【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。   作:貧弱一般メガテンプレイヤー

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 前回の話でそういえばあの人とあそことは絡まなかったなと思ったら、ネタが降りてきたので書きました。
 という訳でまた三馬鹿ラスin魚沼支部な話です。
 名無しのレイ様申し訳ございません。

 あとやっぱり外伝・アンソロジー時空という事でお願いします。

 マカーブルさんよりFAを頂きました、ありがとうございます。

 「シスター桜子からのお礼」

 
【挿絵表示】



12

「この度は、本当に申し訳ございませんでした。なんとお詫びすれば――」

「いやいや、今回はむしろこっちがやらかした様なもんだから! 謝られると困る!」

 

 

 新潟は魚沼支部の支部長室。

 そこに立場は違えど責任ある者と書いて責任者である二人が、互いにすいませんでしたと頭を下げ合うというある意味日本らしい光景があった。

 例えやらかしたのが己でなくとも責任を取らなくてはならないのが責任者の役割である――責任から逃げる者こそが責任者という立場に成れるという意見も世間にはあるが。

 

 責任者の一人、一神教サクラコ派の大幹部にして、一神教新潟支部支部長の歌住桜子が只管ぺこぺこと頭を下げ、もう一人の責任者、ガイア連合魚沼支部支部長、碧神凍矢こと田舎ニキが頭を上げさせ逆に己が謝罪する。

 彼らの個人の関係と、ガイア連合と一神教派の力関係を思えば中々に珍妙な光景であった。

 何故このような事態が起きているかというと――

 

 

「しかし私共が、黒札の方を暴行したのは事実で――」

 

「いやまあ真面目に言えばそうかもしれないけど、あれは暴行というよりツッコみというか、むしろ良くやった、という類だからさ」

 

 

 ――魚沼支部で既に山梨に帰ったバカ共がバカやった結果*1、コハル嬢に天罰叩き込まれた件の余波であった。

 恐縮しきりの桜子に対して居たたまれない気持ちを抑えられない田舎ニキ。

 状況だけ見ればガイ連の支部の中で一神教所属の天使人間が黒札を攻撃したという図であり、普通に考えると問題になるであろう事件である。

 実際魚沼ではほむらが桜子を殴って問題になり色々と田舎ニキが骨を折って何とか事態を収めた*2という事があったのだ。

 

 が、これに三馬鹿ラス、森田、下ネタトーク、という今回の件の切っ掛け、要は何時もの連中のやらかしを混ぜてみるとあら不思議。

 

 外様や外部の連中は兎も角、ガイ連においては全く問題がない、事件性のない一件と変化してしまう――少なくともガイ連の幹部や名高き強者で問題視する者は皆無通り越して絶無であろう。

 

「この件でガイア連合が騒いだり問題視する事は絶対にないし、俺もホントに問題と思ってないから安心していい。ぶっ飛ばされた三人だって納得してる――逆に問題にするって言ったら絶対抗議すると断言してたし」

 

 勿論問題にする気がない派である田舎ニキがそう言って説得する。

 この件で騒ぐ者が居たとしても少数で、普段からメシアンだけでなく、キリスト教や一神教派を絶対否定したい様な層だけだろうと田舎ニキは考えていた。

 

「なにそれ超ウゼェ。そいつらアレか? バラエティで食い物使う度『この後スタッフが略)』テロップないとクレーム入れてくる様なスカポンタンか?」

「タバコ吸うキャラでるアニメをガキに見せんなとかわめくPT〇のジジババ共かってんだ。そんないちゃもんで世の中がマシになる訳でもねーだろーによ」

「そんな連中こそが世の中や色んな物を歪ませるんです。自分がつまらないのは勝手ですが世界や創作物までつまらなくするのは止めて下さいってんですよ」

 

 ぶっ飛ばされた当人達のこの件を問題視する事についての発言である。

 何か別の話というかベクトルが明後日に向いてる気もするが、兎も角肝心の当人達が全く問題に思っておらず、逆に問題視する相手にこそ怒りを向けるという証明であった。

 

「という訳で、今回の件は大丈夫だし謝罪も不要だ。一神教派の女の子に一時的だけど魚沼所属の黒札がセクハラした様なもんだからむしろこっちが謝らなきゃいけない話だろ。もしあの子が気にしてたら気にしなくて大丈夫だと伝えておいて欲しい」

