【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。   作:貧弱一般メガテンプレイヤー

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 今回は3ちゃんズの変身先、三人を使って降臨しようとした天使の判明回とそのオリスキル登場回です、三馬鹿ラスと違い3ちゃんズは三次主人公よりなのでちょっとチート入ってます、あとちょっぴり真面目成分混じってます。
 当初は決まってなかったので完全な後付けですが、筆者的に調度良い天使が居ました。

 あと魚沼支部の皆さんが3ちゃんズにというか、筆者にとって色々と具合が良すぎて驚いてます、結果また長くなりました。

 そして毎度の事ですがバカやってるのでニュージェネレーションのファンの皆様はご注意下さい。


33 IF&TSネタ注意!

 東北は新潟のとある森の一角。

 穏健派メシアンが管理し、覚醒者の訓練にも使っているこの異界の端には、周囲を警戒する天使とメシアンの小集団が居た。

 それ自体は何らおかしくはない、この異界は穏健派の縄張りで、そもそも黒札の中でも稀なレベルで穏健派メシアンへの理解がある鑑定ニキが拠点を置く新潟は、他よりも穏健派メシアンが動きやすいからだ。

 

「――では、一神教派への接触に問題はないのだな?」

「はっ、問題ありません。近々正式に参加する運びとなるでしょう」

「よし、お主らはそのまま一神教派として行動し、信用を得るのだ――こちらからの連絡が届くまではな」

「「ははっ!」」

 

 ――その穏健派メシアンの集団が、過激派の潜入員でなければ、だが。

 

 元々が一つの集団だった為、穏健派・過激派共に互いの事は良くわかっており、両陣営はスパイを送り合っている。

 一神教派も元は穏健派から離れた一部、加えて正しい教えと信仰への回帰を掲げる一神教派は、穏健派からの移籍の希望を断り辛い。

 

 正しい信仰の道へ戻りたいという信仰的な面、嘗ての自分達と同じ立場だという心情的な面、拒否して過激派へ流れてはという勢力的な面――これらの事情があるからだ。

 

 無論、一神教派もスパイを警戒してはいるが、過剰な警戒や尋問を行い過激派へ追いやる結果となっては本末転倒――そんな一神教派の考えを平気で利用するのが過激派という連中であるのだが。

 

 

 戦闘とビジネスはより卑劣な側が勝つ――――ラオモト・カンもそう言っている。

 

 

 正しき道と信仰を、一人でも多くの者が取り戻して欲しい、そんな一神教派の思いを愚かと嗤い踏み躙るのみならず、本当に己の過ちを悔い改めようとする人々への冤罪をも産む外道の所業。

 

 

 ああ、過激派達の行いで、更なる涙と血が流れる未来が待つというのか! ブッダ、否キリストよ! まだ寝ているのですか!

 

 

 

「Wasshoi!!」

 

「「「「「「グワーッ!!?」」」」」」

 

 森の中に突如響く決断的カラテシャウト!

 警戒していた筈の過激派の反応速度を上回る速度で撃ち込まれた無数の光弾に、過激派達の頭部は西瓜めいて爆発四散! サツバツ!

 

「何者だ!!?」

 

 集団の指揮官のアークエンジェルが剣を抜いて叫ぶ中、森の奥から静かに姿を現したのは、外ハネショートカットなピンクのパーカーにスカートという、森の探索にも異界の探検にも不向きな姿の少女。

 如何なジンギもソンケイもない亡八の過激派相手でも、同じ場所まで墜ちてはならじと奥ゆかしきオジギのアイサツと共に名乗りを挙げる。

 

「ドーモ、過激派=サン、ペテン使1号です」

 

「そのふざけた物言い、ガイア連合の者か! しかもその気配は! 神を裏切った恥知らずの類か! 許さぬ!!」

 

 コウマンにもアイサツを無視したアークエンジェルは、1号から感じる天使の気配に激しい怒りを見せるが、1号は口端を皮肉気に吊り上げて嘲笑った。

 

「四文字のジョルリ・ニンギョウ風情が裏切り云々とは笑わせる。いや、壊れたニンギョウは玩具ですらないゴミだ。そして過激派そのものがいずれ全てスクラップとなる……来い、粗大ゴミ」

 

「貴様ーーーッ!!!」

 

 

 1号のバトウ・ジツ! こうかはばつぐんだ!

 

 

 激昂したアークエンジェルが部下と共にイノシシめいて突撃!

 しかしそれは大いなるウカツ!

 

「吶喊ー! 首置いてけ! 別にいらねーけど首置いてけぇ!!」

 

「なっ!? まだ隠れていたのか!」

 

 突撃する過激派の後ろから逆突撃をかけたロングヘアーで黒カーディガンの少女が声を上げる事も許さず、エンジェルを背後から唐竹割りにした――新たな黒札・ペテン使2号のエントリーだ!

 

「ハッ、ペ天使め。人間でガチャやってっからオレらみてーなシークレットキャラを引いちまうんだよ」

 

 切り上げて逆袈裟に、横薙ぎで腕ごと首を飛ばし、二体まとめて田楽刺し、突きの後隙を狙った天使の顔面に拳を叩き込んで砕くと、空いた手で髪を後ろにかき上げながら言い捨てる。

 背後をつかれた過激派は態勢を整える間もなくアークエンジェルとスパイを残してゼツメツ! ワザマエ!

 

「おのれ……! 皆、神の為に全てを捧げよ!」

「「ははっ! 神の為に!」」

 

 なんと!アークエンジェルの命令に従い残った二人は懐より取り出した薬、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)*1を使おうとした!

 魂の破滅すら恐れぬ狂気めいた信仰心と、それを強いる暗黒メガコーポめいた過激派の神をも恐れぬパワハラだ!

 

「マハシバブー*2」

「がっ……」

「うっ……」

「ナニーッ!!?」

 

 だが横合いから不意に放たれた緊縛魔法が彼らの動きを止めた!

 必死にヘルズ・クーポンを服用しようと藻掻くが、身体はピクリとも動かない!

 一人は恐るべき魔薬を持ったまま立ち尽くすのみで、もう一人に至ってはブザマにうつ伏せに倒れ込んでしまった。

 

 『注意は一秒、後遺症が死ぬまで』というミヤモト・マサシのコトワザそのものな結果である!

 

「二度あることは三度ある、覚えておきなさい――もっとも、次の機会を与えるつもりはないですけど」

 

 序とばかりに緊縛されたアークエンジェルの前に柔らかな、それでいて瞳は氷の様に冷たい笑顔を浮かべたハーフアップでベージュのブレザー姿の少女が、歩み寄りながら遠回しに処刑を宣言した。

 ペテン使3ちゃんズ最後の一人、ペテン使3号である。

 

 アイサツ前のアンブッシュは1度まで、これはニンジャの守るべきルールで礼儀であるので、2号と3号の過激派へのアンブッシュはかなりシツレイな行いに見えるかもしれない。

 

 

 しかし2号と3号は覚醒者であってもニンジャではない、だから一連の彼らの行動は決して卑怯でもシツレイでもないのだ、いいね?

 

 

 さて、何故3ちゃんズが過激派のスパイを襲撃しているのかを読者諸氏に説明すると一言で言うと『状況判断だ!』『そんな! 説明は!?』『せぬ!』である。

 

 前回から引き続き魚沼支部を中心にわちゃわちゃしていた3ちゃんズ一行は、街をぶらぶらしていた時に偶然過激派を発見。

 ほっとくわけにはいかないし、特にする事もない(重要)ので彼らを尾行。

 で、異界の奥でひっそりと集まり、一神教派への潜入を目論んでいる事まで聞いたので、アンブッシュをしかけたといった具合である。

 過激派側もバレぬ様に慎重に慎重を重ね、絶対他の信者とかち合わない様なタイミングで異界に集まっていたのに、過激派が感覚的に分かるという3ちゃんズのスキル一発で全ておじゃんであった、ショッギョ・ムッジョ。

 

 まあ名のある黒札が絡んだら、そんな事は日常茶飯事だから致し方なし――3ちゃんズ程度なら寧ろ優しいと言わざるを得ない。

 

「あ、ありましたよ。過激派御用達のホーリーシンボルその他です。これで証拠は十分でしょう」

「おー、見つかったか。証拠なしだと穏健派襲った事になっちまうからな、証明重点」

 

 仕留めた連中含めて過激派の懐をあさっていた3号が過激派と繋がる証拠を見つけ、同じく荷物をひっくり返していた1号が安堵の声を上げる。

 1号の言う通り、一応は同盟相手の穏健派の一団を襲撃して皆殺しにしました、は色々と不味い――主にちひろネキの機嫌とお説教的に――のだ、実際不味い。

 

「おー、しょーことか色々あったんだな? それなら――」

 

 証拠集めを二人に任せて――押し付けたともいう――周辺警戒と生き残りの見張りをしていた2号が、無造作に過激派に近付き、

 

 

 ヒュカッ――――ゴトリ

 

 

