【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。   作:貧弱一般メガテンプレイヤー

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 頭の良いキャラは頭が良くないと書けないという言葉を実感しました。
 何時か登場させたかった方を登場させてますが解釈違いじゃないかと不安。
 今回三馬鹿ラス達の出番は比較的少なめとなります。

 またいつも通り時系列その他を無視した外伝やアンソロジー時空とお考え下さい。

 マカーブルさんよりまたFAを頂きました、ありがとうございます。
 ネタバレ防止であとがきに掲載させて頂きます。


13

 世界が大騒ぎの中、まだまだ平和な日本。

 そしてその日本の中で最も平和な場所、ガイア連合山梨支部。

 制作部の方から何やら爆発音が聞こえたり、キックボードに乗ったでこっぱちな少女が多数のナマモノ本被害者に追っかけられてたりするが、平和なのである。

 

 そんな山梨支部を歩く、マッチョで疵面(スカーフェイス)なナイスガイこと霊視ニキ。

 仕事の報告へ向かう霊視ニキはふと隠形の、しかも修羅勢未満では気付けないレベルのそれの気配に気付き、足の向きを変えてそちらに向かう。

 

 その先には――

 

「誰かと思えばセツニキか」

「よう霊視ニキ」

 

 ――同じ古参幹部のセツニキが居り、セツニキの視線の先には。

 

「あのクソガキ(黒死ネキ)の映像で見ればいいだろうに」

「生には生の良さがあるもんだぜ?」

 

 霊視ニキも良く知る――企みを鎮圧したり、逃げたのをとっ捕まえたり、拳固いれたり、デコピンで吹っ飛ばしたりした――三馬鹿ラスの姿があった。

 

 面白そうに連中を観察するセツニキとは裏腹に、何かやらかそうとしたら鎮圧する気の霊視ニキ。

 そんな彼らに気付く事無く、真剣な様子の三馬鹿ラスは取り出したレコーダーのスイッチを入れる。

 

 

 

『えーマジ童貞!? キモーイ! 黒札が許されるのは人間童貞までだよねー……それも仕方ねェか……“三馬鹿ラス”は所詮……口だけスケベの“敗北者(ヘタレ)”じゃけェ……!!』

 

 

 

「「「ぐふうっ!」」」

 

 レコーダーから流れる義妹ポジ(カス子ネキ)の声とその台詞、そして一斉に蹲る三馬鹿ラスという光景になんだこれという顔になる霊視ニキ。

 やっぱり霊視ニキ達に気付かない三馬鹿ラスはふらつきながらも立ち上がると、サスケニキが叫んだ。

 

「ぐうう……な、何のこれしき……! 転生者五つの誓い!! 一つ!」

 

「「「エンジョイ&エキサイティング!!」」」

 

「一つ!」

 

「「「考えても分からない事は考えない、それより面白い事を考えよう!!」」」

 

「一つ!」

 

「「「Y談をする時は誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。三人で静かで豊かで……!」」」

 

「一つ!」

 

「「「都合の悪いことは忘れよ! 転生者には記憶力の欠如が必要だから!!」」」

 

「ラスト!」

 

「「「破ったものは(夜の)オカズ抜き!!」」」

 

「っし! いくぞお前らぁ! 突撃ー!」

 

「「「うおおおおおお!!」」」

 

 そうして雄叫びあげて三人は何処かへと駆けて行った。

 そんなバカ共を無言で見送る霊視ニキとお腹を抱えてゲラゲラ笑うセツニキ。

 

「……おい、あれはほっといていいのか?」

「ああ、大丈夫だ。今回は誰かに迷惑かける様なもんじゃないさ」

 

 連中がお気に入りのセツニキの言葉に少しの疑いと説明を求める視線の霊視ニキに、笑いながらセツニキが告げた。

 

「ちひろネキの所に行くんだろ? 俺もなんだ。向こうで話そう」

「……わかった、それでいい」

 

 取り合えずの納得をした霊視ニキであった。

 

 

 

 

 

 

「ええ、セツニキの言う通り誰かへの突撃ではなくて、異界に行ってるんです。ここ暫く毎日」

「成程な。つまり異界に入る前の景気付け、気合入れだったわけか」

「少々特殊というか個性的な掛け声ですけど。まあそれは彼らだから、としか。レベル20になるのが当面の目標だそうです」

 

 事務所にて、ちひろネキとちひろネキと何やら話していた探求ネキから最近の三馬鹿ラスの行動を聞いて納得した霊視ニキ。

 

「――なら、ウチ(恐山)問題児(カス子ネキ)の声が入ったレコーダーは一体何なんだ?」

 

