お前がブリュンヒルデになるんだよ!   作:シシカバブP

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汝、一切の整合性を捨てよ


第7話 代表決定戦を確認、介入行動を開始する

 寮の部屋に入ると、中の広さが5割増しで、その代わりと言わんばかりに机とベッドが1つずつ追加されていた。本当に3人部屋になってるよ……

 

「お姉ちゃん、アウト」

 

「ええっ!? どういうこと!?」

 

「ベッドは大きいの一つでいい」

 

「あっ、確かにそうね。失敗したぁ」

 

「おい」

 

 3人川の字で寝るの確定かよ。別に嫌じゃねぇけど。

 

「それにしても、まさか織斑君がねぇ」

 

「きっと、これから面白いことになる」

 

「簪ちゃん、すごいこと言うわね……」

 

「でも確かに、外野で見てる分には飽きないだろうな」

 

 一夏と山田先生、そしてハーレムの面々。一種の三角関係だもんな。男の方に自覚が全く無いけど。

 

「とりあえず初日が終わったわけだが、明日以降どうするかねぇ」

 

「私、希望がある」

 

「簪からなんて珍しいな」

 

「織斑君とオルコットさんの試合が見たい」

 

「ああ、そういえばそんなこともあったわね」

 

 俺も言われて思い出した。クラス代表を決める時に一夏とオルコットが揉めて、模擬戦で代表を決めることになったんだよな。さすが織斑先生、脳筋。

 

「前回は本音から結果を聞いただけだったから、今回は試合を見たい」

 

「う~ん、でもあれって、観戦できるの1組だけじゃなかったかしら」

 

「え~」

 

 簪ガッカリ。でもまあ、1組のクラス代表決める模擬戦を、他のクラスが観戦出来たらまずいか。情報収集的な意味で。

 でも、その辺結構緩そうなんだよなぁ、この学園。

 

「ダメもとで、明日エドワーズ先生に聞いてみるか」

 

「うん」

 

「それで、だ。一夏とオルコット、どっちがクラス代表だと都合がいいか」

 

「え?」

 

「どういうこと?」

 

 俺のセリフに、二人とも首を傾げた。

 前回はオルコットが勝ったものの、最終的に代表の座を一夏に譲っていた。今回もそうなるとは思うんだが……

 

「どうせなら、前回と違う流れにしてもいいかもと思ってな」

 

「でもそれをすると、篠ノ之博士が乱入して来ない?」

 

「あり得そう」

 

 まあ、刀奈の懸念もその通りなんだがな。どうせ今回も一夏の乗る『白式』は束が用意したもんだろうし、今後の出番を奪ったと判断されると絡まれること必至だ。けど――

 

「今の俺達にとって、束って危険か?」

 

「「……」」

 

 はい、この沈黙が答えだ。

 アームロックのある俺は当然として、刀奈も簪も、束"程度"の超人、怖くもなんとも無いんだよ。なにせ尸解仙、仙人なわけで、通常人類枠での超人と比較するまでもない。

 

「そう考えると、私達ってこの世界で何でもできそうねぇ」

 

「ん、銀行を襲う」

 

「おいバカやめろ」

 

 そんなスナオオカミみたいな事すんな。ってか簪お前、更識家の令嬢って肩書抜きにしても、如月重工のエンジニアとしてそれなりに給料もらってるだろ。

 

「でも私は、織斑君に1組の代表になって欲しい」

 

「ほう?」

 

「簪ちゃん、それは……」

 

「そしてクラス対抗戦で――」

 

 

「織斑君に山嵐を叩き込む(ボソッ」

 

 

「簪ちゃぁぁぁぁぁん!?」

 

 簪の闇の部分が漏れた。簪お前、そんなに一夏に山嵐ぶち込みたいのか……

 

「簪」

 

 若干黒いオーラが漂いそうな簪の肩をポンと叩く。

 

「陸?」

 

 

「どうせなら山嵐の改造を優先して、倍の96発いくか」

 

 

「りくくぅぅぅぅぅぅん!!」

 

「それいいね」

 

「もうダメ! どこからツッコめばいいか分からない!」

 

 ベッドの上で頭を抱えながらエビダンスする刀奈。何やってんだこいつ、割と可愛いけど。

 

 

 

