過去話はもう一話あります。
もしかしたら、さらに一話増えるかもだけど……
《統一暦1898年末 帝国》
ヘレーネは、婚約者の金回りがよくなったことを、少しも喜んでいなかった。
本が増えた。それはいい。
外出のたびに上等な菓子を買うようになった。それも、まあ、悪くはない。
劇場の若い女優たちと食事をし、花まで贈るようになった。
そこは、たいへんよろしくない。
「昨日、一緒にいた女の人は誰?」
「劇場の人だよ。歌が上手でね」
「その人の隣にいた人は?」
「そちらは踊りが上手だった」
「あなたに婚約者がいることは、知っているのかしら」
ジークは少し考えた。
「紹介しようか。君は射撃が上手だ」
持っていた新聞で叩かれた。
政治と経済を一度に頭へ叩き込まれたわけだが、残念ながら、新しい知識は何も増えなかった。それどころか多少脳細胞が衝撃で死に、いくつかの知識が抜け落ちたような気がした。
彼が相場に手を出し始めたのは、父の許可を得てからだった。使ってよい額を決め、家と付き合いのある仲買人を通し、保護者の承諾を添えて取引する。実家の土地を担保にしたり、家名で勝手に借金をしたりはしない。
その条件の範囲で、彼はたいへん楽しく遊んでいた。
ルーシー向けの注文を抱えた製鉄会社、機械メーカー、鉄道資材を扱う商会。配当を受け取り、値上がりしたところで売り、次を買う。帳面の数字は順調に増えた。
人を褒めれば機嫌がよくなるように、市場も、聞きたい話をしてやれば景気よく反応する。
今の市場が聞きたがっているのは、ルーシーには無限の将来があるという話だった。
「父上は、損をする覚悟で勉強させてくれているんだと思う」
「なら、そのお金で女の人と遊んでいると、教えて差し上げようかしら」
「利益の使途については、まだ細かな規定がなくてね」
「今からでもできるわよ」
ジークは笑いながら、新聞を返してもらった。
叩かれた箇所には、ルーシーの新たな鉄道借款について、大きな記事が載っていた。
そこで、笑みが少し薄くなった。
「……また増やしたのか」
帝政ルーシーは、欧州の金融家にとって、実に魅力的な国だった。
土地は広い。人口は多い。石炭も鉄鉱石も穀物もある。足りないものは、それらを結びつける鉄道と、機械と、資金である。
少なくとも、投資を募る者たちは、そのように説明していた。
列強に伍する工業を欲した帝政政府も、この話を歓迎した。外国から金を借り、外国へ機械を注文し、線路を敷いて工場を建てる。都市へ流れ込んだ人々が働き、製品が増え、税収も増える。いずれ外国人に頼らずとも、強大な国家を維持できるはずだった。
帝国は、そこに東方の友好国を見た。
フランソワ共和国は、そこに帝国の背後を脅かせる大国を見た。
両国とも、相手より親切な債権者になろうとしたのである。
ベルンで条件のよい借款がまとまれば、パリースィでは、もっとよい条件が提示される。共和国の銀行団が新たな鉄道債を引き受ければ、帝国の銀行団は、その先に建設される炭鉱と製鉄所へ資金を出した。
外交官は友好を語り、銀行家は将来性を語った。ルーシーの大臣は、両方の宴席へ出た。
大変な人気者である。
返済日が来るまでは。
実際に線路は延び、煙突は増えた。すべてが詐欺だったわけではない。
だが、完成した工場の利益を待つより、次の会社を設立して株を売る方が早く儲かってしまう。建設費は膨らみ、まだ列車の走らない路線が次の借金の担保に入り、その借金で別の会社の株を買う者まで現れた。
ルーシーの農村では、税と債務を払うために穀物を売らねばならず、都市では外国からの注文と融資に支えられた工場が、賃金を払っていた。国庫は穀物輸出から外貨を得て、借款の利払いを続けていた。
この仕組みを止めれば、どこから悲鳴が上がるか分からない。
そこで、誰も止めずに済むよう、新しい借款が組まれた。
極東では、鉄道と港湾の権益を巡り、皇国との緊張も続いていた。しかし、いまルーシーの財政を支えているのは、西から届く金だった。陸軍省が東方の輸送力を要求し、鉄道省が追加予算を求めるたび、財務省は欧州の市場へ顔を向けた。
その市場では、ルーシーへの貸付を抱えた帝国と共和国の銀行自身が、短期の資金を調達して長期の開発事業へ貸し込むという、とても健全とは言えない経営を行っていた。
両国とも、途中で手を引けば、相手国に影響力を奪われると考えていたのだ。
金融家には、逃げ遅れるための立派な理由まで用意されていたわけだ。
