【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。 作:貧弱一般メガテンプレイヤー
大分前に貰ったのボールと割と最近のボールに合わせて応えようとしたら何時もの事ですがめっちゃ長くなりました、また今回のバカ共のやらかしは過去最大の規模と威力になります(この先これ以上のやらかしがないとは言わない)
更に今回は時系列的に大きな矛盾が生じております、何時もの外伝・アンソロジー時空としてスルーしていただけると幸いです。
今日も平和なガイア連合山梨支部の昼下がり。
何時もの宿舎――ではなく山中のひっそりと建つ掘っ立て小屋にて、車座になる三馬鹿ラスの姿があった。
此処は三人が密かに作ったいざという時の為の避難場所の一つであり、山梨支部だけでなく、依頼や遊びで彼方此方に行った時に各地に作っていたりする。
実際の所はシェルターというより子供のやる秘密基地を覚醒者の能力で悪ノリしてやった結果で、殆どがその後放置されたままだったりするが。
様子を見に行った場所も子供の秘密基地になってたり、ホームレスが住み着いてた等でそっとしておこうと放棄したものもある。
中にはヤクザ等の取引現場に使われてて口封じされそうになった事もあった――覚醒者が居なかったので普通に叩きのめしてヤバイ物と一緒に警察署前に捨てて来たが。
とまあそんな秘密の場所で何やら話し合う三バカの顔は何時になく真剣そのものであった――そんな表情のままパイ〇ンやふた〇りについて議論するのがこいつらなのだが。
「……やっぱ中々良い案は出ないな。まさにサウザンド・デイズ・ショーギ」
「まーなあ。でも事が事だ、そんな簡単にいきゃ苦労はねーよ」
「とは言えこの件での議論は既に何回目やら。いい加減何かしらの成果が欲しい所です」
はあ、と溜息を吐く三馬鹿ラス。
議論を重ねても良き意見は上がらず、ただ無為な時間が過ぎるのを繰り返すだけの現状に、三人の士気は低下の一途をたどっていた。
取り合えず動いてみるが基本スタンスのこいつらでも動き始める事も出来ないでいる、その内容とは――
「どうすりゃいいかなあ……魂の保護って。実際難解」
――本当に珍しい事に、本当に真面目な内容だった。
以前かの悪名高き転生者、
幾らバカ共でも流石に目を付けられる覚えがなく、アイエエエ!?ナンデ?レイプマンナンデ!?となったが、行ってみれば自分達が知らない間に彼らの利益――忍び込んだ過激派メシアンが三馬鹿ラスの
そして警告とは、三人がシキガミを未だ持たない故に、魂が無防備であり、何時悪魔に魂を持っていかれてもおかしくないという現状について。
ハジメテの相手は僕の考えた最高で最強でエッチな理想のシキガミ嫁でという
加えてガイア連合の主敵たる天使は上から下まで魂の運び手である。
そして警告と共に紹介された解決手段こと体内内蔵型シキガミ、その名も『ホモコロリ君グレート』
名前も見た目も色々と酷いがその性能は非常に高く、魂の保護以外にも様々なスキルを持ち合わせ、使用方法も契約魔術を使って消化器官と瞬時に融合させるだけという簡単なもの、何より無料で貰えるというのが素晴らしい。
「「「……はぁ」」」
しかし三馬鹿ラスの顔は暗く、憂鬱そうなまま。
至れり尽くせりの高性能シキガミ、但し見た目が酷いという点に悩んでいる――
「まあこの際見た目の事はいいんだ。ブサイクも三日で慣れる、古事記にもそう書いてある」
「慣れりゃあ逆に『だがそれがいい!』ってなるのは色んな名作が証明してっからな」
「シャドウ・オブ・ウォーやった時もオーク達が気付けば好きになってましたもんね」
――という訳ではない。
見た目アレで寄生してる相手と相棒な感じになるのは色々な作品でやっていた、ミギーとかヴェノムとかスクナとか――最後のは違うが。
まあ兎に角見た目がアレなのはまあ妥協出来る範囲なのだ。
では何が問題なのかというと
「これ、尻から出るんだよなあ……」
そう、このホモコロリ君グレートはケツから出るのである。
そしてそれの何が問題――いやまあ尻の穴からエリアリンみたいなの出す時点で普通に問題ではあるが――なのかというと。
「尻は不味い、尻というのが実に不味い、あからさまに欠点なのだ!」
「これさえなきゃ問題ねえ、でもこれがあるからどうしようもねえ」
「タイミングが悪すぎます。少なくとも今は使えません、だって――」
「「「――これ使ったら俺達=尻のイメージになってしまう!!」」」
この一点に尽きた。
以前の一件*2で三馬鹿ラス達にはシロケツフロストの
この状態で尻からエイリアンみたいのを出して使役なんかしたら最早イメージは確定。
自分達=尻の図式は永久不変の理としてガイア連合の歴史に刻まれてしまうだろう。
そうなれば自分達はケツニンジャ、尻侍、臀部魔道士へのクラスチェンジを余儀なくされ、三馬鹿ラスの呼称は三ケツ集に、おガキ様達からおケツのにいちゃんたちと声をかけられる日々が待っている。
そんなの俺は辛い 耐えられない。
その為何とか他の手はないものかとアレコレ考え議論しているのだが、名案はでてこない。
アリスニキ・給食ネキ製造の聖獣*3を買うのも考えたがあれはどちらかと言えば現地人向けでレベルも1以下と、自分達の魂を預けるには不安がある。
そしてホモコロリ君グレート級のものを注文して買うとなると、そもそも作ってくれる相手をまず見つけられるか、必要な額を用意出来るのかという話になってしまう。
まあお友達価格&ローン払いでやってくれそうな相手の心当たりはある、あるのだが。
「⋯⋯流石にこの件でドクターネキを頼るってのはどう考えてもアウトだよなあ」
「まーな、幾らしっかり者でもガキに背負わしていいモンじゃねーとオレでも思うぞ」
「以前にも増して研究と開発に頑張っていますし、水を指す様な真似はしないでおきましょう」
工房を手に入れ*4、より一層ゾイドの開発へと日々励んでいる年の離れた友人の姿を思いながら溜息を吐く。
十分な広さの作業場と新たな機材を使って更なる高みを目指して研鑽に励む日々を送るドクターネキ。
彼女は工房にそのまま寝泊まりしようとしては、ドスゴドス改めティガゴドス*5に家へと強制送還される毎日を過ごしていた。
少しずつ寝具等の身の回りの品をこっそり持ち込んで、なし崩しに工房でそのまま生活しようと企むドクターネキ。
生活と仕事の場は分けてちゃんと休まないとダメですとドクターネキの隠したそういった品々を見つけ出しては家へと持ち帰るティガゴドス。
この争いに当初は中立だった三馬鹿ラスも『お兄ちゃん達はわたしの味方だよね?』とドクターネキに涙目で言われて断れず、こそこそと物品を工房へと運び込んでは彼方此方へ隠すのに協力している。
アガシオンという内通者の存在によって三馬鹿ラスの行動は意味がなかったりするのだが。
閑話休題
兎も角そんな身内、且つ年下の女の子に自分達の魂の保護=責任を負わせるのはバカ共としても可能な限り避けたかった。
そして新しい解決案も出ず、今日もまた何の成果もないまま会議は続く。
サスケニキが腕組みして只管脳内での思索に没頭する。
何か手はないのか?誰か教えてくれる者はいないのか?