 風と何(・)か(・)を斬った音の後に、何(・)か(・)が地面に落ちた鈍い音。

 そんな音の後で、己の目の前に転がってきたのが、相方の生首だと気が付いた這いつくばっていた方のスパイは、未だ緊縛魔法で声も出せず、目を見開く事しか出来ないでいる。

 そんなスパイへと歩み寄った2号が、無表情のまま、すっと片足を上げ――

 

 

  ぱきり

 

 

 まるで枯れた小枝が折れた様な音と共に、頚椎を踏み折られたもう一人のスパイは、恐怖も感じず、事態も把握出来ぬまま、相方の後を追った。

 

「おい2号!」

「んだよ」

 

 顔色を変えて詰め寄る1号に、血の付いた剣を軽く振って血を払いながら2号が事もなげに応じる。

 

「地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)も没収して完全に行動不能だったんだぞ! なんで殺った!?」

「しょーこは出たし、情報だってこの天使にはかせりゃいい。なら、もういいじゃねーか」

「わざわざ殺ることはねえだろ!? 捕虜みてえなもんじゃねえかよ!」

「ザコでも逃げられるかもしれねー。オレらにゃ楽勝だが現地の連中なら負けるかもしれねー。そんなら、今殺っといた方がいーだろ」

 

 そう言い争う両者の間に、3号が笑顔のままで割って入った。

 

「はーい、ストップ、ストップ。喧嘩は止めましょうよ、仮にも異界の中で天使の目の前ですよ?」

「ヌゥー……」

「……ワリぃ」

「はい、よろしい」

 

 気まずそうな1号・2号に対し笑顔で返した3号が、2号へと向き直って告げる。

 

「ただ、私も2号に言いたい事があります。捕えた過激派を無暗に殺すべきではありません」

 

 そう言った3号に1号の顔が明るい笑顔になり、

 

 

「――どうせ殺すのなら、効率良くいきませんと。少しでもメリットのある方法を用いるべきでしょう」

 

 

 即座に青汁を飲まされた様な顔へ変わった。

 笑顔を崩さぬまま3号は、怪訝そうな表情の2号と話し続ける。

 

「効率ったってなあ、ふつーに斬るのが一番手っ取り早いんじゃねーか?」

「方法は何でもいいです。少しでも私達や誰かの得になればいいんですから」

「得って……沖縄とかみたく素材にすんのか? この辺りにそんな施設とかねーだろ、向こうまで持ってく方法もねーぞ」

「そこまでせずとも、捕虜にした過激派を魚沼支部や新潟支部のレベルの低い人に始末させるんです。私達にとっては足しにもなりませんが、現地の方々には良い経験値になりますから――」

「――エヘン、エヘン!」

 

 そんな別の意味で青少年のなんかによろしくない会話を続ける二人の間に、1号がわざとらしい咳払いしながら強引にインターセプト。

 

「今の発言はやや邪悪ですね。いけないぞ2号=サン、3号=サン、そんな事では!」

 

 ニンスレ語録で割って入った1号を見つめ、その後互いに暫し視線を交わした2号、3号が静かに息を吐くと、二人の纏っていた空気が変わる。

 

「確かに、オレららしくねーわな。こんな言い争いするなんざ」

「ええ、議論ならメイドさんのスカートの丈とかにしときましょう」

「分かってるじゃないか、さすが高い偏差値!」

 

 何時もの様子に戻った二人に1号が笑顔で快哉を上げる中、緊縛魔法で身動き出来ぬまま、漸く喋れるようになったアークエンジェルが叫んだ。

 

「おのれ、この外道共が!! 貴様らには必ずや神ばひゅがっ!!」

「黙ってろ」

 

 瞬時に背後に回った1号が後頭部を掴み顔面を地に叩きつけて黙らせる。

 

「そっちから見てそう言いたくなる様なマネしたのはこっちかもしれねえけどよ、それでも……テメェらにだけは、言われたくねえよ」

 

 小声で呟くように言った1号は、そのまま取り出したロープと猿轡で手早く拘束。

 先程までとは別の種類の苦い顔になって二人に声を掛けた。

 

「――とっとと始めようぜ。早いトコ終わらせて帰りたいからな、迅速重点」

「だな、場所はココで大丈夫だろ、人がこねーからこいつらもココに居たんだろーし」

「ええ、では準備を。異界内とはいえ穏健派の縄張りですから、隠蔽は何時も通りに」

 

 3ちゃんズが取り出したのは簡易結界を作る為の探求ネキ製のロープ。

 一回毎の使い捨て、結界だが防御性能はほぼ0、割と高いお値段と多数の欠点を持った霊具である。

 しかしその代わりに隠蔽と欺瞞に特化し、結界内での出来事や魔力、マグネタイトの変化を余程の相手以外には秘匿可能と3ちゃんズの要望に完全に応えた逸品である。

 そうして結界を張った3ちゃんズは、結界の中にアークエンジェルを放り込み、三方向から囲む。

 縛られ身動きも取れず、猿轡で声も出せないアークエンジェルは、それでも双眸に憎悪と敵意を込めて神敵を許さじとばかりに睨みつけている。

 そんな天使を、敵意・怨恨・嫌悪・嘲笑・軽蔑・同情・不憫……様々な感情がない交ぜになった瞳で見ていた3ちゃんズの姿が変わる。

 

 大きな白翼、純白のキトン、輝くヘイロー。

 

 天使としての本来の姿へと戻(・)っ(・)た(・)三人から、天使の力が溢れ出し『とあるスキル』を使う為の準備が整う。

 そして、三人は静かに目を閉じ、口を開き――

 

 流れ出すのは空気を震わせる旋律。

 決して大きくない音量にも関わらず、流れる歌声は結界が無ければ異界中へ届いた程に響き渡る。

 同じ歌が、同じ調べが三つの口から流れ、溶け、混ざり合い、調和していく。

 

 三人が歌い、唄い、謡う。

 

 複数のメロディーが重なり合い、共鳴した三重奏のハーモニーが、本来未だ届かぬ領域にまで旋律を高め――そうして、彼ら単身では無し得ぬ『とあるスキル』が発動する。

 

 

 ――王冠へ至る祈歌――

 

 

 三人を生贄にする事で降臨しようとした大天使・サンダルフォンのスキル。

 『神の代理人』の異名を持つ大天使・メタトロンの双子の兄弟とされ、天国の歌を司り、人々の祈りを受け取って王冠に形作り神へと渡す事を職務とする大天使・サンダルフォン。

 

 これ程の格の存在が、望む力を持って降臨するには並大抵の事では足りない――例え高位悪魔の転生体の魂複数でも。

 

 そこでサンダルフォンが選んだのは敢えて力を落とした分霊を複数送る事だった。

 必要なスキルを使える最低限度のレベルの分霊を顕現させる――単独ではそれもレベル的に難しい為、複数の分霊を作り連携させる事で『王冠へ至る祈歌』を発動可能にしようと考えたのである。

 そんな折に起きた降臨の好機、しかも贄となる三人はお誂え向きに三位一体の悪魔・三羽烏の転生体。

 サンダルフォンは、神の加護と神の愛、そして己の行動は神の御心に沿ったものだと心から信じた。

 

 

 その結果は、先を越されない様焦って予定より分霊のレベルが低くなってしまい、精神汚染食らって名前も分からなくなった挙句、残った部分を徹底的に再利用されるという無残極まりないものであったが――きっとサンダルフォンへ微笑んだ神はニャルか、愉悦の神か、ゲイのサディストの神であったのだろう。 

 

 

 しかし、サンダルフォンの目論見は結果的には形として残り、不完全ながらも3ちゃんズも使用可能となっている。

 

 

 その効果は、範(・)囲(・)内(・)の(・)味(・)方(・)全(・)て(・)に(・)強(・)力(・)な(・)バ(・)フ(・)と(・)魅(・)了(・)を(・)与(・)え(・)る(・)と(・)い(・)う(・)も(・)の(・)。

 

 

 メシア教の信者でなくともこ(・)ち(・)ら(・)側(・)とみなした相手を魅了で従わせ、更に既(・)に(・)魅(・)了(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)為(・)、敵からの精神系バステを軽減ないし無効化した上で大幅に強化して戦わせるという、実に過激派らしい戦術であった。

 そして現在、王冠へ至る祈歌は3ちゃんズにより完全にサンダルフォンの想定外の方法で活用されている。

 

 一つは『範囲内の味方を強化する』という性質上、味方の位置把握までがスキルに含まれてる為、過激派発見&探索用スキルとして。

 そしてもう一つが現在行っている初見殺しな尋問用スキルとして。

 何しろ元は味方へのバフなのでカジャ系みたいなものな上、スキルに関わるサンダルフォンの部分は過激派を味方と認識している為、過激派からすると正体不明な味方からのいきなりの援護魔法である。

 

 詳細を知らずに初見でやられれば、咄嗟に防ぎ抵抗するのは難しい――逆に助けがきたと受け入れる者が多かった。

 

 当初は3ちゃんズの歌に戸惑っていたアークエンジェルも、スキルが発動した後は陶酔した面持ちへと変わっている。

 

 そんなアークエンジェルの顔を見ながら歌い続ける1号は、思わず溜息を吐きそうになるのを堪えた。

 