ジークは新聞の横へ、以前取り寄せた会社の報告書を並べた。
「この会社、前の利息を払うために、新しく借りている」
「鉄道ができれば返せるんじゃないの?」
「その鉄道は、完成予定がまた延びた。おまけに、運ぶはずの製鉄所は、まだ機械の代金を払っていない」
別の報告書を開く。
こちらでは、その製鉄所からの受注が、順調な業績の根拠として紹介されていた。
「仲がいいね。皆で皆の未来を担保にしている」
ヘレーネも椅子を寄せた。
「それ、払えなくなったらどうなるの?」
「普通なら、銀行が次の融資を止める。ところが今回は、後ろに外務省がいる。止めたくない人間が多すぎる」
「なら、まだ続くんでしょう」
「うん。だから、壊れる時は……想像するだけでゾッとするね」
彼は数字を眺めた。
この国で起きる恐慌の日付など、前世の教科書は教えてくれない。史実の年号を覚えているだけでは、売買の注文書は書けなかった。
だが、資金繰りの苦しい会社が何を隠すかは、多少知っていた。
「……かなりまずいな」
その日のうちに、仲買人へ手紙を書いた。
まず、利益の出ている持ち株を売った。
それから、ルーシー向け事業に深く関わる会社の証券について、期限までなら決められた価格で売れる権利を買った。代金は先払い。思惑が外れれば、その代金を失う。
仲買人は、こんな好景気に保険を買うのかと聞いてきた。
ジークは、好景気だから安く売ってくれるのだと返した。
最初の契約は、使わずに期限が切れた。
その次も、期待したほどは下がらなかった。
「損をしているじゃない」
「世界の方に、僕の予定を守る礼儀がないんだ」
ヘレーネは呆れたが、彼は買い増しを急がなかった。手元に金を残し、期限をずらし、取引相手の銀行がどこへ貸しているかも調べた。
値下がりを当てても、支払う相手が潰れては、ただの自慢話で終わるからだ。
統一暦1899年に入り、ひとつの鉄道会社が支払いの延期を申し出た。
銀行団は一時的な問題だと発表した。
翌週、別の会社も同じことを発表した。
その銀行へ金を預けていた者たちは、よく似た発表が三度続く前に、自分の金を返してもらうことにした。
株価が下がり始める。
担保の値打ちが落ち、追加の担保を求められた者が、ほかの株を売った。それも下がった。貸している銀行が危ないと知れて、銀行の株まで売られた。
ベルンとパリースィの市場は、ほとんど同時に、昨日までの楽観を失った。
両国の銀行は、まず自分の金庫を守るため、ルーシーへの新規融資と借り換えを絞った。
ルーシーでは工事が止まり、代金の支払いが止まり、最後には賃金の支払いまで止まった。
ジークの手元には、仲買人から電報が届いた。
指定した価格を割った証券を市場で買い、契約どおりの高い価格で引き渡す。差額は、すでに決済されていた。
彼は椅子から立ち上がった。
「やったー」
もう一度、数字を確かめた。
売却済みの株の利益と、いくつかに分けて結んだ契約の利益。失った代金と手数料を引いても、残高は十四万マルク*1を超えていた。
年齢を考えれば、たいへん不健全な額である。
本人の笑顔も、たいへん不健全だった。
「まだ下がるんじゃないの?」
「たぶんね。でも、皆が本当に金を払えなくなる前に、受け取っておきたい」
彼は残りの契約も順に決済し、資金をいくつかに分けて移した。
市場の底まで付き合って、そのまま銀行と心中する趣味はなかった。
心中趣味は皇国の文豪だけでよかったのだ。
父からは、金額の桁を間違えていないかと照会が来た。
間違えていないと返すと、今度は、いったい何を買ったのかと聞かれた。
「買ったのは、他人の楽観だよ」
そう答えようとしたが、余計に心配されそうなので、仲買人に説明を頼んだ。
ヘレーネは電報を読んでから、彼を見た。
「これで、もう十分でしょう」
「僕もそう思う。当分、好きに暮らせる」
「女の人に使う分まで、十分になったとは思わないことね」
利益を確定した途端、新しい規制が始まった。
なかなか自由にはなれない。
一方、ルーシー政府には、利益を確定して席を立つという選択肢がなかった。
外国からの融資は止まったが、借金の利払いは止まらない。通貨を守ろうと国庫を締めれば、工場が潰れる。工場を救おうとすれば、今度は国庫が足りない。
農民への取り立てを緩める余裕はなく、都市には仕事を失った労働者が溢れた。
政府は秩序の回復を命じた。
命令書には、賃金を支払うための金までは添付されていなかった。