そんな自問自答を繰り返すサスケニキの脳内に、突如紳士が現れて告げた。
――それは無理矢理守ろうとするからだよ 逆に考えるんだ『あげちゃってもいいさ』と考えるんだ――
「考えられるかドアホ!!」
脳内のジョースター卿に全身全霊でツッコむサスケニキ。
突如叫んだサスケニキに、ヨロイニキとクロマニキが何だこいつな顔になった。
「プッチ神父の変装か? 冗談じゃねえっての、ヤンナルネ」
脳内の相手にブツブツと文句を吐くサスケニキ。
自分の魂を天使召喚に使われる等論外だし、例え天国に連れてかれるとしても御免被る。
メシア教の天国がどんなモノかは知らないが、絶対碌なものじゃないだろうし、マトモだったとしてもキリスト教系の天国は自分達にとって退屈極まりない全然面白くない場所だと確信出来た――イスラム教の天国ならちょっと心が揺れるけど*6。
とっとと脳内プッチ神父の変装した偽紳士の事を忘れようとしたサスケニキだが、何か引っ掛かるモノを感じた。
何か大事な、重要な事を見落としている様な、自分の中の別の自分が何かを必死に訴えている様な感覚。
違和感の正体を見つけるため、深く、静かに己の内へと思考を沈めるサスケニキ。
急に叫んで、ブツブツ何か言った後、沈黙してピクリとも動かなくなったサスケニキに、不気味そうにしつつ声を掛けたり目の前で手を振るヨロイニキとクロマニキ。
無理矢理守らなくていい?いや守らにゃダメだろ、守るのは絶対、なら何で、そもそも守るとは何だ?勿論天使や悪魔に魂を取られない事、待て、それなら
「!」
その瞬間サスケニキの脳内でピキィーン……キラキラバシュゥゥゥンという音と共に
増幅された集中力で突破口を見出したサスケニキは叫んだ。
「我、天啓を得たり!!」
「「おわぁ!」」
反応しないサスケニキにツープラトン・ブレーンバスターを仕掛けようとしていたヨロイニキ・クロマニキが驚いて距離を取る。
「聞け! 名案、英語で言うとグッドアイディアが浮かんだ! 罠にかかって『もうタヌキはおしまいです』になってるタヌキのモノマネしてる場合じゃねーぞ!」
「「してねーよ!」」
ツッコみつつも聞く姿勢になった二人に笑みを浮かべてサスケニキが説明を始めた。
「俺達は守る事に固執し過ぎていた。いや正確には方法を限定し過ぎていたんだ。まずは――」
――サンシタニンジャ説明中――
「――って訳だ。どうよ? これなら俺らだけでも多分イケる」
「な、なるほど⋯⋯こいつは流石に思いつかなかったぜ」
「うーむ⋯⋯確かにこれなら実行可能かもしれません。しかしあくまでかもしれない、です。上手くいくかどうかは⋯⋯」
「なら、やってみるしかねーな。他に手もねーんだ、試す価値はあるはずだぜ」
「そうだ、後悔は死んでからすればよいとミヤモト・マサシも言っている」
慎重な意見を述べるクロマニキだが、他二人がやる気な事と、別の手段もない事から腹を括った。
「言うまでもなく非常に危険を伴います。準備は入念に、且つ慎重に実行せねばなりません」
「言われるまでもねーよ。『アレ』がどんだけヤバいかは身にしみてわかってらあ」
「まさに文字通りにな⋯⋯この件はドクターネキには?」
「私達だけでやるべきでしょう。協力してもらいたいのが本音ですが、流石にちょっと⋯⋯」
「モノがモノだかんな、色んな意味でドクターネキはちっと参加させらんねーよなー」
「ゾイドの事も考えると流石にな。まあ多分なんとかなるだろ。ダイジョブダッテ!」
話がまとまり、全員が同意した事ならば、あとは行動するのみである。
一応はリーダーのサスケニキが高らかに宣言する。
「ではこれよりオペレーション『スマトラアポカリプス オブ プリズナー』を開始する! 我らの興亡この一戦にあり! 総員奮励努力せよ!」
「「おおー!!」」
こうして彼らの新たな戦いが始まった。
「じゃあ早速ヨロイニキは『アレ』の採取に向かってくれ。」
「現物がないと私も何も出来ないので早急にお願いします」
「はあぁあぁあ!!? ふざけんな! 何でオレだけなんだよ!?」
「仕事ないのお前だけだろ。役割分担じゃねーか」
「私の代わりに制作をやると? 出来るんですか?」
「ぐぐぐ⋯⋯いや待った! 採取場所まで行くのも『アレ』持って帰るのもオレ一人じゃぜってームリだ! テメーらも地獄に付き合ってもらうぞ!」
「⋯⋯二人ならギリイケるでしょう。私は道具や場所の準備してますから、よろしく」
「待て! 前衛後衛が揃った方が安定するだろ! 俺が準備してるからクロマニキが行け!」
しかし先に醜い仲間割れが始まった。
その後、何だかんで材料を確保した三馬鹿ラスは協力して計画を開始した。
そして、オペレーション『スマトラアポカリプス オブ プリズナー』は成功した――してしまったのである。
◇
森がそのまま異界となったタイプのとある地の異界。
鬱蒼とした森の中を、ヨロイニキがアガシオンを連れて全力で駆ける。
自慢のキメラな鎧は己と悪魔の血と戦塵に塗れ、面頬から漏れる息も今にも波紋の呼吸を乱しそうな程に荒い。
片手に刀を構え、もう一方の手で肩に担いだ『モノ』を支え、止まる事なく走り続ける。
が、突如立ち止まると、飛んできた複数の矢を、急所とアガシオンへ向かっていた矢のみ愛用のへし切長谷部レプリカで切り落とし、残りは鎧や小手で跳ね返す。
「チッ」
現れた悪魔達――エンジェルやホーリーゴーストの一団――を一瞥し再び駆け出すヨロイニキ。
逃がさじと天使達が追った、次の瞬間。
「――スキありだオラァ!!」
前触れもなく反転したヨロイニキが襲いかかり、出鼻を挫かれた天使達が動揺した隙をついて、次々と切り捨てていく。
――人間一人斬ったら剣の修練数か月分に匹敵する。
そんな言葉があるぐらいには、実戦で相手を斬り殺すのは剣術における糧となるのだろう。
武術など、前世でも今世でも習った事等ない三人だが、悪魔と戦う経験は、ただの男子高校生だった三人に、相手を殺す為の術を与えていた。
咄嗟に弓で防ごうとした最後のエンジェルを弓ごと斬り倒したヨロイニキが残心の後にへっと笑った。
「逃げて追ってきた奴から順に倒す! これぞ維新志士の対多数戦法よ!――うおっと」
現れた新手、しかも今倒した倍の数を見て、ヨロイニキが再び森の中を駆け出す。
逃げながら肩越しに背後を振り返ったヨロイニキは、まだ息のある天使達を一瞥すらせず追って来る新手に舌打ちした。
「くそっ、無視かよ! お前らアメリカがナワバリなんだろ!? 仲間の遺体も持って帰る海兵隊魂をちったぁ見習えってんだ!」
敢えてトドメを刺さず、負傷者にする事で、救助で相手の人手やリソースを削る。
少しでも追っ手が減ればと考えた手を完全に無視され、ヨロイニキはヤケクソ半分、本音半分の悪態を吐き捨てる。
一連の立ち回りで少し位置がずれてしまった肩に担いだモノ――――既に事切れたサスケニキ・クロマニキの身体を抱え直し、ヨロイニキは走り続けた。
◇
始まりは何時も通りの塩漬け依頼から。
新入りには無理なレベルの悪魔がボスの異界攻略、だが報酬が渋い事で塩漬けとなった依頼。
この依頼を、バカ共は面倒とは思っても厄介とは思っていなかった――異界のボスが妖鬼オニであったからだ。
力を重んじ、人を弱いと見下し、そしてお頭はあまり宜しくない。
有名処、所謂ネームドな連中を除くと、現世で暴れる様なオニは大体そんな連中である。
そしてそんな人を見下してる奴らが見るからにおバカな三馬鹿ラスから挑発され、バカにされ、おちょくられたらどうなるか?――大体七割ぐらいがその時点で激昂する。
残った三割もバカ共に目の前でヒゲダンス踊られたり、親指と人差し指を立てて指と尻を向けながら『死刑!』とかされるとほぼブチギレる。
そうなってしまえば後は作業である。
予め用意した大量の罠へと誘い込むもよし。
デバフ・バステを食らわせつつ逃げ回って消耗させるもよし。
全身全霊込めた怒りの攻撃にテトラカーンを合わせてもよしと、三馬鹿ラスからするとそんな悪魔達はカモであった。
なお、この手で倒された悪魔達の最期の表情は、随伴したゾイドの撮影した映像を見たドクターネキやゾイド達が、思わず同情したくなる程に無念極まりないモノであったとか。
兎も角オニ相手なら問題ないと、何時も通りに準備して、ドクターネキから実戦テストとして預けられたプテラス*7とシュトルヒ*8を連れて件の異界へ向かった三馬鹿ラス。
森の中という戦闘機型ゾイドの二体にとって不利な地形と承知の上で連れて行った事からも、三人の自信の程が伺えた――不得意な場所での戦闘データも収集したいというドクターネキの希望もあったが。
しかし、現地の名家に連絡の上で到着した異界には、悪魔の姿は只の一匹も無かった。
首を傾げつつボスが居ると思われる最深部へ向かう三人と三体。
そして辿り着いた最深部では――
「ガイア連合の方ですね? どうやら行き違いがあったようです。本当に申し訳ない」
――MAGへと散ってゆくオニと、こちらに笑顔を向ける一神教派を名乗る、天使を連れた者達が居た。
「一神教派の人……なのか? でもなんでこんな所に? 俺は訝しんだ」
「依頼ブッキングしたっての? んな話ぜんぜんきーてねーけど」
「もしかして依頼元の名家、私達を両天秤にかけてました?」
「いえ、私共の方から申し出ました。貴方方もご存じでしょうが、現在一神教を信仰する我々に日本の方々が向ける目は、良いものとは言えません」