 

 ――俺は、一体何をしているんだろうか。

 

 

 そんな自問自答が1号の中に生まれる。

 過激派を見つけ、一神教派へと潜入しようとしていたと知った時点で放置する選択肢はない。

 見知った顔、それも子供に犠牲でも出たら目覚めが悪いどころの話ではない、だから計画の全てを吐かせるのは確定事項。

 別に過激派メシアン達に憐れみなど感じている訳でもない、そんなものを抱くには連中の所業はクソすぎる――故に、1号は過激派が抵抗出来ない状態で殺されようと、魅了でいい様にされようと全然カワイソーだとは思わない、思う気も無い。

 

 けれども、こうは思うのだ。

 

 

 

 こんなの、俺たちらしくない、と。

 

 

 

 当初このスキルの内容を知った時も、使う事はないと思った――実際は、使いたくとも使えないが正しかったが。

 しかし現在自分達はまともに使えなくとも、利用可能な方法を見つけて、幾度も繰り返し使っている。

 使って情報を手に入れないと、仲間に被害が出るかもしれない、見知った顔が死ぬかもしれない、知らない相手でも女子供が酷い目に合うかもしれない――――だから、仕方がないと言い訳しながら。

 

 1号は、一緒に歌う2号と3号を見る。

 

 2号の表情には、何の感情も浮かんでいない。

 まるで何も考えていない様に――――あるいは、何も考えない様にしようとしているかの様に。

 

 3号は、物静かな微笑みを浮かべている。

 最初からずっと表情を変えないまま――――しかしその瞳に、どこまでも冷たい光を宿して。

 

 

 二人も、自分と同じ様な気持ちなのだろうか、出来ればそうであって欲しい。

 

 

 そして、そんな事を考える、考えてしまう自分自身も本当に『らしくない』そんな事を思いながら、1号は歌い続けた。

 

 

 

 

 

 

「「「ゆーこときかな~い 勇気がたりな~い♫ コッチン コッチン コッチン コッチン 汗かき 棒立ち 金縛り~♪ ゆーこときかな~い 勇気がたりな~い♫ コッチン コッチン コッチン コッチン コッチン コッチン コッチン コッチン コーッチン コーッチン コッチン コッチンコ!!  Uh〜!!」」」

 

 

 

 なお、この『王冠へ至る祈歌』だが、歌ならどんな歌でも発動可能という割と融通の利くスキルだったりする――そう例え歌ってるのが『クラスで一番スゴいやつ』*3でも魅了状態になるのである。

 

 

 魅了されたアークエンジェルはありったけの情報を喋った後に、魅了状態のままで一神教派新潟支部に突き出されたのであった――――処分されるまで正気を取り戻さなかったのは、救いだったのであろう、多分。

 

 

 

◇

 

 

 

 魚沼支部のとある一室。

 腕組み&脚組み座りで椅子に座る、ヒノカグヅチの転生体にして田舎ニキの弟子兼嫁の秋葉ほむら。

 そんな彼女の前には――

 

「ドーモ、ほむらの姐=サン、オヒサシブリデス」

「相変わらず前線でバリバリ暴れてんだって? 流石姉御」

「こんなご時世ですからね、姉さんもご無事で何よりです」

 

  ――今更説明不要な3ちゃんズがほむらを尋ねて押しかけて居た。

 

「だから姐さんや姉御は辞めなさいって。それならアタシも貴方達を様付けで呼ぶわよ」

 

 溜息&顰めっ面で返したほむらの台詞にえー、とすっごく嫌そうな3ちゃんズ。

 

「んじゃあ――ドーモ、ほむほむ=サン、オヒサシブリデス」

「元気そーで何よりだな、ほむほむ。景気はどーよ?」

「田舎ニキとはよろしくされてますか? ほむほむ」

 

 

 ほむほむ、もといほむらは 備前長船 を そうびした。

 

 

「「「調子こいてすいまえんでした;;」」」

 

 現地人*4にアワレにも土下座する情けない黒札が居た、調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?

 

 さて、何故ほむらを3ちゃんズが尋ねているのかというと、実はこの四人の付き合いは、魚沼支部の面々の中ではそこそこ長い。

 

 森田の紹介で3ちゃんズが魚沼支部に来るようになると、当然ほむらも田舎ニキより彼らの話を聞かされ、僅かながらも興味を抱いた。

 

 メシアンに誘拐され、天使且つ女性に変えられたという境遇には、些かなりともシンパシーと関心を感じざるを得なかった故に。

 

 

「ドーモ、ニンジャのペテン使1号でーす」

「サムライで力任せのペ天使2号でーす」

「力と技と叡智のペ天使ブイスリャアア!です」

「「だまれ性字家の3号!!」」

 

 

 ――それで出てきたのがコレなので、色々と台無しであったが。

 

 

 それでも最初は知らない場所に来た子供めいてやや大人しめで、絡む相手も森田が主であり、多少は気を使っていたのか、明確に天使被害者のほむらには距離を置こうとしていた節すらあった――その代わりとばかりにシンジには大分ちょっかいを掛けた様で、何度か匿ってくれとほむらの所へ逃げ込んで来たが。

 

 特に親睦を深めようと誘われて部屋に行ったら、四人でエロ本&AV鑑賞会させられそうになった際にはアジ・ダハーカの力まで使って全力逃走して邪龍が嘆いていたとか。

 

 そして暫く経った頃には田舎ニキの分身の田舎ネキにボコのボコにされてたんこぶだらけになる始末で、当初の大人しさは完全に消えていた。

 

 

 その理由が『異性になった分身とヤったらそれは〇EX扱い? それとも分類上は〇ナニー?』という謎を解き明かす為に突撃したと聞かされ、思わず『わけがわからないよ』と呟いたほむらだった。

 

 

 更にその後田舎ネキが3ちゃんズに乗せられてキツキツの制服姿で写真撮影して、途中から3ちゃんズもノリと勢いで同じ制服を着て写真を撮り、挙句にその写真が彼方此方に出回ったと聞かされ『本気でわけがわからないよ』と呟いたほむらだった。

 

 

 そして現場に出くわした際に、きっと似合うから一緒に!と四人に制服片手に笑顔で誘われて『わけがわからないよ、わかりたくないよ』と全力で逃走する中、シンジの気持ちが心から理解出来たほむらだった。

 

 

 なお、田舎ネキと3ちゃんズの写真は『制服着てもウワキツさのない3ちゃんズと一緒にお揃いの制服で写っている事で、そのウワキツさがより際立ち引き立つ素晴らしきウワキツな逸品』としてウワキツ界隈にて非常に高い評価を得たという。

 

 

 

 ――閑話休題――

 

 

 

 要は姉御肌で面倒見が良いほむらと、問題児且つ下っ端属性持ちの3ちゃんズの相性が割と良かった結果である。

 本来黒札相手なら様付け&敬語のほむらだが、3ちゃんズ側の『様付けとかケツが痒くなる』という発言と、当人達が望むならそうして欲しいという田舎ニキの要望もありタメ口で話していた。

 

 なお、ツッコミ属性のほむらとボケ属性の3ちゃんズが上手い事嚙み合ったのでは?というのが魚沼支部での大多数の意見だが当人達は知らない。

 

「それで、今日はどうしたの?――言っとくけど制服は着ないわよ」

「そりゃ残念。でも今回は別の頼みなんよ、ヨロシクオネガイシマス!」

「ちょっとあね、もといほむらっちの子分の娘らを紹介して欲しくってさー」

「誰がほむらっちよって、あの娘達を?」

 

 カス子ネキめいた呼び方した2号にツッコみつつ、路地裏不良リーダー時代の部下の紹介と聞いたほむらの警戒スイッチがONになる。

 だってこいつら色々と前科があるから致し方ない。

 

「待って! 話を聞いて下さい! 別に悪さしようってんじゃないですから! ただ話を聞きたいだけなんです!」

「そう健全な方のインタビューするだけだから! ホントダッテ! ウソジャナイッテ!」

「ほむらのダチ相手に変なことしねーよ! する理由もねーって分かんだろ!?」

 

 必死に無実を訴える3ちゃんズをジト目で見ながらほむらは考える。

 こんなでも黒札である3人の頼みである。

 現在静の下で働いている部下達の立ち場からも、断るのは難しい。

 

 

 それに、何だかんだでこの三人は、無駄に他者を傷付けたり苦しめたりする類の連中ではない――悪意なくやらかしたり、その場のノリやうっかりでしでかす連中ではあるが。

 

 

 そう考え、自分も同席するならば……とOKしようとした所で、ほむらの中にある考えが生まれた。

 

「なら、お礼代わりと言ったら何だけど――聞きたい事があるの」

 

 僅かに躊躇いを含む真剣な顔になったほむらに、3ちゃんズも何かを察した表情に変わる。

 

「――分かった。他ならぬほむらの頼みだ、教えよう。説明重点」

「みなまで言うこたーねーぜ、何が聞きたいかはわーってる」

 

 1号が腕組みしつつ頷き、2号が笑顔で補足するとほむらは意外そうな表情を浮かべた。

 