 

 そう伝えて安心させようとする田舎ニキだが、桜子の表情はなおも優れない。

 

 

「そう言って頂けるのは本当にありがたいのですが、長岡での事も含めて何もなしとする訳には――」

 

 

「え、なにそれ」

「えっ」

 

 桜子の答えに素で返す田舎ニキ。

 そんな田舎ニキにこちらも素になる桜子。

 田舎ニキのこめかみから頬へと一筋の汗が流れた。

 思えば、あの三人は魚沼滞在の間それこそ糸切れ凧の如く、あっちゃこっちゃふらふらした挙句、何時の間にか彼方此方に紛れ込んで居た。

 

 桜子の言葉と反応は、こちらが把握してなかった事件があった何よりの証な訳で。

 

 そして、それはこちらが知らぬ間に、連中がまた何かやらかしているという訳で。

 

「……何があったか教えてくれる? 最初から。全部」

 

 あああああああああ!!と叫びたい衝動を堪えて、まず詳細を求める田舎ニキだった。

 

 

 

 

 

 

「オジャマシマス! ドーモ。はじめまして桜子=サン、サスケニキとおまけ二名です」

「誰がおまけじゃクォラ! チイッス、ヨロイニキっす、今後ともよろしくオナシャス」

「まともに挨拶しなさいよ。どうも初めまして、クロマニキです。バカ二人が失礼しました」

 

 新潟は長岡市の一神教派・新潟支部。

 ある日、静かなこの支部にどびきりの異物、三馬鹿ラスがエントリーしていた。

 

「初めまして。私はここ新潟支部の支部長を務めております歌住桜子と申します。皆様の事は凍也様よりお伺いしております。ようこそいらっしゃいました」

 

 突如やって来た黒札、しかも以前予め田舎ニキより教えられていた、まあ何というか凄く特殊で知られる黒札達*3に桜子は内心動揺していた。

 彼らが何故やって来たかという理由に思い当たるものがあるが故に。

 

「この度は、誠に申し訳ございませんでした。本日はコハルが不在の為、まず私が謝罪させて頂きます」

 

 深々と頭を下げ、真摯な謝罪を行う桜子や他のシスターフッド達。

 そのままだと土下座までしそうな様子に慌てて止める三馬鹿ラス。

 

「わー! タンマタンマ! その件で来たのは確かだけど別に謝れって話じゃないから!」

「そーそー! あの子が居ないタイミングオレらずっと待ってて! だから今日来たんだし!」

「取り合えずこれを受け取って読んで下さいシスター桜子! 話はそれからお願いします!」

 

 そして渡された封筒に入っていた手紙には『今回ぶっ飛ばされた件は問題にしないよ』という内容が無駄に丁寧で無駄に文学的に無駄に学術的に見えるように延々と書き連ねられており、更にその旨を確約する念書も一緒だった。

 

「これは……よろしいのですか?」

「だってツッコみにまでいちいち文句つけるとか、空気読めてなさすぎだろってレベルじゃなくない?」

「んなつまんねー連中のつまんねーいちゃもんに、オレらがわざわざつき合う理由も義理もねーし」

「正直勝手にお気持ち代弁されるなんて冗談じゃねーですよって話ですから。なのでそうなる前にと」

「――お手数をお掛けして、誠に申し訳ございません。そしてお気遣い頂き、本当にありがとうございます」

 

「「「やめてやめて! そういうのがヤだからあの子(コハル)居ないタイミング狙ってたんだから!」」」

 

 先程より更に深く頭を下げる桜子達にだから謝んないでと頼む三馬鹿ラス。

 

 こいつらにしてみれば公正なる果たし合い(ノリツッコミ)された様なものなのに、相手が悪者にされたり、非常に恐縮されるとか尻の座りが悪すぎるので何とかしようとしただけなのだ。

 

 その結果感謝されたり頭を下げられてはきまりが悪くなるばかりである。

 この三人も彼女達のブルーアーカイブ(青春の物語)を楽しみ、眺める黒札達の一人なのだ。

 え、一応こいつらもDKで青春真っ盛り?