 それならそれで、さっきの義妹の連中への罵倒台詞(事実陳列)という別の疑問が発生する訳で。

 

「あれもレベルアップの為の取り組みなんだと。ああやって罵倒される事で負けるもんか、諦めるもんかと気合を入れて異界に挑むモチベを上げてるらしい。あとダラダラと無駄に時間を掛けるのを防ぐ為でもあるとか」

 

 そう説明するセツニキに、一部は理解できたが、理解出来ない部分を霊視ニキは質問する。

 

「モチベは分かるが、時間を掛けない為ってのはどういう事だ?」

 

「罵倒されるのが悦びになる前に、レベル20になるという背水の陣だそうだ」

 

「……おい、そいつはマジか?」

「あいつらは何時もマジだ」

 

 だから面白いし笑えるんだと笑いながら続けるセツニキに無言の霊視ニキ。

 

 セツニキの言う通り、あの連中はいつだってマジなのだ、悲しい事に。

 

「目的外の事に使用しない、異界に入る前以外に再生しない、20レベルになったら消去する、バックアップ等は取らない、以上の内容のセルフギアス・スクロールを用意した上でお願いして回ってまして」

「ついでに言うと、白装束で、お手紙挟んだ竹装備という何時ぞやの格好でしたね」

 

 補足説明するちひろネキ、探求ネキ。

 その内容が、まるで見たように詳しい事と、加えて対象がカス子ネキだけでない事に気付いた霊視ニキが視線で問うと、ちひろネキからは何とも言えない表情が、探求ネキからは静かな苦笑が、更に後方で仕事していた名誉店長ネキからもちょっと呆れた顔が返って来た。

 

「霊視ニキのお察しの通り、山梨支部内だけじゃなく、わざわざ彼方此方巡って頼んで複数人から集めたみたいだな。まあそれだけ本気だという事だろ、以前琉球ニキから貰ったアイテム*1も投入してるしな」

「緊張感を保つ為に格下を大量に狩るのではなく、少し苦戦するぐらいの悪魔を相手にしているのも理由みたいですね。雑魚相手だと気が抜けたりネタに走ってしまいそうになるからとか」

「……そうか」

 

 セツニキと探求ネキの言葉に、本気なのはいいとして、何故本気出した結果がそうなる?という疑問で顔いっぱいの霊視ニキ。

 苦笑した他三人が何か言おうとした所で、ドタドタと激しい足音が響く。

 

 

「バカバカウカツ! オロカモノ! 罠あるつったのに思いっきり踏みやがってこのスーパーイディオットが!」

 

「囲まれた状態じゃ仕方ねーだろーが! 敵も罠に巻き込んでやったんだからむしろ逆転の一手ってやつだ! 問題ねえ!」

 

「こっちのダメージと巻き込んだ敵の数比べたらこっちの大負けですよおバカ! 包囲されたまま戦ってた方が絶対被害少なくすみましたよこれ!」

 

「んだとう、定点狩り言い出したのテメーだろうが! それで囲まれてりゃ世話ねーよこのヘッポコ軍師! 口だけ儒者!」

 

「移動しながらだとタンクやり難いって言ったのは誰ですか! それに囲まれたのは一度に大量の敵釣ってきた間抜けのせいです! 私の作戦ミスじゃない!」

 

「ドグサレッガー! 俺はちゃんと釣ってきたぞ! 多かったのは別方向から沸いたのが同じタイミングで来ただけだ! 俺は悪くぬぇえっ!」

 

 

 身体中に矢が刺さった矢ガモならぬ矢馬鹿ラスになった三バカが、互いに肩を貸しつつ罵り合うという器用な事をしながらドタドタと四人の横を通り過ぎて医務室へと向かって行った――そしてその少し後ろを、連中から抜けたと思われる矢を回収しつつ、アガシオンが追いかけていった。

 

Q:何でそんな結論、行動になるんですか?

A:彼らが三馬鹿ラスだからです。考えるな、感じろ。

 

 万の言葉に匹敵する『答え』を示されて理解した、理解せざるを得なかった霊視ニキと他三人であった。

 

 

 

「しかしあいつらが急にああもやる気を出したのはどういう訳だ? しかも毎日なんて只事じゃねえぞ」

 

 咳払いの後に、仕切りなおす様に別の質問をする霊視ニキ――あいつら追っかけて聞いてくれば?というツッコミは聞こえないものとする。

 霊視ニキの言う通り、その場のノリと勢いで生きている三馬鹿ラスは、それ故にすぐ別の事を始める飽きっぽい一面がある。

 