「……いいの? そう口外する事じゃないと思うけど」

「1号の言った様に貴女からの頼みですからね。お答えするに吝かではありません」

 

 そう笑顔で3号が告げると、少し照れ臭そうなほむらにでは、と1号が口火を切った。

 

 

「じゃあまずは俺からだな――――上から84,58,87だ!」

 

「んじゃ次オレなー。80,56,81!」

 

「ラストは私で、83,59,87です!」

 

 

 3ちゃんズが3つの謎の数字を高らかに宣言。

 暫しの沈黙が続き――

 

「…………いや、何? それ」

「何って……俺らのスリーサイズだけど。あ、カップも要る?」

「あれ? ほむほむの聞きてーことってそれじゃねーの?」

「元男に胸で負けてるのが気になって仕方がないんだとばかり」

 

 

「――――違ぁぁぁぁあああう!!!」

 

 

 ヒノカグツチの転生体、魂の叫びであった。

 

 

 でも、元男の3ちゃんズに胸で負けてる事を一度も気にした事がない、と言えば嘘になる――そんな複雑な乙女心。

 

 

 そしてそんなほむらの内心を感じ取った3ちゃんズは優しい笑顔で言葉を掛ける。

 

「ほむら、気にする事はない『競うな 持ち味をイカせッッ』と地上最強の生物も言っている」

「そーそー、女全てが胸がデカい世界なんてつまんねーって。それに女に重要なのは尻だ!」

「貧乳も属性でステータスで希少価値なのです。間違いなく貴女は魅力的な女性ですから」

 

 そして万の思いを込め、親指を立てて、輝く笑顔で応援めいてほむらに告げた。

 

「「「ほむほむ……貧乳であることを恥じるな――」」」

 

 

 

「「「――むしろ、誇りに思え!」」」

 

 

 

 ほむらが無言のまま抜いた備前長船を、燃え上がる炎が覆いつくした。

 

 

 

 ――迦具土神少女、ツッコミ中――

 

 

 

「「「調子こいてマジですいまえんでした;;」」」

 

 少女のコンプレックスに触れるという大罪を犯した3ちゃんズが、炎を纏った備前長船の柄の所でシバキまわされてたんこぶだらけになって再度土下座した――三度目の正直か、二度あることは三度あるになるかは分からない。

 

「よろしい――話を戻すけど、三人に聞きたい事があるの」

「な、なんでしょうかほむら様」

 

 ちょっとビビリ入った1号が代表して答えると、ほむらは迷いの混じった真面目な表情で話し始める。

 

「貴方達、一神教派の新潟支部で子供達相手に遊び相手をよくしてるわよね。歌も唄ってあげて」

 

 ほむらの言葉にそれがどしたん?という顔で頷く3ちゃんズ。

 三人と、しっかりと視線を合わせたままでほむらは続ける。

 

「でも――――山梨では歌ったりしてないのよね? 昔はしょっちゅう歌ったり踊ったりしてたけど、今では全然やらなくなったって、前に知り合った人が教えてくれたわ」

「あー……俺らが歌ったりすると聖歌とか聞かせんなって、因縁付けてくる連中多くってさー」

「それに今の私達は、歌に夢中になるとうっかり天使の羽根とか輪っかが出てしまうので……」

 

「ええ、それも聞いたわ――貴方達がそういう連中相手に、怯むどころか反撃してたって話も一緒に」

 

  困った様に、誤魔化す様に答えた1号、3号の言葉を一刀両断したほむらは続ける。

 

「そして、子供達の相手はするけどそれは子供の方から近付いてきた場合だけ。自分達からは近付かない、って事も」

「あー、それはオレらでガキ共の癖がおかしくなったら流石にカワイソーだからで」

 

 へらへらと笑って答える2号の言葉を遮り、躊躇いながら、それでもほむらは言った。

 

 

 

「それは――貴方達が関わったっていう『事件』が理由なの?」

 

 

 

 ほんの一瞬、三人の顔が引き攣った事で、自分の考えが正しかったとほむらは確信した。

 

 当初田舎ニキから3ちゃんズの希望通り呼び捨てで呼ぶ様に言われた際、ほむらは反対した。

 田舎ニキから聞かされていた問題のある黒札や、ガイア連合絶対主義者とのトラブルの原因になる可能性を考えたからであり、静もまた周囲への示しがつかなくなり、黒札を軽んじる者が出てくるかもしれないと苦言を呈した。

 そんな二人の意見を肯定しながら、それでも出来れば三人の希望を優先してやって欲しいと田舎ニキは言い、その訳を言葉少なに語ったのである。

 

 

 『あの三人はガイア連合内で緘口令を敷かれた事件に関わっている』と。

 

 

 そして、希望通りに呼び捨てで呼び、何度か会う内に下っ端ムーブでほむらに構う様になった三人との付き合いが続き――ほむらも気付く。

 

 おちゃらけて、おふざけで、おバカを繰り返している三人――――だが、時折言動の端々に誰も気付かない程にほんの極僅かな、怯えがあると。

 

 田舎ニキの発言から三人への関心が高まり、注視していたのもある――だが、それ以上にほむら自身の経験が大きかった。

 ほむらが不良達のリーダーをしていた時、傘下には急遽異能に目覚めた者達も居た。

 行き場の無い彼らの中には、目覚めた異能により居場所を追われた者、力を上手く制御出来ぬ者等も当然おり――――彼らは自らの力そのものや、その力で人や自身を傷付ける事に恐怖していた。

 

 そんな嘗ての部下達と同種のにおいを、ほむらは三人から微かに感じとったのである。

 

「勿論禁止されてる所は秘密で言える所まででいい。言いたくない事なら、答えなくていい。興味本位で聞いてるわけじゃないから――――ただ、このまま有耶無耶にはしたくなかったの」

 

 この三人との関係を、ほむらは上手く言葉に出来ない。

 

 ただの知り合い?旦那兼師匠の同僚?上位組織の所属者?夫から様子を見る様頼まれた相手?あるいは――――友達?

 

 ただ、いずれにしてもこのままではよくないと思った。

 同時に、安易に踏み込んではならない事だとも思った。

 

 

 それでも、どんな関係であれ、これからも三人との関りが、付き合いが続くのならば――――避けてはいけない、何時かは聞いて向き合わねばならない事だと思ったのだ。

 

 

 無言で部屋にあった別の椅子を寄せた三人が腰を下ろし、荷物から飲み物を取り出す。

 

「――分かった、教える。楽しい話じゃないけど付き合ってくれ、ヨロシクオネガイシマス」

「……聞いたアタシの台詞じゃないけど、本当にいいの?」

「こういっちゃ何だけどよ、別に絶対秘密にしてるってワケじゃねーんだ――ペラペラ話す事でもねーけどよ」

 

 少しだけ固いが、何時もの表情になった1号がペコリと頭を下げ、2号が頬を掻きながら答えてコーラを呷った。

 同じくミルクティーを取り出した3号が、同じ物をほむらへと渡す。

 

「でも少し口を滑らかにしたいので、ちょっと失礼しますね。貴女もどうぞ」

「ええ、もらうわ。でもこういう時は普通お酒なんじゃないの?」

「ですよねー。でも私達お(・)酒(・)は(・)大(・)嫌(・)い(・)で(・)す(・)の(・)で(・)、紅茶でお願いします」

 

 そうして全員席に着くと、遠い目になった1号がサイダーのキャップを開けながら話始めた。

 

「まあ特別な事なんてない何時もの事でさ。山梨でチビ達相手にしてたんだ、日常重点」

「んで、途中からガキ共にリクエストされて歌ったんだ。お子様向けのやつちゅーしんに」

「『おっぱいがいっぱい』歌うつもりでしたが、以前怒られたので止めたのを覚えてます」

 

 表情も、喋り方もぱっと見は『何時も通り』のままで、時々手に持った飲み物を呷りながら話す3ちゃんズ。

 ほむらは無言のまま、三人の話をただじっと聞いている。

 

「それで暫く歌い続けて……あれは何曲目の事だったかなあ。流石にもう思い出せねえわ」

「何歌ったかはよく覚えてっけどなー。『アンパンマンのマーチ』だ、ガキ共と合唱してな」 

「子供達が随分盛り上がって、釣られて私達も熱唱して、歌に夢中になって……そして、私達の背と頭上に、羽とヘイローが表れました」

 

 一度言葉を切った3号が、笑顔の――しかし、酷く固い――まま、続けた。

 

 

「その瞬間、その場に居た子供の一人が泣きだし――いえ、絶叫を上げて、錯乱しました」

 

 

 サイダーの残り全てを一気に呷った1号が、言葉を引き継ぐ。

 

「――ヒデえ泣き声だった。あんな泣き声響いたら、冷たい都会の人間でも思わず外に飛び出ちまいそうなぐらいに」

「当然、慌ててどうした大丈夫かって、駆け寄った。そしたら今度は、胃の中が空になる勢いでゲロ吐いちまった」

 

 ボリボリと音が出る程強く、傷跡を掻きながら2号が、当時を思い出す様に語る。

 

