お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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3月なのにまだ肌寒い。
現実でも鍋が恋しいし、本作でも更識家で鍋を囲む話を書きたい。(当分先


第5話 月光蝶である!

『速報です! 昨日未明、ISの男性操縦者が見つかりました!』

 

「もうそんな時期か」

 

「陸君だって、昨日入試受けたばかりでしょ?」

 

「そうだったそうだった。ちなみに簪、IS学園入試の手応えは?」

 

「バッチリ。あれで落ちるなら、今年の入学者は主席であろうオルコットさんしかいない」

 

3月に入り、如月重工での作業も無く簪達とのんびりしていたある日。運命のニュースがお茶の間に流れてきた。

今日の昼飯は、簪のリクエストでかき揚げうどんだ。こいつ、いっつもうどん食ってるな。

 

そうして呑気に飯を食ってたら、ドタドタと慌ただしい足音が。

 

「かんちゃんかんちゃ~ん! ニュースだよぉ! あっ、りったんとたっちゃんもいたんだ」

 

「おう」

 

やって来たのは簪の従者であり幼馴染の布仏本音、通称のほほんだった。そしてこいつ、この世界でも俺の呼び名は"りったん"なのな。

 

「本音ちゃん、あんまり騒がしいと虚に怒られるわよ」

 

「は~い。じゃなくてぇ! ISに乗れる男の子が見つかったって~!」

 

「うん、今もニュースになってる」

 

簪が行儀悪く箸でテレビ画面を指すと、その先を見たのほほんが振り回していた腕をガクンと落とした。

 

「もうニュースになってる~、せっかく急いで教えてあげようと思ったのに~」

 

『男性操縦者の名前は織斑一夏! あのモンド・グロッソ優勝者、織斑千冬の弟だそうです!』

 

「それもバラされた~!」

 

「落ち着いて本音ちゃん。飴いる?」

 

「いる~」

 

刀奈が飴玉をのほほんの口に放り込むと、すぐ静かになった。チョロい。

 

『また各国政府は会見を開き、同世代の男性全員を対象に、IS適性検査を行うと発表しました』

 

「織斑君、十中八九IS学園行き」

 

「そうだろうね~。まさかあのブリュンヒルデが、自分の弟を研究所送りにするとは思えないし~」

 

口の中で飴玉を転がしてたのほほんが、そこで気付いたように俺の方を見た。

 

「そうなると、りったんもIS適性検査を受けるんだよね? そうしたら、IS学園に強制入学かもね~」

 

現状、俺がISに乗れることを知ってるのは、更識一家4人と布仏姉妹だけだ。

今まで他にバラさなかったのは、単純に一夏の登場まで待ってたのもあるが、『宮下陸は更識家の関係者』って事実を作りたかったからだ。ぶっちゃけ、後ろ盾なしで倉持辺りに囲われたくない。

 

「そうなるしかないわね。お父さんも『もしISに乗れることが世間にバレたら、何とか研究所行きは阻止する』って常々言ってたし」

 

「ああ、言ってたな。確かに」

 

というか、それなら俺、昨日の試験まともに受けなくてよかったのでは? どうせ調査からの軟禁のち強制入学なんだし。

 

「となると、来年はかんちゃんも含めて3人でIS学園に入学だね~♪」

 

「だろうな。よしのほほん、IS学園に入学したら刀奈と簪のISをガッツリ改造しまくるぞ」

 

「合点承知の助~」

 

「ちょっとぉぉぉぉぉぉ!?」

 

「私も!?」

 

何を驚く簪よ。あたり前田のクラッカーではないか。

 

「まだ積むの……?」

 

だから、そのジト目は止めなさいって。前世から言ってるだろ。

 

「刀奈には、延期していた『ISスーツが脱げない光子対消滅反応魚雷(フォトン・トルピード)』を搭載予定だ」

 

「やっぱり載せる気だったのね……」

 

シナシナになる刀奈。当然、延期は中止では無いんでな。夏休みが終わってからずっと調整していたのだよ! きちんとISの装甲だけを消失させる、お利巧さん魚雷になってるぞ。

 

ーーーーーーーーー

 

お昼ご飯を食べ終えてから、なぜか私は如月重工の工場内にあるアリーナにいた。ISに乗った状態で。

 

「……で?」

 

「さっそくで悪いんだが、新武装のテストをする」

 

「ちょっと待って? 新武装?」

 

今私が乗ってるの、陽炎じゃないんだけど。

 

「おう。お前のレッド・スコルピオに載せてある」

 

「いつの間に!?」

 

「コア人格はノリノリだったぞ?」

 

「シャァァァリィィィィィ!!」

 

思わず、自分の専用機のコア人格、その内の片方に対して切れた。デュアルコアだから、いっそ片方取り除こうかな!?

