次回から新章になる予定なので今章の締めに投稿します。
赤い方:まったり赤い方よ。
黄色い方:まったり黄色い方だぜ。
赤い方:黄色い方、今日はいつもと違うジャンルの料理を紹介するって聞いたわ。何を紹介するの?
黄色い方:そうだぜ。私たちは今まで様々なゲロまずい料理を紹介してきたぜ。羊の胃袋に臓物を詰め込んだハギスや、テムズ川の泥水とも揶揄されたウナギのゼリー寄せ、豚の血のソーセージことブラックプディング、協商連合が核兵器を持たない理由シュールストレミング、魚の頭がパイからこんにちはしているスターゲイジー・パイなどなど。これらをうぷ主はその貧弱な胃に収め、体を張って紹介してきたわけだが……今回のやつは、それら化物軍団が束になっても勝てないような、絶望だったらしいのぜ。
赤い方:え!? あの最低点数を叩きだした実質汚物と言われたウナギのゼリー寄せや、核汚染物質の方がまだマシと呼ばれたシュールストレミングを合わせても勝てないモノがまだあったの!? うぷ主の胃袋、もう限界突破してるんじゃないの?
黄色い方:ああ、あの実質汚物と核汚染物質以下よりもマズイものはないと完全に調子に乗っていたうぷ主は、見事撃沈したぜ。三日間寝込んだらしいからな。
赤い方:自業自得ね……。で、その恐ろしい料理って何なの?
黄色い方:さて、今日紹介するのは、終戦後、深刻な食糧不足で困窮していたライヒを、そして欧州全体を救ったと言われる奇跡のレーション。『完全栄養バー』こと、7号レーションのプロトタイプについて解説していくぜ。
赤い方:レーション? レーションって言うのは軍隊が戦場で食べる保存食のことよね? ゲームとか映画でもよく見るわ。
黄色い方:その認識で殆ど間違いはないぜ。ただ、このレーションという言葉の幅は結構広くて、軍の野戦食だけでなく、一般市民への配給食糧もレーションと呼ばれたりするんだぜ。
赤い方:そうなんだ。……というか黄色い方、レーションの解説なら、前回の動画の最後で「次は合衆国のDレーションを解説する」って言ってなかったかしら?
黄色い方:うぷ主曰く、Dレーションを取り寄せて食べてみたものの「思ったよりマズくなかったから動画の撮れ高にならない」という理由でボツにしたらしいぜ。で、もっとインパクトのあるゲテモノを探していたら、今回のこれを見つけてしまったらしいんだぜ。
赤い方:なるほど、再生数のために自ら地雷を踏みに行ったわけね。同情の余地もないわ。
黄色い方:では、気を取り直して、この7号レーションについて解説していきたいと思うぜ。
赤い方:よろしくお願いするわ。
黄色い方:まず、この7号レーションの開発がスタートした経緯は、統一暦1924年まで遡るぜ。この時、ライヒは南東のダキア公国を開戦から僅か1ヶ月程度で瞬殺し、あっという間に占領を完了させた頃だったんだぜ。
赤い方:1ヶ月で国が一つ落ちるって、ライヒの軍隊の強さが異常すぎるわね……。
黄色い方:だが、占領したはいいものの、ライヒ軍はダキア領内で深刻な問題に直面したんだぜ。というのも、旧ダキア公国軍がライヒとの開戦準備として、自国内で大規模かつ無計画な食糧の強制徴発を実施していたんだ。結果として、ライヒが占領した時には、現地のダキア市民の食糧がスッカラカンになっており、深刻な飢餓状態に陥っていたのぜ。
赤い方:自国の軍隊に食糧を奪われて飢えるなんて、ダキアの市民が可哀想すぎるわ……。
黄色い方:そこで、ダキアを占領したライヒは、放っておけば餓死者が山のように出る現地を救うため、逆にライヒ本国から大量の食糧をダキアへと流す結果となったんだぜ。この本末転倒な状況を見たライヒのある人物が、「ライヒの占領地や、ライヒ本国の恵まれない子供たちを飢えから救うための、安価で栄養価が高く、大量生産できる保存食」の開発を命じたんだ。
赤い方:なんて慈愛と人徳に満ちた素晴らしい人なの! 誰なの、その人は?