「医務室に連れていこうとしましたが、私達が触れようとすると自分が傷付くのも躊躇わない――いえ、ケガした事も分からない様子で暴れるので……泣き声を聞いて駆け付けてくれた人やシキガミにその子を任せて、私達は受け入れの準備を頼みに医務室に向かいました」

 

 新しいミルクティーを取り出した3号が締めくくる様に言った。

 黙って三人の話を聞いていたほむらが、やや目を伏せて、出来れば己の予想が外れていて欲しい、そう思いながら口を開く。

 

「……ねえ、その錯乱した子って」

 

 そんなほむらに『何時も通り』だが、ほんの少しだけ悲しそうに見える笑みを浮かべた3号が、笑顔のままで答える。

 

 

 

「ご想像の通りです――――過激派メシアンの、天使の、被害者の一人でした」

 

 

 

 予想のままの答えに沈黙するほむらに、二本目のサイダーを一気飲みした1号が、詳細を述べる。

 

「外国の、小さな村の生き残りでな。その子以外の人間は家族含めて全員死んだ――――聖歌隊の歌をバックにした天使に、村ごと焼き尽くされたそうだ」

「クソッタレどもを始末した黒札が、見捨てるのも目覚めが悪いと山梨まで連れて帰って……やっと外に出れるよーになったそいつに、ガキ共が一緒に遊ぼうと声を掛けてオレらの所に一緒に来たってワケだ」

 

 三本目のコーラのキャップを捻りながら補足する2号。

 そんな三人に躊躇しつつも、ここまで聞いたなら、最後まで聞く義務があると、ほむらは尋ねた。

 

「それで……それから、どうなったの?」

 

 その問いに、三人は揃って、同じ様な苦笑を浮かべた。

 

「そりゃあ、その子の面倒見てる黒札に、滅茶苦茶怒られたよ。『漸く外に出られる様になったのに!!』って」

「オレらが原因なのはその通りだからなー、何も言えなくて……全員で土下座して、ひたすら謝るしか出来なかった」

「ガイア連合に入ってから怒られた事は幾らでもありますけど――あそこまで怒られたのは、あれっきりですね」

 

 仕方ない仕方ない、そう笑う三人を見て、ほむらは彼らが何故歌を、特に子供相手に唄わなくなったのかを理解した――同時に、何故一神教派支部では歌えるのかも。

 

 更に、田舎ニキから以前聞いたこの三人は昔は下ネタやセクハラ紛いの内容の議論を人前で平気やっていた、という話をほむらは思い出す。

 

「じゃあ……昔やってたセクハラ紛いの会話を止めたのも」

 

 その質問に、そっちもご想像の通りさ、と語る三人。

 

「……『そういう方面』の被害者も、その身内も、ガイア連合にだって黒札にもそれ以外にも沢山居るからなあ、実際多い」

「そーいう人らの前で、天使の羽生やしてそんなネタ振るとか、殺されたっておかしくねえって、オレでも思うさ」

「今迄猥談中に羽やヘイローが出て来た事は流石にありません。それでも、もしも起きた時の事を考えると……」

 

 そう答える三人の顔に浮かぶのは『何時も通り』なのに、何処か彼ららしからぬ表情。

 そんな三人と、三人の表情をほむらは見つめ、問う。

 

「三人共……それで、いいの……?」

 

 本当に、自分達の現状に何も思う事はないのか。

 そんな意味合いを含むほむらの問い掛けに、軽く溜息を吐いて1号が答える。

 

「――あるさ。あるに決まってんだろ。俺達は何もしてないじゃないかよって、ずっと思ってるさ」

 

 ペットボトルを逆さにし、コーラの最後の一滴へ舌を伸ばしながら2号が続く。

 

「ペ天使共の仲間になった事も、一緒に悪さした覚えもねー、なのに連中の同類扱いとか――冗談じゃねーよ」

 

 飲み干した容器をぐしゃり、と握り潰した3号が笑顔で、しかし吐き捨てる様に言った。

 

「天使の羽と輪っかがあるだけで、こうも遠慮して生きなきゃならないとは――正直、夢にも思いませんでした」

 

 なにかを吐き出す様に、ふーっと長く息を吐いて――だけど、と三人は続ける。

 

「だからといって、また同じ様な事になっちまったら――誰の、何の得にもなりゃしない」

「オレらだってガキ泣かせたり、他人のトラウマ抉って楽しむまで落ちぶれちゃいねーよ」

「幾ら私でも、他人に消えない心の傷を付けてまでエロ談義を優先したい訳ではないので」

 

 だから!と声を上げて、3ちゃんズが立ち上がった。

 

「やれなくなった事、出来なくなった事を延々と考えたって仕方ない! 割り切り重点!」

「考えてもしょーがねー、だったら考えねーのが一番! ちぇすととはは知恵捨てなり!」

「まー他にも楽しい事はありますから! 死んだ子の年を数えるのはバカのやる事です!」

 

 そう叫んでビシッとライダー1号、2号、V3の変身ポーズを決める三人。

 少なくともほむらの目からみて、完全に『何時も通り』に戻った3ちゃんズ。

 何と言えばよいか分からないほむらは無言。

 

 だが彼らの事情に踏み込んだ事を謝るのだけは、絶対してはいけないと思った。

 

 そしてそんなほむらを見た3ちゃんズがしかめっ面になる。

 

「聞かれたから答えただけなんよ? だからそんな申し訳なさそうな顔せんでもいいから」

「そーそー、ごめんなさいもナシな? オレは謝るのも謝られるのも好きじゃねーんだよ」

「ほーら私みたいにスマイルスマイル! 深刻ぶった顔の娘ってキレイじゃないですから」

 

 寄って来てわちゃわちゃしだした3ちゃんズに、肩の力が少し抜けたほむらの顔が苦笑に変わった。

 ほら、笑う門には福来る、スマイルーと3ちゃんズが指で口角を上げようとしたり、擽ろうとしてくるのをツッコミチョップ入れて止めながら、漸く頭の中でまとまった言葉を伝える。

 

「ねえ、三人共――」

 

 

「答えてくれて、ありがとう」

 

 

「「「いーってことよ」」」

 

 ほむらの言葉にクウガめいたサムズアップで応じる3ちゃんズ。

 更にほむらは言葉を重ねた。

 

「他の人達がどう思うかは兎も角、私からすれば貴方達は天使何かじゃないわよ、絶対に。天使連中に色々滅茶苦茶にされた被害者として、断言するわ」

 

 それに、とほむらは悪戯っぽく笑って続ける。

 

 

「いくら天使連中でも貴方達と同類って言うのは――――流石にちょっと失礼かもだし? 最悪訴えられるかもしれないし」

 

 

 そう言って笑うほむらに3ちゃんズも釣られた様に笑い、それじゃあと1号が話を戻した。

 

「紹介の方、お願いしていいか? ヘンナコトシナイッテ! ウソジャナイッテ!」

「……何が目的? 理由は説明して欲しいんだけど」

「話すと長くなるんだが、どーしてもそーいう経験のある人の協力がひつよーでなー」

「協力って……一体何させるつもり?」

「さっきも言った通り単にお話を聞きたいだけなんですよ、お仕事中の振る舞いとかその辺の!」

 

 ちょっと警戒度アップしたほむらを必死で宥める3号。

 何で3ちゃんズがほむらの元部下に会いたいのかというと――

 

「パパ活とか援交してたんだよな? その時の話をインタビューさせて欲しいんだ」

「掲示板とかスレ見るよりも、プロに直接話聞くほーが多分はやいと思ってさー」

「2号の言う通り、現場の生の声というものは、他にはない価値があると思いまして」

 

 パパ活、この時代なら援交についての内輪ネタやあるあるなネタの蒐集の為であった。

 

「まーだアイマスキャラらしくしろだとか、言動を改めろって言ってくる奴が居るんだよなあ……フィクションの悪影響だ!」

「コソコソとネットに書き込みとかしててウザいったらねーよ。堂々と正面から来る分前の連中*5のがずっとマシだったぜ」

「なので専用のプレゼントを用意します。プロの手によるガチリアルなパパ活仕草の写真と映像で脳を破壊してやりましょう」

 

 3ちゃんズの言い分も、3ちゃんズに文句言う連中も、その反撃方法も、転生者でないため全く理解出来ないほむらだが、それでも元部下達に会いたいのは本気だと理解する――するが、今度は別の疑問が生まれる。

 

「……それ、あの子達じゃなくてもいいんじゃないの? そういった仕事なり、経験のある人なんて山梨にだって居るでしょ」

 

 その為にわざわざ魚沼までやってくる必要も、自分の元部下に拘る必要もあるとは思えない、そう尋ねるほむらに、3ちゃんズは口に苦虫inな顔。

 

「……そりゃそう思うよなあ。逆なら俺でもそう思う、効率大事」

「言うとーり、そーいう経験や仕事してるのはおーぜい居るぜ、山梨にも」

「しかし、山梨ではダメなんです。山梨でやるのは色々と危険が危ない」

「……何で?」

 

 

 

「「「――――山梨でやると、ミナミィネキがシュバってくる、絶対」」」

 

 

 

「ああ、あの……」

 