改革派の宰相は、国民議会との妥協を図った。予算への監督を認め、地方行政を改め、農村の負担を整理する。新たな資金を得るためにも、政府が約束を守るという信用を取り戻す必要があった。
宮廷の保守派には譲りすぎに見え、急進派には遅すぎると見えた。
議会との交渉が続くさなか、宰相は暗殺された。
残された政府は、交渉相手より逮捕者を増やす方を選んだ。
鉄道でストライキが起こり、都市の工場が止まり、議会は責任ある政府を要求した。鎮圧を命じられた部隊の一部が発砲を拒み、別の部隊が発砲したことで、騒乱はさらに拡大した。
皇帝は退位へ追い込まれた。
新聞には、新時代の到来を祝う記事が並んだ。
ジークは、そこに書かれた新政府の顔ぶれと、財務についての短い声明を見比べた。
「看板は替えた。でも、請求書は前のままなんだよな」
議会を中心とする革命政府は、自由と秩序を同時に約束した。外国への債務を認め、私有財産を守り、軍の統制を維持しようとした。
しかし、工場を再開する金も、失業者に配る食料も、約束した速度では集まらなかった。
急進派は、地主の土地と、銀行の金庫と、外国人への支払いを指さした。
そこにあるではないか、と。
兵営で委員会が生まれ、村では土地の分配が始まり、首都では武装した労働者が政府機関を押さえた。最初の革命を祝った者の一部が、次の革命では逮捕される側に回った。
赤色政権は旧政府の債務を否認し、土地と工場の接収を宣言した。
これに抗する将軍、地主、立憲派、地方の有力者たちは、互いに嫌い合いながら白軍を組織した。
そして、帝国は介入を決めた。
革命の波及を防ぎ、在留民を守り、権益を保全し、東方の秩序を回復する。
派兵の理由はいくつもあった。理由を一つ増やすのは容易だったが、それに見合う兵站部隊を一つ増やすのは、そう簡単ではなかった。
◇
《統一暦1899年秋 ルーシー 帝国介入軍》
ジークは大金を稼いだ。その数か月後には、長靴を泥から引き抜くため、道端で片足立ちになっていた。手近な枝に掴まろうとすると、それは枝ではなく、同じように泥にはまって放棄された荷車の一部だった。所有者の苦労が偲ばれる。できれば、その苦労は他人事のままにしておきたかったのだが。
「資産家になっても、長靴は自分で抜くんだね」
「あなたの長靴を抜く係なんて、編制表にないもの」
ヘレーネはそう言いながら腕を貸した。ようやく抜けた靴から泥が跳ね、二人の外套へ平等に付着する。ジークが何か言うより先に、彼女は洗うのを手伝うよう命じた。身分と財産によって免除される仕事は、この前線にはあまりないらしかった。
二人は士官候補生として、前線勤務を命じられていた。帝国は一個軍規模の介入戦力を送り、魔導要員も必要としていたのである。男爵家の三男に金ができても、その魔導適性までなくなるわけではない。もう働かずに暮らせるのでは、という期待は、人事命令の前であっさり潰れてしまった。
無論、ジークにも、東方に敵対的な革命国家が生まれることの厄介さは分かっていた。ただ、それを阻止する仕事が、こんなに泥の多い場所で行われるとは聞いていなかったし、現地の協力者たちについても、もう少し詳しい説明が欲しかった。
介入軍には立派な目標があり、白軍には立派な将軍が大勢いた。困ったことに、将軍の数ほどには、一緒に動く軍隊がなかった。ある将軍は皇帝の復位を求め、別の将軍は議会政治の回復を掲げる。土地を取り返したい者と、土地の分配を認めなければ兵が集まらないと考える者が同じ作戦会議へ座り、共同作戦の相談より先に、どちらが上席かを議論している始末。
「敵の射撃にも、あれくらい譲らなければいいのに」
ジークが小声で言うと、ヘレーネは咳をした。注意するためだったのか、笑いを隠すためだったのかは、はっきりしなかった。少なくとも、顔を上げるまでに少々時間がかかった。
帝国の介入を見た周辺諸国も忙しくなった。赤色思想は恐ろしい。しかし、帝国がルーシーの政権を自分の都合で立て直し、その軍と資源を東方の後背地として利用するのも恐ろしい。どちらがより差し迫った危険かという問いに、いくつかの外務省は、たいへん柔軟な答えを出した。
表向きは内戦の早期終結を望み、裏では中立国の商社を通じて赤軍側へ武器が渡った。外交上の声明と貨物船の積荷は、必ずしも同じことを言わなかったのである。前線で押収した弾薬箱から外国語の印字が見つかるたび、将校たちは憤慨し、補給担当者は、使える口径かどうかを先に確かめた。
