【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。 作:貧弱一般メガテンプレイヤー
クリスマス+ウチのアホ共だと皆思いつくだろーなと思いつつ書きました。
クリスマスに投稿も考えましたが、割とクリスマス定番ネタだと思うのでネタ被り怖いので投稿します。
何時も通り時系列等は外伝・アンソロジー時空なのと、普段より登場人物の言動がアレですが、お祭り気分故という事でお願い致します。
遅くなりましたが、御薙連也様、誤字報告ありがとうございます。
12/24追記・マカーブルさんよりまたまたFAを頂きました、ホントにありがとうございます。
ネタバレ防止であとがきに掲載させて頂きます。
まだ暑さの残る稲刈月のある日のガイア連合・山梨支部。
前世の春夏秋冬でなく夏夏冬冬な頃よりはマシな中、何時ものノリで集まったサスケニキ・ヨロイニキ・クロマニキの三人は、何時もの様にサスケニキが口火を切った。
「――さて、こうしてお前らを呼んだのは他でもない。三か月後のあるイベントの為だ」
「三か月後? そりゃまた大分先の話だな」
「それだけの準備の要るイベント、という事は」
「クロマニキの予想通りだ――――そう、クリスマスだ!」
クリスマスとは何か?
元々はイエス・キリストの降誕を記念し祝う、キリスト教圏の厳かなる宗教儀式。
儀式とまではいかずとも神に感謝しながら家族そろって家で静かに過ごす一日である。
しかし日本においては――性夜や性の6時間等で知られる、恋人同士がイチャイチャキャッキャウフフする日と成り果ててしまったのだ!
「という事は、貴方は天に代わって悪を討つ正義のわざ……聖戦を起こそうと?」
「サスケニキ……! やるんだな!? 今、じゃなくて12月に……! ここで!」
「――――いや、せぬ」
溜めてからのちゃぶ台返しに『だああっ』とヨロイニキ、クロマニキが椎〇高志チックにズッコケた。
「この流れでキャンセルするか!? 鬨の声を挙げる場面だろーが!」
「安易な逆張りは場を白けさせるだけだと何時も言ってるでしょうが!」
どーいう事だと詰め寄る二人に落ち着け、落ち着くのだと宥めるサスケニキ。
「まー、まー、落ち着いて考えてみろ。状況把握はダイジ」
「……一体何をだよ」
「まず一つ。クリスマス楽しみにしてんのはアベックやカップルだけじゃない、プレゼントやご馳走目当ての子供だってそうだろ?」
「それは……まあ確かに」
「しっとマスク*1になってしっと団*2と暴れ回ったらそっちも巻き込んじまう、そうなるとちひろネキや霊視ニキからの説教&仕置きも相応のモンになる、違うか?」
「それはまーなあ……ドクターネキも山梨のガキ連中もきっと楽しみにしてんだろーしよ」
「確かに、と言わざるを得ませんね。下手打ったら幼女ネキもガチ激怒しそうですし」
「だろ? んでもう一つ、こっちが主なんだが――」
「――俺らがしっとマスクになっても『ああ、やっぱり』とか『知ってた』みたいな反応しかされないんじゃね?」
「「「…………」」」
長い、長い沈黙が続く。
「……ウケ狙いでやる訳じゃーねえが……つらいな、それは」
「ええ、いっそ思い切り殴られる方が慈悲だとすら思えます」
「だよな? だからしっとマスクとしっと団は止めとこう」
非常に珍しく、彼らの、三つの心が一つになった瞬間であった。
「んじゃーラブコメ死ね死ね団*3とか、FFF団*4とか、男祭り*5とかはどーだ?」
「それ名前と格好と元ネタが違うだけで全部同じじゃないですか。結果は大差ないですよ」
「じゃーどーすんだよ、ふつーにクリスマス祝って食って飲んで騒いでフィニッシュか?」
「そのつもりならこうやって私達を集めてないでしょう。ならば……別の祭り、イベントで対抗する、あたりでしょうか」
「ほう、流石は今郭図。中々鋭いな」
「出ると負け軍師言うな!……クリスマスとは別の……まさか、聖牛供儀とか?」
「何それ、歌? くぎゅう?」
「釘宮病違う!……まあこれは知らないのを責めませんよ、相当マイナーですから」
古代ローマには太陽神ミトラスを主神とするミトラ教、ミトラス教等で呼ばれる密儀宗教があり、12月25日はミトラス教において、冬至を境に昼の時間が長くなっていく事から『再生の日』として祭りが行われた。
そしてミトラス教の図像は『牡牛を屠るミトラス』であり、密儀では雄牛を生贄に捧げていた。
ちなみにメガテンでも主に種族・魔王としてミトラスは登場している。
「なるほどなー……ってことは、クリスマス祝ってる横で牛ぶっ殺すのか?」
「まあそうなるかと。供儀ってそういう儀式ですから」
「確かにカップルがイチャつく空気じゃなくなるだろーが……同時にガキ共もドン引き、つーか号泣すんだろ、それ」
「ですよねえ……そもそも雄牛を一体どうやって用意するんだって話ですし」
「ドクターネキにディバイソン*6やカノンフォート*7用意してもらうとか?……言ったオレが言うのもなんだがふつーにナシだな」
「ああ、それはどう考えてもドクターネキの怒髪天不可避だから絶対ナシだな。コワイ!」
「見たことないので想像ですが……ドクターネキが本気でキレたら幼女ネキや黒死ネキとは別ベクトルでヤバいですよ、多分」
「「それには心から同意する」」
自分達が出会う前に、依頼で舐めくさった真似したクズ黒札に、足から順番に全身にパイルバンカーぶち込もうとした一件はバカ共も知っていた――何時の間にかレベルも並ばれてるし。
「俺も聖牛供儀は候補の一つだったんだが、そういう事でボツにした。それに――」
「「それに?」」
「――信仰する気これっぽっちもないのにこんな理由で儀式やってミトラスぬか喜びさせるのは、幾ら魔王相手でも人の心が無い案件じゃないかなーって」
「……確かになー、流石にちょっと笑えねータイプのウソというか、ドッキリの類だよなあ」
「私達の神、悪魔からの狙われっぷりを考えると、ジョークと呼ぶにはライン越えですよねえ」
オホン、と咳払いして空気を戻したサスケニキがある図面を取り出した。
「さて大分脱線したが話を戻すぞ。クリスマスに関係があり、イチャイチャな空気をぶっ壊した上で、ガキ連中を泣いたりドン引きさせたりしない……そんな素敵な欲張りセットな案がこれだ!」