黄色い方:義務教育をちゃんと受けていれば歴史の教科書で必ず見る、ジーク・マイヤー・アンドシェル・フォン・ローゼフシルトだぜ。まあ、殆どの場合はジーク・マイヤー・ローゼフシルトと教わると思うぜ。
赤い方:ああ! あの有名人ね! さすがは歴史に名を残す人物、子供たちのために動くなんて立派だわ!
黄色い方:動機は極めて立派だったぜ。動機『は』な。……問題は、彼がその完全栄養食の開発を命令した先だったんだのぜ。
赤い方:えっ? どこに命令したの?
黄色い方:彼が所有する財閥の食品部門、『ローゼフシルト・フーズ』だぜ。
赤い方:……なんか、名前を聞いただけで胃酸がこみ上げてきそうな響きね。
黄色い方:赤い方の勘は鋭いぜ。このローゼフシルト・フーズという会社は、ライヒの軍事史において「最もライヒ軍人を苦しめた悪魔」と恐れられている企業だぜ。彼らが作る保存食は保存性・携帯性・エネルギー効率の点においては完璧な数値を叩き出すんだが、その代償として『味』が完全に壊滅しているんだぜ。兵士たちからは「レーションという名の拷問器具の製造工場」などという、数々の輝かしい悪評をもらっている企業だぜ。
赤い方:ひえっ……。保存性を極めるために、味覚を完全に捨てたのね……。
黄色い方:そのローゼフシルト・フーズのヤバさを際立たせる有名なエピソードとして、『戦時用紅茶』の話があるから、先に少しだけ紹介しておくぜ。
赤い方:ライヒの企業が紅茶を作ったの? コーヒーじゃなくて?
黄色い方:ああ。大戦争が始まり、南方大陸北方前線……いわゆる砂漠の戦線の初期の頃だぜ。ライヒの同盟国であったイルドア軍に、ローゼフシルト・フーズから大量の『戦時用紅茶』が支援物資として渡されたんだぜ。イルドアの参謀本部は、とりあえずこれを前線で戦う自軍の兵士たちに配ったんだが……これがあまりにもマズ過ぎて、前線から大ブーイングが起きたんだぜ。
赤い方:美味しいパスタとワインが好きなイルドア人に、マズいものを食わせたらそりゃ怒るわよ。
黄色い方:そもそも、パッケージには『紅茶』と書いてあるのに、中身には茶葉なんぞ欠片も使用されていなかったらしいからな。木屑と泥と謎の化合物の粉末だと言われていたぜ。
赤い方:偽装表示もいいところじゃない!!
黄色い方:その後、イルドア陣地を攻撃して彼らを蹴散らしたアルビオン軍の兵士たちが、イルドア軍の残していった物資の中に大量の『紅茶』を見つけて狂喜乱舞したんだぜ。紅茶には一家言あるアルビオン兵たちは、砂漠のオアシスを見つけたかのようにウキウキでお湯を沸かし、ティータイムを始めたんだ。
赤い方:あっ……(察し)
黄色い方:一口飲んだ瞬間、アルビオン兵たちはあまりのマズさに全員がその場に吐き出したぜ。「これはお茶に対する冒涜だ! 悪魔の泥水だ!」と激怒した彼らは、大量に余っていたそのローゼフシルト・フーズ製紅茶を、トゥブルクの港の海に全部投げ捨てたんだぜ。
赤い方:アルビオン人が紅茶を捨てるなんて、よっぽどのことよ!? まるで昔の某茶会事件みたいね……。
黄色い方:歴史家はこの事件を『トゥブルク茶会事件』と呼んでいるぜ。……なお、その数日後から、トゥブルク周辺の海域では、魚の不審死が多発してプカプカと大量に浮いてきたそうだぜ。
赤い方:毒じゃない!! 環境破壊兵器よそれ!!
黄色い方:一応言っておくが、ローゼフシルト・フーズの公式見解としては「人体に害のある物質は一切含まれていない」とされており、魚の不審死との関連性は未だに謎に包まれているぜ。
赤い方:関連性しかないわよ!! そんな恐ろしい会社に、子供たちを救う食べ物の開発を任せたの!?
