東方キャラとオリキャラでイナズマイレブンする話   作:みかづき椛

9 / 124
    九話 先制点が決勝点

 ドリブルをする黒幕子と玉兎四人による直進はコチヤーズのディフェンス陣を抜き去った。

「コチヤーズ大ピンチです!」

「誰が撃つ……考えるまでもない。絶対に黒幕子のはずだ」

 ラックはゴール前で黒幕子を注視し、全身に力を込めた。すると、黒幕子は立ち止まり、右足のかかとでボールを軽く蹴り上げると同時に手を使わない倒立前転を決め、右足にオレンジ色の炎をまとい、横回転しながら跳躍した。

「あれは……まさか!?」

 ベンチのカサゴが立ち上がり、驚きの表情で空中の黒幕子を見つめ始める。黒幕子は炎の渦を作りながらボールの目の前まで跳んだ。

「ファイアトルネード!」

 黒幕子は炎を纏った右足でボールを蹴り放った。ボールはオレンジ色の炎をまとい、ラックから見てゴール右上を襲った。

「絶対に止める!」

 ラックは右斜上に跳び、右手を目一杯伸ばす。だが、ボールはラックの手を弾き、ゴールネットが揺れる。審判のホイッスルがゴール決定を告げ、すぐさま試合終了の笛がスタジアムに響き渡った。コチヤーズの選手たちは呆然と立ち尽くし、ゴール内のボールを見つめていた。

「先制点にして決勝ゴール! 黒幕子のアレス版で右足によるファイアトルネードが決まった!! 記念すべき開幕戦は0−1でクリアナイトが勝利したーー!!」

 クリアナイトの決勝ゴールの後、涼やかな表情の咲夜は銀髪の前髪を軽くかき上げた。

「サッカーボールは可燃ごみだから燃やしたってことかしら」

 一方、ラックは悔しそうにゴールポストに右拳を叩きつけた。

「くそ……! 止められなかった……!」

 ベンチに座るカサゴは、両手で顔を覆い、頬を伝う涙を隠せなかった。

「負けたから……私達の世界は滅んじゃうの……?」

 その隣に座る萃香がカサゴの背中を優しくさすった。

「たかが一回負けただけで世界が滅びるのか?」

 カサゴは萃香の質問に答えることができず、ただ体を震わせていた。それを見た萃香は静かに立ち上がり、空を飛び始めた。一方、フィールドでは審判全員と黒幕子を除くクリアナイトの選手達が瞬間移動で姿を消した。そして、黒幕子がリードシクティスの目の前に現れた。

「な……なんですか……」

 リードシクティスは一歩後ずさり、声に怯えが感じられた。

「十日後、また試合をしましょう」

 黒幕子は短く告げて、再び瞬間移動で姿を消した。

 幻想郷の人里の近くに浮く巨大なサッカースタジアムの室内にあるコチヤーズのミーティングルームでは空気が重かった。コチヤーズの一行のメンバーはそれぞれの席に座り、司会のリードシクティスを見つめていた。

「そういえば、みんな負けず嫌いだったかもしれないけど、勝ったらどうなるか、負けたらどうなるかを気にしてなかったわね」

 咲夜の質問に、リードシクティスが静かに答える。

「確かに……言い忘れていました。まず、私達が勝てば、試合に出場した選手を正気に戻し、さらに私の魔法で黒幕子を少し弱体化させることができます。ただ、私達が負けた時どうなるかは、黒幕子曰く『秘密』だそうです」

「つまり、前の神が強制的に黒幕子に与えた魔力をなくすまで、勝ち続けなきゃいけないってことか……一体何回勝てばいいんだ?」

「それは……分かりません……」

 リードシクティスは目を伏せ、魔理沙の質問に答えることができなかった。すると、咲夜が静かに立ち上がった。

「私、チームを抜けますわ」

 その言葉に、部屋が一瞬凍りついた。フナが勢いよく立ち上がった。

「咲夜さん! 負けっぱなしでいいんですか!?」

「……確かに負けっぱなしは嫌ね。でも、第二のゴールキーパーも嫌ですわ」

「止めてやるなフナ。咲夜は後半、我よりキーパーしてたからな」

「咲夜の能力はかなりの制限がかかっていても頼りになりますからね……」

 ボソッとそう言う妖夢は明後日の方向を見ていた。そして咲夜はミーティングルームの出入口に向かって歩き始めた。暗い表情のリードシクティスが咲夜に別れの挨拶をする。

「咲夜さん……ありがとうございました……」

「のびのびプレーできるようになった時、またチームに加わってあげてもいいけど。それじゃあ」

 咲夜はミーティングルームを後にして、キクラゲは軽やかに質問を投げかける。

「あ、咲夜が空いたポジションはどうするの〜?」

「それは……カサゴさんにお願いしてもいいですか?」

 カサゴは一瞬驚いたように表情が揺らいだが、すぐに意を決して頷いた。

「わ……分かりました……!」

「……って、お前の姉はどうした?」

 ラックの質問にリードシクティスが代わりに答えるために口を開く。

「さっき、サバミさんに連絡したところ……今ようやく半分らしいです……」

「はぁ……ならば次の試合も間に合わない可能性が出てきたな」

 その時、早苗が勢いよく立ち上がった。

「とにかく! また特訓しまくって次こそ勝ちましょう!」

 気合いに満ちた声でコチヤーズメンバーの表情に明るさがほんの少しだけ取り戻し、まるで暗い部屋に一筋の光を差し込むようだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告