 

『ええ~、すっごい面白そうな武装だよぉ?』

 

「そういう問題じゃない! ランディさん!?」

 

『すまねぇお嬢、止められなかった』

 

もう片方のコア人格、ランディさんが謝ってくれたけど、今度からせめて一声かけて欲しい。すごく心臓に悪い。

 

「はぁ……それで、一体どんな武装なの?」

 

「それはな……」

 

 

「月光蝶である!」

 

 

――スパァァァァン!

 

「おぶぁぁぁぁ!!」

 

特製ハリセン(手加減付き)を食らって、陸がアリーナの地面を転がっていった。

 

「いててて……」

 

「陸、さすがにそれはシャレにならない」

 

文明崩壊とか、本当にシャレにならない。具体的には、ニチアサの戦隊モノが放送できなくなって困る。

 

「大丈夫だ。試しに起動してみてくれよ」

 

「……」

 

「だからジト目はやめぃ」

 

こうなった陸は、梃子でも動かないって知ってる。だから私は自分の専用機――打鉄弐式時代より全体的に細身になった、真紅の機体――から武装を呼び出した。

 

「……あった」

 

===============================================

 

武装名:月光蝶(リミッター付き)

 

概要:シールドエネルギーを吸収するナノマシンを放出する(リミッターを解除すると、あらゆる物質を分解可能)

 

効果範囲:機体を中心に最大で半径100m(リミッター解除後は10km)

 

備考:吸収したエネルギーはナノマシン回収後、自機のシールドエネルギーに転換可能

 

===============================================

 

「うわぁ……」

 

ドン引きした。お姉ちゃんの光子対消滅反応魚雷(フォトン・トルピード)なんか目じゃなかった。

 

「そんじゃ、標的を出すぞ」

 

陸の合図とともに、アリーナの地面から的となる機体が現れた。

無人機? 違う、ただのカカシ。ちょっと有線でエネルギーシールドを展開できるだけの。

 

「月光蝶、起動」

 

陸みたいにギ○・ギ○ガ○ムのモノマネは出来ないから、淡々と武装名をコールした。

 

――ブワァァァァァ

 

効果はすぐに現れた。

レッド・スコルピオの背後から、虹色の膜状にナノマシンが大量に散布される。

 

『エネルギー、急激に低下。シールド、維持できません』

 

途端に標的から警告メッセージが流れ、薄緑色をしたシールドがナノマシンの浸食によってかき消されていった。

機体は……よかった、ちゃんと残ってる。

 

「成功だな」

 

「これ、ある意味『零落白夜』より凶悪だよ」

 

使い方……というか使ったが最後、絶対防御を確実に突破できちゃう。

 

「正直、クラス対抗戦で現れるであろう無人機ぐらいにしか使い道が無い」

 

「あ~……」

 

陸も納得したのか、視線が明後日の方向に。

 

「陸、どうしてこれを作ったの?」

 

「ロマン」

 

「……えい」

 

「ちょっ、おまっ! ISのマニピュレータで脇腹くすぐるとか、い、イヒヒヒヒッ!」

 

ロマンを追求するのもいいけど、それより私とのデートを増やしてほしかったなぁ。そーれコチョコチョ~。

 

ーーーーーーーーー

 

簪に笑い死に寸前まで追い込まれて数日後、俺は先日まで通っていた学校から呼び出しを受けていた。

この前ニュースでやってた通り、男子生徒を対象とした適性検査が行われることになった。で、今日がこの学校の番ってわけだ。

 

「IS適性検査ねぇ」

 

「2人目の男性操縦者なんて見つかりっこないって」

 

「でもでも、もし適性があったらIS学園行きだぞ? あの女の花園に!」

 

しょうもない馬鹿トークをしながら、そろぞろと会場となる体育館に入って行く男子生徒達。

で、体育館の中央に鎮座している打鉄に触っては、そのまま会場を後にしていく。

 

(前回は、孤児院の連中と一緒に施設に連れていかれたんだよなぁ)

 

そして屈強な黒服達に囲まれ、そのまま政府直轄施設まで強制連行、その後はIS学園入学まで軟禁と。嫌な事件だったね……

 