アルビオンの缶詰は、胃腸の丈夫なルーシー人ですら手をつけなかった。まして、文明的で上品だと自負する帝国人に至っては、缶を開けることすら躊躇ったという。
それでも、緒戦のジークはよく勝った。
というか、勝ち過ぎて、気がつけばエースになっていた。
初めは観測と連絡の任務だったが、彼は撃っている敵より、これから撃とうとしている敵を見つけるのが上手かった。道路の分岐点で砲を牽く馬が詰まっていた時には、先頭の車両と後続の間隔を見て、すぐに射撃許可を求めた。将校が馬上で腕を振り、列を動かそうとする間に、彼は砲兵へ位置を知らせていたのである。
最初の一撃で道路を塞いだ車輪と弾薬車が跳ね、散開した兵が近くの林へ逃げ込んだ。そこを、待っていた砲兵が叩く。彼が伝えたのは敵兵の現在地だけでなく、逃げ込む先まで含めた射撃の順序だった。
敵の魔導士が上がってくると、今度は追わせた。速度を落とし、射程へ入りそうなところで離れ、相手が隊列を崩した時だけ向き直る。逃がしたくないと思わせれば、人はよく動いた。資料室で競争させた候補生たちと妙なところで似ており、彼は、相手が思ったとおりの位置へ出てくるたび、愉快な気分になった。
敵魔導士を誘い出しては撃墜し、砲兵の観測でも戦果を挙げた。気がつけば、撃墜数はエースと呼ばれる基準をとうに超えていた。
「あなた、追われている途中で笑っていたでしょう」
「見た?」
「聞こえたわよ。通信を切り忘れてたもの」
地上へ戻った彼を、ヘレーネが呆れた顔で迎えた。ただし、その後に聞いてきたのは、次はどこまで引きつけるつもりなのかという話だった。ジークが地図を広げると、彼女は帰りの経路と、途中で拾うべき味方の位置を書き加えた。彼の考えたやり方を使うにしても、帰ってくるところまで考える必要があるらしかった。
戦功によって少尉に任官し、さらに中尉へ進んだ頃には、彼は航空魔導一個中隊を任されるようになっていた。ヘレーネも少尉として、その一個小隊を率いた。公務中、彼女は彼を中尉殿と呼んだが、食事や洗濯の時間になると、その区別は大変曖昧になった。
「靴下を替えなさいジーク」
「中隊長に対する命令かな」
「その中隊長の足が臭くなる前の忠告よ」
部下が近くにいる時にも言われた。こちらにも将校としての体面はあるのだが、彼女には、それを長靴ごと洗うつもりがあるらしかった。兵たちが聞こえないふりをしているのも腹立たしい。せめて、その不自然な沈黙をやめてもらえないものだろうか。
宿営地へ上等な珈琲を取り寄せる時、ヘレーネは針と糸、替えの靴下、手紙を書くための紙も頼んだ。品物が届くと彼女のところへ兵が集まり、ジークは、金を出したのは僕なのに、と不満を述べた。ヘレーネは荷ほどきをしながら、代金だけでお礼まで独り占めするつもりなのかと返した。
ある村で教会の屋根を直す材木が足りないと聞けば、彼女は輸送車へ載せられないかと相談した。補給下士官は一度断ったものの、荷台の余積と帰りの経路を書いて持ってこられると、考え直した。
「祈ったら運んでくれたの?」
「寸法を測ったら、運んでくれたの」
信心深い婚約者は、その辺りの順序をよく心得ていた。
負傷者が出ないわけではなかったが、この世界の魔導は、彼が前世で知っていた戦場の常識を大きく変えていた。防殻と身体強化によって衝撃に耐え、出血を抑えたまま後送され、治療を受けて戻ってくる。担架の上では死人のような顔をしていた者が、再会すると病院食の量について文句を言っているのだ。ジーク自身も、身体にできた裂傷が治療術式によって塞がっていく様子を、何度も見ていた。
もちろん、助からない者もいた。それでも彼は、早く見つけ、早く運び、適切な処置を受けさせれば、救える場合が多いと覚えた。そして、自分はそのための速さと力を、ほかの者より多く持っているとも考えていた。
冬を越す頃には、この戦争はもうしばらく続くだろうと分かっていたが、少なくとも自分の周りなら何とかできるという自信は揺らがなかった。敵の砲兵は撃たせる前に叩き、足止めされた味方には退路を開き、無理な命令にはもっとましな方法を示す。ヘレーネが小言を言い、彼がそれをからかい、結局は二人で仕事を終える。困ったことが起きても最後には片づくという、その繰り返しに、彼はすっかり慣れていた。
◇
《統一暦1900年5月 サモレンスク東方》
春になると、白軍の戦線が崩れた。赤軍は、帝国軍のいる場所ばかりを律儀に攻撃し続けてはくれなかったのである。旧軍から引き継いだ将校と、内戦で経験を積んだ指揮官が兵力と砲兵をまとめ、隣接する白軍の正面へ叩きつけた。昨日まで地図の上にいた友軍が、今日は司令部ごと西へ移っていた。