そう言って広げた紙面の計画と図案に、ヨロイニキ、クロマニキは目を見開き、その反応にサスケニキは満足そうな笑顔を浮かべたのであった。
◇
「「「「「「Merry Christmas!!!!!」」」」」」
12月25日、ガイア連合山梨支部は完全にクリスマスモードだった。
四文字くたばれ、天使えんがちょな者の多いガイア連合だが、それはそれ。
七五三や受験で神社へ行き、結婚式は教会で挙げて、葬式はお寺で坊さん呼ぶのがデフォなのが日本人。
故にクリスマスを盛大に楽しむのに何ら疑問も躊躇いもないのである。
そしてそんな中、現れた三つの人影?に、周囲は注目した、せざるを得なかった。
銀色の鱗、むき出しの骨格、身体から大量に飛び出た赤く丸い物体――そんな不気味な姿の三体が、大声で叫ぶ。
「「「突然現れておいて何だが! クリスマスにはチキン
現実に数多の影響を及ぼしたある意味最強の怪人サモーン・シャケキスタンチン*8がそこに居た、三体も。
言うまでもなく、バカ共の無駄に高度なコスプレである――地味に変声装備付き。
なお、覆面、冑、とんがり帽子を付けてるのでどれが誰かは一目瞭然であった、コスプレとしては失格だが、連中にとっての譲れぬアイデンティティがあったと思われる。
「わー、またにーちゃんたちがクリスマスなのにへんなことしてるー」
「なんでみんな同じかっこしてんの? これ自分で作ったの?」
「サスケにーちゃん、おれたちにも作ってくれよー。もっとかっこいいやつ!」
そんなバカ共に子供達がわらわらと群がり彼方此方触ったり引っ張ったり登ったり蹴ったりと子供らしい着ぐるみへの傍若無人さを遺憾なく発揮。
そんな可愛げと容赦のないおガキ様共を振り払いながらシャケ怪人になった三人が大声で宣言する。
「ええい、蹴るんじゃない悪ガキ共! あと今の俺はサスケではない!」
「そう、今の俺は――手と手を合わせてアイサツ! サモーン社長!」
「そしてオレもヨロイじゃねえ――悪魔を斬り裂く押切長谷部! サモーン大将!」
「最後に私もクロマではなく――どんな萌えもフリーでOK! サモーン先生!」
「「「我らゴーマ、じゃなくてサモーン3ちゃんズ!」」」
残念ながらこの場に『それ他所のと混じってる!』*9とツッコめる人間は居なかった。
しかしその名乗りに対し子供達の行動は止まらない、それどころか逆にテンションアップ。
「つまり今のにーちゃんたちはわるいかいじんなんだな」
「いくぞー! みんなでやっつけろー!」
「にーちゃ、じゃなくてサモーン3にいちゃん? かくごー!」
「行くよヨロイ、じゃなくてサモーン大将! 僕の本気のトライデントタックルをくらえー!」
「サモーン先生も覚えたてのアギラオを受けるですー!」
覚醒済の子供まで加わったお子様達による遠慮も手加減もなくなった一斉攻撃が始まる――その直前!
「「「食べ物を粗末にしてはいけません!!! モラルだぞ!」」」
目の前の怪人三体から放たれた日頃母親から言われるその台詞に、子供達の動きが思わず止まる。
何時の間にか何処から取り出したのか、怪人の手だの背負い棚だのには紙皿に乗ったシャケの切り身が大量に用意されていた。
その隙に子供達の口に切り身を放り込む――のは喉に詰まったりすると実際アブナイので、紙皿ごと切り身を素早く手渡し、配っていく。
子供達は暫し顔を見合わせた後、切り身を口へと運び――
「「「「――おいしい!」」」」
「「「だろ~?」」」
――顔をほころばせた。
もぐもぐと切り身を食べる子供達を見て、満足気なシャケ怪人達。
「さあいくぞ、大将! 先生! クリスマスをシャケ一色に染めてくれるわ!」
「おう! 聖夜を汚すカップルにシャケのフルコースをお見舞いしてやろう!」
「ええ! シャケの偉大さを腑抜けたアベック達に見せつけてやりましょう!」
そう威勢を挙げる元三馬鹿ラス、現サモーン3ちゃんズ、が――
「「「アスタキサンチーン!? 色素物質ぅ!」」」
スパーン!と派手に頭を引っ叩かれた音と悲鳴(?)が景気よく周囲に響く。
ぶっ倒れない、されど痛みとダメージで動けない、故に大量の切り身を落とす事もない、そんな実に見事な力加減の一撃。
その実行犯は
「クリスマスに、いや寧ろクリスマスだからかもしれんが、何やってるんだアホ共」
女の子用サンタルックでサングラス装備な腕組み立ちの幼女ネキだった――サングラスが派手にミスマッチなのでこれは殴る前に装備したものと思われる。
「い、いきなり問答無用で一発かますのは酷くない? 別にまだ悪い事してないのに!」
「お前らだからまあいいかなと思った。反省はしていない」
「ヒデえ! なんか幼女ネキ最近オレらへの当たりが強くねーか!?」
「ああ、ドクターネキがお前らに何だかんだで甘いからな。だから私が厳しくすればバランスが取れる」
「そんな褒め役と叱り役分担してる夫婦みたいな――!? まさか既にドクターネキと!? 更に子供まで!?」
「「「幾ら何でも十二歳で出産とか流石におにーさんは許しませんよ!!」」」
「誰がお兄さんだ誰が、それよりさっさと答えろ。さあ話せ、今すぐ話せ、速やかに」
バカ共の妄言に心底呆れ顔のまま、何故か五七五調で詰問を続ける幼女ネキ。
そして叩かれた頭から痛みが抜けたアホ共がポーズを取りながら説明開始。
「そもクリスマスとは本来家族と過ごす一日! 断じてカップルどもの為の行事に非ず! 実際オカシイ! 故に正す為に我らは立ち上がった!」
「カップル公害をなんとかする為にシャケを食う! シャケを配って食わせる! ついでにガキ共を笑わせてDHAも取れて親御さんもにっこり!」
「シャケの臭いでイチャイチャムードを破壊! 更に着ぐるみ蹴ってくる対悪ガキ様用『食べ物を粗末にしてはいけませんバリアー』も完備です!」
そう自信満々で語るバカ共――否、シャケ共にサングラスを外して無言で眉間を揉む幼女ネキ。
そんな中、実に楽し気な声が掛けられる。
「祭り、とは違うようだが……また何かやっているようだな。こっちも混ぜてもらおうか。ああ、答えは聞いてないぞ?」
「「「げえっ黒死ネキ!」」」
ここで幼女ネキと同じくサンタ衣装――但し真っ黒なのでクネヒト・ループレヒトかもしれない――の黒死ネキのエントリーだ!
