《統一暦1928年4月下旬 東部戦線ヴォロネジ周辺》
大戦争のこの時期、ルーシーの大地において、ヴォロネジという都市は、単なる地方の一拠点ではない。
帝国の戦線と連邦の中枢を繋ぐ、戦略的価値の極めて高い結節点である。ドン川の東岸に位置し、連邦の臨時首都であるカイベジェフから直通の鉄道路線と太い補給線が通っている。
もし帝国がここを恒久的に確保すれば、モスコーの中央から南翼にかけての前線を安定化させることが出来る。逆に連邦が確保し続ければ、帝国の東部戦線南翼にいつでも巨大な圧力を掛けられる絶好の突出部となり、前年のような帝国のカフカース資源地帯に対する攻勢を予防する強固な楔となるのだ。
それゆえに、この都市を巡る両軍の執念は、泥沼の血みどろの様相を呈していた。
時計の針を半年前、統一暦1927年の末に巻き戻す。
連邦赤軍が発動した大規模反攻ウラヌス作戦の一環として、帝国の占領下(当時)にあったこのヴォロネジ方面でも、赤軍の猛烈な攻勢が行われた。しかし、この時は現地を守備する帝国の精鋭部隊の頑強な抵抗と、モスコー方面に展開している帝国中央軍集団からの強烈な側圧もあり、赤軍の攻勢は完全に弾き返されることとなった。
これを、後世の戦史家は『第一次ヴォロネジの戦い』と呼ぶ。
そして、年が明けた統一暦1928年3月。
帝国三代皇帝、ヴィルヘルト二世崩御の知らせが世界を駆け巡ったまさにその直後。連邦赤軍は、帝国軍の動揺を突くように、東部戦線全域において一斉に攻勢の火蓋を切った。スタフカにとっては、春季の雪解け前の「ジャブ」のつもりであったが、その中で最も重要視され、最大の戦力が投入されたのが、やはりこのヴォロネジであった。
赤軍は、ヴォロネジ方面軍と南西方面軍を合わせた三十万人という大軍を投入。対する現地守備の帝国軍は、わずか『八万人』。
そしてこの時、赤軍の先陣を切って雪原に地響きを轟かせたのは、あの帝国のバケモノ戦車(ティーゲルやリンドヴルム)に対抗するため、開戦以来血の滲むような開発が続けられていた連邦の新たなる赤い巨獣であった。
=================================
【ルーシー連邦赤軍 新型重戦車『IS-3』性能諸元表】
(※統一暦1928年1月より量産開始)
・全備重量:約 46 t
・主砲:43口径 122mm 戦車砲(D-25T)
・装甲(車体前面):110 mm ~ 120 mm(極端な避弾経始『楔形装甲(パイクノーズ)』の採用により、正面からの実質装甲厚は200 mm以上に達する)
・砲塔装甲:最大 200 mm(鋳造のお椀型砲塔)
・発動機:V型12気筒 液冷ディーゼルエンジン(600馬力)
・最大速度:40 km/h (整地)
・乗員:4名
【開発思想と特徴】
帝国のハインツやティーゲル、リンドヴルム等から鹵獲・観察した「避弾経始」の概念を、当時の連邦の冶金技術と設計思想で極限まで煮詰めた重戦車。車体前面の装甲板を船の舳先のように尖らせた『楔形装甲』を採用し、帝国軍の長砲身75mm砲や88mm砲の直撃を物理的に「滑らせて弾く」ことに特化している。
搭載する122mm砲は、帝国の重装甲を粉砕するための巨大な破壊力を持つが、分離装薬式であるため発射速度が極端に遅く、車内の居住性も劣悪を極める。
=================================
この分厚い装甲と巨大な大砲を持つIS-3の群れが、三十万の歩兵とともに押し寄せてきたのである。
戦力差は圧倒的。スタフカの将軍たちは、「いかに帝国の精鋭とはいえ、この戦力差とIS-3の突破力の前には勝つ見込みはない」と祝杯の準備を始めていた。
だが、そこには帝国が誇る機動防御の天才――エーリッヒ・フォン・モンシュタイン元帥がいた。
そして、彼の手元には、もう一つ厄介すぎる部隊が存在したのだ。
サラマンダー戦闘群である。
この『第二次ヴォロネジの戦い』の最中、戦闘群の指揮官たるターニャ・フォン・デグレチャフ准将は、前皇帝の国葬と新皇帝の即位式に参列するため帝都ベルンへと呼び戻されており、前線には不在であった。