「次の人ー」

 

やる気の無さを隠していない係員(♀)に促され、打鉄の肩部装甲に手を触れた。

その瞬間、ブゥゥン……とIS起動時特有のノイズ音が聞こえてきた。

 

――皮膜装甲展開……完了

 

――推進機正常動作……確認

 

――近接ブレードおよび突撃銃……問題無し

 

――ハイパーセンサー最適化……完了

 

「え……」

 

係員の手から、ボールペンがポロッと床に落ちた。そして――

 

「「「う、動いたぁぁぁぁぁぁ!」」」

 

体育館中に大勢の絶叫が響き渡った。

それを後目に、俺はさっさと打鉄から手を離すと

 

「それじゃ、お先で~す!」

 

猛ダッシュで体育館から脱出しましたとも!!

 

「えっ、あ……」

 

「逃がすなぁ! 確保ぉ!」

 

その日、俺が如月重工の建屋に逃げ込むまで、黒服達との全力マラソンが開催されたのだった。

 

ーーーーーーーーー

 

『宮下さん、ぜひ取材を!』

 

『如月重工は大人しく、宮下陸を我々倉持技研に引き渡せ!』

 

『千冬様の弟君以外で男がISに乗るだなんて!』

 

 

「今日も今日とて、相変わらずだな」

 

「IS学園に入るまで、しばらくはこのまま」

 

「だね~」

 

如月重工に逃げ込んでからこっち、ずっとあたおかな奴等が連日ここを訪れていた。

不幸中の幸いなのは、ウチの両親が更識家に保護されてるところか。聞いた話、槍峻さんの手引きで静かな場所に匿われているらしい。

 

しばらくすると外が静かになり、刀奈が伸びをしながら休憩室に入ってきた。

 

「は~、毎日飽きもせずよく来るわね」

 

「お疲れさん。ほれ」

 

「ありがと♪」

 

俺から茶の入った紙コップを受け取ると、よほど喉が渇いていたのか、中身の8割方を一度に飲み切った。

 

「ぷはぁ、とりあえず外の連中は追い返したわ。記者とか女性権利団体とか、下手に武力鎮圧すると後がうるさいし」

 

「倉持も?」

 

「そっちは六角レンチで殴っておいた」

 

「わぁお」

 

「お姉ちゃん、グッジョブ」

 

ここにいる全員、倉持技研への殺意高ぇな~。俺もだけど。

 

「さて……陸君。今更だけど、貴方のIS学園行きが正式に決まったわ」

 

「ホント今更だな」

 

「まぁね。織斑君が学園行きな以上、陸君だけが別ってわけにもいかないし」

 

「これで今回も、織斑君にメメントモリを」

 

「簪ちゃん? 目的がすり替わってない?」

 

そうだぞ簪。それはサブミッションであって、メインミッションは別にあるからな。

 

「うん、大丈夫。ちゃんと当初の目的は覚えてる」

 

「そうよね。今回はあくまで実地研修――」

 

「私達の使命は、お姉ちゃんに歯向かおうなんて考える愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること───」

 

AMEN(エイメン)!」

 

「……簪、ちゃん?」

 

「ん、ちょっとしたジョーク」

 

「そっかぁ、ジョークかぁ」

 

簪のちょっとしたオチャメが強過ぎたのか、刀奈がアハハハと空笑いしながら白目を剥いてた。

 

2回目のIS学園かぁ。一度入学したら頻繁にはこっち(工場)に戻って来れないし、今のうちに未完成品とか拡張領域にぶち込んでおくか。

 

『マ、マスター、これ以上拡張領域にスペースは無いですよぉ……』

 

ソフィアー(コア人格)が半泣き状態だが、それで止まる俺じゃない。え~っと、確か火薬式パイルバンカー『菊花』の改良型が……あったあった。ほい、量子化。

 

『うわぁぁぁぁん! ア、アリエスの離宮(コア領域)にまで浸食してきたぁぁぁ!!』




ワンサマー、ニュースになる。
やっとです。

またしても何も知らない更識簪さん。
ドン引きしてるけど、フォトン・トルピードと大差ないからね?(おまいう

オリ主、IS学園に入る準備開始。
綺麗な庭園はその内、すごい汚部屋になるんだろうなぁ(遠い目


次回からIS学園入学編。箒やセシリアがオリ主とくっ付くことはないので、そこだけはご安心を。(一夏とゴールインするとは言ってない)
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