 その後なんだかんだあって、今回は一夏が1組のクラス代表になれるよう介入することに決まった。

 

「……で、さっそくか」

 

「うん」

 

「当然よね」

 

 3つのベッドを悪魔合体させ、中央の俺をサンドイッチするように刀奈と簪が配置された。川の字スタイルってやつだ。

 はぁ……あれこれ言ったが、結局この状況が落ち着く俺も同じ穴の狢か。

 

「どう? って聞いても、更識の本邸でもこうだったわよね」

 

「うん。お姉ちゃん、陸に初めて抱き枕にされた時、鼻血で死にそうになってた」

 

「か、簪ちゃん!///」

 

 あったなぁ、そんなこと。『左右から陸君と簪ちゃんなんて、幸せ過ぎて死んじゃいそう~♪』とか言って、ホントに死にかけるなよ。

 

「あの時のお姉ちゃん、可愛かった」

 

「も、もう! 簪ちゃんってば!」

 

「「お姉ちゃん(刀奈)可愛い」」

 

「にゅあぁぁぁぁぁ!///」

 

 俺と簪のダブルパンチで、刀奈は綺麗にノックアウトされた。

 

ーーーーーーーーー

 

 翌日。今のところ俺達の想定通り話が進んでいることを、昼休みにのほほんが教えてくれた。

 

「それでね~、クラス代表を決めることになったんだけど」

 

 ダボダボの袖を振りながら、のほほんがその時のことを熱く語り始める。

 

 

 

 授業の途中、織斑先生がクラス代表の選出を口にしたのが始まりだったそうだ。

 自薦他薦問わないって話だったせいで、『一夏ならなんとかしてくれる』っていう無責任かつ身勝手な推薦が大量に出てきたらしい。

 んで、そこに待ったをかけたのが、現状1組唯一の代表候補生であるセシリア・オルコットだった。

 

『実力で言えば、代表候補生であるわたくしがクラス代表になるのが必然。それを物珍しいからという理由で男が選ばれるのはあり得ませんわ!』

 

 まあ、ここまでなら一理あるんだが、そこから先が色々アウトだった。

 

『大体、男がクラス代表なんていい恥晒しですわ! わたくしはこのような文化として後進的な島国までIS技術の修練に来ているのであって、極東の猿を相手にサーカスをする気は毛頭ありませんわ!』

 

 出るわ出るわの問題発言。候補生とはいえ、国家の代表がこんなこと言ったら国際問題待ったなしだろ。

 しかも、ここでさらに問題をややこしくした奴がいた。そう、我らが問題児、一夏だ。

 

『イギリスだって大して自慢できるものないだろ。料理が世界一まずいぐらいか?』

 

『あっ、あっ、あなたねぇ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?』

 

『最初に侮辱したのはお前だろ』

 

 売り言葉に買い言葉、それにブチ切れて机を叩いたのがオルコットだった。

 

――バンッ!

 

『決闘ですわ!』

 

 

 

「それで、来週月曜日の放課後、第3アリーナで試合をすることになったんだよ~」

 

「これは酷い」

 

「言うな簪」

 

 一夏とオルコット、マジで他所でやってくんない? 勝手に2人で日英戦争の火種を作んないでくれる?

 もし前回も同じような理由で試合ってたって言うなら、よくその後ハーレム入りしたよなオルコット。あれか、これがちょろインってやつか。

 

 と、そんなことを話していたら、当の本人がやって来た。

 

「陸……」

 

「なんて顔してんだよ」

 

「いや、実は……」

 

 一夏が言うには『色々あってISの試合をすることになったが、ほぼISの知識なしで動かしたのもつい最近。真っ当にやったら勝てる気がしない。けど千冬姉が見てるのに無様な戦いは出来ない。知恵を貸してくれ』と。

 

「う~んこの」

 

「む、無理か?」

 

「まず初めに、お前に知識は求めてない。無駄」

 

「ひでぇ!」

 

 知ってるよ、俺。一夏お前、入学前に渡された参考書、捨てちまったんだよな? ……バッカじゃねぇの!?