「地図を直すより、地図係を走らせた方が早そうだね」
そう言ったジークも、後退を命じられた。介入軍は主力をサモレンスク方面へ収縮させ、鉄道と補給拠点を利用して戦線を立て直そうとしていたが、そこへ着くまでの道は、歩兵と砲と弾薬車、そして負傷者を積んだ馬車で埋まっていた。赤軍の先遣隊が先回りして道路を押さえれば、戦える部隊まで車列の中で切り離される。
ローゼフシルト中隊は、消耗した歩兵二個大隊を中心に、砲兵と工兵を加えた後衛支隊へ編入された。十二名の魔導士が受け持つ空の向こうには、把握できているだけでも一万を超える敵がいた。支隊長は地図上の道路を指で辿り、主力と後送車列が抜けるまで、これを開けておくよう命じた。
「何時間でしょうか」
「車列が抜けるまでだ」
実に便利な回答だった。ジークも学校で、答案が完成するまで提出を待ってもらいたかったものである。もっとも、今から教育制度への不満を申し立てても始まらない。彼は手元の地図へ陣地を移る順序を書き込み、各小隊の交代と補給の手配を始めた。
最初の陣地では、それがよく機能した。道路を外れれば、雪解けの水を含んだ地面に車輪が沈む。赤軍の先遣隊が道に沿って詰まったところを砲兵が撃ち、敵が砲を据え始めると、魔導隊がその位置を知らせる。ジークが正面を釘づけにしている間に、ヘレーネは後退する地上部隊の最後尾を確かめ、先に下げた小隊の援護を受けて離脱した。
工兵が障害物を残し、砲兵が次の位置へ移る。敵は追いつくたびに、もう一度、攻撃の準備をやり直さねばならなかった。ジークが引っ越しの手際を褒めると、古参の下士官は、次の引っ越し先には屋根が欲しいと答えた。彼は要望を支隊本部へ上げると約束した。
なお、一度も実現するとは言っていない。
半日が過ぎ、一日が過ぎた。彼らが陣地を移しながら戦っている間に、いくつもの部隊と、幾列もの後送車両が西へ抜けた。一方、赤軍も同じ正面へ兵を押し込むだけではなくなっていた。追いついた砲兵が火力を増し、その背後から新しい部隊が林道へ入り、帝国後衛の側面へ回り始めたのである。
中隊には負傷者が出ており、動ける者も短い仮眠と補給だけで飛び続けていた。ジークも疲れていたが、まだ術式は組めたし、敵の動きも見えていた。自分がもう一度動けば解決できるという感覚は、前の陣地でも、その前の陣地でも、実際の成功によって裏づけられていた。
最後の陣地は、道路脇の製粉所と、その北に延びる低い稜線だった。西には次の受け入れ陣地があり、支隊の予備が後衛の離脱を援護する段取りになっていた。ヘレーネの小隊は製粉所の東側に残り、最後尾の衛生馬車を西へ送り出そうとしていたが、正面の砲声に混じって、南側の林からも銃声が聞こえ始めていた。
『車列は、あと三両。右側の林に敵が入っています。予定どおり下がった方がいいわ』
その時、北側の谷に、取り残された歩兵の一団がいると分かった。百数十名。途中で負傷者を集め、本道へ出る経路を失っていた。敵の一部が谷の出口へ回りかけており、このままでは、後衛が退いた後の陣地へ置き去りになる。
『西へ下がって、予備と一緒に谷の出口を押さえましょう。あの人たちも、そちらへ誘導できる』
ヘレーネの提案は、実行できるものだった。ただし、歩兵を大きく迂回させ、重い装備を捨てさせ、受け入れ側との調整を済ませる必要がある。ジークは谷と製粉所の距離を測り、自分が直接北へ回った方が早いと判断した。出口の敵を蹴散らし、歩兵を本道まで連れてくれば、そのまま全員で後退できる。
「八分で戻る。僕が北を開ける」
『こちらは交代が必要よ。もう、余裕があるわけじゃない』
声は落ち着いていた。彼は、その落ち着きを、まだ持ちこたえられるという材料にしてしまった。ヘレーネはこれまでにも、彼が頼んだ仕事を終えて帰ってきた。そのたびに文句を言われたが、結局、帰ってきたのである。
「分かっている。現位置を維持。僕が戻るまで頼む」
彼女は命令を復唱した。ジークはそれを聞き、部下を率いて北へ向かった。
谷の出口にいた敵は、予想どおりだった。彼は上空から火点を潰し、残った敵を部下に押さえさせて、歩兵へ前進を指示した。銃を持つ者が斜面を上がり、その後から担架が現れた時にも、最初は、まだ時間に収まると思っていた。