三馬鹿ラスをぶっ殺したorぶっ飛ばした回数ランキング一位と二位の登場に、流石に怯むサモーン3ちゃんズ。
しかし黒死ネキはバカ共に構う事無く、もらうぞと一言付けて切り身を口に運び、それを見ていた幼女ネキも同じく切り身を口に放り込む。
「……ふむ、中々美味いな」
「……ああ、焼き加減も良い感じだ」
「「だろ~?」」
「あ、良ければこちらも。覚醒者用ですから」
少し感心した風な黒死ネキと、少し意外そうな幼女ネキに、嬉しそうな社長と大将、更に先生が取り出した別の切り身に同時にかぶり付く二人。
「む、この濃い感じ、確かに私達向けだ。塩も異界産だな」
「これはストライプサーモン*10だ、塩はおしりしお*11か」
幼女ネキが次々と切り身を口に入れてもっきゅもっきゅと頬張り、黒死ネキは静かに味わいつつ素材を言い当てる。
どちらも高級・高ランクではないがトリコに登場する食材、探求ネキの異界産で確かに覚醒者用であった。
料理も出来る黒死ネキが、ジャンニキの様なプロには遠く及ばないが、それでも中々良くやっていると評価する程度の出来栄えに、ふと疑問を抱く。
「この大量の切り身どうやって用意した? 普通の鮭は兎も角、異界産の食材とその調理。依頼したらそれなりの額になるぞ」
「もぐもぐ、ごくん――それは確かに……お前ら、まさかドクターネキに頼んで払ってもらったとかじゃないだろうな?」
切り身を頬張る姿から一変、剣呑な顔と雰囲気になった幼女ネキに、慌てて手と首をぶんぶんと身体ごと振って否定するシャケ怪人×3。
「誤解だ! 流石にそこまではやらん! そこまで言われる謂れは多分ない!」
「オレらだって意地とかプライドってもんがあんだぜ!? いちおーはさあ!」
「例え出してもらったとしても利子付きの借金って事にして借用書作ります!」
「それなら、この大量の切り身、一体どうやって用意した?」
「そりゃあ勿論――」
「「「自分達で」」」
そうして揃って遠い目をするサモーン3ちゃんズ。
「少しでも安く、沢山鮭を集める為に彼方此方の店を巡ったな」
「保存は前もらった氷結武器で凍らせたからどーにかなったが」
「東北や北海道の支部行ったついでに朝市や港にも行きましたね」
「自分で釣ろうと水中用ゾイドで海に出て危うく遭難しかけたり」
「探求ネキのグルメ界に鮭居るの気付いてそっちに籠ったりもしたな」
「偶然金色イクラ*12見つけて資金の足しに出来たのもラッキーでした」
「で、今度は弱いニスロクが出て来る異界探し回ったんだよな」
「シャケ捌くのや焼き方とか教えてくれって交渉(物理)してよー」
「中々上達せず、その度にニスロク探しては教わっての繰り返しでした」
「漸く何とかなった思ったら、次はグルメ食材のストライプサーモンの調理でさ」
「もう刀より包丁の扱いのがオレ慣れたんじゃねーかとか自分で思っちまったぞ」
「私も鮭を焼くためのアギ系のコントロールばかりやたら上手くなってしまって」
「「「そんな血と汗と涙の結晶がこの切り身!!」」」
「……あ、そう」
天よ、照覧あれと言わんばかりに紙皿に乗った切り身を掲げるシャケ怪人達に、何とも言い難い顔の幼女ネキと顔を背けて忍び笑いする黒死ネキ。
そのやる気と手間と努力を異界での悪魔狩りに向けて、それで稼いだ金で買うなり依頼するなりした方がずっと簡単だった筈では?という問いは胸に仕舞った黒髪少女コンビだった――言うだけ無駄と理解していたとも言う。
「誤解も無事解けた事だし活動再開といくか――さあ、シャケも食えー!」
「イチャついてる奴らには、全力でシャケを食わせるからなー!」
「ノーカップル、ノーアベック! 代わりにシャケを渡しますよー!」
そして再び始まるシャケハラスメント?に周囲の人達――子供ばっかだが――にシャケによる猛攻が始まる。
その傍らではアガシオンがシャケの切り身をわっせわっせと運んでいた、実際健気。
「……夜も眠れない悩みとか全く無いんだろうな、あいつら。断じてああはなりたくないが」
「良い事ではないか。生を楽しむ事は大切だぞ? まあ犠牲にするものが色々と多そうだが」
複雑そうな顔で新たな切り身に手を伸ばす幼女ネキと、笑いながら次回の『収集』への期待を高める黒死ネキ。
そんな二人の視界にバカ達に近付く一人の女性が映り、それを見た二人は僅かに目を見開いた。
「メリークリスマス! わたしにも頂けませんか?」
「む、良いぞ。さあ、シャケを――」
「おい、どしたよ――」
「一体何が――」
背後からの声に社長が振り向いてそのまま固まり、続けて気付いた大将と先生もまた凍り付く。
「あら、どうしました? 頂けないのですか?」
そう笑みを含んだ声で話しかける女性――170半ばという中々の長身をスカート且つ肩出しタイプのサンタルックに包み、サンタ帽を被った茶色の髪のお下げは足元に届く程に長く。
深い知性と理性を感じさせる整った容貌だが、今は寧ろ茶目っ気を感じさせる悪戯っぽい微笑みが浮かんでいる。
一言でいうなら女性としては長身で知的な雰囲気の美人。
だがバカ共が固まったのは相手が美人だからではない――いや美人だからなのもあるが。
先程述べた様に両肩を出したドレスタイプのサンタ衣装を着ているが――スカートは下着が見えそで見えない限界へと挑むが如き丈の短さの為、むちむちとした太ももが惜しげもなく晒されており、上半身もビーチクこそ隠れているが巨に分類される立派なお胸とそれが産む谷間と北半球がしっかり披露されていた。
つまり声掛けてきた相手がええ乳・ええ尻・ええ太ももな持ち主の美人で大胆なミニスカサンタの格好だから固まったのである――視線は胸、尻、太ももを巡回しているが。
そんな邪な視線を気にした風もなく、寧ろクスクスと面白そうに笑う女性に、何故か違和感を感じるバカ三人。
チェシャ猫染みた笑みを浮かべたその顔を良く見て――谷間につい向かう視線を無理矢理戻し――感じる違和感の元を探し――お尻を見るのを我慢して――その何かを見つけようとする――むちむちな太ももをちょっとだけ眺める。
「「「……ん? むちむち……?」」」
むちむち、巨乳、美人、頭に浮かんだそのフレーズを切っ掛けに三人の脳みそが活発な活動を始めた結果。
「「「――――あああああっ!?」」」
三バカは同時に答えへと辿り着き、女性を指差して叫んだ。
「「「薬で大人になったドクター!!――ということは、ドクターネキ!?」」」
「は~い、正解ー。いひひ! 驚いた? お兄ちゃん達」
してやったりと言わんばかりの笑顔を見せる謎の美女改めドクターネキ。