黄色い方:そういうことだぜ。こうしてローゼフシルト・フーズの正気とは思えない開発陣によって生み出されたのが、戦後の深刻な食糧不足で困窮していたライヒや欧州の子供たちを救うこととなる『7号レーション』だぜ。これは今日におけるカロリーバーや、完全栄養食の始祖とも言える存在なんだぜ。
赤い方:結果的に欧州を救ったのは事実なのね……。で、今回解説する『プロトタイプ』っていうのは何なの?
黄色い方:今回の解説で言うプロトタイプとは、7号レーションが完成する前に設計され、仮の生産ラインが整えられて試験的に大量生産された試作品のことだぜ。プロトタイプは全部で5つあるんだが、第3号から第5号までは微調整の段階であまり語るべき面白エピソードがないんだ。だから今回は、あまりの被害の大きさに『原初の悪魔』と言われた「プロトタイプ1」と、『味蕾の破壊者』と呼ばれた「プロトタイプ2」の二つに絞って解説していくぜ。
赤い方:とても食べ物に付ける名前じゃないわね。気になるから聞かせてちょうだい。
黄色い方:まず最初は、プロトタイプ1。通称『原初の悪魔』についてだぜ。
このプロトタイプ1は、開発後に試験的な配給として、ライヒ軍の様々な部隊に送られたんだが、中でも有名な被害者が『帝国空軍第13教育航空隊』だぜ。
赤い方:航空隊の訓練生たちね。たくさん食べるお年頃じゃない。
黄色い方:ああ。だが、このプロトタイプ1が毎日のように食堂で出されたことで、部隊は地獄絵図と化したんだぜ。味は文字通り「虚無」。粘土とチョークの粉を混ぜて極限まで圧縮したような食感で、風味は全くない。これを三食出され続けた結果、隊員の半分はノイローゼとなり、ただの「長方形のレンガ」や「木片」を見ただけでプロトタイプ1を思い出して発狂するようになったらしいぜ。
赤い方:完全にPTSDを発症してるじゃない!!
黄色い方:さらに7号レーション全般に言える特徴として、「胃袋の中の水分を吸収して、限界まで膨らむ」というのがあるんだぜ。少しの量で満腹感を持たせ、少ない配給でも飢えを凌ぐためのローゼフシルト・フーズの親切心なんだが……。
赤い方:親切心(物理)。
黄色い方:隊員たちはこのプロトタイプ1を少しでも食べると胃がパンパンになり、たまに出されるまともな食事(肉やジャガイモ)すら食べられなくなってしまったんだ。その結果、神経がさらに衰弱していくという悪循環に陥ったぜ。
赤い方:拷問よ。完全な拷問だわ。
黄色い方:あまりのマズさと胃の圧迫感に耐えきれなくなった隊員の一人は、食堂の裏からこっそり「鳥にあげる用のナッツや種」を頂戴して飢えを凌ぎ、代わりに自分が支給されたプロトタイプ1を細かく砕いて鳥の餌箱に置いたんだぜ。
赤い方:野鳥に押し付けたのね。鳥さん、食べてくれたの?
黄色い方:ああ、鳥は味覚が人間ほど発達していないからな。バクバク食べたらしいぜ。……すると一週間後には、基地の周辺に丸々と太りすぎて、重力に逆らえず空を飛べなくなった鳥が大量発生して、地面をポテポテと歩き回るようになったそうだぜ。
赤い方:カロリーと栄養価だけは本当に凄いことの証明ね……。
黄色い方:このプロトタイプ1の悲劇は、軍隊内に思わぬ副産物ももたらしたんだぜ。「ここ(教育航空隊)を無事に卒業して前線に行けば、こんなクソみたいなプロトタイプ1を毎日食べなくて済む!」という事実を知った隊員たちの多くは、文字通り血眼になって猛勉強と訓練を開始したんだ。結果として、この時期の第13教育航空隊は、他のすべての教育隊を圧倒する過去最高の平均点と成績を叩き出したそうだぜ。
赤い方:スパルタ教育の究極系ね! 教育隊の教官は笑いが止まらなかったでしょうけど、生徒たちからしたらたまったものじゃないわ!