だが、指揮官不在であっても、モンシュタインにとってその機甲戦力は十分すぎるほどの「必殺の刃」であった。
赤軍は圧倒的な数に物を言わせ、戦線全域で猛烈な攻勢を行い、帝国軍を疲弊させてヴォロネジを陥落させようと企てた。
これに対するモンシュタインの采配は、まさに芸術的であった。
彼は、ルーシーの広大な平原の十分な縦深を活かし、あえて前線をジリジリと後退させた。赤軍主力であるヴォロネジ方面軍を構成する二つの戦車軍に「勝っている」と錯覚させ、補給線が伸び切る限界点まで深く、深く自軍の懐へと誘い込んだのである。
そして、赤軍の攻勢の勢いが頂点に達し、息切れを起こしかけたまさにその瞬間。
後に『後手からの一撃』と世界戦史に刻まれることとなる、帝国軍の凄絶な反転攻勢が発動した。
突出した赤軍の側面に回り込んでいたのは、エリザーベト少佐が指揮を代行するサラマンダー戦闘群を中心とした、帝国の重装甲部隊であった。
リンドヴルムの120mm砲が火を噴く。いかにIS-3が分厚い楔形装甲を持とうとも、側面に回り込まれればその防御力は半減する。さらに、発射速度の極端に遅い連邦の122mm砲に対し、自動計算システムと安定装置を備えたリンドヴルムは、走りながら次々と徹甲弾の雨を浴びせかけた。
側面を食い破られ、包囲殲滅の危機に陥った赤軍の戦車軍は、多大な出血を強いられながらパニック状態に陥って撤退。モンシュタインとサラマンダー戦闘群は、見事にヴォロネジの守備に成功し、赤軍の春のジャブをへし折ったのである。
◇
そして、雪解けの泥濘(ラスプーチツァ)が固まり始めた、4月の下旬。
帝国南方軍集団の司令部作戦室。
「……偵察機および情報部からの報告によると、ヴォロネジの前面、カリニンスクとペンザの方面に、再び赤軍の途方もない大部隊が集結を開始しているとのことです」
参謀が、壁に広げられた巨大な作戦図に、不気味な赤いピンを次々と突き刺しながら報告した。
「これほどの規模……春のジャブなどとは比較になりません。間違いなく、彼らは本気でこの東部戦線南翼をへし折るつもりです。……決戦の時が来ました、閣下」
南方軍集団司令官、モンシュタイン元帥は、腕を組みながら作戦図を鋭い眼光で睨みつけた。
その傍らには、帝都での用事を終え、ようやく前線へと戻ってきたターニャ・フォン・デグレチャフ准将の姿があった。
「決戦、か。よかろう」
モンシュタインは葉巻を取り出し、自信に満ちた声で口を開いた。
「連邦は学習能力が足りんようだな。先月の第二次ヴォロネジの際に見せた戦術を、さらなる大規模で展開する。我々の持ち得る限りの機甲戦力を持って、再び突出してきた赤軍主力を包囲撃滅し、連邦の野戦軍に再起不能の打撃を与える」
モンシュタインの提示した作戦は、戦術的に極めて美しく、かつ確実性の高いものであった。敵の主攻をあえて受け流し、両翼から装甲の鋏で切断する。とある世界において彼に相当する人物が第三次ハリコフ攻防戦で見せた、軍事芸術の極致である。
参謀たちが「流石は元帥閣下」と納得の表情を浮かべる中、ただ一人、小さな准将だけが静かに異議を申し立てた。
「……お待ちください、モンシュタイン元帥閣下。その作戦には、異議があります」
「ほう?」
モンシュタインは興味深そうにターニャを見下ろした。
「白銀の准将殿が、私の作戦にケチをつけるか。よかろう、言ってみたまえ」
「ケチなどという恐れ多いものではありません。ただ、計算が合わないのです。……我々がどれだけ戦術的な包囲撃滅を繰り返し、戦車を何千両スクラップにしたところで、あの連邦の『畑から人間と戦車が湧き出してくる』ような無尽蔵の生産力と動員力の前には、いずれ我が方の人的資源と装甲がジリ貧になってすり潰されます」
ターニャは作戦図の前に歩み寄り、指揮棒でヴォロネジのさらに東、長大な大河のラインを指し示した。
「我々に必要なのは、戦術的な勝利ではなく、南翼に展開する赤軍そのものを物理的かつ戦略的に『機能不全』に陥らせる一撃です」
「機能不全、だと?」
「はい。私の提案する作戦は――赤軍の意識が攻勢とともにこのヴォロネジに向かっているその隙に、我が軍の機甲主力を南東へ向けて放ち、ミハイロフカから大河沿いの重要都市『サラトフ』までを一気に打通することです」