 例としてはノリの良い連中とヤールギュレシ(オイルレスリング)大会やった次の日に、有志と共に異界内でのエクストリーム・アイロニング*2を計画していたぐらいだ――まあこれは訓練場を油塗れにして事務方から大目玉を食らったからというのもあるが。

 

 普段の彼らなら一日異界でレベル上げに取り組んでも、次の日には偽ティーニキと踊っていてもおかしくはない。

 その問いに少し他三人の雰囲気が変わった事で、霊視ニキも心構えを変えた。

 まず探求ネキが説明を始める。

 

「理由の一つは魚沼支部での一件ですね。向こうで凄く良い出会いが会ったと*3。だから終末後もそんな良き出会いの為に各地を訪ねたい、その為にレベルを上げると」

「それでもう一つの理由ですが、霊視ニキは三羽烏と呼ばれる現地の漁師の方達をご存じですか?」

「ああ、以前聞いたな。キノネキの知り合いでハルカの傘下の銀札だったか」

 

 ちひろネキの質問に、以前カス子ネキから聞いた三人組の現地覚醒者の事を思い出す。

 カス子ネキ曰く、ポージングすると褌一丁になるナイスな装備でナイスな声でナイスな筋肉のナイスガイ達だと霊視ニキは聞いていた――同じ褌一丁スタイルを勧めてきたのでデコピンを返したが。

 

「それで奇しくもあの三馬鹿ラスと三羽烏で読み方が同じ三人組なんだが……このスレ見た方が早いか」

 

 そう言ってスマホを操作してとある過去スレを見せるセツニキ。

 そのスレで偶然目撃した三馬鹿ラスの事を話題にしていたようなのだが、その呼称がアレだった。

 

 バカな方の三羽烏、現地人より弱い方の三羽烏、情けない方の三羽烏、おつむと筋肉がない方の三羽烏、レベルが低い方の三羽烏、褌が似合わない方の三羽烏、スケベ野郎の方の三羽烏、声が良くない方の三羽烏、カッコ悪い方の三羽烏etc……。

 

 まあ悪口と言って差し支えないが、同時に何れも事実だと認めざるを得ない呼称であった――事実を言っても名誉棄損になる事はある故に。

 

「で連中もその扱いは不満だが、漁師の三羽烏に文句は言えない――まあ言いたかったが色んな意味で勝てる気がしないからと止めたらしいが――だからレベルアップしてもう同じ事は言わせない、と考えたみたいだな」

「成程な。まあスレを荒らすよりはずっと建設的か」

 

 なお、レベルが低い、弱いは兎も角、他の呼称はレベルアップしても変わらないのでは?と指摘しないだけの情けが彼らにも存在した。

 

 しかし、そのままスマホでスレを見せられている内に、霊視ニキは気付く。

 

「おい、セツニキ。少しおかしくないか?」

 

 そう霊視ニキが幾つかの書き込みを指摘する。

 

 生きてちゃいけない方の三羽烏、ガイア連合の恥部の方の三羽烏、裏切りそうな方の三羽烏、穢教鳥と変わらない方の三羽烏、等といった些かネタやジョークのラインを越えていると思われる呼称が書かれていた。

 

「こっちのがもっとアレだぜ霊視ニキ」

 

 セツニキが再びスマホを弄って別のスレを見せる。

 

 連中を放置するのはガイア連合の評判だけでなく他組織との外交問題の原因にもなりかねないので追放処分にすべし。

 あんな連中を好きにさせた挙句に支援して甘やかす等真面目な黒札への冒涜である。

 早晩ハニトラにかかって多数の被害を出すのが目に見えている、災いの目は早期に摘むべき。

 メシアンへの同情する様な態度や一神教派への寄付など既に天使連中と内通しているのではないか、等とそちらのスレでは完全に一線を越えた内容の書き込みが複数あった。

 

「これは明らかに異常だな。何があった?」

 

 連中の事を知る霊視ニキから見てもおかしいと思えるスレの状態であった。

 

 元よりその言動と振る舞い故に、時に親しまれ、時に嫌がられるが、凡そは(巻き込まれなければ)愛すべきバカ達というのが霊視ニキから見た三馬鹿ラスの周囲からの評価である。

 

 連中を嫌う者達も無論居るが、それでも連中をバカだと見下しはしても、ここまでガチに害悪とみなし排除を求めはしまい――笑えるレベルでも笑えないレベルでも、連中よりもアレな黒札や問題のある黒札は居るのだから。

 

「霊視ニキ、思い出しませんか? 以前あった似たような話を」

「……そうか、言われてみりゃ、あの時そっくりだな」

「あの時は単独犯でしたが、今回は複数人ですけどね――破魔ネキの時*4と違って」

 

