東方キャラとオリキャラでイナズマイレブンする話 作:みかづき椛
コチヤーズとクリアナイトの二回戦が開催される数日前、FW陣の特訓場では人工芝の上で汗だくの魔理沙が全身全霊で背中に力を込めていた。すぐ近くにいるリードシクティスが考え込むように地面を見つていた。
「お前も設定したか? 化身かソウルっての」
「はい……とりあえず」
リードシクティスは小さく頷いたが、自信がなかった。
「お前……開幕戦ではなんだか調子が悪かったな」
「えぇ……?」
リードシクティスは元気なく視線を逸らし、下を向いた。
「昨日は本当に緊張してただけなのか?」
リードシクティスは魔理沙の問いに言葉が詰まり、元気なく頷いた。
「無理してないか?」
「む……無理なんてしてませんよ……」
リードシクティスは笑顔を無理に作る。しかしその目には闇があるようだった。
◆
一方、MF陣の特訓場ではシラウオ・キクラゲ・フナ・カサゴの休憩時間が始まっていた。カサゴは芝の上に仰向けに寝そべり、激しく息をして胸を上下させていた。他の三人はベンチに座り、汗を拭きながら休憩していた。
「ハァ……ハァ……」
「大丈夫~?」
キクラゲがのんびりした口調でカサゴに尋ねた。
「大丈夫です……」
「そういえば、MF陣って異世界の人だけになりましたね」
フナの問いかけにキクラゲは首をかしげる。
「う〜ん、それは別にどうでもいいんじゃな~い?」
「まぁ、そうですよね……」
フナはキクラゲに少し照れ笑いをしたその時、シラウオが静かに右手を挙げ、冷静な声で話し始めた。
「私から一つ、気になる点があります」
「お姉ちゃんなに!?」
「十一人で練習することって、ないのかなと……」
「た……確かに……試合形式での練習が全くないよね……」
フナは頷き、考え込み始めた。
「対戦相手を作るの、難しいんじゃな~い?」
「確かに、そうかもしれません……」
シラウオの返事には無表情ながらも不安な気持ちが込められていた。
◆
一方、DF陣の特訓場では射命丸文・早苗・妖夢・アキスがベンチで休息を取っていた。妖夢以外の三人は落ち着いた表情で汗をタオルで拭いていたが、妖夢は幽々子様が攫われた絶望に打ちひしがれ、膝を抱えて座っていた。
「妖夢、どうしたの? 練習に集中できなかったみたいだけど……」
アキスが立ち上がって心配そうに妖夢に尋ねた。
「ゆ……幽々子様がぁぁ……」
妖夢の声は震え、涙がこぼれそうだった。
「え、あの幽々子さんがですか!?」
早苗が驚きの表情で身を乗り出して妖夢に質問し、射命丸文が冷静に呟く。
「亡霊でもいけるんですね……」
「それって、運が良いじゃん!」
明るく言葉を発したアキスは妖夢の両肩をポンと叩いた。
「な……何を言うんですか、アキス!」
「妖夢も試合に出てなかったら、やられてたかもしれないよね? だから運が良いんだよ! もし幽々子さんが試合に出たら絶対勝とう!」
妖夢はアキスの輝く瞳を見つめ、心の闇を照らすようだった。妖夢は決意に満ちた顔付きに変わった。
「本当は超次元サッカー……すぐ止めるつもりでしたけど、幽々子様を助けるまで頑張ります!」
妖夢はそう決意すると、早苗はシュンと暗い顔をした。
「諏訪子様と神奈子様はぁぁ……? 私の大切な人も攫われたんですけど……!」
「す……すみません……そのお二方も対戦するようなことがあれば、試合に出て貢献しますから」
妖夢のその言葉で早苗は明るい表情に変わり、周りは穏やかな雰囲気に包まれることとなった。
◆
ある時、薄暗い空間にいる萃香は目の前の人物を真剣な眼差しで見つめていた。
「残無、お前の分析力なら黒幕子に勝てる。超次元サッカーの監督をやってみないか?」
萃香の視線の先には緑色の服に青いズボン、頭には小さな二本の角が生え、紫がかった黒のロングヘアの日白残無がいた。残無は股を広げて椅子に腰掛け、若干呆れた表情で萃香を見ていた。
「残無なら黒幕子に勝ち越すまで素晴らしい采配をしてくれると思ってな〜」
「例の異世界にはおらぬのか? 監督」
萃香の軽い口調に対して残無が冷静に質問した。
「超次元サッカーはゲームの話らしいからな〜。本職の監督は存在しないらしい。普通のサッカーの監督でも良いような気もするが……私はそうは思わなくてな」
「それで儂にか」
「黒幕子の行動範囲は幻想郷だけじゃない。だから、あらゆる選手の能力を分析しなきゃいけないんだ。頼む」
萃香の真っすぐな眼差しに、残無は目を閉じて考え込んだ。
(サッカー……蹴る。攫うなら早鬼が狙われる可能性が高い。尤魔も有り得る……八千慧も能力を利用されたら厄介なことになるじゃろう……)
残無はゆっくりと目を開け、立ち上がった。
「まさか、萃香がこんな頼みごとをするとはのう……それほどまでに事態は深刻だと言うわけじゃな」
「忙しくても試合当日だけでも来てくれ」
「……よかろう。儂が監督をやるかどうか……勝負で決めよう」
「言ったな残無」
萃香の目に闘志が宿った。
◆
幻想郷の上空に浮かぶサッカースタジアム。ゴールキーパー専用の練習コートにいる橙色のユニフォームを着用しているラックと、小さな妖精の羽根をパタパタさせながら、ベンチにちょこんと座っているイヨカの前に早苗が立っていた。
「なんだ。キャプテン直々に話がしたいとは」
ラックの質問に早苗は数秒間黙り込んだ。
「いや……元気かなって。開幕戦で決勝ゴールを決められちゃいましたし……」
「我は全く罪悪感を感じない。全然落ち込んではいない。むしろ怒っている! なんで点が取れないんだ!」
怒りの表情をしているラックの言葉に、早苗は慌てて両手を振る。
「ごめんなさい……! 励ましに来たのにイライラさせちゃって……! キャプテン失格ですよね……」
早苗の目が滲み、手が震えた。それを見たラックは表情が少し穏やかになった。
「いや……全然キャプテン失格ではないぞ。サバミよりは断然マシだからな。むしろ我に声掛けするとはかなり偉いぞ!」
「早苗は偉い!」
イヨカがベンチから飛び上がり、背中の羽根をパタパタさせながら飛び、早苗の頭を小さな手で優しく撫でた。その瞬間、早苗の目から涙が溢れ出した。
「う……う……うわーん!」
早苗は勢いよくラックに抱きつき、泣きじゃくった。イヨカも釣られるように目が潤んだ。
「はぁ……全く、我の周りに泣き虫は一人で十分なのだがな……」
ラックはそう言って早苗の頭を優しく撫でた。