 

 

 こいつらと彼女達の青春は月とスッポン、と言ったらスッポンが怒ってメギドラオンしてもおかしくないぐらいに、もはや言葉も出ぬほどのスゴイ・シツレイだからね、仕方ないんだ。

 

 

 なお、この件でもしコハル嬢に何かあったり彼女が罰を受けたりしたら、自分達もヤバイのでは?と考えたのが秘密の理由であった。

 

 コハル嬢は聖園ミカ*4の恩人で、ミカは錠前サオリ*5の友人で、更に白洲アズサ*6のプロトタイプ。

 更にアズサは幼女ネキの実子イズナの親友だし、友達の友達は友達理論なら放課後スイーツ部*7とも繋がっていると言えない事もない。

 つまりコハルに何かあったらその原因となった自分達に、幼女ネキやスイーツ部推しの黒札達の怒りや呪いその他がくるんじゃね?とこいつらは考えたのである。

 

 

 それだけ無駄に色々と頭回るなら日々の言動も少しは改めろ?それが出来るなら三馬鹿ラスなんて呼ばれてはいないし、『笑ってはいけない人生録』なんてドキュメンタリーが作られません。

 

 

 兎も角この件はここまでという宣言の為やって来た三馬鹿ラスは歓待され、幼女ネキも絶賛のフレンチトーストと葡萄ジュースをご馳走になり『うまいっ、こらうまい!』とがつがつと貪ったのであった――御代わり分は一神教派の財布事情を鑑みて流石に自腹を切ったが。

 そしてそんな三馬鹿ラスを見て安心したのか、只でさえ仕事の多い桜子はその場を部下達に任せて一時離れたのである。

 

 なお、後に笑ってはいけない人生録でこの場面を見た破魔ネキ、キノネキ、ちひろネキは『駄目!』と思わず叫んだという。

 

 そして、部下の知らせを受けた桜子が取って返した時には――

 

 

 

「大量のポテトチップスに味変用のケチャップ、マヨ、チーズ、黒胡椒もあるぞ。え、ご飯食べられなくなる? ムッハハハハハ! それがいいんだよ! その背徳感が『いい』んじゃあないかッ!」

 

「いいか? こうすると、ほら車が奪えんだ。で他にも店に入って金盗むのもアリだぜ。悪い事はダメって? おいおい、だからやるんじゃねーか、ゲームでこそ悪い事すんだよ。リアルじゃ出来ないからな」

 

「さてこの何の変哲もないグラビアの水着写真。これを黒のマジックで水着をこう塗りつぶすと……ふふふ、まさにマジックでしょう? 貴方達も成長したら下の子達に教えてあげなさい、今の私の様に」

 

 

 

 ――新潟支部の子供達を『暴食』(間食)『強欲』(GTA)『色欲』(水着写真)という悪の道へと誘う三馬鹿ラスの姿があった。

 

 その姿、まるで子供にちょっとダメな事や悪さを教える近所のおっさんや親戚のあんちゃんの如く。

 

「何をなさってるんですか!? 子供達に変な事教えてはいけません!」

 

「変な事などではない! 子供の内にこそ危険がアブナイ事や青少年のなんかがアブナイ事を教えて経験させとかないと、却ってダメな大人になる!」

「そーだそーだ! ガキの頃に悪さもイタズラも全然やらないイイ子なんて、そんなのもうガキじゃねーし! 大人になってからヒデえ事になるぞ!」

「正しい姿とは、目に見える健全さと、目に見える不健全さとが両方確かにあることです! 不健全さを持たない人間は、逆に健全さだって成り立たない!」

 

「なにかむずかしそうなこと言ってるー」

「さくら子さまとケンカしてるの?」

「でもこのゲームおもしろいよ」

「ポテチおいしい」

「この写真ハダカみたいに見えるのなんでかな?」

 

 また性質の悪い事に子供達にとっても、責任がない故に親や教師、シスター達とはある意味真逆の事を言って教える三馬鹿ラスは新鮮であり、無頼で自由な、何かちょっと凄い大人に見えていたのである――間違いなく目の錯覚だが。

 

「ど、どうしましょう桜子様」

「止めないと駄目ですよね? でもどうやって……」

「……私が話し合って時間を稼ぎますので、その間に何とか子供達を」

 