 

「というわけで、こうなったら本番まで実機を乗りまくって慣れるしかねぇだろ」

 

「そ、それはそうなんだけど、な」

 

「なんだよ」

 

「まっ、山田先生に聞いたら『すみません、訓練機の予約が来週までいっぱいで……』って……」

 

 こいつ、今『真耶さん』って言いそうになったな? もうダメだこの色ボケ……

 俺が途方に暮れそうになってると、なんと簪が助け舟を出してきた。

 

「それなら、なんとかなるかも」

 

「ほ、本当か!?」

 

「うん。放課後、第2アリーナに来て、用意しておく。陸、パターンC」

 

「C……ああ、そうこうことか」

 

「え~……2人だけ通じ合ってるのズル~い」

 

 のほほんが文句を言ってくるが、それは横に置いといて。

 

「第2アリーナだな? ありがとう! それじゃ放課後に!」

 

 さっきまでの青ざめた顔が消滅し、代わりに元気溌剌になった一夏は足早に食堂を出て行った。いやお前、飯はいいのか?

 

「織斑君、単純」

 

「だね~」

 

 否定はせんよ、否定は

 

ーーーーーーーーー

 

 放課後、言われた通り第2アリーナに行くと、そこには更識さんと陸の2人が待っていた。

 

「あの、更識さん?」

 

「何?」

 

「これって……IS、だよな?」

 

 俺の目の前には、真耶さんから借りられないと言われたばかりのISが鎮座していた。

 

「第2世代IS、陽炎」

 

「へぇ……いやいや、そのISが、どうして2機もここにあるんだ? 訓練機は全部予約されてるって」

 

 俺が聞くと、更識さんの隣で陸がニヤリと笑った。

 

「陽炎は如月重工製、つまり俺や簪の職場だ。こんなこともあろうかと都合しておいてもらった」

 

「ファッ!?」

 

 この2人、そんなこと出来る立場だったのか!? 俺と同じ、ただの学生だと思ってたのに……

 

「そんなことはいい。一夏、まず乗れ」

 

「えっ」

 

「いいから」

 

「お、おう」

 

 陸に急かされて、俺は2機あるうちの片方の陽炎に乗り込んだ。

 実機試験で乗った打鉄と違って、結構動きやすいんだな。といっても、試験の時は真耶さんが自爆して俺はあんまり動いてなかったんだが。

 

「動かせそうか?」

 

「あ、ああ。もっと動かしにくいと思ってた」

 

「陽炎は簡易最適化機能がある。専用機ほどじゃないけど、乗った人間の情報を元にパラメータを書き換える」

 

「へぇ」

 

 更識さんの説明は半分ぐらい分からなかったが、要はIS側が俺の動きに合わせてくれるってことか。

 感心してると、陸の方も陽炎に乗って、すでにIS用の刀を持っていた。

 お、俺も武器を……現在展開可能な武装一覧が出てきた。すげぇな、刀に槍、薙刀からメイスまであるのか。

 

「陽炎は武装のバリエーションが豊富でな。『空飛ぶ武器庫』なんて呼ばれてるラファールと、よく比較されるんだよ」

 

「そうなのか」

 

 陸の説明を聞きながら、俺も刀を展開した。

 

「今日のところはまず、ISに慣れるところからだな。かかってこい」

 

「いいのか? それならお言葉に甘えて!」

 

 陸に誘われるまま、俺は初めてのISを使った戦いを始めたのだった。

 

 

 

 

 ……そして、1時間と経たずにボコボコにされた。陸もISに乗る機会なんか無かったはずなのに、めちゃくちゃ戦い慣れてやがる……!

 

 今日のところは、本当にこれでお開きになった。明日以降もISを貸してくれるらしい。

 

「(陸、本気出し過ぎ)」

 

「(いやぁ、久々に刀同士で試合ったもんだから、のめり込んじまって)」

 

 2人の会話はよく聞こえなかったが、とにかくこれでISの練習が出来るな。陸と更識さんには感謝し足りないぜ。

 

 

 

「ISをいきなり学園の敷地内に持ち込むとか、何を考えているんだぁ……! しかも、どうしてこんな簡単に許可が下りるぅぅぅ!?」

 

 寮への帰り、保健室から呻き声が聞こえてきた。どことなく、千冬姉の声に似てたような……いや、気のせいだよな。千冬姉が保健室のお世話になる姿とか想像できないし!




ポンポンペイン、発動。(ニヤリ
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