黄色い方:さて、このような数々の問題やノイローゼ患者が続出したことが明るみに出たほか、各部隊から「いい加減にしろ」という大量の意見書を叩きつけられたローゼフシルトは、ここで初めて重い腰を上げたんだぜ。
赤い方:やっと気づいたのね。
黄色い方:彼はローゼフシルト・フーズの開発陣を呼び出し、「いくらなんでも味が無さすぎる。もっと皆が喜んで食べられるように『味』をつけるよう改善しろ」と厳命したんだぜ。これを受けた開発陣のマッドサイエンティストたちは、日夜研究を重ね……ついに、後に『味蕾の破壊者』と呼ばれることとなる最凶のレーション「プロトタイプ2」を開発することとなるんだぜ。
赤い方:味蕾の破壊者……。味をつけたはずなのに、どうしてそんな物騒な名前になったのよ……。
黄色い方:完成したプロトタイプ2を受け取った第13教育航空隊の面々は、パッケージに「味付き」と書かれているのを見て、歓喜の涙を流したそうだぜ。「ついに虚無の味から解放された!」と、誰もが嬉しそうに思い思いにプロトタイプ2に齧りついたんだぜ。
赤い方:可哀想に……。死亡フラグビンビンじゃないの。
黄色い方:そして、彼らは絶望の深淵へと叩き落とされたぜ。……それは、人間の理解を超えた、あまりにも、あまりにもマズすぎる代物だったんだ。
赤い方:えっ、どれくらいマズかったの!?
黄色い方:一口齧ったある隊員は、白目を剥いてその場にバタンと倒れて気絶したぜ。またある隊員は、舌から伝わる致死量の味覚情報に脳が耐えきれず、自らの頭を地面に何度も何度も叩きつけて「頼む! 味の記憶を消してくれ!」と叫んだ。
赤い方:ホラーゲームの研究所の記録じゃないのよ!!
黄色い方:さらにある隊員は、「こんな味がこの世に存在するはずがない。俺の舌が狂って、幻覚を見せているんだ」と思い込み、サバイバルナイフを取り出して、自身の舌の表面にある味蕾を物理的にこそぎ落とそうとしたため、慌てて医務室に運ばれたぜ。これが『味蕾の破壊者』という二つ名の由来なのぜ。
赤い方:それ本当にたべもの!! 一口食べただけで人間を狂人にする兵器じゃない!!
黄色い方:もはやこの味に絶望しすぎたある隊員は、夜中に荷物をまとめてそのまま基地の敷地から脱走したぜ。極めつけは、ある隊員が、三日前の雨で出来て、すでに蚊の幼虫がウジャウジャ泳いでいる泥水たまりに顔を突っ込み、そのボウフラ入りの泥水で必死に口を漱いで「ああ、泥水が甘露のように美味い……!」と泣き崩れたというエピソードがあるぜ。
赤い方:うげぇぇぇっ!! どんだけマズイのよ!! 泥水とボウフラがオアシスに見えるって、どんな味覚の暴力なの!?
黄色い方:このプロトタイプ2がもたらしたまずさの悲劇は、ただの訓練基地だけでは終わらなかったんだぜ。噂は瞬く間に広がり、ついにライヒ軍政の中心である参謀本部のトップたちの耳にも届いたんだ。
赤い方:偉い人たちまで巻き込まれたの!?
黄色い方:ああ。参謀本部の実質的トップであったゼートゥーア将軍とルーデルドルフ将軍が、その異常な不評に興味を持ち、わざわざ取り寄せさせて口にしたんだぜ。
まず、非常に紳士的で冷静沈着なゼートゥーア将軍は、上品に一口だけ齧った。だが、口に入れた瞬間に全てを悟り、表情をピクリとも変えずに、そのまま咀嚼することなくゴミ箱に「ペッ」と吐き出したそうだぜ。
赤い方:あの将軍が、飲み込むことすら拒否したのね。
黄色い方:一方の豪傑、ルーデルドルフ将軍は、バクッと一口大きく齧ってしまったんだ。その瞬間、彼の顔色は紫に変わり、まずさに耐えかねて自らの拳で執務室の窓ガラスをフルスイングでかち割ったんだぜ。そして、割れたガラスで切れた己の拳の傷から吹き出す血をベロベロと舐め回し、「鉄の味だ……血の鉄分で、あの狂った味覚を上書きしなければ、私の脳が破壊される……!」と呟いたそうだ。
赤い方:窓ガラス割って自分の血を飲む将軍って、傍から見たら完全にホラー映画のモンスターじゃないの!!