 深刻めいた3ちゃんズの台詞に、ほむらは心底納得する。

 

「いや、ホントあの人はさぁ……少しでも油断して隙みせたら『お前達をエロスの国に連れていく。抵抗は無意味だ』ってなりそうというか……」

「童〇捨てる前に処女喪失はヤダっつったら『じゃあ生やして〇貞捨てて、それから処女卒業しましょう』って笑顔で言ってくる人だからなー……」

「流石に無理矢理はしないと思いますけど、あのぶっとんだエロオーラ力(ちから)に取り込まれたが最後、なし崩しに布団まで引きずり込まれそうで……」

「そうでしょうね……」

 

 セルフハグ状態で怯える様に微かに震える3ちゃんズに深く頷いて同意するほむら。

 

 噂程度でも彼女の『逸話』の凄まじさは鳴り響いており、嘗て静を惑わせ危うく自分の旦那兼師匠の後ろのハジメテを散らす寸前まで*6やってくれたガイア連合スケベ部、その筆頭にして、スケベ部最強の存在。

 

 3ちゃんズの警戒ぶりを杞憂とは断じて言えないほむらだった。

 

「とまあ、そういう訳で――紹介の方お願い出来ませんか? お礼も用意しますから」

 

 そう揉み手で尋ねる3号に、仕方ないなあという表情になったほむらは答える。

 

「――分かったわ。但し、私も同席させる事。これは譲らないからね?」

 

「「「さっすが~、姉御は話がわかるッ!」」」

 

「姉御言うな」

 

 ビシッとツッコみつつほむらは湧き上がる思いに従って笑う。

 一つは、久しぶりに仲間達と会う事に思いを馳せて。

 もう一つは、完全に何時もの調子に戻った3ちゃんズを見て。

 

 

 

「「「って、天使に失礼ってそれどーいう意味!? 幾ら姐さんでもヒドイ!!」」」

 

 

 

「遅っ!! 幾ら何でも反応遅すぎるでしょ!? わざとじゃなかったら何かの障害疑うレベルで遅い!! あと姐さん言うな!!」

 

 ほむらのツッコミは今日も冴え渡り、そのツッコミは『突っ込み御免状持ち』*7の名に恥じぬものであったのでした。

 

 

 

◇

 

 

 

  魚沼市の中のとある喫茶店。

 紅茶とコーヒーが美味しいと常連に評判の何の変哲もない喫茶店――と見せかけて実は九条家の息が掛かっており、田舎ニキや静の関係者等が相談事や他所の関りを避けたい時に使われている。

 そんな喫茶店では、ほむらと、ストリートチルドレン時代の彼女の配下だった少女達が旧交を温めていた。

 

「どーも、姉御お久しぶりです! 今日はゴチになります!!」

「いやー、姉さんもすっかり若奥様っすねー。尖ってた頃とは別人っすよ」

「でもあの頃よりずっと強くなってますよねー、あたしらじゃただ強いとしかわかんないっすけど」

「着てる服もすっごく良い物だし、きっと文字通り目が飛び出るようなお値段なんでしょーね」

「だから姉さんはやめなさいって……変わらないわね、アンタらも」

 

 相変わらずの呼び方に苦笑しながら、昔を思い紅茶を口に運ぶほむらの瞳には、嘗てと違い清潔な服を纏う配下達の笑顔と――

 

 

「カヤノヒメ印のお米あるから持ってかえってスシにすると良い。スシは良いぞ!」

「ガイアミートのハムとベーコン、ウインナーもあるぞ! 肉食え肉! 肉は力だ!」

「受け取る時には『流石姉さん、略してさすあね』と感謝の言葉を忘れないように!」

 

「「「「「さすあね!」」」」」

 

 

 ――なんかそーいう情緒とか趣を木っ端微塵にしてる連中がいた。

 

 

 紅茶を吹きだすのを、ヒノカグツチの転生体と年頃の少女の誇りにかけて耐える。

 

「……三人共、なにやってんの? あと姉さん言うな」

「あれ、この三人も姉さんの新しい部下とかじゃないんすか?」

「…………この三人、これでもガイア連合のブラックカードよ、これでも」

「「「「え」」」」

 

 大事な事を二度言ったほむらの言葉に固まる元配下の少女達。

 

 そうと知らずに少し、いやかなり砕けたというか、失礼な事言ったりやったりしたかもと思った故に――もっと言うと、その事が雇い主の九条静にバレた時の事を考えた為に。

 

 まーまー、気にしない気にしないと持ち込んだ米だの肉だのといったお土産兼報酬の一部を渡して回る3ちゃんズ、喫茶店のオシャンティな雰囲気ぶち壊しである。

 年頃の少女達へ贈る物としてはどうかと思うが、こいつらの中身が取り合えず肉とか美味い物貰ったら嬉しいな男子思考&嗜好なので致し方なし――喫茶店のスイーツと被らなかっただけマシと思うべきであろう。

 

「で、でもめっちゃ姉さんの手下みたいな振る舞いを……あっ!」

 

 何かに気付いた様に目を見開く元配下の一人。

 その反応に、ほむらは何か凄く悪い予感がした。

 

「分かったっす! 遂に姉御はブラックカードの子分を作ったんすね!? 流石っす!」

「マジすか!? あの激ヤバで激レアなブラックカードを子分に!?」

「すげー! マジで超スゲーッすよほむらの姉さん!!」

 

 とんでもない誤解で盛り上がる元配下に、九条家の息のかかった店の中で何言ってるんだこいつらと頭痛がしだすほむら。

 

「ふっ……バレては仕方ない。ドーモ、ほむほむの子分1号です」

「斬り込み役でチームほむほむの特攻隊長の2号です」

「そして副官で参謀総長で軍師で補佐官の3号です」

「ちょっ!?」

 

 更に3ちゃんズが悪ノリして乗っかった事で事態は悪化!

 

「姉さんとチームほむほむの栄光と覇道はこれより始まる、一緒にガンバルゾー!!」

「おうよ! チームほむほむで新潟の、そして日本の、世界の頂点(てっぺん)とったるで!!」

「さあ『流石チームほむほむ、略してさすほむ』とチームほむほむを称えるのです!!」

 

「「「「「「さすほむ!!!」」」」」」

 

 強く、固く握りしめられたほむらの拳に炎が宿り、『突っ込み御免状』が己が役割に従い力と光を放ち始める。

 ほむらは紅蓮に燃え上がる拳をバカ(3ちゃんズ)とアホ(元配下)目掛けて振り上げ、全身全霊で今出来る最高のツッコミを叩き込んだ。

 

 

「姉さんって言うな!! ほむほむって言うなー!!!」

 

 

 

◇

 

 

 

 その後は全員でカラオケへと繰り出した一行。

 

いつでもスマイルしようね

とんでもないことが起きてもさぁ

 

 羽ぐらいでオタつく奴などこの場には居ないから、好きに歌えばいいと皆に言われ3ちゃんズは――

 

「では私は『チチをもげ!』を」

「ちょっとまて3号! 普通この流れでそれを選ぶか!? このスゴイ・バカ!!」

「分かってます! でもこんなシチュ*8で歌うチャンスなんてそうはないでしょう!?」

「くっ、確かに……テメーだけで行かせねえ、オレもやるぞ!」

「なっ、2号お前まで――ええい! ヤッチャラジャレッケラー!」

 

 

 ――な感じで下ネタソングメドレーをかました、アホである。

 

 

 可愛くスマイルしててね

 なんでもない顔して出かけりゃいいのさ

 

 しかし、

 

「なんというかトバシすぎってゆーか、ウケを狙いすぎ? イキすぎて滑り気味な感じ」

「『自分の見た目でこれやったらウケる』ってのが透けて見えちゃってるのは減点かなー」

「あれね、自分達面白いでしょ? とかいう雰囲気でやられるのが一番寒いからねー」

「「「アッハイ」」」

 

 

 ほむらの元配下にダメだしされてしまい、その後は普通に歌った。

 

 

 ねぇ笑ってくれよキミは悪くないよ

 

 そして皆で歌いつつ、本来の目的であるそういうお仕事のあるある話や内輪ネタを聞かせてもらったのだが――

 

「まじ■■が下手くそなヤツ多すぎだよね。お前はA〇男優か!って感じで」

「そーそー、■■■■しすぎ! 『気持ち良い?』じゃねえよ、痛いんだわボケって心の中で叫んでるw」

「あーしの過去最大は■■cm。気持ちいけど、やっぱ時折痛い。程々の長さと太さが一番だわ」

「小さいけど、先っぽだけやたら大きくて、ホントにキノコみたいなチ〇チンしてたw もうちょっと長かったら良かったなーw」

 

 ねぇ笑ってくれよさっきまでの調子で yeah

 

「――下ネタトークって、女の方がえげつないって、知ってた?」

 

「知らなかったし、知りたくもなかったさ! 何で俺達はこんな事やっちまったんだ! 後悔重点!」

「チキショー! 誰かドラえもんかキテレツ呼んでくれ! 30分前のオレを殺してでも止めてくる!」

「華佗でもブラックジャックでもいいからどうか私の記憶を奪って下さい! お金は払いますから!」

 