あんぐりと固まったままのサモーン達を余所にドクターネキに話しかける黒髪コンビ。
「メリークリスマス! あいつらと一緒じゃないから何かしてるとは思ったが、これは予想外だな」
「メリークリスマス、幼女ネキ! ふふっ、偶にはわたしも驚かす側になろうかなって」
「メリークリスマス、ドクターネキ。しかし、随分と攻めた格好だな?」
「メリークリスマス、黒死ネキ! どうせやるのなら元ネタに近付けたかったの。でも流石にあの格好はちょっとね?」
「あー……確かにあれで外に出るのは――いや、外でなくても問題だろうな」
「でしょ? だからラスオリっぽい格好で妥協することにしたの」
元ネタの成長したドクターの姿*13を思い出し、納得したとばかりに頷く幼女ネキに、ドクターネキは苦笑しつつ返す。
「しかしホントにドクターまんまだな――ああ、そうか。あのイベントもクリスマスが舞台だったな、それでか」
「そのとーり!……まあ自作は無理だから探求お姉ちゃんに依頼したし、正確には成長薬じゃなくって変身薬なんだけど」
「成程、成長しても求める姿になるとは限らない、故に変身した訳か。ふむ……これは……」
バハネキには大きく劣るも世間一般では十分タッパと胸のでかい美人になったドクターネキに目を輝かす幼女ネキと、顎に手を当ててじっと見つめ何やら考え込む黒死ネキ。
「「「――はっ!?」」」
ここで漸くバカ共が再起動。
未来にてカス子ネキと邪視ネキの子供を紹介された時*14の様に、身内扱いで面倒みてる(みられている)小さな筈の子が、年上な姿になった挙句正体に気付かずに乳尻太ももを凝視していた事実に、童〇であるこいつらの脳みその処理が追い付かずフリーズしていたのである。
「あ、アナヤ! え、何、どういうことなの……フシギ!」
「薬ででっかくなったんだよな……イベントと同じ、で」
「という事は……! 誰かとのヤリマクリスマスの為に!?*15」
「「「そんな事、絶対おとーさんは許しませんよ!!」」」
「「誰がお父さんだ誰が」」
「あははははははは!! くぷぷっ、アハハハハハハ!!」
正気に戻った途端のアホ共の妄言を冷たく一刀両断する幼女ネキと黒死ネキ。
ちなみにこの時二人の脳内には、ドクターネキの初デートをこっそり追跡するバカ共や、ドクターネキの結婚式で新婦側の席で号泣するアホ共の姿が浮かんでいた――――嫌になる程リアル、且つ鮮明に。
そんなバカ共と黒髪コンビのやり取りをお腹を抱えて爆笑していたドクターネキだが、笑いながらすっと手を挙げ合図する。
すると一緒だと一発で正体がバレてしまうからと、離れた所に居たゾイド達が姿を表す――皆、赤と白のカラーリングや、蝋燭やベルといったオーナメントを付けられたクリスマス仕様であった。
「まあ落ち着こうよ、お兄ちゃん達。わたしも折角のクリスマスだから楽しむついでに色々しようと思ったの。シャケハラスメント、だっけ? そっちも手伝うよ?」
「おお! ドクターネキはシャケの偉大さと本来のクリスマスというものを良く分かっている! さすが高い偏差値!」
「よしいくぞ! さあシャケを食え! 皮が苦手なやつのためにごま油で焼いたシャケ皮パリパリせんべいもあるぞ!」
「骨に残った身をほぐして作ったフレークのはいったおむすびもありますよ! 最後まで残さず無駄なくシャケを食え!」
その言葉にころっと態度を変えてシャケ配布を再開するサモーン3ちゃんズと、ドクターネキの命令を受け手伝いを始めるゾイド達。
「全く、あのアホ共は……。それで、ドクターネキは何をするつもりなんだ?」
「んふふ、わたしもちょっとした配布と宣伝をね?」
そう言って大きな袋からドクターネキが取り出したのは
「ゾイドの玩具か、しかしこれは」
「随分と、ずんぐりむっくりしてるな」
「可愛いでしょ? SDゾイド、とでも呼ぼうかな?」
掌サイズで黒死ネキの言う通りのずんぐりむっくりで丸っこいゾイドだった。
「最近ロボットアーム付きのわたし専用椅子作ってね? そのテストやデータ集めで色々させてたの。これはその結果」
「成程、配布と言ってたがこれを配るのか?」
「そ。これなら女の子ウケも良さそうでしょ? 将来の大きな市場である山梨支部の子供達には少しでもゾイドに興味を持ってもらわないと!」
「相変わらずのブレ無さっぷりで何よりだ。まあそのぐらいの方が好ましいが」
「ふむふむ……なあドクターネキ、これって」
「ふふっ、皆まで言わなくていいよ、幼女ネキ。ちょっと待ってね」
「おお!」
嬉しそうな幼女ネキにほほ笑んだドクターネキが再び袋に手を突っ込んだ後、取り出したのは――
「はい! SDバージョン・オオテノシロケツ!!」
「なんで!?」
満面の笑みと共に取り出された、元々デフォルメされたケツみたいな妖怪をさらにデフォルメした物体に然しものICBMようじょも思わず叫ばざるを得なかった。
「いひひ! 驚いた? ごめんね。はい、サイカーチスとダブルソーダ!」
「むう、私とした事が見事にやられたな。しかしこのケツもケツで出来が良い」
「当然! 作るからには手は抜かないよ~? 黒死ネキにはコマンドウルフとザバット*16を。狼と蝙蝠どっちが良いか分かんなかったから両方で!」
「私にもか? まあ有難く貰っておくが」
「う~む、私が言うのもなんだが……黒死ネキにゆるキャラっぽい玩具って、違和感半端ないな!」
「容姿は問題ないのに、空気というか、雰囲気がこれっぽっちも合ってなくてミスマッチ感が凄い!」
「ククク……ひどい言われようだな、まぁ事実だからしょうがないけど」
お子様同士でわちゃわちゃ――1人は現在大人だが――していた見た目で判断すると酷い事になる典型例みたいな三人だが、さてと、とドクターネキが袋を持ち直す。
「じゃ、わたしもちょっと行ってくるね。配り終わった後も用意してるから楽しみにしてて!」
「そうか、ゾイドに一応あの三人も一緒だから大丈夫だろうが気をつけてな」
「お祭り気分や酒のせいで自制心を失くす馬鹿は何処にでも現れるからな」
「分かったよー」
手を振って大きな白い袋を背負ってバカ達とゾイド達に合流するドクターネキを見送る二人。
「この人混みはキツいのではと思ったが、表情も声も落ち着いていたようだし、大丈夫そうだな」
「……そうだな。本当に不味いようならシキガミ達が動くだろう。
幼女ネキはドクターネキのトラウマを知る故に心配していたが、杞憂に終わった事に安堵した。
しかし【魔装術】と【変化】による変身を得手とする黒死ネキは気付いていた。