ターニャが指揮棒で作戦図に引いた線に、参謀たちが息を呑んだ。
「なっ……正気ですか、准将! そのような長距離の電撃戦を行えば、我が軍の側面が数百キロにわたって無防備に伸びきってしまいますぞ!」
「その通りだ。伸び切った横腹を赤軍に突かれれば、今度はこちらが包囲殲滅の憂き目に遭う」
モンシュタインもまた、眉を顰めて指摘した。だが、ターニャは不敵な笑みを浮かべた。
「ご安心を。伸び切る側面のすぐ横には、世界有数の大河であるヴォルガ川が流れております」
ターニャは指揮棒で、サラトフを貫く青い太線を叩いた。
「ヴォルガ川の架橋を落としながら前進すれば、大河そのものが我が軍の強固な側面の盾となります。赤軍が反攻しようにも、あれほどの川幅で大規模な渡河作戦を行うには莫大な準備が必要であり、我々の偵察網で容易に察知可能です。
そして、このミハイロフカ〜サラトフ線を打通し、ヴォルガ川の交通を完全に遮断すればどうなるか? ……南方に展開している赤軍の大部隊は、兵站線を絶たれて半ば孤立状態に陥ります。さらに、ヴォロネジを攻略中の赤軍部隊と、後方の臨時首都カイベジェフを結ぶ唯一の主要街道も遮断される。
そうなれば、彼らは弾薬も食料も届かないまま、雪原で自滅するのを待つのみ。赤軍全体に、回復不能の大打撃を与えることができます」
作戦室が静まり返った。
それは、モンシュタインの堅実な戦術的勝利を遥かに超える、一歩間違えれば国家が崩壊するが、成功すれば戦争の帰趨すら決しかねない、極めてギャンブル性の高い戦略的包囲案であった。
「……見事な戦略図だ。だが、問題はどうやって敵の主力をヴォロネジに引き付け、我々のサラトフ打通への警戒を逸らすかだ」
モンシュタインの問いに、ターニャはまるで悪魔のような笑みを深めた。
「大規模な欺瞞作戦を実施します。先月のヴォロネジでの戦いの際、我々はヴォロネジからアンナまで迂回して側面を攻撃し、敵の攻勢を頓挫させました。連邦の将軍たちは、今回も帝国軍が同じようにリペツクを含む両翼からの迂回包囲を狙っている可能性が最も高いと考えているはずです。
我々もそのように振る舞い、偽の部隊配置と偽の無線交信を垂れ流し、赤軍に『帝国はヴォロネジ周辺での決戦を望んでいる』という情報を掴ませるのです」
「言うは易しだが……そんな都合の良い偽情報を、猜疑心の塊であるスタフカにどうやって信じ込ませるというのだ?」
参謀長が呆れたように問うと、ターニャは肩を竦めた。
「我々には、その手の大掛かりな欺瞞とペテンのスペシャリストたる師が、目の前にいるではありませんか」
「あ……」
その言葉に、参謀たち、そしてモンシュタインでさえも、「ああ、なるほど。連邦か……」と、極めて嫌そうな、しかし絶対的な納得の表情を浮かべた。
こちら側には同じ人種の帝政ルーシー義勇軍もいる、連邦のマスキロフカを真似れば、赤軍の最高指導部を騙すことも可能だろう。
「赤軍の物まねをしろというわけか……よかろう。デグレチャフ准将、貴官の作戦案を採用する」
モンシュタインは口元に獰猛な笑みを浮かべ、作戦図に新たな矢印を書き込もうとした。
まさに、その時である。
作戦室の重い扉が開き、通信将校が青ざめた顔で駆け込んできた。
「も、申し訳ありません! 帝都のOKW(帝国軍最高司令部)より、至急の最優先暗号電文が届きました!」
「OKWから? ルーデルドルフ元帥か、ゼートゥーア元帥からか。読め」
通信将校は、震える手で電文を読み上げた。
『――OKWより南方軍集団司令部へ通達。
赤軍によるヴォロネジに対する大規模な攻勢が確認された場合、貴軍は遅滞戦闘を行いつつ、ヴォロネジを放棄し、速やかに後方の防衛線まで「全面撤退」せよ。反転攻勢および防衛戦はこれを固く禁ずる』
「「「…………は?」」」
作戦室の空気が、完全に凍りついた。
参謀の何人かは、耳を疑い、あるいはOKWが発狂したのかと憤怒の表情を滾らせた。
戦略的要衝であるヴォロネジを戦わずして明け渡せだと? 先月、あれほどの血を流して死守したばかりだというのに!