「あー……でも此処の異界って残すとマズイって聞いてんだけど」
「勿論この異界の管理やどうするかはこの地の皆様にお任せします。我々は主の教えに従い隣人に救いの手を差し伸べただけです」
「ふーん……けどそれでいーんすか? そっちも色々大変だって話だし」
「ハハハ、確かにそうです。ですが幸いガイア連合の方々からのご支援もあり、少々の余裕はありますので」
「はあ、それはお勤めご苦労様です、と言うべきなんですかね」
にこやかな笑顔で語る男に対し、無言で顔を見合わせる三馬鹿ラス。
暫しの沈黙とアイコンタクトの後、クロマニキが友好的な雰囲気で提案した。
「じゃあ、良ければ私達の方からそちらの上の方に事の次第を連絡しましょうか? その方が話が早いでしょうし、メルキゼデクからのお説教も短く済むと思いますよ」
「お気遣い頂きありがとうございます。折角のお申し出ですが、そこまでお手を煩わせる訳には……それにメルキゼデク様はお優しい御方ですのでご心配は――」
「
「百人斬り!!」
「マハラギ!!」
「がっ!?」
「ぎゃあっ!」
「うぐっ!」
三人が一斉に広範囲攻撃を仕掛け、完全に不意をつかれた天使と自称一神教派の者達がまとめてなぎ倒された。
会った時から何とも言えないイヤな予感、良く分からない違和感を感じ取った三馬鹿ラス。
それは割と一神教派の所には顔出してるのに見た顔が全く居ない事、一神教派なのに拳に拳ダコ出来てるのが一人も居ない等といった観察による結果だが、おバカな三人は具体的に言葉や形に出来なかったので、何となくや勘としか思っていなかったが。
そしてクロマニキのカマかけで疑惑は確信へと変わった――――本当の一神教派なら、メルキゼデクを偉大な御方や頼もしい御方と言ってもお優しい御方なんて絶対言わない。
即座の行動を起こした三馬鹿ラスに対し、アガシオンが密かに合図を送っていたゾイド達も、シュトルヒがまだ息のあった者へ止めを刺し、プテラスが木々の隙間を縫って空へと舞い上がり――プテラスの警告の鳴き声が辺りに響く。
ほぼ同時に周囲から現れる悪魔――天使の群れに、三人は自分達が罠に嵌った事を悟った。
「ブッダシット! ベトコンみたいなアンブッシュしやがって!」
「どうやってこれだけの罠を……まさか、依頼の時点で?」
「後にしろ! 今はどーやって切り抜けるかのが大事だろが!」
多数の天使――しかもおそらくは異界内には更に大勢居る可能性が高い――を前に、サスケニキは決断する。
「こいつはヤバい。仕方ねえ、ここはあの奥義でいくぞ!」
「! よっしゃまかせとけ!」
「ここはそれがベストでしょう、了解です!」
サスケニキの言葉に残り二人が同意すると、三人は周囲に響く程の大きさの呼吸音を出し、それぞれが構えた武器へと力を込める。
その様子に三人を包囲した天使達も警戒を露わに身構え、迎え撃とうとした次の瞬間――
「「「奥義、敵前――――――――大逆走ー!!*9」」」
――シュタタタタ、と天使と木の間を走って全力でその場から一切振り返らず逃げて行った、勿論アガシオンとゾイドも一緒に。
「――ハッ!? に、逃がすな! 追え! 追えー!」
呆然としていた指揮官のアークエンジェルが正気を取り戻して追いかけ始め、同じく呆然としていたエンジェル、ホーリゴースト達も続いた――その瞬間、破裂音と共に辺りを白い煙が包む。
「ぬおおっ!?――おのれ! どこまでも小癪な真似を!」
逃げるついでにサスケニキが足元の草むらにさりげなく転がしていった煙幕弾の目暗ましに、怒りで顔を真っ赤にするアークエンジェル。
だが、目の前も見えない煙幕の中、何者かがしがみついてきた事に目を見開き――
「!? こ、これは、うおぉお!!?」
――その直後にまるで急に地面が無くなった様な、上下も分からない感覚に襲われ、叫ぶ事しか出来なかった。
――異界入口――
周辺を警戒する天使の一団。
彼らに与えられた任務は二つ、一つはここまで逃げて来た黒札達を足止めする事。
そしてもう一つは――
「――! 皆の者、構えよ!」
――トラエスト*10で入口にワープしてきたタイミングを狙って仕留める事。
出現した空間の歪み――ワープの前兆に天使達が一斉に弓を引き絞り、魔法を準備する。
「放て!!」
アークエンジェルの号令と共に放たれた矢と魔法が空を舞い、現れた人影に出現とほぼ同時に命中した。
「「「ぎゃああああ!!」」」
魔法の命中で起こった砂煙の向こうから、矢が肉へと突き刺さる鈍い音と、魔法の着弾音をかき消すように響いた悲鳴に、アークエンジェルは会心の笑みを浮かべ、
「な……」
砂煙が晴れた先の光景に絶句する。
「やっぱ罠でしたか。まあ転移を封じられないのなら、そりゃそうするでしょうね」
「ワナは逃げる場所にこそしかけるって傾奇者から教わってんだよ。ジャン〇読者はな!」
「これぞ古代より伝わる恐るべき防御法、敵バリアー。使う相手は選ばなければならない禁じ手である、実際ムゴイ」
そこには、三馬鹿ラスに背後から捕まえられて盾にされ、味方の矢と魔法でズタボロになったアークエンジェルとエンジェルの姿があった――ホントに惨かった。
「お、おのれこの外道共め!」
「やかましい! お前らにだけは言われる筋合いはねー!」
相手以上の怒声と共にヨロイニキが瀕死の天使を敵陣目掛けてぶん投げた後、乱れた敵の隊列へと愛刀を振り回して突っ込み、それにサスケニキ、クロマニキが続く。
「混乱した今が好機! 増援が来る前に突破します!」
「おうよ! 『火より早く攻めよ』とミヤモト・マサシも言っている!」
「くっ! 逃がすな! 何としても止めるのだ!」
敵の新手が来る前に強行突破を図る三馬鹿ラス一行。
援軍の到着まで時間を稼ごうとする過激派天使達。
両者は互いに鬨の声を挙げながら、ぶつかり合った。
◇
結論から言うと三馬鹿ラス一行の強行突破は失敗。
開けた場所よりは天使の飛行能力を活かせないこちらの方がマシと、異界の森の中へと再度逃げ込むしかなかった――乱戦の中、プテラスとシュトルヒを逃がせた事は不幸中の幸いであったが。
その後は逆転、または脱出の為に天使側の大将を討ち取る事をクロマニキが提案。
今迄の過激派達の性格や振る舞いから、ここまで連中に有利な戦況となれば勝ち誇って姿を現す可能性は高く、賭けるに値する作戦だった。
しかし予想に反して敵の大将は姿を見せず、それどころか状況打破の為サスケニキがニンジャらしく単独での暗殺を図るも、サスケニキの接近に気付いた途端部下を捨て駒に即その場から逃走する有様であった。
更に三人が首狩り戦術を狙っているとみるや部下を少人数に分かれさせ、只管に攻撃を継続。
天使側の被った被害からみると戦力の逐次投入という愚策。
相手に休息や策を練る暇を与えないという面では妙案の波状攻撃を実行した。
延々と続けられる攻撃に、まず一行で最も打たれ弱いクロマニキが斃れ、続いて前衛でも回避型で耐久に劣るサスケニキが力尽きた。
そして現在、打たれ強さ故に残ったヨロイニキとアガシオンは絶望的な持久戦を余儀なくされている。
「助けはまだ来そーにねー、そこまで持ちこたえるのはムリくせえ、命ごいは論外か、笑うしかねーなこいつは。全然笑えねーけどな!」
言葉通り欠片程の笑みもなしに走り続けるヨロイニキ。
普段から何かあれば猛虎落地勢という名の土下座を躊躇わないバカ共だが、連中にも言い分はある。
例え僅かとはいえ助かる希望があるのなら、制裁が少しでも軽くなるのなら、とスズメの涙でも可能性があるからやっているのだ。
過激派相手への命乞い等どんなバカでもハナからやるだけ無駄と分かっている事をやるつもりはなかった。
また襲ってきた天使を何体か斬り捨てて、荒い息遣いで逃走を続けるヨロイニキが、肩に背負った二人の遺体に視線を向ける。
覚醒したヨロイニキにとって人間二人分程度の重量は別に大して苦ではない。
しかし担ぐ為に片腕は使えず、重量を支えるのに問題はなくとも、重心の変化や慣性による体勢への悪影響は決して無視出来るものではなかった。
故に、この『荷物』を捨ててしまえば今よりずっとやりやすく、逃げやすくなる。
また、もしかしたら二人分の『戦果』で満足して引き上げるかもしれない。
そんな考えは二人が斃れた時からヨロイニキの頭の中にある、あるのだが――
「……クソッタレ!! 泣いて感謝しやがれボケ共!」
――やけっぱちな叫びを挙げて、二人の身体をしっかりと抱えなおし、ヨロイニキは走り続ける。
二人を見捨てない理由。
こんな奴らでも生まれた時からの幼馴染だから、というのも一応はある。
だが一番の理由は、強行突破が失敗した原因にあった。
◇
三馬鹿ラス一行と過激派天使の一団が戦闘中だった時。
罠を看破され、仲間を盾と弾にされ、陣形が乱れた所への突撃に天使達は混乱し、戦いの流れは三馬鹿ラス側にあった。
天使たちの陣は切り裂かれ、三馬鹿ラス一行の強行突破は成功目前だった――その筈であった。
クロマニキの守りをアガシオンに任せ、ヨロイニキは目前の敵を只管斬って道を開き、サスケニキとゾイドが開いた穴を更にこじ開けていく。
そんな乱戦の中、ヨロイニキは後ろに敵が一体背後に回り込んだのを気配で察知し、振り向く事なく後ろへと刀を振るった。
感じる力や格から目視せずとも一太刀で仕留められる。
そう判断しての行動であり――――それが、最大の失敗であった。
刀が敵を切り裂くその直前に、大声が、悲鳴が響いた。
「やめて!