(姿を変えるだけでなく、表情や声を特定の状態に変える――いやある程度固定する術式込みの変身薬か、探求ネキに依頼する訳だ。依頼を受けたのなら探求ネキも認めたという事、なら言及するのは無粋か)
勿論こんな方法に探求ネキが良い顔をする訳もないが、ドクターネキも自身の状態を難色を示す探求ネキに正直に告白した上で諦める事無く全力で交渉。
最終的に今回限り・少しでもマズイと思ったら即撤収・ゾイド達に異常を察知したら例え腕尽くでも医務室へ連れていく事を命ずる、以上の条件の厳守で変身薬を作成してもらった。
そうまでしてクリスマスに参加したかった、否、友人達に気を使われたくなかったドクターネキの邪魔をする気も理由もなく、趣味や嗜好に問題あれど三人の中で最も精神年齢の高い黒死ネキは気付かなかった事にする。
そうして黒髪少女コンビの視線の先では三体のサモーン・シャケキスタンチンがアガシオンを従えてシャケハラスメントを行い、その傍で大胆なサンタ衣装の長身美女が笑顔でゾイドの玩具を配っている。
その隣で周囲を全力で警戒しつつドクターネキにも気を配るドスゴドス。
寒いのは苦手とばかりに丸まったヘルキャットをサボるなと蹴っ飛ばすフロストイグアン。
それぞれモンキーダンス、ブレイクダンス、スネークダンスを披露するハンマーロックとバリゲーターとステルスバイパー。
踊る様に首を振るロードスキッパーとそんなロードスキッパーをしっかりと手で捕まえているバトルローバーと、その背で何時でもワイヤー発射出来るよう備えるグランチュラ。
子供達を乗せたモルガ、子供優先のモルガの代わりに高速で駆け回って玩具を配るマーダ。
『病は飯から。食べるという字は「人が良くなる」と書く。』と書かれたタスキ装備でシャケを配るダブルソーダとウンメイノー流すのを止めた代償に『子供は宝物。この世で最も罪深いのは、その宝物を傷つける者だ。』と書かれたタスキ装備で玩具を配るサイカーチス。
更に多数のゾイド達がシャケと玩具を配り、歌う様に鳴き声を挙げ、踊る様に身体を動かして、場と周りを盛り上げていた。
そんなカオスだが賑やかな様子を見ていた幼女ネキが、何でもない事のように言った。
「なあ黒死ネキ。あのバカ共気付いてると思うか?」
「ふむ、なら賭けるか? 私は気付いてない方に賭ける」
「私もそっちだ。これじゃあ賭けにはならんな」
呆れた様に肩をすくめる幼女ネキとにやにや顔でこの後を期待する黒死ネキ。
そんなやり取りをしつつ、カオス極まりない状態だが、楽しそうに笑うドクターネキと、そのゾイド達と、ドクターネキが何故か好意的なコスプレ中のバカ共を見守る小学生コンビだった。
◇
「な〇は、もとい、シャケ完売――じゃなくて完配! お疲れさまでした!!」
「「「お疲れさまでした!!」」」
遂に大量の切り身他を配り終えたサモーン3ちゃんズ達、今彼らは大仕事をやり遂げた心地よい疲労感と達成感の只中にあった。
「お兄ちゃん達、お疲れー。こっちもちょうど終わったよ」
「「「お疲れー」」」
額に浮いた汗を拭いつつ笑顔で声を掛けてきたドクターネキに笑顔で返す*17サモーン×3。
「お兄ちゃん達のおかげで子供が沢山集まってたから効率良く配れたよ、ありがとね」
「なーに、そりゃこっちのセリフだ。ゾイドでガキ連中が寄って来たしな!」
「ええ、まさに水魚の、いえ、川シャケの交わりというものですね」
「シャーケッケッケッ、上手い事いったつもりかっての――ん?」
その時、元サスケニキ、現サモーン社長が何かに気付いて固まった。
「ん、どしたよ。急に固まって」
「な、なあヨロイニキ、じゃない大将。お前、シャケどんな相手に配った?」
「え、そりゃガキ共と――!? お、おいクロマ、じゃねえ先生、テメーは?」
「……子供と、親子で来てた家族連れでした」
「と、いうことは」
「「「誰もカップルやアベックに配ってない!!!!」」」
ガーン!!とワン〇ースみたいな擬音と共に叫ぶ三馬鹿ラスに戻りかかっているサモーン3ちゃんズ。
「やっぱり気付いてなかったんだな、流石というか何というか」
「これでこそのこいつらだろう? 正にお約束というやつだな」
それぞれ呆れ声と笑い声と共に幼女ネキと黒死ネキが、声と同じ表情でやってくる。
元々こいつらが何かやってたらまず寄って来るのは子供である。
加えて以前の大きめのやらかし*18が記憶に新しい中、こいつらが何かやってる時に近寄るカップルなど、知り合いか、余程己に自身があるか、余程の馬鹿の何れかであろう。
「な、何てこった……あんだけ苦労した結果が只子供連中にシャケ食わせただけかよ……」
「うぐぬおぁぉおー……あの山みてーなシャケを下ろした日々が全部ムダにぃいい……」
「バカなっ…! 常識外なっ…! ありえないっ…! どうして…! こんなことがっ…!」
地面に手を突いて打ちひしがれるサモーン・シャケキスタンチン×3。
アワレにもくずれそうになってるっぽいどころか完全にくずれてしまった彼らだが、残念ながらここが底ではなかった。
「さて、と」
「うむ」
「「後はこいつらの始末だけだな」」
「「「ドギーッ!! 何でぇええええええええ!!?」」」
ジョジョっぽく処刑宣告を告げる黒死ネキと幼女ネキ、即座に立ち直って叫ぶサモーン3ちゃんズ改め三馬鹿ラス。
「失敗すると思ってたから邪魔はしなかったが……アホな理由でまた騒ぎ起こそうとしただろうが」
「イベントで怪人になって騒ぎを起こしたんだ。なら最後は倒されるのが怪人の務めでお約束だろう?」
情け容赦なく告げる赤黒のニンジャ、ではなく赤黒のサンタ衣装の少女×2。
更に様子を伺っていた子供達も、何となく話の流れが分かったのか『やっつけるの?』『みたい』『じゃあ、いっしょに』とわらわらと集まり、バカ共を包囲する。
「「「ま、待った! 食べ物を粗末にしてはいけません!!! モラルだぞ!」」」
「「「「もう食べ物ないじゃん!」」」」
「「「あ」」」
既に全部シャケを配ってしまい、対悪ガキ様用『食べ物を粗末にしてはいけませんバリアー』も失った今、おガキ様達を防ぐ術もない。
しかしここでバカ共へ救い主が舞い降りた。
「はい、ストップ。皆でやっつけようとしたらきっとケガしちゃうよ? 覚醒してる子してない子もごっちゃだから尚更ね」
そう言って今にもやっつけろーと突撃してきそうな子供達をゾイドと共に押しとどめるドクターネキ。
一人で集団を相手にするのと同じく、集団で一人を相手にするというのは難しく、誤れば同士討ちも起こる為、彼女の言葉は間違っていない。
ブッダ! まさにそれはジゴクにて天より下ろされた一本の蜘蛛の糸の如く!