「……撤退、だと?」
モンシュタイン元帥でさえも、理解不能というように唖然とし、持っていた指揮棒を取り落としそうになった。
そして、ターニャ・フォン・デグレチャフ准将の脳裏には。
(……またか。またあの男か!!)
自分をやたらと振り回す、人の心を恐らく持ち合わせていないであろう、自称人徳者の顔が思い浮かんだ。
これは、ただの撤退命令ではない。あの策謀家が、何か途轍もなく恐ろしい、血も凍るような盤面の操作をすでに行っている証拠だ。
(一体、なんの意図があるというのだ……!? ヴォロネジを明け渡して、連邦をどこへ誘い込むつもりだ!?)
モンシュタインとターニャは、OKWの狂気的な命令書の意図を読み解こうと、顔を見合わせて深く、深く熟考の海へと沈み込んでいった。
◇
《統一暦1928年5月2日 連邦赤軍 ヴォロネジ前面》
帝国軍の司令部が混乱と熟考に沈んでいる頃。
ヴォロネジの前面、カリニンスクとペンザの平原には、すでに一千万近い戦力を失っているとは思えない赤い巨獣の群れが、地平線を埋め尽くすように展開していた。
赤軍最高司令部代理、ゲオルギー・ジェーコブ元帥の指揮下に行われたこの大攻勢は、これまでのウラヌス作戦に匹敵する、まさに国家の総力を挙げた物理的暴力の結晶であった。
投入された兵力、実に一〇〇万人。
大平原を埋め尽くすT-34と、分厚い楔形装甲を持つ新型重戦車IS-3を合わせた戦車・自走砲の数、実に二四〇〇両。
そして、その後方から帝国の陣地を粉砕するために並べられた火砲の数は、一万三〇〇〇門という、実に連邦らしい天災と呼ぶべき規模であった。
対する現地帝国軍の規模は、歩兵も、戦車も、火砲も、どれをとっても赤軍の「三分の一」にも届かない薄弱なものであった。
だが、これまでのヴォロネジを巡る攻防において、赤軍が演じ続けてきた醜態と、帝国軍(特にモンシュタイン)の悪魔的な用兵術を痛いほど知っているジェーコブ元帥にとって、この数的優位は全く安心できる材料ではなかった。
『……敵は必ず、こちらの横腹を狙ってくる。両翼の警戒を厳にせよ。少しでも帝国軍の装甲部隊の動きがあれば、直ちに全砲火を集中させろ』
ジェーコブは慎重に、まるで薄氷の上を歩くように進撃の命令を下した。
5月2日、払暁。
一万三〇〇〇門の火砲が、ヴォロネジ東部の帝国軍陣地へ向けて、文字通り大地を裏返すような猛烈な準備砲撃を開始した。
砲弾の雨が降り止むと同時に、一〇〇万の歩兵と、二四〇〇両の戦車が雪解けの泥濘を蹴立てて突進を開始した。
『……突破しました! 敵の第一防衛線、完全に崩壊! 我が軍の戦車部隊は、熱したナイフがバターを切り裂くように前進しております!!』
前線からの報告に、赤軍の司令部は歓喜に沸いた。
実際、赤軍の進撃は異常なほど順調であった。大突破を受けた帝国軍は、信じられないほどの早さで陣地を放棄し、次々と後方へ撤退していく。赤軍の装甲部隊は、ヴォロネジ東部の泥濘地域を、さしたる抵抗を受けることもなく驀進し続けた。
ジェーコブ元帥が、帝国の「後手からの一撃」が来る天王山になると警戒していたアンナやリペツクの周辺でも、帝国軍の不気味なほどの沈黙が続いていた。防衛網が敷かれることもなく、恐れていた側面の装甲反攻が実施される気配すら全く無い。