 探求ネキの問い掛けに、以前あった破魔ネキへのアンチ通り越して、ヘイト全開だった黒札の件を思い出す霊視ニキ。

 同じ様に特定の複数人の黒札がこれをやっていると、ちひろネキが説明する。

 

「あの件と違って今回は本霊の悪影響ではなく、当人達の意思の下の行動だがな。どっちがマシかは分からんが」

 

 破魔ネキの件は本霊がマルシュアース*5だった事による要は前世の因縁が原因であったが、今回は違う。

 

 ならば原因は何かというと――

 

「結論から言ってしまうと連中にしてやられた奴らの腹いせだ。要は負け犬の遠吠え、三馬鹿ラス風に言うなら魔犬慟哭破ってやつだな」

 

 ――以前に探求ネキの知識を記した本を三馬鹿ラスから奪おうとして失敗した連中の仕業であった。

 

「つまり逆恨みか。そこまで探求ネキの本が欲しかったのかそいつら。で、あいつらがガイア連合から抜ければ堂々と本を奪えると」

「どうでしょう? どちらかというと、もう探求ネキの本よりも失敗した後の事の方が動機になってるみたいですし」

「あー……」

 

 ちひろネキの言葉に、少なからず納得出来てしまった霊視ニキ。

 

 

 『三馬鹿ラスに一杯食わされて逃げられた奴ら』

 

 

 こう周囲から思われるのは、何というか色々とツラいものがあるとは思う、少なくとも自分は絶対嫌だと思う霊視ニキであった。

 

「そうやって恨んだ結果が三人のレベル上げの動機になるとは皮肉だな。それで、そいつらはどうするんだ?」

「破魔ネキの時の様なペナルティは難しいですね。ある程度間を置いてから書き込んだり、少し言い過ぎたとスレ内で謝罪したりしてますので――勿論敢えてそうしてるんでしょうけど」

「小賢しいな」

「加えて何だかんだで覚醒してる人達で、依頼もやってる人が多いんですよねえ。ある意味では荒事に向いた性格と適正のある人達とも言えますし」

 

 自分の為に同胞相手でも平気で強奪を目論むという在り方は、言い換えればそれだけ自分と自分の欲に正直とも言える。

 

 つまり世紀末、もとい終末後の世界に向いているタイプという訳だ。

 

「欲望に忠実な奴程、覚醒者としては伸びやすい、というのは間違いなくあるからな。目的の為に何でもするというのは研究者、探求者向きとも思えるが、実際はどうなんだ? 探求ネキ」

「そういった面も資質の一つでしょうが、対象への侮りから油断して、事前の調査・準備を十分に行わずに失敗。更に一度の失敗後も自分の想定にミスがあると考えず、同じ失敗を繰り返すようでは研究にも探求にも適正があるとは思えませんね」

 

 少し皮肉交じりに三馬鹿ラスに逃げられた黒札達の事を語るセツニキと探求ネキ。

 それはそれとしてだ、とセツニキが霊視ニキに伝える。

 

「そいつらの事は放っておけばいい。この書き込みはあいつらから自力で本を奪えないと半分認めてるという証だ。少なくともこうやってスレに書き込んでる間は、あの三人を直接襲撃したりはしないと宣言してる様なもんだ」

「そうじゃなきゃこうやってスレで管を巻いていない、という事か」

「自分は負けてない、失敗してないという自分への言い訳でもあるのかもしれませんね。十本刀の盲剣の人みたいな」

「探求ネキ、それ余所で言わないで下さいね? 本人(?)が沖縄に居て、高レベルの実力者で且つ元ネタとは全然性格が違いますので*6

 

 更にセツニキが意味あり気にちひろネキに言った。

 

「事務方としても助かっただろ? そういう連中を予め把握出来たのは」

「まあ否定はしません。土壇場や後から知らされるよりはずっと良いですから」

「というと?」

「また得意の悪巧みか? セツニキ」

「人聞きが悪いぜ霊視ニキ。さっきも言ったが、ああいう手合い程覚醒者としては伸びる事が多い。ある程度までではあるがな――だが同じ黒札相手でも自分の都合で平気で襲える奴が、黒札でない相手にどんな真似をするかなんて、考えるまでもないだろ?」

「そいつは……まあそうだろうな」

「身内同士だから問題ないと思ってる可能性もありますが、真っ当な振る舞いは正直期待出来ないでしょうね」

 

 霊視ニキと探求ネキの答えにセツニキが頷きを返すと、今度はちひろネキが話を引き継ぐ。

 

「そんな人だとレベルや能力面で問題がなくても、行かせられない異界、任せられない依頼、合わせられない相手、というのが出てきちゃうんですよね。沖縄みたいな特殊な異界とか、そういう人に過剰反応する神や悪魔も居ますから」