感動する三馬鹿ラスだが、ドクターネキは何やら幼女ネキに渡し、更にマイクを取り出すと――
「みんな、メリークリスマス〜! みんなにお願い事があるの。今からクリスマスを騒がせる怪人を止めるため、赤と黒のサンタさんが戦うんだ! みんなの大きな声でサンタさん達を応援してあげて! お姉さんのお願い聞いてくれるかな!?」
「「「アイエエエ!?」」」
――輝く笑顔とノリノリなトークでヒーローショーのお姉さんになって子供達に幼女ネキと黒死ネキを応援するよう呼びかけた。
天より下ろされた蜘蛛の糸は、登るどころか触れる前に三人の目の前でぷちりと切れたのである。
ブッダシット! やはりブッダはゲイのサディストであったのだ!
バカ共に甘いと言われるドクターネキは事実その通りなのだが、同時に彼女は自らの人生を変える切欠となった『笑ってはいけない人生録』の大ファンである。
故に彼女のこの行動も、致し方ない事であった、ショッギョ・ムッジョ。
「これは――よし。オホン……サモーン3ちゃんズ改め三馬鹿ラス! 迷惑防止条例違反とシャケハラスメント、何よりサモーン・シャケキスタンチンを名乗りながらシャケよりカップルを優先した名誉毀損罪でジャッジメント!――――デリート許可!」
「「「それ
渡されたマスターライセンス(玩具)を使って高らかに、且つノリノリで宣言する幼女ネキに思わずツッコむバカ三人。
更に子供達から多数の『がんばれー』という声に合わせるように、子供達の光を受け取ったかの様に、右手を握って空へ伸ばし左腕をガッツポーズにした幼女ネキの全身がサンタ服と共に光り輝いていく――こちらはヌエの電撃属性魔法他を用いた演出であった。
そしてその背後では勝手に『LORD OF THE SPEED』を流そうとしたサイカーチスが取り押さえられ、ちゃんと『TAKE ME HIGHER』*19が流され始める。
「戦隊ですらなくなったぞおい! 幾ら何でもおかしいと思いませんか、貴女!」
「ここまでされる謂れはマジでない! サモーンにグリッターはガチすぎんだろ!」
「ちょっと待って下さい! これは、どうかこれだけは言わせて頂きたい!」
そうクロマニキがびしぃ!と指差して叫ぶ。
「隣に黒死ネキが居るの絶対おかしいでしょ!? どう考えても貴女は闇属性ですよね!?」
ポーズをきめて光り輝くグリッターようじょの横の黒死ネキへの全身全霊のツッコみである。
「闇に抗ってパワーアップするってヒュンケル理論でも無理がある! あり過ぎる!」
「そのとーり! だから黒死ネキは下がっておくべき! 下がって下さいお願いします!」
続くサスケニキの発言とヨロイニキの懇願に対し、黒死ネキは笑顔で答えた。
「何も問題はないぞ。だってお前らも多分知ってる名言でもこう言っている」
「――――光と闇が両方そなわり最強に見える、と」
「「「ブ〇ントさんネタ!!?」」」
なおカオ転世界にそう呼ばれている人が居るのだが*20三馬鹿ラスは知らなかった。
「まった! 異議あり! それは持ち主がナイトだった場合だろ!? 黒死ネキはナイトじゃねー!」
「元ネタのアルカードはナイトだけど彼はナイトというよりあからさまに暗黒なのだ! 実際アンコク!」
「故に黒死ネキの頭がおかしくなって死ぬのでやめときましょう! そうしましょうお願いですから!」
「はっはっは、中々鋭い意見だな。だがやっぱり問題はないぞ、何故なら――」
そんなバカ共の抗議(命乞い)に更に笑みを深くした黒死ネキが何でもない様に告げた。
「私の頭がおかしくなったり、私が死んだりしたとして――――何の問題がある?」
「「「そりゃそうだー! 何も言い返せない!!」」」
こうして何も打つ手がなくなった*21三馬鹿ラスに対し、赤と黒のサンタが子供達の思いを乗せて、両腕を突き出し交差させ、横に広げて『溜め』の後に、腕をL字型に組んで構える!
「いくぞ黒死ネキ、分かってるな?」
「ああ、あのセリフだろう? せーの」
「「――クリスマスには、チキンでしょうが!!」」
ぴったりの決め台詞と同時に二人は子供達の光を加えた風にみせた、光と闇がそなわり最強に見えるだけの、グリッターゼペリオン光線っぽい何かを放った!
