東方キャラとオリキャラでイナズマイレブンする話 作:みかづき椛
太陽が沈んだ真夜中、エリィがベッドで眠りについた部屋に再び紫色のスキマが現れる。スキマから伸びた紫の手が本棚の一冊をつかむ。
(確かこれよね……)
1ページ目を開き、黙読を始める。
(猫が猫にエサをあげてとっても癒されました……くらいね……)
数ページ確認してそっと本棚に戻す。
(空白のページの前の内容は、ペルシャのホワイトを飼っていて、つきまとっている男に迷惑している……今読んだ日記帳にはお手伝いさんとブラウンが登場している……)
さらに、空白の日記帳より少し過去の日記帳を手に取り、ページをめくる。
(いつものオレンジ色のあの男子が近付いてきた……本当に迷惑……)
日記帳を戻し、スキマを閉じた。
「いつもつきまとっている男子の髪の色はオレンジ……なんだかとても嫌な予感がするのは気のせいかしら……」
◆
次の日の朝、エリィが朝練のために元気よく部屋の扉を開ける。
「行ってきます! 紫さんも猫ちゃんたちと仲良くなれるように頑張ってください!」
部屋には五匹の猫、お手伝いさん、そして八雲紫が残される。数十秒の沈黙の後、八雲紫の目の前にスキマを出現させ、お手伝いさんの真上に別のスキマを開く。右手がお手伝いさんの頭上のスキマから現れて頭をつかんだ。
「この感触は……! やはり……」
八雲紫は右手を引っ張ると、スキマを通して猫耳カチューシャと黒髪ツインテールのかつらが引き抜かれた。
「ちっ……バレちゃしょうがねぇ。エリィに内緒な」
その場に低音の若い男の声が静かに響く。八雲紫は立ち上がってお手伝いさんを見つめると、髪型がオレンジのショートになっていた。
「あんまり驚いてないってことは……日記帳を読んだな?」
「えぇ。あなたみたいなオレンジ髪の人につきまとわれているって」
「おいおい、人の日記勝手に読むだなんてプライバシーねぇな」
「あなたに言われたくないわ〜……」
お手伝いさんが素早く猫耳カチューシャと黒髪ツインテールのかつら拾い、頭に装着する。
「さっきエリィに内緒って言ったわよね……」
「あぁ、でなきゃ暖かい春にマフラーなんかしねぇ。それでどうするババア。エリィにお手伝いさんの正体をバラすのか?」
「バ……」
紫の右頬がピクピクと動き、怒りを抑えるように息を整える。
(生意気ね〜……あ〜! ぶっ潰したいわ〜! 美しく残酷にこの部屋から往ね! と言いたい気分よ……!)
「バラしたらエリィのメンタル崩壊待ったなしだぜ」
「……じゃあ、あなたのことを聞かせてちょうだい。それとホワイトのことを」
「それは一切ねぇな。俺はただその時、アタックに失敗していただけだった」
八雲紫は呆れ顔になり、内心ボソッとツッコむ。
(何回フラレたの……)
「ホワイトは捨て猫だったそうだ。エリィは家に持って帰って飼っていいかと頼んだらしい。母は反対し、父は賛成したそうだ」
(エリィの過去は話してくれるのね……)
「反対と言えば……」
お手伝いさんがブラウンを優しく抱き上げた。
「ブラウンは優秀でな……俺の脅威となる存在には必ず威嚇するんだ……前に猫を飼うことに反対していたエリィの母には威嚇して、賛成派の父には威嚇しなかった」
「そんなに私、怖かったかしら?」
「さっきの異空間開くやつ厄介すぎるからなぁ……さすがブラウン」
お手伝いさんは優しく床にブラウンを降ろした。
「ブラウンは……俺がエリィの話題に入りたくて飼い始めたんだ。結果は惨敗だったが……なんだかんだ飼い続けている」
「話を戻すけど、ホワイトはどうなったか……耳にしてない?」
八雲紫の問いに、お手伝いさんが暗い表情で下を向く。
「聞いた話によると、飼い始めてから一年……急に容体がね……」
(ホワイトは病気で亡くなったのね……)
「エリィは責任感じて猫を飼うのを止めようと言っていた……そこでエリィを励まそうと、俺は猫になることを決めたんだ」
そう言ったお手伝いさんは決意に満ちた顔になった、
(エリィの励ましかた、他になかったのかしら……?)
「元々可愛らしい感じの俺がメイクしてメス猫になったらワンチャン行けっかな〜って思ってメイクしてエリィに近付いてみたらびっくり! 全くバレなかった!」
(よくバレないものね……)
「幸い、俺は飼ってる猫の種類を明かしてなかったからブラウンを見ても大丈夫だった…………話はこれで終わりだ。さっきも言ったが絶対に内緒だからな!」
お手伝いさんが念押しすると、紫は無言で首をかしげた。
◆
数時間後の昼頃、エリィの部屋には五匹の猫、八雲紫、エリィ、そしてお手伝いさんがいた。
「ねぇ、エリィ……お手伝いさんが男だったらどう思う?」
八雲紫の言葉でお手伝いさんの動きが止まり、エリィが笑顔で答える。
「さすが幻想郷の賢者様。思いつく質問がとても変化球です!」
(エリィはコチヤーズのメンバー入りして、戦いのさなかでいずれバレるかもしれない。だから早めにバラした方が……いいのよ)
二つのスキマを出現させ、お手伝いさんの頭をつかもうとする。だが、お手伝いさんが素早く八雲紫の右手を両手で抑える。
「もー! 紫さん! 何してるんですかー! お手伝いさんは頭を触られるのがとても嫌がるのにー!」
(この……男子だから力強いわね……!)
八雲紫が右手を引き、スキマを閉じる。
「紫さん……もしかしてお手伝いさんの中身が男だって……そう思っているんですか……?」
エリィがお手伝いさんに近付き、全身をくまなく目でチェックし始める。
「よく私、周りから鈍感って言われるんですよ。でも、さすがにお手伝いさんが男だったら気付きますよ〜!」
エリィが笑顔でお手伝いさんの頭を右手でガシッとつかんだ。
「……あれ? なんかつかんだ? えいっ!」
エリィはカチューシャとかつらをぶんどり、お手伝いさんのオレンジ髪が露わになった。
「……え?」