「!!」
もし、ヨロイニキが振り向いて刀を振るっていたなら、似ても似つかぬ姿の相手が、よく知る相手と似た声で叫んでも、驚きはしてもそれだけだったろう。
だが、視線も向けず振るった刀の先からよく知る声で、よく聞く呼ばれ方をした事で、咄嗟に刀を止めてしまった、止める事が出来てしまった。
「しまっ――がっ!」
動きを止めたヨロイニキに、声の主――幼い見た目のエンジェルは躊躇う事無く攻撃した。
「やった!――ゴフッ」
そのエンジェルは即座にシュトルヒがハチの巣にしたが、無防備な所に一撃を受けたヨロイニキは、傷は浅くとも完全に体勢を崩し、動きが止まる。
「今だ! 奴を狙え!」
「ぐおおおおお!!」
「「ヨロイニキ!?」」
その隙を逃さず、天使達がヨロイニキへと集中攻撃をしかけ、ヨロイニキは大きなダメージを受けてしまい、戦いの流れが変わる。
クロマニキが切り札のテトラカーンを切った事で何とか立て直すも、三馬鹿ラス一行の突撃は勢いを失い、逆に天使側は大いに意気を上げ、結果強行突破は失敗。
そして到着した天使の新手に一行は異界内へと逃げるしかなかった。
◇
「……ドジふんでピンチにした上に、仲間見捨ててテメーだけ逃げるなんてマネしたらどーなるかなんて考えるまでもねえ……! 小早川秀秋や仙谷久秀みてーに白い目で見られてガイア連合に居場所がなくなっちまう! それじゃ生きて帰っても意味ねえじゃねーか!……そうじゃなきゃ捨ててくのによ!」
本音と嘘と強がりとやけっぱちがごちゃ混ぜになった叫びと共に、ヨロイニキは駆け続ける。
しかし、そう遠からず限界が訪れる事も理解していた。
この状況を何とか出来る唯一の可能性、最早他に手はないとア太郎――アガシオンを見つめる。
――これを使うには、どうしても時間が掛かります。サスケニキでは打たれ強さが足りない、しかしヨロイニキでは敵に警戒される……だから、アっくんに託します、二人は、何とかアっくんの……フォロー、を……
力尽きる前にクロマニキがアガシオンへと託した切り札以上の『奥の手』
それを用いるの必要な時間、それらを何とかしようと必死に考え続けるヨロイニキ。
だが――
「――! しまった!……クソっ!」
――木々という障害物のない森の中の開けた空間へと飛び出してしまい、直ぐに森の中へと戻ろうとするも、既に多数の天使達が待ち構えている。
逆方向へ目を向ければ、森が広がる其処は異界の端。
広がっているように見えても、実際は普通の世界と異界とが見えぬ壁で隔てられており、破るには異界を破壊するだけの力が求められる。
「……ケリをつけにきたな。これ以上時間かけんのはマズイと思ったか、それともこんだけ弱らせりゃ十分と考えたか、どっちだろーな」
ゆっくりと隊列を整え、じわりと距離を詰めて来る天使達に、ヨロイニキは敵の大将の過激派とは思えない程の慎重さを感じ取り、思わず笑ってしまった。
「……スゥー、ハァー、コォォォォ……」
ヨロイニキは呼吸を整え、波紋の呼吸で少しでも体力を取り戻そうとし、同時に抱えていた二人の遺体を背後に放り投げる。
サスケニキとクロマニキの亡骸は、ヨロイニキの後ろに控えていたアガシオンの頭上へと落ち、そのままアガシオンを押しつぶす様に覆い被さった。
内心で詫びながら、敵にアガシオンを自分達にとって只の道具だと思わせる為に、道具を気にする余裕なんてないと思わせる為に、一瞥も送らず天使達へと踏み出す。
背後から二人の遺骸の下で、アガシオンが作業を始めた気配を感じ取ったヨロイニキは、事前の指示もなしにこちらの意を汲んでくれたのを、流石はア太郎と面頬の下で笑みを浮かべた。
そして、後列の天使達が弓を構えようとした時。
「――うおおおおおおおおおっ!!!」
喊声と共にヨロイニキが吶喊した。
咄嗟に放たれた矢を搔い潜り、両手持ちにしたへし切長谷部レプリカを振り回して敵の隊列へ飛び込み、弓矢の活かせぬ乱戦へとなだれ込む。
「死ねいっ! 死ねいっ!! 死ねえぇいっ!!!」
正面から来た天使を袈裟懸けに斬り倒し、弓手に回り込んだホーリゴーストを返す刀で胴斬りに、隙を狙った馬手の新手の顔面に拳を叩きつけ、脚へとしがみ付いてきたエンジェルの頭を踏み砕き、腕を掴んで組打ちに持ち込んだ天使に頭突きと体当たりを食らわせる。
力の限り、残った全部を吐き出す様に、ヨロイニキは暴れ回る。
――普通にコイツを使おうとしたら、まず止められる。お前がアー坊を守ろうとしても警戒されて逆効果だ……だから、逆に――――するんだ、それなら奴らも疑わない、筈だ……いいな? 上手く、や……れ……
斃れる前にサスケニキが残したアドバイスに従って、どうしようもなく追い詰められて、逃れる術もなく、最早これまでと自棄を起こして、最期の大暴れをしていると思わせる為に。
「死ねっ! 死ねぇ!! 死ねえぇぇぇえっ!!!」
演技をする必要はなかった。
自暴自棄にはなっていなくとも――まあ少しはなっているが――自棄を起こしている様に見える程に、ヨロイニキは怒っていた。
理由は幾らでもあった。
罠に嵌められたからというのもある。
野良犬みたいに散々追い回されというのもある。
どーしようもない連中とはいえ幼馴染二人を殺されたというのも一応ある。
だが何よりも――
「とことんふざけやがって、このクソッタレ共が! こんなの、あの子にぜってー言えねえだろうが、一体どうやってごまかせってんだよ……!!」
――友達の声でふざけた真似をされた上、友達に絶対知られる訳にはいかない秘密まで抱えさせられた事に、心底怒っていた。
一体斬り捨てると別の一体が向かってくる。
そいつも斬れば背後から一撃をもらう。
反撃すると今度は別の方向から二発食らう。
まとめて斬り倒せば、新たに三体が突っ込んで来る。
視界が狭く、暗くなっていく。
気付いたら音も聞こえなくなっていた。
痛みも何時の間にか感じない。
沼にはまって、足元からどんどん沈んでいくような感覚。
その時、閉じかけた視界の先にうっすら見えた、他の天使と違う姿。
「――――っ!!」
声にならない怒号を上げて、残った全部を絞り出して百人斬りを放つ。
――こいつらにやられるより、テメーの技で自滅した方が、多分やけっぱちっぽい、よな?
そんな思考を最期に、ヨロイニキの意識は闇へと沈んだ。
◇
「やはり最後の悪足掻きと道連れ狙いか。全く無駄な手間を掛けさせる」
ヨロイニキが息絶えてから暫しの間をおいて、天使達の指揮官・プリンシパリティが姿を現す。
ちらりと向けた視線の先には、ヨロイニキの百人斬りを受けてMAGに還っていく、替え玉に使われたアークエンジェルが居た。
「些か予定とは異なったが、まあ概ね計画通りで終わったので良しとしよう――む」
多数の同胞を討たれた復讐か、手古摺らされた苛立ちか、黒札の死体に幾人かの天使が武器を振り上げたのを見たプリンシパリティは、眉を顰めると同時に
「この愚か者共が!!」
躊躇いなく手にした王笏で脳天を打ち砕いた。
「魂だけでなくこの者らの肉や血にどれほどの価値があるかも分からんのか! 『黒札に捨てる所なし』だぞ! そんな無知蒙昧な輩に私の部下たる資格はない!!」
驚いて固まった残りの天使も怒声と共に容赦なく処分したプリンシパリティは心の底からの溜息を吐く。
「何故どいつもこいつも馬鹿しかおらぬ? この地を神の楽園にする使命を忘れ下らぬ欲を優先する愚か者ばかりだ! 偉大なる大天使の方々すら肉欲や己の力を誇示する事を望んでおられるとは……数で押し潰してしまえばよいのに、自ら前線に立たれた上に討ち取られてしまわれては勝てる戦も勝てぬではないか」
同胞たる天使達の現状に嘆きながらも、プリンシパリティの目には確かな決意があった。
「私が何とかせねばならぬ。今回手に入れたこの者らの魂を用いて私は新たな位階を手にする。そしてこの聖戦に勝ち、神の楽園を築かねばならぬ。私には神の愛とご加護が確かにあるのだから!」
幼い見た目の部下達に上手くいけば儲け物と予め言い含めていた命乞いだが、殆どの者は命乞いする暇もなく討たれてしまった。
しかし内一名が戦況を逆転させる戦果をあげた――しかも危うく逃げられるという瀬戸際で。
プリンシパリティはこの幸運を含めた一切を、神の加護と信じて疑っていなかった。
「さあ、ガイア連合の新手が来る前に撤収するぞ。魂と身体は勿論、この者らの装備・道具も全て回収するのだ――む?」
引き上げを命じたプリンシパリティの視界に、先に斃れた黒札の死体が何やら動くのが映り、警戒するより先に、亡骸の下から何かが浮き上がる。
「何かと思えば、奴らの使う人形か。まだ動いていたか、最後に何か命ぜられていたのか?」
サスケニキとクロマニキの遺体の下から浮かび上がったのはアガシオン。
その小さな手には霊布で包まれた何かが抱えられていた。
「――破壊しろ。もし残骸が残ればそちらも回収するのだ。持っている物も含めてな」
目の前の魔法生物とそれが持つ何かを、プリンシパリティは警戒しなかった。
何やら封印された気配は感じても、脅威とは捉えなかった。
もしもそれ程の力を持った物ならば、疾うに使っている筈だと考えた。
そして、例えあの何かで部下が討たれたとしても何も問題はないとプリンシパリティは判断していた――彼にとっては、この作戦で部下が全滅する事も織込み済みだった故に。
それは慎重な彼らしからぬ油断――――ではない。
プリンシパリティは神の為の行いは、全て肯定されると心から信じていた。
だからどんな所業であっても躊躇うという事がない、そんな考え自体浮かばない。
それ故に――『可能ならばこれは使いたくない』そんな発想自体がプリンシパリティには最初からなく、気付き様がなかったのだ。
アガシオンの小ぶりな手が、決められた手順に従い封印を解き、霊布に包まれていた『それ』が姿を現す。
『それ』を見たプリンシパリティは目を見開いた。
『それ』自体は知っている、自分達に従う者達も用いている武器――手榴弾と呼ばれる物。
封印が解かれると同時に広がる忌まわしい空気に、プリンシパリティは一瞬呪殺系の力かと考えたが、即否定する。
