忠告だ。……肉より米の方が太るぞ」

 

「ごふっ!」

 

「うわっ! お姉ちゃん汚い!」

 

 更識姉が米を吹き出すのを確認して、私は今度こそ部屋を後にした。

 ……昔私も、奴と同じように米をやけ食いして翌日後悔したからな……。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ……」

 

 夕食後、俺はベッドに寝転んで天井を見上げていた。

 シャルが女だとカミングアウトしてから1人部屋になって、いつもの光景なはずなのに、今日はなぜか頭の中がモヤモヤしている。

 

「理由は、分かってるんだ……」

 

 昨日の学園祭で行われたエキシビジョン、あれが原因だってことぐらいは。

 

「今の俺じゃ、陸には勝てない」

 

 PICを止めるとかいう、()()()を受けてもなお、俺の強さはあいつに届いていない。

 それ自体は仕方ない……とは言わないが、納得はしている。けど、問題は……

 

――コンコン

 

「はい?」

 

「一夏」

 

「千冬姉?」

 

 部屋に入ってきた千冬姉は、いつもと同じスーツ姿で……

 

「……千冬姉、なんか臭うぞ?」

 

「デリカシー!(スパァンッ!)」

 

「いってぇ!」

 

「宮下達が肉を焼いてる場面に出くわしてな。そこで匂いが付いたんだろう」

 

「ソ、ソウデスカ……」

 

 それならそうと、先に言ってくれよ……そしていつも持ち歩いてるんだな、その出席簿。

 

「はぁ……昨日色々あったから様子を見に来たんだが、ノンデリの弟には別にOHANASHIが必要か?」

 

「い、いえっ、結構です!」

 

 すぐさまベッドから立ち上がり、直立不動で敬礼していた。いやだって、千冬姉のOHANASHIとか怖すぎ……

 

「それで、さっきまで天井の染みを数えてたのは」

 

「数えてない! ちょっと考えごとをしてただけだ!」

 

「ほう、考えごとか」

 

「……千冬姉、俺って世間知らずだな」

 

「今更か」

 

「ぐふっ!」

 

 へ、返答に容赦がねぇ……

 

「今回の件で、色々見え方が変わったか?」

 

「……ああ。世の中の汚い部分、俺が見えてなかった……いや、違うか。『見ていなかった世界』を知った」

 

 それと同時に、俺の中に色々な思いが今も渦巻いている。

 俺や千冬姉、真耶さんを嵌めた倉持技研に対する怒り。その倉持に今まで苦しめられてきたであろう、陸達のことを気にしていなかった申し訳なさ。そもそもISのことを何も知らないのに専用機を渡されると言われた時、力を得たとした思わなかった、かつての自分自身への情けなさ。

 

「なぁ、千冬姉」

 

「何だ?」

 

 

「俺が、"こいつ"を持っているべきなのか?」

 

 

 そう言って差し向けた左腕、白銀の腕輪(待機状態の白式)を見た千冬姉がギョッとした目で俺を見る。

 俺もまさか、こんなことを言うなんて思わなかった。

 白式が悪いんじゃない。白式を()()()倉持技研が、そしてその倉持に疑念を持っちまった俺が。

 

「今の俺に、白式は相応しくない」

 

「一夏……」

 

「白式だって迷惑だろ、自分を信用出来なくなった相棒なんて」

 

 もしかしたら白式の方も、俺に愛想を尽かしかけてるかもな。『自分の世界(IS絡みの情勢)を何も知らないクソガキが』って。『ISには人格めいた何かがある』って真耶さんも授業で言ってた気がするし。

 

「一夏」

 

「あ、ああ」

 

 真剣な顔を俺に向ける千冬姉に、思わずどもる。

 

「お前が白式に相応しいかどうか、私には答えられないし、判断は出来ない」

 

「そう、だよな」

 

「だが、お前の気持ちは伝わった。だから、一夏」

 

 ポンッと千冬姉の両手が俺の両肩に乗る。

 

「私と一緒に、日本人をやめよう!」




倉持の不正、有耶無耶にされる。
憎まれっ子世に憚る、とはまさにこのこと。
ちなみに裏設定として、トカゲの尻尾切りされたのはレイモンドの子飼いの部下(駒)で、レイモンドがやらかした時のために実家が用意したヤクザ崩れ(破門済み)。

皆さんお待ちかね焼肉回。
今作では刀奈がガツ食いしてます。ある意味一番苦労したからね、仕方ないね。
でも太る(確信

ちーちゃん、自由国籍に手を出す決意を固める。
原作でも倉持の所長がヒカルノ(同級生かつHENTAI)だと言及してない(知らない?)ことからも、その辺興味ないんでしょうね。
そしてこれ以上レイモンドと付き合いたくない(弟を巻き込みたくない)ことから、日本脱出を決意しています。


次回からキャノンボール・ファスト編、一夏の所属はどうなるのか? ご期待ください。




あっ、本編でカルビを網で焼いてない……
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