「万一他所の国宝や神器をネコババでもされたら面倒事にしかならねえと。あいつらがそういった奴らを上手く釣り上げてくれた、という訳か」

「言っとくが流石に偶然だからな? 俺もここまでの流れは想像もしてなかったぞ」

 

「でも折角だから生かそうと。まあ私も日常風景がそのままコントになってるなんて思ってませんでしたが

 

「「「ですよねー」」」

 

 

 探求ネキの発言に全員同意する――ドキュメンタリーなのにバラエティが成立している。おかしいと思いませんか?あなた

 

 

「だが大丈夫なのか? もし連中が掲示板の中傷が原因で引きこもりでもしたら、色々と面倒な事になるんじゃないか?」

「その心配は流石にないと思いますけど――例え引きこもっても、次の日には部屋の中は飽きたと飛び出してきそうですし」

「まあな。だが不特定多数の悪意ってもんは馬鹿にしたもんじゃねえ。前世でそういうのは幾らでも見ただろう?」

「成程、霊視ニキは連中が心配か。まあ三馬鹿ラスも世間一般ではまだ子供だしな」

「……それなりに付き合いも長いからな」

 

 ちひろネキの言葉に同意しつつも懸念を伝える霊視ニキに対して、霊視ニキらしいと笑うセツニキ。

 三馬鹿ラスと霊視ニキの付き合いは、彼らが覚醒した次の日に崖から落っこちかけたのを、ちひろネキと説教した時からである――つまりほぼ連中がガイア連合に参加した時からといえる。

 その後もバカ共を何回も制圧したり、ゲンコツしたり、ケツ引っ叩いたりといった間柄だが、それでも三馬鹿ラスの方からアイサツして寄って来るので仲は良い方と言えるであろうか――少なくとも三馬鹿ラス側はそう認識している。

 

 そんな好漢にして良き兄貴分、良き大人であるからこそ周囲からの信望も厚く、恐山にて尊敬を集めているのであろう。

 

 

 ただそれ故にエラい厄ネタ持ちな相手(マルカジリニキ)を引き取ったり、三馬鹿ラス含む名だたる問題児たち(カス子ネキ・怪獣ネキ・黒死ネキ)に絡まれたり、親どころか祖母より年上の連中に秋波を送られたりと色々と苦労も絶えないのだが。

 

 

 霊視ニキの懸念に対して探求ネキが少し笑いながら告げた。

 

「霊視ニキの言う通り、そういった悪意は馬鹿に出来ないですが、大丈夫だと思いますよ。だって――」

 

 

 

「――そんな不特定多数の悪意と幼女ネキや破魔ネキ、先輩(キノネキ)達といった高レベル覚醒者の怒りの気配(オーラ)制裁(ツッコミ)、おっかないのはどっちです? 常識的に考えて」

 

 

 

「「「確かに」」」

 

 メガテンならシリーズにもよるが、四大天使や各神話の最高神や武神、それらの宿敵ポジといった連中と同じレベル帯なのが例に上がった面々である。

 同じ転生者、同じ組織、同じ人間といった部分はあるとはいえ、そんな面子に突撃となりの晩御飯(性的な意味で)を何度もやっているのがあのバカ共である。

 連中はガイ連で一番の命知らずはナマモノネキと主張しているが、傍から見れば連中も五十歩百歩にしか見えまい。

 

 黒札から見ても相当にアレだが、もし外部の連中が知れば、完全にイカれてやがると戦慄する事間違いなしであろう。

 

「ナマモノネキは憧れと筆が止められねえってクリエイターの性なんだろうが、あいつらの場合は何があそこまで連中を駆り立ててるんだろうな?」

「さあな、それこそあいつらに直接聞くべきじゃねえのか」

「行動だけ見ると目立ちたがりの動画配信者みたいですけど、あの人達別に動画投稿とかしてないんですよね*7。あ、田舎ネキの画像はあげてましたっけ*8

「好奇心と一種の知識欲、または困難と思えるものに挑戦したいという冒険心ですかねえ。そういう意味では研究者に向いているのかもしれません」

 

 そんな会話をする四人の耳にドドドドという激しい足音が響く。

 

 

「また足引っ張んじゃねえぞ! 今度やったらケジメ、セプク案件だからな!」

 

「そりゃこっちのセリフだスカタン! 釣りミスったらケツバットの刑にすんぞ!」

 

「だから作戦通りやれと言ってるでしょうが、銃殺刑モンですよ! この無能な働き者共!」

 

「デアエ! デアエ! シマッテコーゼ! ヤッチャラジャレッケラー!」

 

「誰が悪魔なんか、悪魔なんか怖かねぇ! 野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!」

 

「だからこそ……もっと、熱くなれよおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 互いに文句を言いつつ、鬨の声を上げて異界への突撃を敢行する三馬鹿ラスが横を駆け抜けていく――その後を追うアガシオンが止まって四人に会釈した後、彼らを追ってふよふよと去っていった。

 

Q:何で彼らは高レベル覚醒者相手に突撃出来るんですか?