多くの天使にとって呪殺は弱点であり、それはプリンシパリティも同様である――故に呪殺属性には敏感で、間違える筈がない。
だが、『それ』から漂ってくる不吉さは、己の弱点たる呪殺よりも禍々しいとすら感じる。
そして目の前の魔法生物の無機質な筈の瞳の奥に宿るもの。
怒りでもなく、悲しみでもないそれは、はっきりと――――憎悪。
「や、
悲鳴をあげて、部下達を押し退けながら少しでも此処から遠ざかろうとするプリンシパリティ。
命令故に、または本能から『止めなければ』とアガシオンへと殺到する、あるいは個々で逃げようとする天使達。
だがそれより早くアガシオンの手がピンを抜き、プリンシパリティ目掛けて投擲した。
そして、手榴弾の中から沸き出した『それ』で、異界は満たされた。
◇
少し時を戻す。
脱出したプテラスとシュトルヒは内通者の存在を警戒し、依頼先の名家に向かわず、近隣のガイア連合支部へと飛んだ。
更に念の為二手に分かれ、それぞれ逆の方向の支部へと向かう――例え片方に何か起きても、もう片方が連絡が届けられる様にと。
そして離れた方の支部を選んだプテラスが、限界まで速度を出した末に墜落寸前で支部へ辿り着き、過激派天使による待ち伏せを報告。
暫し後に、近い側の支部へ向かい、確実に到達する事を念頭に置いた速度で飛んだシュトルヒが到着し、同様の連絡を告げた。
この時、二体のゾイドは山梨支部だけでなく、ある人物にも連絡をしていた――自分達の主であるドクターネキへと。
事の次第を知ったドクターネキは即座に行動開始、個人な事もあり正式な救援部隊よりその動きは早く、山梨支部でトラポート*11使いをみつけるや否や、件の異界へと向かったのであった。
異界の森の中をドクターネキとゾイド達が進む。
可能ならば全てのゾイドを投入したかったが、急なのもあり見つかったトラポート使いは1パーティー六名が限界の為、選抜せざるを得なかった。
そして戦闘力だけで言えば、ゾイドだけを送りドクターネキは留守番が最適解であったが、防戦・撤退・救援等の判断をする者が必要との理論武装――という名の建前によってドクターネキも現地入りしていた。
背中に背負ったオクトパスアームにKSJ研究所の大ヒット商品・蟲毒皿ピッチャーを構えさせ、白衣の内ポケットから物反鏡と魔反鏡を何時でも取り出せるようにしたドクターネキ。
その周囲を囲む、ドクターネキが選び抜いた五体のゾイド達。
一番の腹心・ティガゴドスと、それに並ぶ片腕の元イグアンのレブラプター*12を両サイドに配置、バランスの良さに定評のあるハンマーロックが殿を務め、頭上を森での活動と指揮に長け空も飛べるダブルソーダが固める。
そして一行の先頭を四つ足で進む、他のゾイド達より一回りは大きいシルエットにドクターネキが心苦し気に話しかけた。
「ごめんね、まだテストも終わってないのに、こんなのが初陣だなんて……だけどお願い、頼りにさせて、ベアファイター」
ドクターネキの言葉に任せてとばかりに唸り声を返すベアファイター*13。
工房を手に入れた事でドクターネキが初めて作り上げた中型ゾイドは、そのパワーと重装甲を発揮する相応しき戦場だとやる気に満ちていた。
その大きな背を頼もしく思いながら、ドクターネキはベアファイターを作る前の事を思い出す。
当初ドクターネキは最初に作る中型ゾイドは販売する時の事を考え、その汎用性の高さと人気からコマンドウルフを候補としていた。
だが、
――ちょっと待った。『急いだヒキャクがカロウシした』とミヤモト・マサシも言っている。
――ああ、まずは安全を、ドクターネキを守れる盾役にむいたやつにしたほーがいいって。
――そんなに焦らずとも大丈夫ですよ、じっくりとやってれば貴女なら夢を叶えられますから。
そんな、自分の安全を優先するよう勧めてくる三人の言葉を思い出し、ドクターネキは強く奥歯を嚙み締める事しか出来なかった。
「――ゴメン、わたしは大丈夫だから。皆は周辺の警戒を」
周りのゾイド達の視線を感じたドクターネキは顔を上げ、深呼吸して気を取り直す。
ゾイド達が何よりも優先するのは自分――そんな自分がゾイド達に気を遣わせればそれだけゾイド達を危険に晒し、延いては三人の救出の可能性すら危ぶまれてしまう、と。
そして森の中を低空飛行で偵察するダブルソーダが警戒と異常を呼び掛け、その場に向かったドクターネキ一行はあるものを発見した。
「天使達の死体……? いや、基本特殊な処置を施したりしない限り悪魔は死ねばMAGになる筈、なら生きている……?」
地に伏せた、あるいは枝へと力なくぶら下がる大量のエンジェルやホーリゴースト達を見て、ドクターネキはゾイド達に囲まれたまま近付いて観察する。
「歯を食いしばったまま白目剥いて気絶してる……他も皆酷い顔……一体何があったの?」
穴掘って地面に顔を突っ込んだ者や周辺の状況からのたうち回ったと思われる形跡もみつかり、ドクターネキは残された痕跡から状況を把握しようとその頭脳を回転させようとし、今は三人との合流が優先だと中断した。
「……今はお兄ちゃん達を探すのが先、殺害が何かの儀式のトリガーの可能性もあるから天使達は放置で。この様子なら目を覚ます心配はまずないだろうし――皆行こう! 異界の奥じゃなくて天使達が集まってる方へ向かうよ! あと天使以外のナニカが居るかもしれないから警戒して!」
地に倒れて気絶している天使達を目印にして進行を再開した一行は森の中を先へと進む。
そしてダブルソーダの先導で発見した、多数の天使が居るという開けた森の一角。
其処へ向かったドクターネキが、森の中から見た気絶した天使達で足の踏み場も無い空間。
そんな天使達の中に混じって倒れている、遠目でも見覚えのある複数の姿。
反射的に飛び出しそうになるのを、ドクターネキの中の冷静な面と打算的な面が全力でブレーキをかけ、ティガゴドスとレブラプターがそっと両肩に手を乗せる。
「ッッ……!――全力で周辺警戒、怪しい相手は無警告での攻撃を許可! 慎重に進むよ、皆わたしに付いてきて」
己の中の冷静な部分とゾイド達が此処で待っている様訴えるが、これ以上の譲歩は出来ないとドクターネキは歩き始め、ゾイド達も主を守らんと続く。
森の中から、開けた場所へと出て、手に何時でも使えるように物反鏡と魔反鏡を握りしめ、ゆっくりと進む。
歩みを進める程、倒れている人の姿が鮮明になっていく。
周囲を警戒しなければならないのに、視線を外す事が出来ない。
呼吸が荒くなるのを自覚した、頭の中でガンガン音がする、思考がまとまらない。
耳鳴りも止まない、何故か涙が零れて視界が悪くなる、吐き気すらこみ上げる。
そして、地面に転がる王冠を被った天使の横を通り過ぎて、接近した事ではっきりと見える、分かるようになったもの。
地にうつ伏せになった鎧を着た一人、やや離れた所で同じ様に倒れている忍者装束とローブを纏った二人――――間違いなく、自分の良く知る三人――。
「――おえぇえええええぇぇぇえええっ! うげぇっ、ぐっ、げえぇっ、おえぇぇえっ……!」
その瞬間、ドクターネキは地面に手を突いて胃の中のモノを全てぶちまけた。
吐くモノが無くなっても吐き気が治まらない、眩暈もする、頭痛が止まらない。
呼吸が苦しい、身体に力が入らない、それでも何とか立ち上がろうと藻掻く。
無理矢理身体を起こすも、足が震えて立っていられない。
身体を支える物も、しがみ付ける物もなく、仰向けに倒れそうになる。
「……ぁ?」
そして倒れ掛かったドクターネキを、何かが優しく受け止めた。
不思議そうなか細い声を上げたドクターネキの涙でぼやける視界に映ったのは、艶やかな長髪と怜悧な美貌。
「大丈夫ですか? これを。オゾン草*14の包皮を加工したマスクで防毒・防塵・防臭効果があります。楽になる筈です」
優しい声と共に、探求ネキの手で顔にマスクが当てられるのと同時に吐き気や頭痛が楽になり、安堵もあってドクターネキの意識は急速に遠のいていく。
それでも、ドクターネキは必死に意識を保ち、震える手を全力で伸ばして、探求ネキの手を掴む。
「……っ!…………ッッ!」
口を動かそうとしても動かず、声を出そうとしても叶わず、握る力もない手にそれでも力を込めて、目の前の仙人へ、天才へと懸命に訴える。
そんなドクターネキの手を握り返しながら探求ネキは告げた。
「――――分かりました。後は私に任せて下さい」
その応えを聞いて、安心した様に意識を失ったドクターネキを優しく抱き上げた探求ネキは周囲を見渡す。
傍らには意識を失いピクリとも動かないゾイド達と、同じく気絶した天使の群れ。
そして息絶えた三馬鹿ラスに寄り添う様に倒れているアガシオン。
「成程、これはくそみそニキが私を指名する訳ですね」
異界の状況とその原因を正しく理解した探求ネキは、静かにそう呟いた。
◇
ガイア連合山梨支部・会議室。
そこには霊視ニキ、セツニキ、くそみそニキ、探求ネキ、ちひろネキといったガイア連合の古参幹部が集まっていた。
そしてちひろネキが口火を切る。
「それで今回の件ですが……内通者が居たんですか?」
依頼先の異界に過激派が待ち伏せして罠を張っていた、ならばまず疑うのは内通者による情報漏洩。
そんなちひろネキの問いにセツニキが答える。
「結論から言うと、内通者は居る。いや居た、というべきだろうな」
「ちひろネキも良く知ってる奴だ、勿論悪い意味でな」
言葉を引き継いだくそみそニキが資料を取り出してみせると、其処に載った名前にちひろネキが眉を顰め、霊視ニキも僅かに舌打ちをした。
「水神氷見子*15、ですか……ええ、勿論覚えていますよ。あんなタイミングでやってくれたんですから*16」
「……つまり、奴の仲間や残党が残ってたって事か?」
「少し違うな、残党というよりは残滓と言った方が良い」
くそみそニキが答えると、セツニキが資料を示しながら説明を始める。
「こいつが過激派に情報を流していたのは今更だが、尻に火が付いてからは見境がなくなってな。何に使うんだってネタまで二束三文で売り飛ばしていた」
