日本国召喚〜変革する人々の暮らし〜   作:空気の破壊者

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今回は本作で初めての異世界側の回です。


第三回 『通貨代替』

 日本国が異世界に転移して初めて接触したクワ・トイネ公国。今回はそんなクワ・トイネ公国と日本の貿易、それを語る上で重要な出来事であるクワ・トイネの通貨代替を見てみよう。

 

 日本とクワ・トイネ、彼らは接触して"すぐに"貿易をし始めた。これを日クワ貿易と言うが、その内容は日本が『インフラ』を、クワ・トイネが『食糧』を輸出する。というものだった。

 

 普通、貿易というものはお金とモノ、サービスの交換であるが、なぜこのようにモノとサービスの交換となったのか。クワ・トイネと日本の間に為替レートがないからではない。(ないなら制定すれば良いのだ。)

 

 いや、一応、それも理由のひとつなのだが、それよりも『そもそもクワ・トイネ公国が通貨、紙幣を発行していなかった』ことが原因であり、これがなかなか日クワ貿易において致命的であった。

 

 これは日本との貿易においてクワ・トイネだけでなくクイラ王国…否、文明圏外国家は基本的にどこも同じである。

 

 まず、前提知識として異世界の通貨事情を知る必要があるので説明すると、異世界で価値のある金属ベスト3といえば金、銀、ミスリルだ。クワ・トイネで貨幣として使われているのは金と補助通貨として銀である。ミスリルはその希少性と特殊性から武器や防具の材料にされることが多いため少なくともロデニウス大陸では使われていない。

 

 日クワ貿易開始当初、クワ・トイネ側の商人は日本の物を大量購入するため、円を大量に欲していた。

 

 なぜなら日本の高品質な製品はその品質故に多少、割高でも売り切れるために儲かっていたからだ。伸縮性の高い衣服、利便性の高い時計や電卓は特に売れた。

 

 また、クワ・トイネ公国も日本製品に高い関税を課すことで儲かることは予想されたし、日本の製造業界も日本の需要だけでは圧倒的に足りないので貿易に積極的であった。

 

 そのため、内と外の各方面から圧力を加えられた日本政府は貿易を行うため、商人たちから金貨や銀貨などを国内の相場よりも割高で買い取り、円と交換することにした。

 

 当初は貿易も順調だったものの商人たちが日本製品をこぞって買おうとするあまり、クワ・トイネ側の金、銀が日本側に流出した。それにより急激なインフレが発生し、経済危機に陥ってしまった。この状態は例えるなら幕末の日本と似たような状態だ。

 

 また、日本国内では逆に金の価格が下落し続けたため、転移恐慌対策として金を買った投資家たちを悩ませた。

 

 当然、公国の民衆の生活は苦しくなっていた。日本のインフラ整備により日常生活は便利になっていたものの、日本が輸出した公共事業による有効需要の創出はインフレを加速させ、物価を上昇させた。それに加えて水道、ガス、電気の料金を徴収されたことも家計を圧迫する要因になっていた。

 

 この過度なインフレを解決するため、クワ・トイネ公国は日本政府や日本銀行と協議した上で通貨代替を行った。

 

 通貨代替とは、自国通貨と並行して、あるいは自国通貨の代わりに外国通貨を使用することである。クワ・トイネの場合は円を使用するのだ。

 

 クワ・トイネ公国の独自通貨を導入すべきとの主張も公国内ではあったのだが、紙幣発行の技術も中央銀行の運用のノウハウがなく、預金通貨を記録する電子システムの構築に時間と手間がかかり、即効性が欠けることからその主張は退けられた。

 

 また、地球世界でもエクアドルやエルサルバドルなどの大規模な経済危機に直面した国が通貨代替を利用し、効果があるのは保障されていたことも決定の要因の一つである。

 

 一方でクワ・トイネだけでなく、日本側にも通貨代替はメリットがあった。

 

 まず一つは貿易の取引コストの削減が挙げられる。為替レートの変動が貿易に少なからず影響を与えていることは事実であり、また、為替相場の運営仕事量が減ることは、確実に日クワ貿易において双方に莫大な利益を生んだ。

 

 そして仮にも独自通貨を導入する場合、クワ・トイネ側が食糧輸出で経済的に、政治的に優位になるのは日本政府に取って望ましくなく、通貨代替によって日本円を介して経済的・金融的な面で主導権を握れるようになり、将来的な経済統合も容易になることが予想された。

 

 円の導入当初は公国民からすれば円は紙切れ同然であり、使うつもりは毛頭なかったため中々普及しなかったが、円を法定通貨にして公国への納税義務を課したことで普及が進んでいった。

 

 このようにして通貨代替を行った結果、クワ・トイネ公国における急激なインフレは終息していき、健全な経済成長を促した。また、日本の投資家や銀行などによってクワ・トイネに対する投資が加速、それによる経済成長、と更なる好循環を生み出し、公国民の懐事情を豊かにした。

 

 そして公国民の所得増加、つまりは購買力の増加は日本経済、主に製造業界においてプラスとなっていった。

 

 このクワ・トイネの日本との交流の成功は『クワ・トイネモデル』と呼ばれ、後にクイラやアルタラスなどの親日国は次々とクワ・トイネに倣って日本円への通貨代替を行ったため、異界の大東洋に巨大な円経済圏が構築された。

 

 こうして、日本は意図せずして覇権国になる条件の一つ、『基軸通貨の地位』を手に入れたのである。

 

 





今回で春休み分は終了となります。

次回は早くてゴールデンウィーク、遅くても夏休みに投稿します。気長にお待ちください。

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