だが、担架は一つではなかった。戸板に括られた者、両脇から抱えられても片足を引きずる者、その者を支えている兵自身も負傷している組が谷の奥から続いた。敵を排除するまでの計算は合っていたが、兵たちがそこから歩いてくる速度は、彼が想定していたものとは違っていた。
銃を下げた兵に担架を持たせ、荷物を捨てさせ、魔導士にも負傷者を運ばせた。自分の手で動かせるものは動かした。それでも列は思うように進まず、八分を告げた時計の針は、彼が最後尾へ引き返している間にも容赦なく回り続けた。
『東側に砲が出た。林の敵も近い。これ以上は――』
通信に砲声が重なり、製粉所の方角で土煙が立ち上った。ジークは即座に離脱を命じたが、返ってきたのは、退路にも射撃を受けているという報告だった。彼が歩兵を連れ出している間に、赤軍は南側から道路へ出ていたのである。
ヘレーネは、馬車を先へ通すために小隊の火力を南へ向け、残った兵を順番に下げていた。その判断を告げる声はまだ聞こえていたが、次の爆発の後、通信へ割り込んできたのは別の人間だった。
『小隊長被弾!防殻を抜かれた、製粉所の西壁――』
ジークは加速した。
谷から出た歩兵を受け入れ陣地へ誘導するよう部下に命じ、自分は製粉所へ向けて一直線に飛んだ。燃え始めた屋根と倒れた柵が近づき、壁際で衛生兵が誰かの身体を押さえているのが見えた。彼は道路へ出ようとする敵へ射撃を加え、その視線を引きつけたまま降下した。
右頬を何かが裂いた。熱い液体が口の端へ流れ、舌に鉄の味が広がったが、彼は手をやることもなく壁際へ走った。衛生兵の肩越しに栗色の髪が見え、その下にあるはずの顔を確かめるまでのわずかな間だけ、見間違いであってくれと思った。
ヘレーネは仰向けに倒れていた。左の肋骨の下から脇腹にかけて軍服が大きく裂け、押し当てられた包帯の端から、血が絶え間なく溢れていた。布がずれた隙間には、赤黒く開いた肉の間に、白い骨の断面と、焼けた制服の切れ端が見えた。血は彼女の背中の下にも溜まり、煉瓦の欠片を濡らしながら、地面の窪みへ流れ込んでいた。
敵の術式弾が防殻を貫通し、身体の近くで炸裂したのだと衛生兵が説明した。破片は脇腹だけでなく、背中側にまで達しているという。その声を聞きながら、ジークは片膝をついた。彼女の宝珠はまだ微かに明滅しており、血に汚れた指が、それを握り締めていた。
「……ジーク?」
目は開いていたが、焦点が合うまでに時間がかかった。返事をしようとして唇が動き、次の息を吸うと、喉の奥で湿った音がした。口の端に赤い泡が滲むのを見て、彼はようやく、傷が見えているところだけでは済んでいないと理解した。
「喋らなくていい。僕がやる。力を使わなくていいから」
彼女は頷こうとしたが、肩がわずかに動いただけだった。握っていた宝珠がまた光り、すぐに暗くなる。そのたびに眉が苦しそうに寄った。彼女自身も、出血を抑え、身体を保とうとしていたのだ。しかし、長い戦闘の末に残った魔力では、術式を安定させることさえ難しくなっていた。
ジークは衛生兵の手に自分の手を重ね、止血を引き継いだ。傷へ当てた布の上から薄い防殻を形作り、圧力を与える。まず、血が溢れる勢いが弱まった。それだけで、胸の奥に張りつめていたものが僅かに緩んだ。止められる。少なくとも、ここから先の出血は抑えられるはずだった。
ところが、ヘレーネが息を吸おうとした瞬間、組み上げた膜が胸郭の動きを妨げた。彼女の背が強張り、声にならない息が漏れたため、彼は慌てて出力を落とした。圧迫を緩めると、今度は布の縁から、また血が流れ始めた。
普段の防殻なら、迫る弾丸を身体から遠いところで弾けばいい。だが、いま守らなければならないものは、呼吸のたびに動き、わずかな圧力にも傷口を引きつらせる身体だった。強く押せば折れた骨や破片をさらに食い込ませかねず、弱めれば出血を許してしまう。彼は圧迫する面を幾つにも分け、彼女の呼吸に合わせて一つずつ形を変えた。
術式の修正は通った。血の流れは細くなり、ヘレーネの肩からも少し力が抜けたが、その間に染み出した血は、彼の手袋を内側まで濡らしていた。指を動かすと、生温かいものが関節の間を滑った。彼はそれを意識から追い出し、体温の維持を組み込み、残る小隊員へ担架を用意するよう命じた。
彼女を抱き上げる必要はなかった。飛行術式で全身の重さを支え、布を敷いた担架の上へ、傾けないように移すことができた。別の魔導士が担架の荷重を引き受け、もう一人が前方を警戒する。ジークは彼女の脇へつき、止血と保温を維持したまま、低く滑るように西の陣地へ運んだ。