「で、取引相手も何かの役に立つことがあるかもと安く買い叩いていたんだが、その一つがこれだ」
そう言ってくそみそニキが見せるのはガイア連合への依頼一覧、しかしそれは放置されたものばかり――所謂塩漬け依頼と呼ばれるもの。
勿論これ単体では何の意味もない、何時誰が向かうかが分からなければ、罠など張り用がない。
「それで今回の依頼だが、放置されていたこの件をあいつらに任せたのは、緊急性はないがあそこを攻略する必要が出来たからだな?」
「はい、新しく出来た支部やこちらへ下った悪魔や神の持つ異界等で勢力範囲が変化した結果、あの異界を放置するのは戦略上で問題があると……」
「……そういう事か、なるほどな確かにあの女の残滓の結果だ」
「ああ、何時か必ずあの異界の攻略に黒札が派遣されるとふんで、予め待っていたって訳だ」
セツニキの説明にちひろネキも霊視ニキも苦い顔になる。
資料にはガイア連合の色んな技術(意味深)で件のプリンシパリティ達から引き出したそれまでの活動情報――部下を連れて異界を密かに占拠し異界の主のオニを捕獲し生かしたまま捕らえていた*17事や、部下の天使達に人さらいや殺害を許さず厳罰をもって取り締まっていた*18事、依頼元の名家に内通者はいなかった*19事等が書かれていた。
一神教派を騙ったのも穏健派を名乗るよりは相手が警戒しないと考えたのだろう――こちらは特に理由もないのに何故か一神教派とやたら絡んでいるという変な連中が相手だった為失敗に終わったが。
「まあ随分と小賢しい奴だった訳だ。とはいえ下手な高位よりこういう手合いの方が面倒な場合もあるし、レベルの低い俺たちの安全にも関わるからな。さっさと始末しておきたかったのさ。それでだ――」
言葉を切ったくそみそニキがここまで無言だった探求ネキへと視線を向けると、頷いた探求ネキが応じる様に話し始めた。
「異界は内部の『処置』をした後で消滅させました。それで例の三人についてですが……」
一旦言葉を切った探求ネキが、その表情に微かな驚きをみせて続ける。
「くそみそニキからある程度の話を聞いていましたが、それでも驚きました。あの三人がまさか――」
「――――まさか、ドドリアンボムを使った爆弾を作るなんて」
ドドリアンボム。
トリコにおける作中で世界一臭い食材とされ、スケールのやたら大きいトリコ世界で世界一と言われるあり得ない程の臭さは凄まじいの一言。
三百年前に絶滅した"元"生息域の残り香が肥溜め以上に臭く、熟した果実が落下すれば100㎞以内の草木が一瞬で枯れ、冬眠していた熊が飛び起き、周囲の川や海に魚が浮いて、接近すると保存食や衣服が朽ち果てる様なシロモノである。
そんなヤバいモノを何であのバカ共が手に入れられたのかというと、嘗て行われた探求ネキ主催の食欲界でのお祭り*20に参加した時に遭遇していたのである。
そして満場一致でゾンゲ枠と言われるこの連中はドドリアンボムと相性が良く見事ゲットに成功した――ゾンゲ枠ではあってもゾンゲには幸運も食運も運命力も遠く及ばぬ身故、悪臭の軽減はあっても無効化は出来ず色々と酷い有様になった挙句、暫くの間ドクターネキ宅に出禁&ゾイド達からえんがちょされる事となったが。
「作った事は問題ですが、それより無事作れた事に安堵してます……もしアレを使った事故が山梨支部で起きたらなんて、考えたくもありません……」
「ですよねー。その辺は素材との相性が良かったからでしょう。とはいえ本来のものよりずっと威力も範囲も落ちていましたが。範囲も異界一つが精々で私が到着した時には臭いもほぼ消えてましたし――流石に最も濃い『爆心地』はまだ残ってましたけど」
悪夢を見た様に震えるちひろネキに、相好を崩して同意する探求ネキ。
駆け付けたら悪臭でゾイド達が行動不能に陥り、気絶寸前のドクターネキから必死にバカ共の事を託されるという、当人達は真剣そのものでも傍から見るとギャグでしかないという状況であった――精神的に一杯一杯だったドクターネキは自らの状態が悪臭によるものと分かってなかったし。
「……作れた事は取り合えず置いといてだ、そもそも何であいつらはそんな物を作った? あいつらにとってもアレはもう触れたくなさそうだったが」
グルメ狩猟祭の際にドドリアンボムの臭いでのたうち回っていたバカ共の姿を思い出しながらの霊視ニキの問いにクールな表情に戻った探求ネキがバカ共へのインタビュー結果を伝えた。
「それはですね――――彼らの考えた魂の保護術式の代用だったそうです」
「「……え?」」
「現状魂を守れない、なら代わりに魂を取られない様に、持っていけない様にすれば良い――魂や身体にドドリアンボムの臭いがついてれば持ってくのは無理だと思った、だそうで」
会議室が沈黙で満たされる。
探求ネキはクールビューティーを貫き、ちひろネキは二の句が継げず、霊視ニキは理解に苦しむように小さく頭を振り、セツニキとくそみそニキは必死に笑いを堪えていた。
「あと、例え魂持っていかれても臭いで犯人が何処にいるかすぐ分かるから、助けてもらえる確率が高くなると考えたそうで」
「……一応考えてはいるんだな、一応は」
「……努力の方向も、もう少し考えてくれたら……」
「いやぁそれは無理なんじゃないか?」
「それが出来たらあいつらじゃないからな。で、あいつらは今は?」
「ウチの特別室で隔離してます。臭いの問題がありますので」
セツニキの問いに探求ネキが答え、その内容にちひろネキが首を傾げる。
「隔離ですか? ドドリアンボムの臭いはドドリアンボムを食べれば消える筈では?」
「ええ、その通りです。でもあの三人は爆弾を用いた時死亡していました。つまり魂や霊体の方でも悪臭を浴びてしまってるんです。だから臭いを取るには魂でドドリアンボムを食べる必要があります。でも三人にそんな技術は無い訳で」
「……という事は」
「はい、現在あの三人は――――『魂がハンパなく臭いキャラ』になってます」
ちひろネキが耳まで真っ赤にして顔を背けつつ微かに肩を震わせ、霊視ニキが空を仰いで顔を片手で覆い、セツニキとくそみそニキは遠慮なく腹を抱えてゲラゲラと大声で笑った。
「魂と肉体は互いに影響を与え合うもの。身体の方でドドリアンボムを食べた以上、魂の臭いも多少時間は掛かりますが、その内取れる筈です」
「……臭いの件は分かった。あいつら自身はどうしている?」
表面だけは澄まし顔を維持したままの探求ネキに対して、霊視ニキが気になっていた事を訪ねる。
「三人ですか? 外に出れなくて退屈と元気に嘆いてますよ。仕事終わった後は何時も食べてるからとガイアカレーのデリバリーを要望してます」
「……そうか。全く、あいつらは……一度会いに行った方がよさそうだな」
何時も通りの連中に呆れつつ、後で説教&拳骨を決める霊視ニキ。
黒札相手にボコボコにされたり殺されたりは慣れっこな奴らとはいえ、悪魔の群れに寄ってたかって殺られたとなると同じ死でも精神への影響は大きく異なる――――筈なのだが、相変わらずといった様子のバカ共に霊視ニキは呆れながらも微かに安堵した様に見えた。
そんな大柄スカーフェイスマッチョを微笑ましいものを見る瞳で見つめる古参幹部達。
長い付き合いの同僚を、キノネキや弟子達へ向けるものと同じ目で眺めていた探求ネキが笑いながら告げた。
「ふふっ、それは少し後にした方が良いかと。何故なら――」
◇
「「「……ヒマだー」」」
その頃三馬鹿ラスは隔離用の特別室でぼやきながらゴロゴロしていた。
別に部屋や環境がが悪い訳ではないが、元よりじっとしてるのが苦手なこいつらにとって、現状は苦痛でしかない。
することが無く、不満があり、同じ相手と顔を突き合わせたままとなると、
「あーあー、誰かさんがやらかさなきゃなー、実際間抜け」
「ええ、ホントどっかのスカポンタンがドジ踏んだばっかりに」
「うぐっ!」
反省会という名の吊し上げが始まってしまう訳で。
サスケニキ、クロマニキからの白い目に晒されたヨロイニキは立ち上がり、真っ直ぐに立つと胸を張って言った。
「確かにあん時脱出ミスったのはオレのせいだ――――だがオレは謝らない!」
「「いやそこは謝れよ!」」
「だが断る! それにその後きっちりお前らの死体抱えて逃げたから相殺でチャラだ! 異論は認めるけど受け入れねえ!」
「お前のやらかしの結果をお前が何とかしたマッチポンプみてえなもんじゃねえか! 通るかっ……! こんなもん……!」
「そもそもクッソ汚いマネしてきた天使共が悪いのであってオレのせーじゃねー! オレは悪くねぇ! オレは悪くねぇ!」
「連中が汚い手段使うなんて誰だって知ってんですよ! その上で引っかかるそのお頭が問題だと言ってるんですよ! 馬鹿めが!!」
「うっせぇうっせぇうっせぇわ!! 大体エラそーに言ってるテメーらだっておんなじシチュなら絶対オレと同じことやるって分かってんだからな!」
「「むむむ」」
「なにがむむむだ!」
コンコンコン。
そんな醜い争いを続けるバカ共の耳に聞こえるノック音。
「「「はーい、今開けまーす」」」
探求ネキに頼んでいたガイアカレーが来たと思い、途端にケンカを止めていそいそと入口に向かう三馬鹿ラス。
Y談をする時もだが、ガイアカレーを食べる時も誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。三人で静かで豊かで……。
そして開けられた扉の向こうで待っていたのは――
「「「アイエエエ!?」」」
――龍頭を模した舞楽面を付けてコーホー、と呼吸音を鳴らす小さな人影。
長い茶髪のお下げや白衣から誰なのかは分かっている、分かっているがその纏うオーラに気圧され部屋の中へと後退りする三馬鹿ラスと、それを追う様に入って来る人影――そして手にはデリバリー用の袋に入ったガイアカレー。
その特徴的な舞楽面の正体に気付いたサスケニキがわなないて呟く。
「ら、ラリョウオウ? ラリョウオウナンデ?」
メガテンシリーズでも種族・英雄として登場する悪魔の面*21。