 一体どうしたものかと戸惑い悩む、桜子とシスターフッド達。

 これがガイ連、というか黒札ならうるせぇ黙れと鳩尾にワンパン入れて黙らせて強制排除で済むのだが、彼女達がやるには実力面は兎も角他が色々と不味かった。

 優秀なシスターにして百戦錬磨の桜子も、過激派メシアンや天使、クレーマー黒札やメシアン被害者の人達といった相手への経験はあっても、こういう珍獣カテゴリな連中との経験はない。

 

 どんな歴戦の狩人でも初めての獲物と対峙した時にはただの初体験者だとゴ〇ゴ13も言っている。

 

「よーし、それじゃあ今夜は夜更かしからの映画やアニメの鑑賞会だー!」

「おまけに深夜の町の探索イベもやっちまうぞ! 近場のコンビニぐらいだけど」

「更に背徳、且つ愉悦の深夜の凶悪コンビニメシもいっちゃいますよー!」

 

 そんなシスター達を尻目に更なる悪への誘いを企む三馬鹿ラス。

 こいつらに特効のエ駄死(天罰)を使えるコハルは不在であり、その気になればこいつらを割と簡単にボコれる桜子はそれをするには理性と忍耐が強過ぎる。

 

 

 ああ、もうダメなのか!シスター桜子とシスターフッド!屈してしまうのか!子供達はこのまま悪の道へと墜ちてしまうのか!

 

 

 その時!猛烈な速度で『何か』が天より舞い降り三馬鹿ラスの傍へと轟音と共に着地した。

 

「な、何だ!?」

 

 思わず叫んだサスケニキの声に答えるかのように、土煙の中から現れた『何か』は叫んだ。

 

 

 

「我こそはサレムの王にしていと高き神の祭司! アブラハムにカバラの秘儀を伝えた祭司! 『大天使メルキセデク』である!!」

 

 

 

「「「アイエエエ!? 大天使!? 大天使ナンデ!? コワイ!」」」

 

 

 おお、見よ!まるでパワードスーツのような手足を!『正義狂』にして『正義卿』のエントリーだ!

 

 一神教派の切り札とも言える頼もしき大天使メルキセデク*8の登場に、しかし桜子は喜ぶどころか顔色を変えた。

 

「待って下さいメルキセデク様! この方々はその、何というか、悪とはちょっと違うと言いますか! それにガイア連合の黒札の方々なんです! 落ち着いて下さい!」

 

 血相変えた桜子が必死にメルキセデクを説得して止めようとする。

 何しろこのメルキセデク、ガイア連合の十戒プログラムでも縛られるどころか逆にパワーアップするという完全に向こう側のイカれた正義バカである。

 いくらガイ連屈指のバカ共とはいえ、仮にも黒札を一神教派の大天使が天罰覿面とフルボッコにしたら流石にシャレですまないのだ。

 しかしメルキセデクから返ってきたのは桜子も、ついでに三馬鹿ラスも予想外の返答であった。

 

 

「――成程、君の言う通りだ。確かに彼らは『悪』ではない」

 

 

「「「「えっ」」」」

 

 じっと三馬鹿ラスを見つめてからの言葉に、桜子どころか三馬鹿ラスすら思わず素で返す。

 が、バカ共は即復帰して歓声を上げる。

 

「許された! 俺たち、許された! ヤッター!」

「さっすが~、大天使様は話がわかるッ!」

「無罪! 閉廷! 皆解散! では失礼します!」

 

 しかし――

 

「――何を勘違いしている。まだ我の裁定は終わってはおらぬ」

 

「「「ひょ?」」」

 

 

 

 

 

「そう、汝らは悪に非ず――――汝ら『悪ガキ』なり! 修正ィイイイイ!!」

 

 

 

 

 

「「「ぎょえーーーーっっ!!!」」」

 

 

 

 ――こうして、新潟支部を襲った悪改め、悪ガキ達は正義の大天使の手によって討たれたのでした、メデタシメデタシ。

 

 

 

 

 

 

「その、誠に、申し訳なく……」

 

 そう言って深々と頭を下げる桜子に、そーいえば何時だったかあいつら某クレヨン幼稚園児みたいに頭をたんこぶで埋め尽くしてた時があったなあ、と田舎ニキは遠い目になった。

 何時もの三つ巴の取っ組み合いの結果だろうとスルーしていたが、その時点で何があったと聞いとくべきだったと後悔する田舎ニキだが、後悔は先に立たないのである。

 