黄色い方:このあまりのまずさに激しく腹を立てた二人の将軍は、「これを開発させた元凶に責任を取らせる」と、当時ルーシー連邦の前線で極寒の戦いを指揮していたローゼフシルトのもとへ、このプロトタイプ2を大量に送り付けたんだぜ。
赤い方:最高の嫌がらせね! ざまあみろだわ!
黄色い方:前線の司令部に突然届いた謎の補給物資。送り付けられたローゼフシルトは、ガデーリアン将軍と共に、それを口にすることになったぜ。
赤い方:あの有名人、二人が……!
黄色い方:ガデーリアン将軍は一口食べた瞬間、顔をくしゃくしゃにして即座に吐き出したぜ。そして、近くにあった粉末状のインスタントコーヒーの粉をそのまま口の中に大量に突っ込み、その上から沸騰したばかりの熱湯を直接口の中に流し込んで、グチュグチュと口内情勢を中和しようとしたぜ。
赤い方:熱湯!? 口の中がズタボロになるわよ!?
黄色い方:なお、その後ガデーリアン将軍の口内は重度の火傷を負い、数日間まともに喋れなくなったそうだが、後日、彼は「口内を火傷で焼き尽くす痛みのほうが、あの味の記憶が残るよりは一万倍マシだった」と真顔で語っているぜ。
赤い方:どんだけトラウマ級の味なのよ……。
黄色い方:そして、肝心のローゼフシルトだ。彼はガデーリアン将軍の熱湯中和という醜態をゲラゲラと笑いながら、自らもプロトタイプ2を一口齧った。……その瞬間、彼の顔からスッと全ての表情が消え失せたそうだ。
赤い方:ついに、諸悪の根源に天罰が下ったわね。
黄色い方:ローゼフシルトは完全に無言のまま、司令部のティーセットに置いてあった角砂糖を一掴みむんずと掴むと、一気に口内に放り込んでバリバリと噛み砕き始めた。その後、極寒のルーシーの平原に設置された司令部テントからは、しばらくの間、二人の将軍の身の毛もよだつ絶叫が木霊し続けたというぜ。
赤い方:自業自得とはいえ、絵面が地獄すぎるわ。
黄色い方:プロトタイプ2に関して、口にした多くの人が「これは人の食べるものではない!」「食用の形をしたサボタージュだ!」と怒り狂って言っているぜ。ちなみに、他の有名な将軍たちの反応も記録に残っているぞ。
ライヒ屈指の頭脳と呼ばれるモンシュタイン将軍は、一口食べて静かに置き、「……これは、我が軍の胃袋に対する全面的な包囲網である。速やかな戦略的撤退を要する味だ」と評価したぜ。
赤い方:なんか頭のよさそうでよくない言い回しで食べるのを拒否したわね。
黄色い方:さらに、砂漠の狐と呼ばれることになるロメール将軍は、「我が軍の補給線が完全に途絶え、三週間水と砂しか口にできない状況になったとしても、私はこれを食べることはないだろう」と断言したそうだぜ。
赤い方:餓死を選ばせるレーションって、もう兵器として敵陣に投下した方が強いんじゃないかしら。
黄色い方:これほどまでの被害を出したプロトタイプ2。このまずさがよほど身に堪えたのか、ルーシーの戦線から帰還したローゼフシルトは、真っ先に自社の工場の開発陣のもとへ乗り込んだぜ。そして、言い訳をする開発陣たちの口の中に、プロトタイプ2を物理的に直接ぶち込み、彼らを危うく窒息死させかけたそうだぜ。
赤い方:ローゼフシルトも激怒したのね。
黄色い方:自らの生み出した悪魔の味を直接叩き込まれた開発陣は、涙とゲロを撒き散らしながら猛省し、これ以降は「人間が食べられるまともな味」になるよう、血の滲むような精進をすることになるんだぜ。それがのちの奇跡の7号レーション完成へと繋がるわけだ。
赤い方:なるほど……。犠牲は大きかったけど、開発陣が改心したなら良かったわね。
黄色い方:いや、問題が一つあったんだぜ。プロトタイプ2は、すでに生産ラインをフル稼働させてしまった『後』であり、工場の倉庫には何十万本という大量の在庫が山積みにされていたんだ。
赤い方:うわぁ……。そんな産業廃棄物、どうしたの?