「「「うわーっ!! シャケはカムバックできない!!!」」」
そしてグリッターゼペリオン光線っぽい何かを食らったサモーン・シャケキスタンチンを偽った三馬鹿ラスは、爆発と共にクリスマスの夜空へと消えていった。
「最期はサモーンとして散ったか、偽物と呼んだのは謝罪しよう。お前らはサモーン2号・3号・4号だ」
「ぶっ飛ばされて咄嗟に出る台詞があれか。あいつらやっぱり芸人を目指すべきだったんじゃないか?」
最後の最後で本当のサモーン・シャケキスタンチンになった三人を幼女ネキはちょっぴりの敬意で、黒死ネキは問いかけと共に見送った。
そんな赤黒のサンタに子供達へ感謝の言葉を送ってからドクターネキが合流する。
「二人共お疲れ~、は変かな?」
「普段から連中と付き合ってるドクターネキ程ではないな。連中の行動を知ってたのか?」
「慣れたらそうでもないよ? 何かしてるのはね。シャケハラスメントは予想してなかったけど」
「奴らの斜め上は今更だが、鮭集めたり料理修行してるのをおかしいと思わなかったのか?」
「黒死ネキがそう思うのは無理ないけど……だってお兄ちゃん達だし」
「「確かに」」
脳内メーカーその場のノリと思いつき99%な連中である、あいつらの行動を完全に予測するなど予知系の能力以外は不可能であろう。
ただドクターネキが色々と用意してた様に、全く予測出来ない訳でもないのだが。
「さてと! じゃあもう一つの出し物を始めようか! みんなごめーん! ちょっとそこ開けて!」
ドクターネキがそう言って子供達をゾイドと共に誘導してスペースを作ると、新たな一団が姿を現した。
丸っこく、ずんぐりだが、同時に重厚感を持ったその姿。
「おお、カノントータス*22か! この愛嬌ある感じが良いんだ!」
「亀型のシキガミか。見るからに固く、そして戦車みたいだな」
「可愛くて、なのにミリタリー感もある、まさにゾイドだよね!」
「うわー! でっかいカメさんだー!」
「のりたい! のってもいい!?」
「りゅうぐうじょうにつれてってくれる?」
大砲背負った亀の姿に子供達が駆け寄るが、ゾイド達が止めに入り、その間にカノントータスは命じられた通りに整列し、その周囲をゾイドが囲んで近づけぬ様にする。
「ごめんね! 今は危険だから近付かないで、後で触らせてあげるから!――それじゃあみんな、始めて!」
その声に従い、カノントータスが砲身を空へと一斉に向けたその数秒後、鈍い砲声が鳴り響く。
そして空気を切り裂く笛の様な音の後に――
「おお!」
「ほう」
「「「「わー!!」」」」
――夜空に大輪の花が咲いた。
その後も止めることなくカノントータスは発射を続け、その度にクリスマスの夜を花火が彩っていく。
「冬の花火も良いものだな! ゾイドでやるというのも悪くない」
「でしょ? ゾイドは戦いの為に作られたけど、戦いだけに使わないとダメなんて決まりはないもの」
「成程な。しかし、ドクターネキは満足してない様に見えるが?」
「うっ……ホントは元ネタのイベントみたいに飛行船と大量のドローンでプレゼント配るとかしたかったの、今のわたしじゃ予算も技術も全然足りないけど。代わりのこの花火だって、もっと凄いのやりたかったなあ」
「やれやれ、向上心が強いのは良いが度を過ぎればそれは強欲だ。時には足を止めるのも大事だぞ?」
「黒死ネキの言う通りだな、安全確保は大切だぞ? あと凄い花火って一体何するつもりだったんだ?」
「うー、正直二人に言われるのはちょっと納得しかねるけど……ガンブラスター*23作って花火撃たせたかったの! 秒間1000発の超連続花火なんてすっごく盛り上がりそうでしょ!?」
「おお! それは確かに見てみたいな! もしやる時は呼んでくれ!」
「いや、それ絶対空中で花火同士で衝突して暴発から連鎖爆発するだけだろ」
目をキラキラさせる幼女ネキ、思い切り呆れる黒死ネキ、野望に燃えるドクターネキの小学生トリオが並んで夜空の花火を眺めながら語り合う中、シュタタタと駆け寄って来るロードスキッパー。
「おかえり。ご苦労様」
「あ、バカ共」
「回収に向かわせてたのか」
「だって折角のクリスマスだもん。それに二人も何だかんだで手加減してくれたでしょ?」
運んできた三馬鹿ラスを地面に下ろして褒めて褒めて、とすり寄るロードスキッパーの頭を撫でるドクターネキ。
「まあ気絶からすぐ復活出来たから実際手加減してもらってたんだろうけど……」
「出来たら吹っ飛ばないぐらいの手加減して欲しいってーのはぜーたくなんかな」
「まあ五体満足なだけ御の字ですかね。サモーンスーツはオシャカになりましたが」
そんなぼやきと共によっこらせと立ち上がる少しボロボロになった三馬鹿ラス、そしてすぐ手当てを開始するアガシオン。
なお、何時も通りの姿でボロボロの三人を見て、少女三人と一部のゾイドは『この三人、もしかして何時もの格好の上からシャケ怪人の着ぐるみ着てたの?』とふと思ったが、あまり深く考えるのはよそうと思ったのだった。
そうして三馬鹿ラスも加わって、歓声を挙げる子供達と一緒に花火を皆で眺める。
菊、牡丹、千輪、柳といった花火が続いた次に創造花火――所謂キャラもの花火が上がり出す。
勿論ゾイドばかりで一同がやっぱりなと思う中、烏の花火が三発上がり、『何でゾイドに混じって烏の花火が?』と不思議そうな三馬鹿ラス*24の横で幼女ネキ、黒死ネキが苦笑する。
そして花火の光と音の中、ドクターネキが静かな、されど良く通る声で話し始める。
「今年ももうすぐ終わりだね。今年はホントに色々な事が沢山あったよ、そうホントに沢山……多分わたしがガイア連合に入ってから、一番色んな事があった一年だった」
ふにゃり、と笑顔になったドクターネキが幼女ネキへと顔を向けた。
「幼女ネキ、わたし色んな妖怪さん達にも会ってみたいし、ウチの子達とも仲良くしてくれたらいいなって思ってる。だから、来年は遊びに行くね。きっと――ううん、絶対」
「ああ! 家はケツ以外にも色んな奴らが選り取り見取りだから楽しみにしてくれ! 歓迎するぞ!」
次に、表情を真面目なものへ変えて、黒死ネキに向き直る。
「黒死ネキ、わたしは多分黒死ネキの『相手』には成れない。だけど――黒死ネキを『満足させる』ゾイドを、必ず作ってみせるから。あ、黒死ネキが嫌いだからとかの理由じゃないから、そこは誤解しないでね?」
「ハッハッハッハッハ! それは良い! 実に良い! その時を楽しみにさせてもらおう! ああ、実に楽しみだ!」
最後に、三馬鹿ラスへと姿勢を正し。
「そして、お兄ちゃん達のおかげで私はこんな風に……」
言いかけた言葉を途中で止めて、困った様に、照れた様に笑う。
「あはは、あのイベントのドクターの台詞でって考えてたんだけど……上手く言葉が出てこないや。だから――」
一歩下がって、居住まいを正すと、深々と頭を下げた。
「今年一年、本当にありがとうございました。少し早いけど、どうか来年も宜しくお願いします――――あはは、やっぱりちょっと照れ臭いかな」
ロールプレイではなく、己自身の言葉でそう告げて、赤い顔と恥ずかしさを誤魔化すように微笑んだ。
その笑顔に、三馬鹿ラスは何て返せばいいのか思わず固まってしまい。
どうしよう?
ここは無難に真面目に返すか?
それは期待外れと思われないか?
ラスオリのイベントの台詞で返すのは?
いや自分達がカッコいい台詞言っても滑るだけじゃ?
いっそネタやギャグに走るか?
それは絶対やっちゃアカン場面では?
ダメだ分からない!一体何が正しくて何が虚構なんだ!?