しかし注目するべきは本人ではなくその背後。
「み、見える……背後にたくさんの人達がいるのがマジに見える……」
小さな筈の背に浮かぶ多くの見知った相手――ちひろネキ・霊視ニキ・幼女ネキ・黒死ネキ・カス子ネキ・星杖ニキ・聖白蓮・メルキゼデク等といった三馬鹿ラスにとって天敵だったり頭上がらなかったりな面々の姿に呂布に出くわした雑兵その一と化すヨロイニキ。
「ま、まさかドクターネキ。貴女はこれらの人達に並ぶ程の女傑になったと……?」
五丈原で姜維を孔明と見間違えた無双4の司馬懿みたいな台詞で慄くヨロイニキを尻目に、ガイアカレーをテーブルに置いたドクターネキisラリョウオウモードは静かに、されど決断的に、死神めいて告げた。
「正座」
◇
「――という訳で、一番怒ってる人が現在取り込み中なので」
「……そうか」
笑顔の探求ネキに霊視ニキもさもありなんといった顔になる。
散々心配をかけられた挙句、助けに行ったらゲロインにされ、面会するのも魂がハンパなく臭いせいで一苦労だったドクターネキの怒りは察するに余りあった。
バカ共を擁護するなら、ドクターネキが助けに来た事は死んでたので知りようがなく、面会も臭いが取れたら会いに行くつもりであり、別に蔑ろにしたつもりではなかった。
でも心配をさせたのは覆しようのない事実なので、どうあってもギルティなのだが。
今頃さぞ超特大の雷がバカ共へと落ちている事であろう。
「さて、楽しいお喋りは一旦そこまでにして仕事の話だ。これを見てくれ」
そう言ってくそみそニキが回してきた紙を手に取る一同。
其処には複数の名前と共に所属やレベル等のプロフィールの一覧が載っていた。
「……聞いた名が多いな。業界で名の知れてる強者、高レベルの連中ばかりだ」
「でも聞いた事のない名前も多いですね。このレベルなら有名になってる筈ですけど」
「恐らくその組織の切り札、隠していた奥の手でしょう。表に出さず、秘匿するレベルの」
目を細める霊視ニキとちひろネキの疑問に答える探求ネキ。
リストに載っているのはレベル30代も居る一般的に一流扱いされるであろう面々ばかりであった。
それで?と視線で説明を求める三人に、今度はセツニキが話始める。
「このリストの面々は現在大変な苦境にある。そこで慈悲深いガイア連合が救いの手を差し伸べて差し上げようという訳だ」
「何しろリストの全員が、今回の件を何らかの形で察知してた連中で能力は折り紙付きだ。そんな人材を無為に失うのは人類の損失だからな」
「何? おい待て、どういう事だ」
芝居がかったセツニキとくそみそニキの台詞に聞き捨てならぬと霊視ニキが睨む。
「そのままさ。占術や降霊術、戦略眼やスパイと方法は色々だがな。ああ、理由も色々だ。漁夫の利狙いや落穂拾い、助けて
「……成程な……ん? おい、それは」
「漁夫の利を狙っていた、という事は……」
「あー……」
笑顔のくそみそニキの返事に何かに気付く霊視ニキ、何かを導き出すちひろネキ、分かってしまって苦笑する探求ネキ。
そんな三人を見たセツニキは輝かんばかりの笑顔で告げた。
「お察しの通り――――これは現在『裏世界で名前の売れてるハンパなく臭いキャラ』または『霊能組織の切り札なハンパなく臭いキャラ』となっている面々のリストってわけだ」
「「「……うわぁ……」」」
もう『うわぁ』としか言いようがない霊視ニキ、ちひろネキ、探求ネキ。
そりゃ大変な苦境と言うほかはないだろう。
探求ネキが到着する前に自力で脱出したのは流石の腕利きだが、それでもドドリアンボムボム(命名・三馬鹿ラス)に巻き込まれてついた臭いはどうにも出来ない訳で。
弱まったとはいえ、あんな悪臭を漂わせたままで、どうやって覚醒者として活動しろというのか。
当人達も、その所属する組織も、今頃本気で頭を抱えている事だろう――――鼻を塞ぐのに手いっぱいで、頭を抱える事も出来ないのかもしれない。
「困っている人は助けてあげないと駄目だろ? 皆とても感謝してくれるだろうし、こっちも色々とやりやすくなるさ」
「……この件を事前に防がなかったのはそれが理由か」
「ウチも人手が足りないからな。やるんなら効率よく、そして利用出来るものは利用しないとな」
「交渉先へのこちらの要望他まとめますね。あと近い場所の支部にも話を通しとかないと」
「ではドドリアンボムを用意しましょう。ふむ、弟子達を連れていくのもアリですかね」
実に悪い笑顔のセツニキにジト目になる霊視ニキ、そして否定しない同じく悪い笑顔のくそみそニキに、輝く笑顔で『交渉』の内容を考えるちひろネキと必要な『現物』の調達を分身に指示する探求ネキ。
中々あくどくも――霊視ニキは除く――実に頼もしい、ガイア連合を支える幹部達の姿であった。
後日、ガイア連合横浜派出所の代表・馳川氏*22が、己の宿敵*23が一時的に『仙人の端くれでハンパなく臭いキャラ』になったのを知り、笑い死に寸前まで大爆笑したのは余談である。
「あ、それともう一つ。あの連中の臭いが弱まったら各地の支部を巡ってもらう。表向きは今回のやらかしのペナルティと謝罪行脚という事にして」
「取れたら、ではなく弱まったら、ですか」
「……一体何の為にだ」
ついでとばかりのセツニキの発言に怪訝な顔の探求ネキ・霊視ニキ。
「今更の話だが、
「はい、勿論摘発してますけど、山梨と比べるとどうしても……支部はそこの支部長次第な面が大きいですから。でも何で急にスパイの――あ、まさか」
くそみそニキの前振りに、訝し気だったちひろネキが本気ですか?といった顔に変わった。
「ああ、幾ら覚醒者である事を隠し果せる優秀なスパイでも――――いきなり鼻先にドドリアンボムの臭いを突き付けられて無反応ではいられないだろ?」
「大がかりな摘発なら勘付いて逃げ出すだろうが、あの連中を送ると知っても警戒はしても摘発だとはまず思わん。理想的な不意打ちって訳だ」
「「「……うわぁ……」」」
本日二度目のわっるい笑顔のセツニキ、くそみそニキに本日二度目の『うわぁ』顔の三人は、必要な事とはいえ、魂が悪臭プンプンの三馬鹿ラスを迎えねばならない各地の支部の覚醒者達に同情した。
「……おい、それも計画通りってやつか」
「いや、こいつは折角だからなアドリブだ。『魂がハンパなく臭い三馬鹿ラス』は想定外だった」
「おかげで良い話のネタが手に入った。今度飲みにいった時有難く使わせてもらうさ*24」
再びのジト目になる霊視ニキに、輝かんばかりの笑顔+サムズアップで返すセツニキとくそみそニキであった。
◇
こうして表向きの理由の今回のデカいやらかしの件で、各地の支部にペナルティ依頼と謝罪行脚へと三馬鹿ラスは向かう――前に、彼らには関係者一同からのお説教が待っていた。
やらかしのデカさ故に何時もより長時間、何時もより多数の相手から怒られた上、ドクターネキに心配をかけた件も上乗せされた。
特にドクターネキに心配かけた事についてはセツナ嬢や睡蓮と文目にまで苦言を呈されるという、色んな意味でツライ説教大会であった。
勿論その後の各地への遠征もしんどいものであったが、こちらはある意味では何時も通りとも言える為、大きな問題はなかった。
しかし、ここで予想外の誤算が発生。
「……? なんか変な臭いがしませんか?」
未覚醒と思われていた人物が、魂の悪臭に気付き、覚醒していたと発覚する件が複数発生。
また、完全に覚醒していない状態――半覚醒と言うべき状態の者も臭いに反応した事で、未発見だった覚醒者や、将来性のある覚醒しかけな者といった隠れた人材の発掘が進むという嬉しい突発イベントとなった。
しかし、
「クンクンクン……よし! 臭い! 臭いぞ! ちょっとだけど!」
「スンスン……くっ、ダメだ! 臭くない! まだ全然覚醒出来てないのか!」
「フンフンフン……分かんない、ねえホントに臭うの!? 嘘じゃないよね!?」
「クンカクンカ……臭いぞって、これ汗の臭いじゃねえか! ぬか喜びさせんなよ!」
「「「ここまでされる謂れは無い!!」」」
その結果、覚醒修行中の者達に老若男女問わず臭いを嗅がれて時に苦情まで受けるという辱めを受ける羽目になり、一刻も早く臭いが取れる事を願う三馬鹿ラスであった。
なお、臭いが完全に取れたらドクターネキをゲロインにした件でゾイド達から屋敷裏への呼び出しが待っている事を三馬鹿ラスは知らない。
だが、今回の件で本当に一番可哀相なのは――
◇
『こんな危ないもんをあいつらそのまま持たせとけないんだ、悔しいだろうが仕方ないんだ。でも魂の保護に使えるのも事実で、材料の調達から作成まで全部自力でやった物を横から取り上げるのもおかしいと思う、忌憚の無い意見ってやつっス。という訳でドドリアンボムボムの管理と使用の判断を君に一任しちゃいます。すげえ素晴らしいガイア連合のためにガンバ!』超意訳)
ドクターネキ宅の庭にて、パンダ座りしたベアファイターのお腹に抱えられた状態で、上層部から届いたお手紙を読んでいるのは壺入りぷにぷに魔法生物ことアガシオン。
何時の間にか自分の使っている壺の中に入っていた手紙の内容に、アガシオンは深々と溜息を吐いたような仕草をした。
没収や使用禁止でもおかしくないのに、所持を認めてくれた分かなり譲歩してくれたと言える内容である。
アガシオンのみ、つまり三馬鹿ラスは持ったり使っちゃダメというのも譲れぬラインだったのだろう――あいつらの場合、予期せぬピタゴラスイッチ的なアレコレの結果暴発させかねない故に。
でもドドリアンボムボムを使う、使わねばならないシチュを想定すると――基本使用者も巻き込まれる距離で使うしかない訳で。
つまり、臭い、とにかく臭い!ハンパなく臭い!!ありえない程臭い!!!な臭いを自分も食らうの前提にしないといけない訳で。
自らの身体の色の様にブルーな気持ちになって俯いているアガシオンを、ベアファイターがそのゴツイ手に似合わぬ優しさで撫でる中、影が射したのに気付いたアガシオンが顔を上げる。
そこにはティガゴドスとレブラプターが居り、アガシオンへそっと何かを手渡した。