この異常なまでの大勝利の報告は、直ちにモスコーの後方、カイベジェフのスタフカへと届けられた。
『素晴らしいことです。反動主義の犬たちは、我が赤軍の偉大なる力の前に戦意を喪失し、逃げ惑っています。ジェーコブ同志、この機を逃さないでください。 続け様に第二梯団を投入し、一気にヴォロネジを占領してください』
連邦の最高指導者、ジュガシヴィリ書記長は、この結果に気を良くし、無線越しに高揚したような声で全軍の投入を命じた。
「……同志書記長。お待ちください」
ジェーコブ元帥は、受話器を握りしめながら一瞬、深い躊躇いを覚えた。
あのモンシュタインが、そしてあの悪魔のような帝国軍が、これほどあっさりと要衝を明け渡すだろうか? これは、もっと巨大な、致命的な罠ではないのか?
(……だが、罠だとしても。この圧倒的な速度でヴォロネジを落とし、帝国軍の混乱を突いて南翼全体をへし折ることができれば……!)
この時、ジェーコブの闘争心が、慎重さを上回った。
今は、帝国の幻影に怯えるよりも、この前代未聞の突破速度を維持し、帝国の防衛計画そのものを物理的に破壊すべきだと判断したのである。
「了解いたしました、同志書記長。……第二梯団を投入! 目標、ヴォロネジ市街! 帝国の豚どもをドン川の向こうまで叩き出せ!!」
新たに投入された数十万の第二梯団は、何の障害も、何かの罠を感じることもなく、怒涛の勢いでヴォロネジへと突貫した。
そして数日後。
抵抗らしい抵抗を受けることもなく、赤軍はヴォロネジの市街地を完全に制圧。半壊した市庁舎の屋上に、巨大な赤旗が翻ったのである。
「……勝った、のか?」
ヴォロネジの市街地へ進駐したジェーコブ元帥は、双眼鏡を下ろし、瓦礫の山を見渡しながら呆然と呟いた。
あまりにも抵抗が少なすぎた。帝国軍は、重装備すらほとんど残さず、綺麗さっぱりとこの都市から消え去っていたのだ。
この「凄まじい違和感」と「底知れぬ恐怖」に背筋を凍らせたジェーコブは、勝利の喜びに浸る部下たちを怒鳴りつけた。
「浮かれるな! 直ちにヴォロネジの全周に堅固な防衛線を構築しろ! 対戦車壕を掘り、ありったけの砲を並べろ! 帝国軍の反撃は、必ず……必ず来るぞ!!」
ジェーコブは、目に見えない帝国の巨大な顎が、ヴォロネジという餌に食いついた自分たちの頭上からゆっくりと閉じられようとしているのを感じていた。
彼は直ちに大規模な戦力の集積を開始し、防衛を固めると同時に、帝国東部戦線南翼の部隊を完全に破壊するための、次なる攻勢準備へと取り掛かるのであった。
大平原を吹き抜ける風が、泥の臭いとともに、間もなく始まる人類史上最大の戦車戦の予感を運んでいた。
というわけで早めのIS-3の登場です。
この世界では1も2も帝国の戦車(リンドヴルム)に対抗不可能として切り捨てられたのでしょう。
この世界だとヨシフ・ジュガシヴィリなので名称がIDとなりますが、分かりづらくなるので敢えてそのままとさせていただきます。
ローゼフシルトの過去話いる?
-
前世まで赤裸々に見せろ!おら!!
-
転生してからの話あくしろ
-
男に興味ねぇからさっさと話進めろや!