「あー……何というか、取り合えずたんこぶ程度で済んで良かった、というべきかな? あいつが悪認定してボコボコにしなかったのはちょっと驚いたけど」

 

 実際面識があり、メルキセデクのイカレっぷりを知る田舎ニキからするとそれが素直な感想であった。

 

「それがメルキセデク様曰く『悪ノリは感じたが、同時に子供達への気遣いも確かにあった』と。『幼き頃の誤った節制や規律が原因で、己のみならず周囲をも不幸にしてしまった者達を知っていたのでは』とも」

「ああ、成程」

 

 桜子に教える訳にはいかないが、同じ転生者である黒札として、連中がそんな人に会った事があるのではなく、前世でニュースその他の知識をそう思われたんだろうと、田舎ニキは理解した。

 

 なお桜子達の名誉の為に言っておくと、別に新潟支部の子供達がそんな厳しい環境におかれていた訳では断じてない。

 

 ただ真面目で熱心な信徒である彼らの真面目な日々の過ごし方は、魂の底から属性ヒーホー・おバカなあの三人にはあまりにもお堅く思えてしまったのであろう――もっと自由に、もっとハジケろと。

 

「それでさっきも言ったけど、どっちの件も俺もあの三人も問題にする気はないし、多分ガイア連合の幹部の人達も問題にしないから。これで文句言ってくる様なのは何もなくても何か言ってくる様な類だから気にしなくていい、俺も気にしない。何ならあいつらみたいに文書にしようか?」

「いえ、そこまでして頂く訳には……誠に申し訳ございません、重ねて、本当にありがとうございます」

 

 そう伝える田舎ニキの提案に、奥ゆかしく遠慮した桜子が再び深謝した。

 

 実際この件を聞いて『天使連中が黒札を殴った?カチコミじゃあ!』と沸騰した天使・メシアン嫌いの黒札達も、殴られたのが三馬鹿ラスで、且つ原因を知るとスンッ…と即鎮火したという、仕方ないね。

 

 下げていた頭を上げた桜子が改めて話を変える様に話始める。

 

「それで、本日は謝罪と共に改めてお礼を申し上げるつもりだったのですが、皆さまは居られますか?」

「あの三人ならもう山梨に戻ったけど、ってお礼?」

「はい、有難くも寄付を頂きまして。そうですか、もう一度お礼を申し上げたかったのですが、残念です」

 

 既に連中が居ない事に残念そうな桜子と、その発言に驚きを隠せない田舎ニキ。

 三馬鹿ラスがノリとか精神レベルの近さ故か、子供相手には何だかんだ割と気前の良い事は、連中を知る者達には知られている。

 

 しかし教会とかに寄付だの献金だのをする程殊勝でも信心深くもなく、ガイ連全体のメリットを考えて一神教派への援助を行う様な思慮深い連中ではない事も、また知られている。

 

 ノリとその場の勢いなら考えられるが、教えてもらった内容*9は、高レベル覚醒者から見れば大した物ではないが、あの三人の現状のレベル他を鑑みるとノリや勢いで使うのは躊躇われる程の額であった。

 

「お礼の件はこっちで三人に必ず伝えておくから――けど、そうか、あの三人がねえ……」

 

 そう言って窓の方を向き、外へと視線を移す田舎ニキ。

 別に魚沼支部所属でもなく、友人と言う程に関係が深くもない、強い方の三馬鹿*10と並ぶトラブルメイカー、それが田舎ニキにとっての三馬鹿ラスなのだが。

 

 

 例えるなら、不良が雨の日に、捨て猫に傘をさしてあげるところを見た様な。

 

 または、クラスの問題児が放課後一生懸命掃除をしているのを目撃した様な。

 

 そんな思いを抱いて、静かに青空を見つめる田舎ニキなのであった。

 

 

 

 

 

 

 さて、ここで少し時を戻そう。

 三馬鹿ラスが一神教派の新潟支部を訪ねた日である。

 一神教派新潟支部を後にした、頭たんこぶだらけの三人。

 しかし、何故か先頭を歩くサスケニキから割と距離を取った後方に、ヨロイニキ、クロマニキが並んで歩いていた。

 また、どういう訳か彼らの間には酷く寒々しい雰囲気が漂っている。

 そんな空気に耐えかねたように首だけで振り返ったサスケニキが言う。

 