 

 いつでもスマイルしててね

 

 

 

 ――所詮前世からの童〇、そして現在処女で耳年間な3ちゃんズは、そういうお仕事してた女性のえぐい下ネタトークについていける器ではなかったのでしたとさ。

 

 

 

 深刻ぶった女はキレイじゃないから

 

 

 こうして大きな犠牲を払いながら得た知見で行った3ちゃんズのパパ活女子演技、英語で言うとアクティングは、後日小煩い連中にダメージを与える事に成功したとか。

 

 

 すぐスマイルするべきだ

 

 

 だがそれは後の話であり、ほむら達からの手拍子やタンバリンと一緒に、天使の羽根と輪っかを出しながら、それでも笑顔で『スマイル』*9を歌う3ちゃんズは――――何も悩みなどなさそうな程、楽しそうであった。

 

 

 子供じゃないならね

 

 

 さらに後に、ナマモノネキに『TSおバカどスケベ天使女子高生耳年間処女アイドル覚醒者パパ活わからせメスオチもの』なる二郎系ラーメンめいたナマモノ本を作られてしまうのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほむらは気付かなかった。

 

 三人が話した過去の話が『歌を唄わなくなった、下ネタ話をしなくなった理由』ではあっても『ガイア連合内で緘口令を敷かれた事件』だとは、一言も言っていない事に。

 

 ほむらは気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 長めのおまけ ファッション無惨様のごちゃサマライフ・とある黒札の性癖がブッ壊れた話05とコメ返信から。

 

「例えガイア連合のブラックカードでも、脅迫で人を意のままにするなど許される事ではない! 彼女達を解放しろ!」

「誤解でござるよ!? 拙者のマイスイートハートはシャルたんだけ! あのお三方は友人というか悪友というか何かそんなジャンルのポジションですぞ!……あの三人に手を出すとか流石にチャレンジが過ぎると思う」

 

 からあげ☆レモンニキとその嫁シキガミのシャルと一緒に遊びに出かけた3ちゃんズ。

 楽しく遊んでいた5人だが天之河光輝*10という面倒な相手に出くわし、面倒な事になっていた。

 

「すげーな、あいつ。『お前みたいなのが美人と一緒なんて何か法を犯してるに決まってる』って面と向かって言うか? 普通。アナスサマジ」

「頭ん中で思うだけなら分からねーでもねーが、口に出したら戦争だろ。つかシャルがスゲーきれーな笑顔になってる。爆発まで秒読みだぞ」

「しかも相手に恥をかかせてやる、みたいな悪意はどうも感じないんですよね。つまり善意というか正しい事だと思ってやってますよ、アレ」

 

 蚊帳の外状態で、下手に口出すともっと面倒になりそうだなーという顔で語る3ちゃんズ。

 しかし――

 

「どうした2号、考え込んで」

「いや、なんかあいつ、どっかで会ったような気がするっつーか……」

「ええ? でも間違いなく初対面の筈ですけど……でも私も何かデジャヴが」

「そう言われると俺もなんかそんな気が……あっ!」

 

 気が付いた1号が思わず叫ぶ。

 

 

「分かったぞ! あいつノンデリのおっさんにそっくりなんだ! 顔以外色々と!」

 

 

「あー! 確かに!――もしかして、ノンデリのおっさんの弟か? あいつ」

「いやそれはないでしょう、歳が離れすぎです。親戚とかじゃないですか?」

「でもなあ、親戚程度であそこまで似ないだろ? 血統重点」

 

「…………親戚全部あんな感じの一族、という可能性は?」

 

「すげーやな一族だな、それ」

 

 シンプル且つ端的な感想を述べる2号の隣ではっと1号が目を見開いた。

 

「…………!? まさか!? いやそれなら説明がつく……!」

「なんだよ1号、謎は全て解けたとか言いそうな面して」

「ああ、俺はとんでもない事に気付いてしまったのかもしれん」

「……穏やかでないですね、一体何に気付いたんですか?」

 

 ごくり、と唾を飲み込んだ1号が静かに語る。

 

 

 

「あいつ――――ノンデリのおっさんの隠し子なんじゃねえのか?」

 

 

 

 3ちゃんズに電流走る……!!

 

「えええええええええ! それは流石に――いや、有り得る……!」

「な、なら、黒札に色々ちょっかいかけてるのも、父親を捜して……?」

「――こうしてちゃいられねえ! おっさんに連絡すんぞ!」

 

 以前、無理矢理押し付けられ何となく記録していたノンデリニキの連絡先に電話した1号は叫んだ。

 

 

「おっさん! 緊急事態だ! 今何処だ!? おお、すぐ近くじゃん! 来てくれ今すぐにだ!! 理由!? 来たら分かる! いいから来てくれ!! 絶対来いよ! 来なかったら山梨支部のど真ん中で『おっさん、俺達との事は遊びだったんだね』と三人で足に縋り付きながら泣き喚く!!」

 

 

 元男として、これはやっちゃダメなやつだろと封印していた禁術まで用いてノンデリニキを呼び出す3ちゃんズ。

 

「あのさあ、確かに君達の事は気にかけてるけどそれとこれとは、ん?」

「言い訳無用! 改心しないのなら、こちらも容赦はしない、む……?」

 

 そして渋々やって来たノンデリニキと天之河は、目と目が合う瞬間気付いた。

 

 

 こいつとは相容れない、と。

 

 

「何かな? この人の話を聞かずに自分の考えを語るしかしなさそうな子供は」

「一体誰なんだ? この上から目線と態度が身体に染み付いてしまった様な人は」

 

「「は?」」

 

 そして忽ち始まる激しく凄まじい口論――否、お互いに相手の話を聞く気が無いそれは口論とは言い難い。

 

「やはり親子だった! 偶然でも出会えて良かったなあ! メデタイ!」

「こういう親子の会話ってのもあるんだなー。世界ってホント広いぜ」

「家族の形はそれぞれ。当人達が納得しているならいいじゃないですか」

 

 ノンデリニキと天之河の争いを、久しぶりの親子喧嘩と捉えて微笑まし気に天使の笑顔で見守る3ちゃんズ。

 

「……いや、ホントにいいのかこれ……あれ、シャルたん。何で撮影してるのでゴザルか?」

「あの人達、どっちも悪い意味で有名人みたいだからね。一部始終撮っとけばきっと色々需要があるよ、マスター」

 

 一瞬口調がノーマルになったからあげ☆レモンニキの隣では、主を侮辱され笑顔でブチキレていたシャルが顛末の撮影をしていた。

 

 シャルの発言通り、その動画は彼らの被害者を中心に大いに盛り上がり、大きな反響を呼んだという。

 また、隠し子疑惑が広まったノンデリニキがそちらの火消しに手一杯で3ちゃんズを追っかける余裕がなくなり、暫く平和を満喫した3ちゃんズだった。

 

 

 しかし、デリケートな黒札の子供問題のデマを広めたとして、ちひろネキからしっかりばっちりお説教された3ちゃんズでしたとさ。

 

 

 

 また、ノンデリニキと天之河がその後『どちらが3ちゃんズを更生出来るか』という勝負を始め、両者競って3ちゃんズと追走劇を繰り広げているという噂もあるが、真相は不明である。

*1:
ふーじん様作。【カオ転三次】今更転生ごちゃまぜサマナー  に登場する魔薬、皆大好き忍極のアレ。元は漢方ニキが研究していた覚醒補助剤だったが流出&改悪コンボで魂を犠牲に一時の力を得る極悪なシロモノになってしまった。

*2:
属性・状態異常魔法。敵全体を緊縛状態にする。

*3:
『花さか天使テンテンくん』のOP曲。元々は作中でテンテンくんが歌い総ツッコミを受けるシーンの歌だが、アニメ化の際そのまま主題歌になってしまった。長いジャンプアニメの歴史の中で最大クラスの破壊力を持つ主題歌である。

*4:
超上澄み

*5:
31話

*6:
れべっか様作。【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話 外伝 魚沼で頑張るロバ霊能者の話5(後) より。田舎ニキの後ろが借金のカタになるのもそう遠くないのかもしれない

*7:
名無しのレイ様作。【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち 黒川千秋と防衛部所属デモニカ、後編 より。深刻なガイア連合のツッコミ不足に対し外部まで幅広くツッコミ役を求めた制度。

*8:
参加者全員女性

*9:
アニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』初代ED曲。歌詞と合わせてサビの中毒性が中々高い曲。2020年にカバーされオロナミンCのCMにも使われた

*10:
頓西南北様作。ファッション無惨様のごちゃサマライフ に登場する覚醒者。銀札だが才能とルックスと自信に満ちた振る舞いで黒札と周囲に勘違いされている。善意と正義感が強い。それだけならいいのだが、自分を疑う事を知らないせいで結果凄く迷惑になるというタイプ。