黄色い方:捨てるのは勿体ないということで、ライヒ軍はこれをアルビオン兵の捕虜が収容されている捕虜収容所の食事として試しに出してみたんだぜ。
赤い方:捕虜に毒殺刑!?
黄色い方:だが、マズイ飯には慣れているはずのあのアルビオン人でさえ、このプロトタイプ2のまずさには堪え切れなかったらしい。アルビオン捕虜の代表は、涙を流しながら収容所の所長の元へ行き、「我々は敗者だが、条約で定められた人道的な扱いを受ける権利がある! この固形物を食わせることは、明確な『捕虜虐待』である!」と怒りの直談判を行ったんだのぜ。
赤い方:アルビオン人に食事がマズいとキレられるライヒ……歴史的屈辱ね。
黄色い方:アルビオン捕虜にすら拒否された在庫だが、戦中の物資不足で発揮される勿体ない精神により、これらは前線から後方へとたらいまわしにされ、最後にルーシー人捕虜の元に辿り着いたんだぜ。
赤い方:ルーシー人……。彼らは大丈夫だったの?
黄色い方:それがな。ルーシー人捕虜たちは、極寒の環境で配給されたウォッカと一緒に、このプロトタイプ2をガリガリと噛み砕きながら流し込んだんだ。すると彼らは、「このレーションの地獄のようなまずさが、ウォッカの甘さと美味さを最高に引き立ててくれる! 素晴らしい肴だ!」と大絶賛したというんだのぜ。
赤い方:……ルーシー人の味覚と胃袋、一体どうなってるのよ。ウォッカの力って恐ろしいわね。
黄色い方:ということで、プロトタイプ1と2の歴史的悲劇については以上だぜ。
ちなみに、このプロトタイプ1とプロトタイプ2は、その伝説的なマズさから、現代でも半ばジョークグッズや罰ゲーム用として当時のレシピのまま少数生産されているんだぜ。欧州の動画投稿者は、よくこれを食べる『7号レーション・プロトタイプチャレンジ』という動画を撮って、再生数を稼いでいるそうだぞ。
赤い方:ああ……それで、うぷ主もそれに手を出したわけね。
黄色い方:そうだぜ。うぷ主の食べた感想を代読するぜ。
『プロトタイプ1は、虚無。段ボールを圧縮して食べている気分だった。……しかし、問題はプロトタイプ2だ。一口噛み砕いた瞬間、前世で犯したあらゆる罪が走馬灯のように脳内を駆け巡り、口の中が科学的・物理的・精神的な痛みに支配された。地獄があるとしたらそこの食事はこのような味だろう。気がついたら病院のベッドの上で、三日間意識が飛んでいた。あれは食べ物じゃない。呪いだ。シュールストレミングが天使のスープに思える。二度と買わない』……だそうだぜ。
赤い方:……皆さんも、欧州旅行のお土産で怪しいレーションを見つけても、絶対に買わないように気をつけてね。うぷ主みたいに胃腸科と精神科のお世話になるわよ。
黄色い方:というわけで、今回はライヒを、欧州を救った7号レーションの裏に隠された、恐怖のプロトタイプについての解説だったぜ。面白かったらチャンネル登録、高評価よろしくたのむのぜ。
赤い方:また次回のまったりゲロまず料理解説でお会いしましょう。それじゃあ……
二人:サラダバー
赤い方
黄色い方
↑文字数が合わなくて気持ち悪い。
まあ、これも元ネタを忠実に再現している証というわけで。