A:彼らが三馬鹿ラスだからです。きっと彼らの魂がそう叫ぶのでしょう。そうあれかし。

 

「ま、若い奴らはああじゃないとな。元気があって大変よろしい!」

「……山梨に引きこもってる連中と足して割れば、ちょうどいいんだがな」

「探求ネキ、ああいうのも心が、精神力が強いと言っても良いんですかね?」

「うーん、心や精神力が強いというよりは、人間性が強固過ぎる、というべきでしょうか」

 

 百の書にも勝る『答え』と、破魔ネキのアンチとは真逆、本霊の影響が全然見えない様子を見せられて、納得させられた霊視ニキ達四人であった。

 

 

 

 

 

 

「「「オナシャス!!」」」

 

「……ちょっと待て」

 

 そんな事のあった次の日、だばだばとやって来た三馬鹿ラスに、手と膝をついて頭を下げられて霊視ニキは困惑していた。

 

「困惑するのは当然ですが、まずは話を聞いて下さい。実は私達は現在――」

「レベル上げをやっている、ってのは聞いている」

「おお! なら話は早い! では是非協力をお願いしたく」

 

 説明しようとしたクロマニキの話を知ってると遮ると、早速とばかりにレコーダーとセルフギアス・スクロールを取り出す。

 そんな彼らを制して霊視ニキが尋ねた。

 

「何で俺に頼む? もう彼方此方で、女の黒札に頼んでるんだろ」

「その疑念ごもっとも。ですがこれには深い訳があるのです」

 

 そんな問いにクロマニキが、他二人も真面目な顔で答える。

 

「実はレベルアップが予定より進みが悪いのです、予期せぬ事態の為に」

「緊張感が維持出来なかったんすよ――ぶっちゃけ怒った幼女ネキやキノネキと比べたら、異界の悪魔なんて屁でもないし。実際ヘイキ」

「食らうとヤバいはずの攻撃食らっても『同じだ……破魔ネキにブチかまされた時と同じだ――いやあんときのが痛えよ!』ってなっちまって」

「で、このままだと20レベルになる前に開いてはいけない扉を完全に開いちまいそうで。俺達青少年のなんかが危ない!」

「無論そういった癖を否定するつもりはありません。しかし正道も碌に歩いてもないのに、いきなり初手で裏道獣道へと向かうのは些か抵抗が」

「例えるとふつーのスシ食った事ないのにアボガド巻きみてーなもんだけ食ってるみたいな感じになりそうで。それはなんかヤーだなと」

 

 真剣な顔で寝言をほざく三馬鹿ラスに、内心の色々を押し殺した霊視ニキがセルフギアス・スクロールと一緒に渡された『このセリフをお願いします』と書かれた紙を見て呟いた。

 

「台本まで用意してんのか。そんで罵倒しろってわけじゃねえんだな」

「バトウ・ジツやアオリ・ジツばかりだと心と精神が爆発四散してしまうので。罵倒もネタも共に受け入れる度量が大事。カンヨウ!」

「だから串カツの間にキャベツを食べるようにネタを挟めばいい! そうするとネタが心の胸やけを防いでくれる、オレ達でみつけたスゲえ知恵なんス!」

「女性には台本なしのアドリブでお願いしましたけどね。あと男からの罵倒でモチベ上げても、怒りと苛立ちでミスが増えそうですので」

「……女だと違うのか?」

 

「悔しさと怒り、しかしそれと同時に感じる微かなイケナイ悦びとそれを忌避する己。そんな侘び寂びにも通じるアンビバレンツな――」

 

「わかった、もういい」

 

 長くなりそうなクロマニキの語りを問答無用でシャットアウトする霊視ニキ。

 残念そうなクロマニキには悪いが、これ以上頭痛の元を増やしたくない霊視ニキだった。

 で、さっさと終わらせようと、霊視ニキは紙に書かれたセリフを読み上げた。

 

 

 

「まだやるかい」

 

 

 

「「「元気イッパイだぜ!」」」

 

 

 あざーっす!と揃って頭を下げる三馬鹿ラス。

 これで後は連中を見送れば終わり、そんな段階まで来た事で、遂に我慢出来なくなった霊視ニキはツッコんだ。

 