 ―以下どうでもいいバカ共の設定―

・ペテン使3ちゃんズ
 三人一組な大天使サンダルフォンの特殊&劣化デビルシフター。
 作中通りサンダルフォンの狙いに誂えた様にぴったりな生贄だった――――結果はご覧の有様だが。
 歌うのは元々好きだが変身先の影響で更に関心が強まったのに、変身先のせいで不用意に歌えなくなってしまった。
 更にその変身先のせいで凹んだ時は、三人だけで歌を唄う事でテンションを盛り上げるという皮肉な状態になっている――歌うとテンションあがるのは元々だが、サンダルフォンの影響も大きいという点も皮肉。

 ある覚醒イベントで自分達の変身先の正体を知り、スキル『王冠へ至る祈歌』が使用可能に。
 しかしレベル不足&魂の相性の悪さ&当人達の天使の力の否定により非常に劣化している。
 現在は対過激派へのサーチ&尋問スキルとして使用中だが、3ちゃんズのレベルが上がり、且つ天使の力を使いこなせる様になれば本来の使い方も可能――当人達にその気はない。
 変身先がサンダルフォンである事と一緒にスキルも秘密にしているが、幹部や関係者は知っている他、特殊な権能やスキルで、または状況や結果からの推理・推測で知っている一部の黒札も居る。

 作中の一件以降人前で歌を唄うのを止め、同じく他人の居る所で下系の話を避ける様になった――新潟支部の子供や穏健派の子供相手には歌っていたのは普段から天使と接しているなら大丈夫な筈という判断から。
 子供の癖を歪めない為、というのは本当の理由を誤魔化す言い訳だが、そちらも考えてはいるので全部嘘という訳ではない模様。
 ほむらへの説明では保護者の黒札にお説教された様に言っているが、実際は激昂した黒札にゲーム的に表現するとHP3割持ってかれるぐらい殴られている。
 勿論問題になったが、3ちゃんズ側が減刑嘆願をした事と保護者側がきちんと謝罪した事で何とか穏便にすんだ。
 
 ネタに走り過ぎ、ウケを狙い過ぎと言われる事が割とある模様。
 酒の美味しさが分からない三馬鹿ラスと違い、酒が大嫌いと公言している。
 その理由をこの容姿になってから飲ませて酔わそうとする奴が多いから、と3ちゃんズは語っているが――。

・ペテン使1号
 自分達の現状には色々思う所がある模様。
 『自分達らしさ』に相当な拘りをみせ、その為の提案・活動に非常に熱心――そして他二人にもそれを要求している。

・ペテン使2号
 三人の中で一番戦闘適性が高いのは別世界と同じ。
 チェスト=知恵捨てな思想に興味があるらしい――それ故か、それとも別の理由か『敵』を淡々と斬る事が増えている。

・ペテン使3号
 三人の知恵袋ポジで、交渉時に前面に立つポジでもある。
 その為か表情は柔らかな笑顔が基本である――ただ、戦闘時や敵に止めをさす時でも、笑みを浮かべている、寧ろ笑みが深くなる時がある。

・大天使サンダルフォン&王冠へ至る祈歌
 作中通り誂えた様な贄候補を発見し他に先を越されまいと焦り、予定より分霊のレベルが低くなってしまい、挙句の果てにご覧の有様である――きっと天界でメタトロンに怒られただろう。
 王冠へ至る祈歌はデメリットのあるバフスキル、扱いとしてはペルソナのバルザックやマドール、ウルバーンなんかと一緒。
 特徴として範囲内の天使や信徒だけでなく、一般人でも発動者に何らかの形で好意や好感を持っていると信仰心関係なしに強化対象となるが、一般人が強力なバフ受けて無事ですむ筈もない。
 そうなると強制的に覚醒判定させられ成功したら覚醒後即魅了され、失敗すれば最悪死亡という実に過激派らしいスキル。
 非常に広範囲、且つ強力なバフを与えるので一般人を犠牲が出る前提で無理矢理覚醒させ、使い捨てながら強化された大群で押し寄せるというのが本来の使用方法。

Q、つまり?
A、ファンを魅了して聖戦と称して戦わせる闇のアイドル力(ぢから)

 3ちゃんズの姿が美少女なのも、歌ならどんな歌でもスキルが発動可能なのもそれが理由。
 サンダルフォンの目論見通りにいった場合、人魚ネキやアイマスの会を相手取った光と闇の果てしない(アイドル)バトルが起こっていたかもしれない。
 もし3ちゃんズが完璧に王冠へ至る祈歌を使える様になったら範囲内の過激派天使を『味方として』強化して魅了状態で手駒にするという数押ししてくる天使への強烈なカウンターになり得る――当人達にその気は勿論ない。
 劣化した現状でもかなり強力なスキルだが、魅了が必ずセットなのと、本来使えないスキルを無理して発動しているので消耗が大きい、事前準備が必要、使用時は無防備、効果が出るまで時間がかかる、と問題も非常に多い。
 ちなみに3ちゃんズが使う時は必ずネタソングで使っている。
 これは『天使の力はアホな事にしか使わない』という3ちゃんズの縛りというか拘りで、ネタソングで天使連中をおちょくっているという建前の為。

・秋葉ほむら
 田舎ニキの弟子兼嫁にして『突っ込み御免状』を許される程のツッコミ力の持ち主。
 そのツッコミ力と姉御肌の性格故に、三馬鹿ラスと違い交友関係の狭い3ちゃんズに懐かれてしまった不幸な娘――生い立ちから考えても多分幸運値は低い。
 自分に近い境遇と情の強さ故に三人の事情に踏み込み、結果良い方向へ転ぶ。
 だが三人が本当に隠してる事には気付かなかった。

・ミナミィネキ&ナマモノネキ
 『TSおバカどスケベ天使女子高生耳年間処女アイドル覚醒者三人組』という属性過多な3ちゃんズに絡む&構う黒札。
 ミナミィネキは『こっちの水は甘いですよー』と事ある毎に誘い、指名依頼まで用意して会う機会を作って積極的にスケベ部入りを狙っている、無理強いはしてこないがその凄まじいエロス故に抵抗は無意味だされそうで3ちゃんズは逃げ回っている。
 ナマモノネキは3ちゃんズが彼方此方で色々やるからネタになる&怒らせても他の黒札程怖くない事から便利で安全な(当社比)ネタ帳扱いしており、別ベクトルな3ちゃんズの天敵状態。

 なお、スケベ部に3ちゃんズを誘っているのはミナミィネキなりの気遣いでもあり、3ちゃんズもそれは理解している。
 また3ちゃんズはナマモノネキが自分達をネタにする事に、怒ると同時に実は感謝もしている。

・ノンデリニキ&天之河光輝
 混ぜるな危険な組み合わせ、筆者の勝手な想像で似た者同士&同族嫌悪。
 実はノンデリニキは3ちゃんズの特殊スキルを推測で導き出した内の一人。
 過去や集めた情報から天使に有用な何らかの特殊スキルを持っていると確信し、結果自分の保護下で正しく導かなくてはと善意で3ちゃんズを追いかけまわしている。
 天之河はコメ返信頂いた時『例えガチ黒札相手でも天之河は普通に突っかかる』との事からこのネタが誕生した。
 本編ではどう考えても会う機会もタイミングもなさそうな二人だが、パラレル世界且つ3ちゃんズなら有りと判断――三馬鹿ラスでは電話かけてもノンデリニキは絶対出ないし呼び出しにも絶対応じないので。



 また一か月間が空いてしまいました。
 しかも書いてる内にまた長くなってこの有様、いや魚沼支部の皆さんが森田を筆頭に色々と出てる設定、まだ出てない設定加味しても3ちゃんズとホント絡ませやすいんですよね。
 名無しのレイ様、ほむほむ、もといほむらをアホ共の姉御役に抜擢してしまい申し訳ございませんorz

 という訳で3ちゃんズを生贄に降臨しようとした天使はサンダルフォンでした。
 メタトロンの双子という格の持ち主で天国の歌を司る大天使と、後付けながら色々と見事に当て嵌まってくれました。
 ウチのバカ共らしからぬ無法なオリスキルが生えてきましたが、本領発揮にはレベルも練度も全然足りないし、3ちゃんズは『三次主人公っぽくなった三馬鹿ラス』なのでギリアリかなと。
 そして3ちゃんズの過去を一部公開、ですが作中通り3ちゃんズが関わった緘口令敷かれた事件は別にあります。

 時系列的にはガイア連合参加→おバカとして有名に→ニュージェネレーションズの乱→子供トラウマ事件→歌&下ネタ自重→緘口令案件→穏健派相手の悪戯開始&以前より大人しくなった、といった具合です、詳細は次回にて。
 しかし主役が女性だとナマモノネキがオチに便利過ぎてつい使ってしまいます、そりゃ台詞も出る前から彼方此方に登場する訳だと納得してしまいました。
 あとおまけについてはシャル&3ちゃんズと遊んでたら天之河に絡まれるからあげ☆レモンニキを思いついて、気付いたら3ちゃんズが何か暴走して隠し子疑惑&KOFのキム・カッファンとジョン・フーンみたいなムーブにw
 
 次回今度こそこのシリーズ最終回です、主人公っぽくなった三馬鹿ラスこと3ちゃんズに最後までお付き合い頂ければ幸いです。

 それでは最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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