数分足らずの距離が、ひどく長かった。身体を揺らしてはいないのに、ヘレーネは時折、何かに耐えるように眉を寄せた。見える傷口からの出血は減っていたが、頬はますます白くなり、押さえている脇腹の奥は、不自然に張ってきていた。外へ出てこない血が、どこへ行っているのか。考えた途端、彼は喉の奥が詰まり、呼吸を一度、意識してやり直した。
受け入れ陣地の救護所へ着くと、軍医が駆け寄った。ジークが傷と施している術式を説明する間に、外套と上衣が切り開かれた。まとわりついた布を剥がすと、血に覆われた傷の深さが露わになり、軍医の表情が変わった。
「その圧迫を保てますか。位置はこちらが指示します」
「保てる。いくらでも」
彼は即答した。魔力なら残っている。もっと強い術式が要るのなら、宝珠が壊れるまで出力を上げればよい。それだけで済むのなら、何も難しいことはなかった。軍医はすぐに別の衛生要員を呼び、止血の器具と治療用の宝珠を並べさせた。輸血の用意を命じる声が飛び、担架の周囲にいた兵が散った。
治療術式が作動すると、傷の浅い部分から出ていた血が止まり始めた。裂けた組織が寄り、傷の縁の色が変わる。ジークはその変化へ目を凝らした。
何度も見た回復の兆しだった。今度も同じだ。ここを越えれば、後は病院へ運んでやればいい。
しかし軍医は、傷を閉じる処置を途中で切り替えた。見えている場所を塞いでも、深いところから血が湧いてきていたのである。器具で出血点を押さえ、その周囲へ術式を集中させると勢いは弱まったが、別のところから、また溢れた。潰れた組織と何本も裂けた血管が、処置の先に残っていた。
「治せないのか。術式は動いているんだろう」
「動いています。中尉、左手の側を少し緩めて。そのまま、動かさないでください」
軍医は顔を上げずに答えた。額の汗が眉へ溜まり、衛生兵が布で拭った。誰も手を休めてはいなかった。魔導は血を止め、損なわれた部分を修復しつつあったが、処置を終えるより早く、別の損傷から血が失われていく。輸血の準備が整った時には、ヘレーネの唇は、先ほどよりさらに色を失っていた。
彼は、傷の位置をもっと正確に教えるよう求めた。軍医の指示に従って防殻を狭く組み直し、布と器具が動かないよう支える。大きな砲弾を弾くより、たった一か所を押さえ続けることの方が難しかった。息をするたびに微かに動く皮膚の下で、押さえてはいけないものと、押さえなければならないものが重なっていた。
「できるところからでいい。僕が持たせる。時間は、作るから」
口にした瞬間、耳の奥で、八分で戻ると言った自分の声が重なった。あの時も、自分が時間を決められると思っていた。ヘレーネが交代を求めた意味も、もう余裕がないと報告した声も聞いていたのに、自分に都合のよい分だけを拾って、彼女を待たせた。
軍医へ向けていた目が、彼女の顔へ戻った。額には細かな汗が浮かび、頬へ貼りついた髪が、呼吸に合わせてわずかに動いていた。いつもなら、鬱陶しそうに自分で払ったはずだった。彼は空いた指でそれを避け、何か言おうとして、何も言えなかった。
「……手、冷たい」
ヘレーネの唇が動いた。聞き間違いではなかった。ジークはすぐに手を握り直し、彼女の指先まで保温の術式を広げた。体温は保っていたはずなのに、本人には寒いのだという。その意味を考えるのが怖くて、彼は温かくなったかとだけ尋ねた。
彼女は答えず、彼の顔を見ようとした。目の焦点が揺れていたが、何度か瞬きをすると、ようやく視線が合った。輸血と治療によって、容体がわずかに持ち直したのだろう。軍医が新しい指示を出し、脇腹を押さえる手の位置を変えた。ヘレーネは小さく顔を歪めたが、今度は、その後に言葉が続いた。
「……みんなは?」
「下がった。君の小隊も、谷の連中も。道は開いているよ」
彼女は僅かに頷いた。それを見て、ジークも何度も頷いた。返事ができる。こちらの言葉を理解している。まだ間に合うのだと、彼は軍医の顔を見たが、そこに安堵はなかった。軍医は治療術式の出力を調整しながら、脈を確かめる衛生兵へ短い問いを投げていた。
「ジーク……息が、うまく」
声の途中で、喉が詰まった。唇の間から血が滲み、拭ったばかりの顎へ、また赤い筋ができた。彼は呼吸を助ける術式を組み、軍医の指示でその強さを抑えた。空気を送り込むことはできたが、傷ついた肺と、血を失い続ける身体は、それだけでは元に戻らなかった。吸えたはずの息を、彼女は苦しそうに吐き出した。
「僕の方を見て。大丈夫だから、こっちを見ていて」