「でだ。お前ら、その格好は一体何だ?」

 

 

 

 お前らこと三馬鹿ラスの格好、それは何時もの覆面、面皰、とんがり帽子はそのままに、金髪リーゼントのカツラと捩じりハチマキ、腰に晒、足は地下足袋、紫色の『機動爆弾巌駄無』と書かれた特攻服、服で見えないけど背中にキング〇ドラの刺青シール、というシロモノだった。

 

 

 

「え、だって頼み事するなら奥ゆかしい作法がダイジだと思って」

「霊視ニキに頭下げて頼み事するってーならこのカッコだろと」

「TPOをわきまえて白装束止めてこっちを用意してきました」

 

 至極あっさりと当然のように答える三馬鹿ラスに、霊視ニキは眉間を揉んで頭痛を堪えた。

 予想出来た反応だが、予想が外れて欲しかった故に。

 

 

 

Q:何で霊視ニキへ頼み事する時の格好=柴〇春のコスプレになるんですか?

 

A:それが……担当者(?)がラリっていたとしか……。

 

 

 

 なおこいつらはこんなでも素面である。

 

 いっそラリった方が一周回ってまともになるかもしれない――もっとも素でラリってる様なモンなのとホントにラリったのが合わさって、どこぞの正義狂みたいになる確率の方が遥かに高いであろうが。

 

 そして霊視ニキは、取り合えず異界内でバカやるなよと彼らに忠告して別れたのであった――ツッコミ他色々と諦めた、とも言う。

 

 

 

 

 

 

「次は誰にする? ギルニキに頼むか? 台詞は『凡俗であるのなら数をこなせ。才能が無いのなら自信をつけよ』なんかどうだ?」

「いーんじゃね? レベル上げに良さそーなセリフじゃん。カッコはやっぱ神父服か?」

「うーん、流石に神父服は問題しかなさそうです。何か別の服が良いかと」

 

 後ろから聞こえる三馬鹿ラスのそんな話し合いは、聞こえなかった事にした霊視ニキだった。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんながありながらも三馬鹿ラスのレベル上げは続いた。

 時に罠に嵌り、時に悪魔の奇襲を受けて逃げ帰り。

 時にカード、宝石を拾って勝鬨を上げる。

 

 時には別のパーティーの起こしたトレインに巻き込まれ、逃げてる内に悪魔を激怒させた挙句、トレイン起こした連中そっちのけで悪魔達に助けが来るまで全力で追い回されたりもした。

 

 そんな彼らの様子を霊視ニキはちひろネキから聞いていた。

 そしてある日、霊視ニキは異界から出て来た三馬鹿ラスに出くわした。

 

 三人共、姿はぼろぼろだったが、まるでケンカに勝ったガキ大将みたいな笑顔だった。

 

「あ、霊視ニキ! 遂にレベル20到達したんすよ! ヤッター! メデタイ!」

「なんか変わったふつーより強え悪魔だったけどその分MAGも多かったみたいで!」

「ドロップもゲットして完璧な結果です! これも私の作戦と策あっての勝利ですよ!」

 

「ザッケンナコラー! 隙をついて起死回生にして逆転の一手を打ったのは俺だぞ! キンボシ・オオキイ!」

 

「異議あり! 一番槍したのもトドメ刺したのもオレだ! 武士的に一番手柄なのは確定的に明らかだろ!」

 

「目先の事しか見えない愚者達はこれだから! 戦闘中支援と指示をしたのは誰だと思ってるんです!」

 

 そんな何時もの罵り合いも、悪口こそ言ってるが、顔と雰囲気は笑顔のままで。

 

「つーわけで今から打ち上げでジャンニキのトコ行くんすけど一緒にどーっすか霊視ニキ」

「霊視ニキ程の人ですと何時も奢ってばかりでしょう? 偶には奢られてみるというのは」

「アレだ、奥さんには男の付き合いって連絡すれば問題ないってやつ。実際ダイジョブダッテ」

 

 思い切り調子に乗ってそんなことを言う三馬鹿ラスの浮かれ具合に、ほんの少し笑った霊視ニキは答えた。

 

 

「十年早えよ。行くぞ、奢ってやる」

 

「「「オッス、ごっつあんですーっ!」」」

 

 

 せめて一杯奢らせて下さいよーと霊視ニキに纏わりつく三馬鹿ラス。

 そんな感じに寄って来る三馬鹿ラスを軽くあしらう霊視ニキ。

 

 