「……何だよ」

 

 そんなサスケニキに絶対零度の眼差しを向ける二人。

 

「何だよ、だぁ?」

「ほう、そうきましたか」

 

 

「「――何だよぅじゃあねえんだよぅ!!」」

 

 

「アバーッ!」

 

 助走付けたダブルジャンプキックがサスケニキにヒット。

 更にダウンした所に欠片も容赦のない追撃のマッハふみふみが炸裂する。

 

「ふざけてんじゃねえぞ! このドアホ! ボケ! もし人類が足の裏だとしたら水虫ポジション!」

「別に貴方が自分の金どうしようと勝手ですよ! でも何で私達の報酬まで勝手に寄付してんですか!」

 

 そう、クロマニキの言う通り、サスケニキは今回魚沼で滞在中に受けた複数の依頼の報酬を、しかも他二人の分まで全部新潟支部に置いてきてしまったのである。

 こっちでも遊んだり何か買ったりするので、貰った報酬で経費や滞在費その他に使い、山梨に帰ってから分配しようとまとめておいた事、そしてそれを(一応)リーダーのサスケニキが持っていたのが悲劇の原因であった。

 

「ま、待った! 待って下さい! お二方! これには、これには深い訳が、訳がー!」

 

 袋叩きにされていたサスケニキが必死に叫んで理由を話し始めた。

 

 

 

 

 

 色々とあった後、取り合えず魚沼支部に帰ろうとする三馬鹿ラス。

 桜子達に見送られる中、サスケニキがふと思いついて足を止めた。

 

「あ、先行っといてくれ。俺ちょっと用事出来たんで」

「? どしたよ急に」

「あの葡萄ジュース美味かったから買っていこうかなと」

「ああ、成程。じゃ私達は先帰りますね」

 

 シスターフッドに挨拶された二人が新潟支部を後にし、残ったサスケニキは桜子に案内された購買にて葡萄ジュースを持ち帰り用の数本に加えて一箱分を山梨へ郵送を頼む。

 

「配達お願いしますね。じゃ俺もこれで、オタッシャデー!」

「はい、畏まりました。そしてこの度は本当に申し訳なく……」

「あー、それはクルシュナイというか、ダイジョブダッテっつー事で」

 

 そして支払いを終えたサスケニキが、先に行った二人を追おうと桜子に見送られながら、気まずそうにそそくさと支部を出ようとした時である。

 サスケニキの懐から袋が落ち、ドサッと小さな音を立てた。

 勿論サスケニキはそれに気付いていたが、突如更に何かに気付いたように目を見開くと、そのまま袋を拾う事無く歩き始める。

 

「あ、もし! 落としましたよ! すみません! これ落としましたよ!」

 

 それを見た桜子がすぐ声を掛けるが、サスケニキの歩みは止まらない。

 慌てた桜子が袋を拾って追いかけようとすると、サスケニキが首だけで振り向き、強い視線を送る。

 その瞳に明確な拒絶と追うなという意思を見た桜子は戸惑いながらも足を止め、そのままサスケニキは振り返らず足早に立ち去って行った。

 

「……どうしましょう、これ。魚沼支部に届ければいいでしょうか?」

「でも、明らかに持ってくるなって雰囲気でしたし、届けるのも不味いのでは?」

「取り合えず、中を見てみませんか?」

「……そうですね。仕方ありません、確認しましょう」

 

 困惑しどうしようと悩む桜子だが、シスター達の提案に従いやむを得ず袋の中を開ける。

 

「これは……マッカ、それに魔石も」

「魔法石や少しですけど宝石もあります!」

 

 中身を見て、そしてさっきのサスケニキの振る舞いを思い出した桜子達は、これはサスケニキの、いやヨロイニキ、クロマニキら三人からの寄付だと受け取った。

 

 既に後ろ姿の見えなくなったサスケニキが歩いて行った方向へと、桜子とシスター達は深く頭を下げたのであった。

 

 

 

 

 

「……いや、どこに袋ごと金置いてく理由があんだよ。ふつーに拾えばいいだけじゃねえか」

「どこをどう聞いても、どこをどう考えても深い理由も訳も全く見えてこないんですけど?」

 

 サスケニキの説明に足蹴と止めて全然分からんという反応をするヨロイニキとクロマニキ。

 そんな二人に真剣な顔と雰囲気でサスケニキがそれはだな、と説明を続ける。

 

 

 

「落とした財布を自分で拾わず、SPも拾わない。そんなラオモト=カンムーブ*11のまたとないチャンスだと――」

 

 

 

「「プーさん蹴るなぁ!!!」」

 

 

 

「グワーッ!!」 

 

 さっきとは倍の速さと強さで二人掛かりのストンピングが容赦なく再開!