その言葉を言う資格が、自分にあるとは思えなかった。それでも、ほかに何を言えばいいのか分からなかった。彼女の目がまた自分を見つけるまで名前を呼び、指が握り返してくると、力を込めすぎないよう気をつけた。止血の術式も、保温も、決して解かなかった。
ヘレーネの呼吸が、少しだけ整った。その隙間に、彼女は何か言おうとした。彼が顔を近づけると、血に濡れた唇から、自分の名がもう一度聞こえた。いつもの小言を待ってしまった。遅い、何をしていたの、八分と言ったでしょう。そう責められたかった。
「終わらせて……」
彼はすぐに頷いた。この戦いを終えて、彼女を病院へ運び、痛みも寒さも取り除いてやる。何でもすると答えかけたところで、彼女の指に僅かな力が入った。
「この戦争だけじゃ、なくて……あなたが、言ってた……次の戦争も」
閲覧室の机が、唐突に頭へ浮かんだ。地図の折り目を伸ばす指と、論文の余白を埋めた細かな字。あの時の彼女は、まだ先の暮らしについて話していた。皆が帰って、そのまましばらく家にいられる方法を考えろと、彼に言った。自分はそれを、大きすぎる課題だと笑って受け流した。
「分かった。ちゃんとやる。今度は、ちゃんと考えるから」
返事をする声が震えた。彼は彼女の手を握り、言い直そうとしたが、約束の先に何を置けばよいのか分からなかった。来週も、来年も、彼女が傍らにいることを当然のように考えていた。帰ったら店へ行く。次の休暇には実家へ顔を出す。それらは、自分一人で実行しても意味がないことだった。
ヘレーネの視線が彼の頬へ動いた。彼の血が顎を伝い、握り合った手の上へ落ちていた。彼女は指を持ち上げようとしたが、うまく動かなかった。ジークがその手を支えると、指先が傷の下に触れた。
「……痛そう」
「僕はいい。僕のは、後でいいんだ」
彼女は笑おうとしたようだった。だが、息が引っかかり、眉が寄った。薄く開いた目に涙が溜まり、それがこめかみへ滑り落ちた時、彼は、彼女が落ち着いて死を受け入れているのではないことを思い知らされた。彼女は、まだここにいたかったのだ。こんな場所で、見知らぬ軍医の手に身体を預け、血に濡れたまま終わりたくなどなかった。
「私……あなたと、帰りたかった」
ジークは首を振った。握っている手を、彼女の胸元へ戻すことができなかった。帰れると答え、もう一度帰れると言った。約束を増やせば、そのどれかが彼女を引き留めてくれるような気がしていた。
ヘレーネの唇がもう一度動いたが、声にはならなかった。指先の力がゆっくり抜け、彼を見ていた目が、僅かにその向こうへずれた。ジークは名前を呼び、身体を支える術式を確かめた。どこにも解除した箇所はない。宝珠も動いている。なのに、次の呼吸が、いつまで待っても続かなかった。
軍医が彼女の首元へ手を当て、急いで処置を切り替えた。ジークは指示されたとおりに力を加え、支える位置を変え、残っている魔力を注いだ。呼吸を助け、循環を保とうとする術式が重なり、担架の周りに淡い光が満ちた。その光の中で、彼は彼女の目がもう一度自分を見つけるのを待ち続けた。
軍医の指示は何度か変わり、やがて、次の指示が来なくなった。
「続けてくれ。まだ、僕は出せる」
返事がないことが怖かった。彼は軍医を見上げ、まだ宝珠が動いていると繰り返した。何かが足りないのなら持ってこさせる。人でも、血でも、別の宝珠でもいい。何が必要なのか言ってくれと頼んだが、軍医は血に濡れた手を止め、静かに首を振った。
「中尉。……もう、戻りません」
ジークは、その言葉を理解した。理解したうえで、手を離せなかった。彼女の手はまだ温かかったし、胸元には自分の術式の光が残っていた。それらを止めた途端に、本当に何もかもが終わってしまうように思えた。
だが、声は返らなかった。顔へ触れた指も、冷たいと言った唇も、もう動かなかった。軍医が衛生兵へ時刻を告げるのが聞こえ、彼はその数字を聞くまいとして、ヘレーネの名をもう一度呼んだ。
外では、車輪の音が続いていた。誰かが馬を励まし、道を空けるよう叫んでいる。彼が命令したとおり、兵たちは西へ進み、谷から連れ出した負傷者も後送されていた。救護所の入口では、生き残った小隊員が帽子を脱ぎ、担架を見つめたまま立っていた。
ジークがようやく術式を解くと、支えを失った彼女の指が、彼の掌の中へ重く沈んだ。彼はその手を握り直したが、今度は、どこからも握り返す力が来なかった。
彼女が守っていた道を、最後の衛生馬車が西へ抜けていった。