 夕日が山の端へと落ちかかり、夕焼雲が空高くよりジャンニキ食堂へ向かう四人を見つめ、夕暮れの空を烏がねぐらへと飛んで行く、そんなガイア連合のとある日の、たそがれ時の出来事でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお酒は飲まないが、雰囲気その他で酔っぱらった三馬鹿ラスが

 

「沢山のイタコさんに迫られてるのにビクともしないって、やっぱそれだけ奥さんとはラブラブだったり? チンチン=カモカモ関係?」

「スレで嫁式神連れてる黒札は皆夜な夜な腰へこパコパコ丸してるって書き込み見たんすけど、霊視ニキも嫁さんと毎晩?」

「霊視ニキと奥さんの夫婦の営みの時、霊視ニキが上に乗って奥さん大丈夫なんですか? 色々と物理的に」

 

 等と人の性体験に興味深々になってしまう悲しき童貞の性を発揮して、店の外まで吹っ飛ぶデコピンを食らうのは残当で残念な別の話。

*1
血涙鬼・彼岸様作。凡庸でありふれた転生者達の小話 番外編その2 黒札マタギと三馬鹿ラス より

*2
山の斜面とか銅像の上とか水中とかでアイロンをかけるスポーツ?極限状態で涼しい顔でアイロンするのが肝らしい

*3
11話

*4
ディストピア様作。【カオ転三次】終末が約束された世界で生き抜きたい エロース事件の前後

*5
ギリシア神話に登場するサテュロスで、アポロンとの音楽勝負で負けた事でアポロンに惨殺された。んな事ばっかしてるからお前らメシア教に信仰もってかれるんだよって話である

*6
頓西南北様作。ファッション無惨様のごちゃサマライフ に登場する現地民・魚沼宇水。元ネタ通りティンベーとローチンで戦う盲目の戦士。かつてはメシアンへの恨みで戦ったが、今は誇りが身体を突き動かしているとの事

*7
笑ってはいけない人生録についてはこいつら記憶消されてるし、作ってるのは探求ネキ・黒死ネキなのでノーカン

*8
名無しのレイ様作。【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち  田舎ネキ、コスプレす?




 ―以下どうでもいいバカ共の設定―

 遂にレベル20に。
 本家の小ネタより、10レベル毎に壁があり、レベル10が式神オートのみと戦闘有の壁、レベル20が性格的戦闘適性とそうでないものの壁とのことなので、なんやかんやでシキガミなしで10半ばまでいったこいつらは、20の壁は越えられるのではと判断しました。

 高レベル黒札達に散々怒られたりシバかれたりした経験により、こいつらの適正レベル帯の悪魔相手に今更ビビる事はない。
 が、それが緊張感の欠如にも繋がるのでプラマイゼロ。
 ただ格上相手に恐怖で動けない、逃げる事も出来ない、といった事態を防げるのでメリットが皆無という訳ではなかったり。
 なお黒死ネキからの処刑については痛みも感じない即死&初回以外は記憶がないので影響は薄め。



 バカ共がバカやれるのは周囲の大人に恵まれているから、な感じの話でした。
 セツニキについてはウチのバカ共がまだコテもなく、三馬鹿ラスとも呼ばれてなかった頃に使って頂いたので何時か登場させたかったのですが、向こうの描写的に直接関わらず見守るスタンスっぽい&頭良い人書くのマジ難しいとなり中々出せず。
 大丈夫かなあと不安に思いつつこんな感じに、解釈違いだったら申し訳ございません。
 あとバカ共が罵倒や台詞を頼みにいった面々とその諾否についてはご想像にお任せしますw

 書いてる当人が言うのもなんですが文字数20万字以上でようやくレベル20、そしてシキガミ嫁も悪魔嫁も人間嫁もなし、仲間も仲魔もシキガミもなしってカオ転三次主人公、こいつらぐらいだろうなと思ったりw
 本家様では終末前に30レベルになるのは容易い事ではないと何度も描写されてるのでこいつら30越えにするのはアリかナシか?と悩み中。
 バカ達がバカやる話ばっか書いてますが、他の三次作品みたいにシキガミ作りとか特殊な依頼・イベントとかの真面目なネタも興味はあったり――ただそれがウチのバカ共に似合う内容かと問われると否定せざるを得ませんがw

 マカーブルさんに頂いたイラストです。
 いつもありがとうございます。
 秀逸なセリフとセットでどうぞ。

 高貴さも謙虚さも勤勉さもなく

 マトモに女一人口説く事も出来ない

 フラれた回数は両手では足りない

 ヤる為でも無いのに商館周りをうろちょろし

 挙句、理想が高すぎて童貞を捨てる事すら出来ない

 貴様ら、それでも『俺たち』のつもりか?

 恥を知れ!!


【挿絵表示】



 それでは最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。 
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