 

「死ね! 股関節からかいわれ大根生やして死ね! マジふざけんじゃねーこのモスキート!」

「シスターに私達の分返して貰って来なさい、こんのド低能がァッ! くされ脳みそがァーッ!」

「ヤダーッ! そんな折角のラオモトムーブが完全にネコソギ吹っ飛ぶ真似絶対ヤダーッ!!」

 

 亀の如く丸まって護身の構えで耐えるサスケニキが蹴られながらも叫ぶ。

 

「お前らがいけばいーじゃん! 渡す袋間違ってましたとか言ってさあ!」

「出来るかぁ! んなマネしたら新潟シャバ僧ランキング堂々の一位にして殿堂入りになっちまうだろーが!」

「なんで貴方のやらかしで私達がそんなカッコ悪すぎる姿を晒さにゃならんのです! この下の下の更に下!」

「つ、つまり誰も返してもらう気がない、と。そういう事でシスター桜子達は喜び、俺らも徳を積めた、という事でめでたしめでたしでこの話は終わりに――」

 

 

「「お前は教会出てからたわ言しか言ってないって自覚がねえのかこの怪人梅雨明けのロッカーの中のカビた体操着男があ!!」」

 

 

「あんぎゃー!」

 

 体力の限界まで高速ストンピングを繰り返した二人はぜえぜえと息を荒げながら善後策を話し合う。

 

「どうするよ? このハードコアバカは取り合えず気の済むまで殴るとして、金については良い手もねーし、返してもらうのはもう諦めるか?」

「そっちはもう諦めるしかないでしょうね……損失分はこの愚か者に払わせましょう。ウシジマニキ*12の所連れてって内臓売ってでも払わせます」

 

 しかし、それは大いなる油断にして二人のウカツであった。

 サスケニキは只管亀の様に耐え続ける事で、二人の隙と疲労を待っていたのである!

 

「逃げる戦士は追う戦士より遠ざかるので致命傷は受けにくい!」

 

 地に手を突いたままシャカカカカという音の聞こえそうな動きで逃げ出すサスケニキ、その姿まさに台所のGの如く。

 

 

「逃げるは恥だが役に立つ! あーばよとっつあーん!」

 

「貴様ァァァ! 逃げるなアア!! 責任から逃げるなアア!」

 

「逃げるな! 生きる事、じゃなくて借金から……逃げるな! これは、命令です!!」

 

 

 途中から二足歩行の人類に戻って全力で逃げていくサスケニキを、ヨロイニキ、クロマニキがそのまま逃がす訳もなく。

 逃走した債務者へと、即座に殺してでも止める覚悟の元に追跡を開始。

 

 こうして夜明け近くまで彼らの鬼ごっこは続いたという。

 

 なおこの時、アガシオンは三人に気付かれぬ様、こっそり新潟支部へと向かっていたが、三馬鹿ラスに感謝する桜子達の姿を見て、再び気付かれぬ様に静かに新潟支部を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 その後の事だが、最終的には追いかけっこするうちに冷静さを取り戻した二人が『例えウシジマニキのとこ連れてってもコイツじゃ碌な金にならん』と気付いたので、スタンダードに今後の依頼の報酬から差っ引いて払わす事で合意した。

 出来ればネコソギ没収したいが、サスケニキの役割上*13戦闘コストが掛かり、それを無しにすると逆に自分達が苦労させられる為、断腸の思いで経費分は認めたヨロイニキとクロマニキであった。

 

 

 しかしその腹いせに、二人がクロアネキ等の友人・知人やおガキ様達に『あいつは財布を落としても拾わない』という情報をばら撒いた結果、暫くの間サスケニキが武器落としならぬ財布落としを彼方此方でしかけられ、『バカナー!』『アバーッ!?』『アイエエエ!』『俺の金ー!』というサスケニキの悲鳴が山梨支部に響く事になり、ヨロイニキとクロマニキ、そして臨時収入のあった面々はご満悦だったという。