渡された物――チョコとウエハース――を見たアガシオンは二体に頭を下げると、早急に与えられた飲食スキル*25に従い有難く口に運ぶ。
もぐもぐとお菓子を頬張るアガシオンの肩(?)をティガゴドスとレブラプターが励ます様にぽんぽんと叩き、ベアファイターが優しく頭を撫でる。
過酷な未来が待つアガシオンへと、せめてもの安らぎとして与えられたような、穏やかな午後の一時であった。
後に黒死ネキによって行われたハロウィンイベントの報酬*26として、
この慶事にゾイド達によるお祝いがドクターネキ宅の庭にて密やかに開かれた。
庭で様々なゾイド達と彼らに囲まれて笑顔の宮小路瑞穂*27がささやかな宴をしているというある意味凄くガイア連合っぽい光景を、窓から優しい瞳で見つめるドクターネキだった。
なお、魂の保護問題は解決したが、ドドリアンボムボムが三馬鹿ラス一行の奥の手なのは変わらないので、常に持ち歩いていざという時に使う事になるのは変わらなかった――――ショッギョ・ムッジョ。
そして終末後にとある地にて出現した劣化ベヒモスに、アガシオンが何処からか調達したスナイパーグレネードランチャー*28を使って、遠距離からベヒモス目掛けてドドリアンボムボムを発射。
結果、貪欲の悪魔なのに酷過ぎる悪臭で飯が食えなくなってしまった劣化ベヒモスをそのまま餓死へ追い込むというキンボシ・オオキイをあげる事に成功。
が、『ひもじいよう』と泣きながら飢え死にした劣化ベヒモスの姿に、三馬鹿ラスどころか多数の人々からの『アガシオン……おそろしい子!』という反応に、アガシオンがちょっとだけ拗ねて、普段とは逆にゾイド達に愚痴るのは別の、そして未来の話である。
―以下どうでもいいバカ共の設定―
・三馬鹿ラス
ドクターネキ含めた皆からめっちゃ怒られた、残当である。
ドクターネキに何かがあった事は察してるが、正確に把握していない為どうしても温度差が発生する――知ったら知ったで挙動がバグるから問題なのだが。
命乞いの件は三人共珍しく一致団結してドクターネキ相手に秘密を守り抜いた。
だが実はプテラスとシュトルヒも口を閉ざした事からおおよその事をドクターネキに推測されている。
作中通りゾンゲ枠でもゾンゲじゃないので補正はあっても悪臭の無効化は出来ないのでドドリアンボム採取は本気で嫌がる――でも時々ジャンニキ等の料理系俺たちからペナルティとしてやらされる、だってこいつらならレベル等から普段頼む相手より依頼料安くすむから。
今回はまたの機会にとなったがノリと勢いで生きてるので未来では『ホモコロリ君グレート』を使ってるかもしれない――誰かに尻狙われてる件は未解ケツだし。
・ドドリアンボムボム
三馬鹿ラスの魂保護計画・オペレーション『スマトラアポカリプス オブ プリズナー』の成果でドドリアンボムのエキスを抽出して作った三馬鹿ラス一行の奥の手。
『んー? なんやお前らワイの最推しに何か似とるな? そうか分かったで! お前らワイの最推しのファンか! そーか、そーか、なら特別にオマケしたるさかい感謝せえや。これからもファンとして頑張るんやで!』みたいな感じでドドリアンボムからの補正があるから作れており、本来は三馬鹿ラスでは作成不能な爆弾。
元と比べれば大きく弱体化しているが、元が元なので十分な威力を持っている。
だが作ったのがバカ共なので封印解除に時間がかかる(こいつらの技術で封印を簡単にすると臭いが漏れるから)のに加え、自分達も巻き込まれる覚悟なしに使えないのが最大の欠点。
ちなみにオペレーション名はドリアンの産地のスマトラとトリコの題名の由来の説の一つの味の虜=囚人から。
・アガシオン
今回一番貧乏くじだった子、ある意味では何時も通りと言える。
三馬鹿ラス一行の奥の手の管理をすることになり、ますます周囲からリーダー扱いされている。
食事可能になってから時折お菓子を食べており、チョコやウエハースが好きで、高級品より駄菓子系の方を好む――三馬鹿ラス推しのうまい棒はあまり好きでない模様。
高級式神ボディへのコンバートの際に宮小路瑞穂の姿を選んだ件は、ドクターネキやゾイド達の間で様々な議論を交わされており、『溜まったストレスの結果ハジケた』『実は密かにそういう癖を持っていた』『(立場的な意味で)下克上を狙っておりあの姿はその布石』『三人が質の悪い女に引っかかった時正気に戻す為』等と言われているが、その理由を彼(?)は黙して語らない。
・『慎重な』プリンシパリティ
称号通りの性格であり、あくまで計画の為とはいえ、部下に暴行を禁じ、有利な戦況でも油断しない等ある意味非常に真面目な過激派天使。
己の我欲を優先する同胞へ苛立ちを感じており、己が正さねばならないという使命感で動いており、その為の手段は選ばない。
しかし役に立たないと判断した部下を即粛清する、数が意味をなさない一部の強者の存在を正しく把握出来ていない、黒札を警戒しても黒札の作った物を侮る等傲慢な部分を抑えきれていない。
なお別に三馬鹿ラスの人間関係を把握していた訳ではなく、ドクターネキに似た声の天使が部下に居たのは只の偶然で、作中の流れは幸運によるもの――そこで運を使い果たしたとも言える。
・ドクターネキ
今迄で一番怒った、誰に恥じる事なき正当すぎる怒りである。
三人の無事の連絡を受けた時、暫く部屋に一人で籠った――微かにむせび泣く声が聞こえた気もしたが、何をしていたかはゾイド含めて誰も知らないという事になっている。
もし三人がロストした場合、50%の確立で再び引き籠りになる。
しかし現在の彼女にはゾイド達と友人達が居る為、時間がかかっても再度立ち直るだろう。
残り50%の確立で実家のガンギマリ系名家の血と合わさりメシアンスレイヤーに覚醒。
一秒でも早く、一体でも多く、メシアンを効率よく狩る事とその為の研究・開発へ全身全霊を傾ける事になる。
・ティガゴドス
バカ共の影響か逃げ隠れが上手くなったドクターネキをパワーアップした身体で毎日追っかけてベッドや家に放り込んでいる。
ドクターネキにとって現在唯一の人型不信の対象外である事や、盟友のアガシオンの主である事も含めて三馬鹿ラスの身を心から案じていたし、無事を知った時はドクターネキと一緒に喜んだ。
でもそれはそれとして、ドクターネキをゲロインにした事は絶対に許さない、絶対にだ。
・レブラプター
ライバルのゴドスより先に新型になった事や、ディフェンス役から純アタッカーになった事など良くも悪くも色々あったのをパワーアップした事に比べれば全て些事と断じて新たなボディと力を使いこなす事に心血を注ぐ――だがドドリアンボム。
アレを食らう任務に身を投じるアガシオンを心から尊敬した、そして何時か悪臭丸ごと吹き飛ばせる程の力を手にすると誓う。
・プテラス
空中戦専用として対天使戦を想定し、元ネタの汎用性の高さから期待されていた――その結果なのか『褒めても良いよ?』『頼っても良いよ?』がデフォなドヤ顔ゾイドになってしまった。
能力は確かで、優秀な己が前に出るべきと率先して動く頼れるゾイドなのだが、その余りのドヤドヤっぷりから割としょっちゅう嚙まれたり蹴られたりと強めにツッコまれている。
シュトルヒを自分が引っ張ってあげないとダメな子と思っている。
・シュトルヒ
同じく対天使戦想定の空中戦専用ゾイドで、こちらは元ネタで活躍が少ない為なのか相当な引っ込み思案だが、同時に長く運用された面からかとても辛抱強くサポートに長け、地味ながら居てくれるとホントに助かるタイプ、その為前へ前へなプテラスとは相性が良い。
能力は優秀だが性格面に問題がある相棒持ち同士という事からサイカーチスとはとても仲良し。
プテラスを自分が見てないと危なっかしい子と思っている。
・ベアファイター
ゴツイ見た目に反して性格は優しく穏やか、どのぐらい穏やかかというと釣り竿持ってきたバカ共の釣られクマーに笑顔で付き合ってあげる程。
ドクターネキと仲間のゾイド達と歌とハグをするのが大好きな森のクマさん。
しかしドクターネキや仲間を傷付ける敵に対しては怒れるバーサークマさんと化す。
欠点はハグが好きすぎてつい力を入れてしまう事――大体三馬鹿ラスや三バカゾイドが犠牲になっている。
という訳で、アビャゲイル様からの魂の保護ネタとマカーブル様からのハロウィンネタの合体に緋咲虚徹様とこのトリコネタの味付けつきでした。
実はネタにされるまでバカ共と同じく筆者も魂の保護について完全に忘れていましたw
ゾンゲ枠ならドドリアンボムは避けれないと思ってたら魂の保護にある意味使えるのではと思いつきこうなりました。
あと山親父様、寅蔵と毛呑吐ギャグ時空に巻き込んで申し訳ございません、こんなでも宵闇眩燈草紙全巻持ってたくらい好きなんです。
時系列的にハロウィン後にアガシオンは魔絶式持ってるので今回の話は明らかにおかしいのですが、こんな美味しいネタを混ぜないなんてあり得ないとの判断から細かい事はいいんだよで混ぜる事にしました――元々時系列その他無視した外伝・アンソロジー時空な作品ですしw
アガシオンの瑞穂化はどうするか悩み、魔絶式だけ採用というのも考えましたが、該当回の感想にあった『らんま1/2で九能帯刀が女乱馬の正体に気付くか』を見て正史とする事にしました、マカーブル様ありがとうございますw
きっと今後は新しい身体をフル活用して今迄以上に影でバカ共に知られぬまま色々することでしょう。
でもアガシオン瑞穂の身体って男と女どっちなんですかね? 絵は胸あったから女でいいのかな。またはフ〇ナリ?w
そして戦闘描写って難しいっす、あとレベル20ちょいのウチのバカ共がどの程度動けるのかでめっちゃ悩む、他所の三次の方は皆高レベルだし。
実際レベル20代ってどのぐらい動けるんですかね?ヒロアカレベルなのか、呪術廻戦レベルなのか、最強の弟子レベルなのか。
まあウチのバカ共だと基準からマイナスせねばならない気もしますがw
それでは最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。