脳内でそう叫ぶ三馬鹿ラスは、それでも何か答えなくてはという焦りのままに口を動かし――
「「「今後とも、よろしく」」」
――ある意味では、とても相応しい言葉を返した三馬鹿ラスだった。
「あー、にいちゃんたちてれてるー」
「そこでヘタレちゃうのがやっぱにいちゃんたちだなー」
「そこでふみこめない男はダメだってお母さん言ってたよー」
「「「うすらやかましいわ!!」」」
様子を見ていた子供達に煽られ、怒鳴り返すバカ共を苦笑とにやにや笑いで見守る幼女ネキと黒死ネキ。
そんな光景を見つめるドクターネキの表情が視界に入り――それがラスオリのイベの最後に出て来るドクターの一枚絵――満面の笑顔を浮かべたドクターの幸せそうな笑顔とそっくりだと、そう思った三馬鹿ラスだった。
「……あれ? そういえばラスオリのあのイベントって、最後っつうか後日談でドクターが」*25
「あ! え、てことはまさかドクターネキも!? いやその、別に悪い事じゃねーけどよ」
「えーと、寧ろ正常な欲求とも言えますし。統計だと女性の80%が18歳までに覚えるとか」
円陣組んでひそひそ相談を始めるバカ×3。
そして相談がまとまったのか、円陣を解いた三馬鹿ラスは親指を立てて、笑顔で結論を伝えた。
「「「――正しい知識のもと、節度を持って、程々にね!!」」」
次の瞬間、幼女ネキと黒死ネキとゾイド達から
ドスゴドスとバリゲーターにグッジョブする幼女ネキ。
更なるオチにお腹を抱えて爆笑する黒死ネキ。
溜息ついてる様に見えるアガシオン。
勝利の雄叫びを挙げるゾイド達。
意味は分からずとも笑って盛り上がる子供達。
そして何でこうなるかなあと苦笑するドクターネキ。
残念ながらこのバカ共ではラスオリのイベントの様に綺麗なラストで終わる筈もなく。
その場の者達は花火で彩られたクリスマスの夜空に、サムズアップする三馬鹿ラスとサモーン・シャケキスタンチンを確かに見たという。
「そういえば今回は随分と大がかりだったんだね、他所の支部でも一斉にやるなんて。クロアお姉ちゃんや閑お兄ちゃん、最近仲良くなった新人さんに頼んだの? あちこちの支部でサモーンがシャケ配ってたけど、ホントよくあれだけ大量の鮭と協力者集められたね。どんな方法使ったの?」
「「「いや、知らん……何それ……怖……」」」
「えっ」
後に、各地のイベントや祭り、更には終末後にも『○○にはシャケを食え!』と叫び、シャケハラスメントを行う悪魔が、日本のみならず世界各地にて目撃されるようになるのだが、それはまた別の話である。
―以下どうでもいいバカ共の設定―
普段はジャンニキ食堂や山梨支部内の売店弁当などで済ませているが闇鍋したりドクターネキとカレー作ったりと実はそれなりに料理が出来る。
ただこいつらにとっての料理は日々の生活の為というより祭りやイベント等の為にやる事といった感じで趣味や遊びの範疇に近い。
大人ドクターネキの胸や尻は脳内お宝フォルダに登録されたが、その後繰り返された脳内会議の果てに何重にも鍵をかけた上で脳内シークレットフォルダの奥底へと移される事になった。
・サスケニキ
手先が器用なので三人の中では料理の腕の平均値は最も高く、大体の作業は無難に熟す。
しかし油断するとスシは完全なエネルギー補給食と言って必ずスシを献立に混ぜたり変なオリジナルスシを作り始めるので見張りが要る。
・ヨロイニキ
一番考えなしのバカなのが料理にも影響しており、全ての物は焼くか煮れば食えると心から信じている節があり、作業も勘や目分量でやるので大雑把。
なのに何故か三人の中で一番味付けが上手いので他二人から不思議に思われている。
・クロマニキ
頭脳担当で細かい性分故に、分量や時間をきっちり守る為そういった作業に強い。
ただ料理をしながら時折女体盛りや女体パフェみたいなエロネタ話を急に振ってくる事があるのでズッコけたりしないよう注意が必要。
・アガシオン
流石に料理スキルカードは与えられていない。
飲食スキルもないが練習の為に作った大量の切り身を食べる三馬鹿ラスを見て飲食出来なくて良かったと心から思ったと後にゾイド達に語った。
・ドクターネキ
胸と尻は別にどうでもいいが身長は高くなりたいと思っている。
ドクターのロールプレイをしているのは明るく元気でやりたい事に正直な子、という自身の望む姿だから、現在の彼女の振る舞いは演技4・素が6といった所――なおマッド部分と実は悪戯好きな部分は素である。
自身の胸や尻を見ては必死に目を逸らすを繰り返す三馬鹿ラスを見てTS魔人ニキネキの気持ちが少し分かったとか。
・ドスゴドス
ドクターネキのサンタコスについてスカート裾や胸元をもっと伸ばすよう激しく口論し、最終的にミリ単位で言い争った。
また変身薬による大人化を禁止した――男を惑わす悪女になるのダメ、絶対。
・幼女ネキ
容赦ないツッコミ役&制裁役と割とネタにのってくれる枠として動かしやすいようじょ。
ドクターネキにとっては悪戯の対象=とても親しい相手という事である。
友人だからこそ一方的に気を使わせるままなのが嫌だったのが特殊変身薬を用いた理由。
・黒死ネキ
趣味・嗜好の問題を除けば小学生トリオの中では最も精神年齢が高いのである程度周りに合わせてネタにも乗ってくれそうな人。
ハロウィンで面識が出来たのと、人生録作成の主要人物の一人なのでドクターネキからは恩人の一人という認識。
なので対黒死ネキゾイド開発宣言はドクターネキからの感謝の気持ちである。
という訳でクリスマスはシャケを食えな回でした。
当初はクリスマスならと山梨支部inしっと団を思いつくもコメントも周囲の反応も『やると思った』一色にならない?でボツ。
次がある漫画で知った聖牛供儀にチャレンジ、ドクターネキも牛の調達頼んで何するか知らないネキが気を利かせてカノンフォート用意、ぶっ飛ばされるバカ共のオチ、は作中通りミトラスが流石に気の毒では?でボツ。
で、悩んでたらようつべで『クリスマスにはシャケを食え!』が飛び込んできてこうなりました。
更にドクターネキの台詞の為ラスオリしてたら大人になったドクター出たのクリスマスイベントじゃん!と大人になったドクターネキが参戦、合わせて幼女ネキ・黒死ネキの小学生コンビ登場でトリオに、書いてる内にサモーンのせいで特撮ネタがぶっこまれ、と何時も通り長くなってこうなりました。
最後は綺麗に終わらせるつもりでしたが筆が動いてこうなった挙句、サモーンがカオ転世界に。
でもふーじん様とこでモヒカンが悪魔になって、緋咲虚徹様とこで松○○造が太陽神になれるならサモーン・シャケキスタンチンが誕生出来ない筈がない!と思い突っ走りました――終末後は魚は貴重品と本家で言ってたから多分場所によっては歓迎してもらえるし!
12/24・マカーブルさんに頂いたイラストです、何時もありがとうございます。
黒サンタコスの黒死ネキ
幼い感じなのにカッコよさと色気が感じられて良き。
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大人版サンタコスドクターネキ
これは三馬鹿ラスがチラ見するのも仕方ないw
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改めてイラスト本当にありがとうございました。
それでは最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました、皆さまどうか良きクリスマスを。