 

 

 なお、後日笑ってはいけない人生録で詳細を知った田舎ニキはチベットスナギツネみたいな顔になって桜子達には真実を秘密にする事を誓うのだが、それはまた、別の話である。

 

 

*1
11話

*2
ボンコッツ様作。改造人間短編集 開催!ガイアプロレスIN新潟!(上) より

*3
極厚のオブラートに包んだ表現

*4
頓西南北様作。ファッション無惨様のごちゃサマライフ に登場する天使人間の実験体。施設から脱走して中国から日本まで逃げて来た身も心もタフな主人公補正持ち。某ようじょの心のタマタマを縮み上がらせた凄い娘

*5
名無しのレイ様作。【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち に登場する現地民ペルソナ使い。元は人造救世主兼ペルソナ使い計画の実験体で、魚沼支部の対ペルソナ事件チーム・アリウススクウッドのリーダー

*6
タマヤ与太郎様作。【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策 に登場する悪魔人間兼人造人間。黒札基準でも一流のペルソナ使いにして鋼メンタル持ち。ただし元々か、ようじょ母娘の影響か、なんかズレた所アリ

*7
頓西南北様作。ファッション無惨様のごちゃサマライフ に登場するスイーツ食べ歩きの為に悪魔退治をする女子高生4人組。物騒過ぎる話だがメガテン世界故致し方なし。バンド活動始めた結果『黒札泣かせ』という異名がついた

*8
名無しのレイ様作。【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち に登場する大天使。呼ばれたくない本霊と無理矢理呼びたい過激派の狂気のミックスでヒドイ事になった。スクールウォーズのBGMと共に敵味方両方の天使を殴っている。こんなでもまともより天使扱いされるのだから色々と救いがない

*9
寄付の内容を聞くのも教えるのもあまりマナーが良いとは言えないが、田舎ニキの立場では一神教派の物資や財政状況は地域の防衛や効率的な支援等のためにも把握する必要があると筆者が思ったので

*10
幼女ネキ・カス子ネキ・脳缶ニキの三人の事。高レベルで鎮圧が難しいという意味では一発殴ればいい三馬鹿ラスより厄介と言える方々。何故か彼らのフォロー&抑え役に田舎ニキは就職している

*11
財布を拾うのに費やされる時間の浪費が、ラオモトが回している経済規模を鑑みると、財布の中身とはまるで比べ物にならんから、らしい

*12
塵塚怪翁様作。【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法 に登場する黒札。関西支部支部長代行で元は霊能絡みの人身売買を含む闇金系派遣仲介業者にしてデビルバスター&ダークサマナーのまとめ役という絵に描いた様な闇の転生者勢の一人

*13
速特化を活かして先手でスキル・道具で弱点突いたりバステ・デバフを与える




 ―以下どうでもいいバカ共の設定―

 ガキなんてイタズラや悪さしてなんぼだろ、勉強が好き?ああ親に言わされてんだと思っちゃう筋金入りの属性ヒーホー共。
 小学生の頃嫌いなものにバカ正直に〇TAと書いて怒られた事がある。

 お気楽極楽、明日は明日の風が吹くさケセラセラな連中なのでガンギマリ系はちょっぴし苦手。
 嫌いというより、「俺らみたいのがガチな人らに水差しちゃ不味いよな」という感じ。
 以前マカーブル氏の作品で黒死ネキがこいつらハルカには妙に遠慮してると発言しているが、それはこういう思いから――なお、あくまでこいつら基準の遠慮なので注意、プラスその場のノリ。

・アガシオン
 桜子達の様子を見て無言で新潟支部を去った。
 それが義侠心によるものなのか、寄付による桜子達とのコネを重んじたのか、それを彼が語る事はない。



 そういえば一神教派やシスター桜子とは絡まなかったなと思ったらなんかネタが降りてきました。
 昔の漫画やアニメだとこういうポジのおっさんや兄ちゃん結構いたけど今はどうなんですかね?
 名無しのレイ様、田舎ニキのストレス原因増やして申し訳ございません、強い方の三馬鹿と違って一発入れたらOKなのでご安心をw

 それでは最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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