【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。   作:貧弱一般メガテンプレイヤー

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 頑張ってくれた山親父氏を見てこれはこちらも頑張らなくてはと思いました。

 山親父氏の作品との矛盾がありますが、氏の作品は三馬鹿ラスになった(周囲からそう認識された)連中との出会いで当SSではまだバカ達と三馬鹿ラスが=でなかったというていでお願いいたします。

 あとキノネキが結構弄られてます、どうかその辺りを了承の上でお読みください
 ライン越えてないか不安に思いながら書きました、書いた後の今も不安です。


5

 ガイア連合支部という名の本部、山梨支部はその山中。

 道なき道の先のとある一角。

 急な斜面となった坂――もうほぼ崖といった方が近い――の上のやや開けた場所にて三つの人影があった。

 

「よし、ここなら遮る物もない。いい場所見つけたな」

 

 目の上に手をかざす、遠方のビューポーズ を取りながらそんな事をいう覆面ニンジャ、他称三馬鹿ラスの自称リーダーサスケニキ。

 

 しかしその姿は普段とは異なっていた。

 

 何時も忍者装束に迷彩色の布や糸束を多数付けた珍妙な格好、ギリースーツ風に改造した忍者装束というシロモノである。

 

「天気もいいし、霧もない、まさに絶好の日和ってやつだな」

「予めレンタルシキガミで私が調べておいたんですから当然です」

 

 残る三馬鹿ラスの二人、ヨロイニキ、クロマニキも同様の姿、それぞれ何時もの甲冑とローブがギリースーツ風になっていた。

 最初からギリースーツを着ろという話だが、バカに理屈は通じない故のバカである。

 

 一応黒札として、覚醒者として行動する時は必ずこの姿になると決めているという連中なりの理屈と身バレ防止という理由はあるのだが。*1

 

 そして荷物から取り出した双眼鏡を片手にガサガサと茂みに入った三バカは真剣な顔で双眼鏡を覗き込む。

 

 その視界の先には――

 

「あ、新しい娘だ。サキュバスじゃないな、リリムか?」

 

「新人か。ボーイッシュな子いないかな?」

 

「あっちは雪女ですか、種族的に大丈夫なんですかねえ」

 

 ――悪魔しょうかん入口と店前で客引きをする嬢達の姿があった。

 

 将来のシキガミの為の情報収集。

 他人のシキガミは大いに参考になるのだが、相手次第ではトラブルやボコボコにされる恐れがある。

 よって彼らが観察対象に考えたのは悪魔しょうかん所属の嬢達であった。

 流石に店内を覗くとガチで前科つきかねないし、ミナミィネキは色んな意味でおっかなさすぎる。

 

 ならば店先の嬢を見るのはOKだよねとしょうかん前で見~て~る~だ~け~してたら邪魔だと客と嬢に怒られた結果が現状である。

 

 以前はもう少し常識的な距離とって観察してたのだが、入りたくても入れない客と勘違いされ、嬢に料金サービスすると誘われたり、気のいい風俗好きおっさんなスタンクニキから奢ってやると言われたのでこうなった。

 

 

 その度にのたうち回って悩んだり、締め切り前の漫画家の如く太ももを刃物で刺して正気を取り戻すのは流石にこいつらでも何度もやりたくはない。

 

 

 なお、以前クロマニキがこっそり料金サービスしてもらって入ろうとしたが、虫の知らせ*2によって駆け付けたサスケニキ、ヨロイニキに店前で捕まり連行された。

 あくまでサービスまで、最後までヤる気はなかったとして無罪を主張したクロマニキだったが、裏切者として所有するお宝の三分の一を没収されるというあまりにも重い罰を下されたのであった。

 

 

 閑話休題

 

 

 それらの結果が珍妙な格好で観察するバカ共である。

 ギリースーツまで必要なのかという話だが、その場のノリなので仕方ない。

 

 盗みに入る時にほっかむりと唐草模様の風呂敷と地下足袋を装備するようなものである。

 

「お、あの子すげえ綺麗な色の金髪だな。ロリじゃなくてグラマーなら最高なんだがなあ」

「しょうかんにいるなら多分夜魔だよな? あんなロリな夜魔ってメガテンいたっけ?」

「ふむ……思い出しました。ペルソナシリーズの夜魔・ナイトメアは確かロリでしたね」 

 

 ワイワイと感想や雑談をしながら視線は一瞬たりともズレる事はない。

 

「んー……やっぱ客引きに出るのは分かりやすい感じの嬢が多いな、胸ボン、腰ギュッ、尻バンの。店ん中なら全部ボンバンボンとか全部ギュギュギュッも居るだろうが」

「仕方ねえよ。男は皆でけえおっぱいとケツが好きなんだから。オレはシュッと引き締まった上でむっちりな尻がフェイバリットだが」

「その割にはロリっぽいのも多く見ますけどね。まあ多分余所じゃ捕まるけどここならOKって案内と誘導なんでしょうが」

「黒札全部がYES!ロリータNO!タッチの紳士ではないからな。ガチのロリに手を出すのはちょっとなあ、そこは光源氏か足長おじさんコースにしとけと」

「名家とか多神連合からヨソで出来ないならウチでどうぞみたいなのもあるんだっけ? ロリどころかペドのレベルで。流石のオレもそれは引くわ」

 

「テンション下がる話題止めましょうよ。二次は好きにしてよし、合法は同意の上ならよし、そしてリアルは愛でるのがよしのロリ三原則を何時も心に忘れずに、です」

 

 視線はしっかり嬢の胸や尻やふとももや鼠径部やへそやうなじに注目したままで、ガイ連と他組織との関係等も話題に加えるその姿、まさに風俗店で嬢に説教するおっさんの如く。

 

 そんな平和な時間の中でヨロイニキは内心がっかりしていた。

 彼の好みと性癖はボーイッシュ。

 上述の通りあまり店前の客引きには居ないタイプで、今日も嬢の中には居なかったからだ。

 

(これで三回連続かあ。三度目の正直と思ったのに二度あることは三度あるになっちまったか)

 

 その以前に見た嬢もボーイッシュと言えない事もないというレベルで、正確にはショートカットな元気娘に分類されるであろう娘である。

 日本人の舶来信仰故か需要の高い金髪が癖なサスケニキがヨロイニキは内心羨ましかった。

 観察時、余程の事がなければ大抵の場合癖に当て嵌まる嬢が居るからである。

 

 なお、元々ストライクゾーンがやたら広い故にどんな嬢でも良いクロマニキは最初からそういうやつだと知ってるので別に羨ましくない――寧ろアレはもし可愛い顔が付いてたら例え自分の右手でも妻と呼ぶ類の生物(ナマモノ)だと認識している。

 

 そんな事を考えていたからか、ヨロイニキは手を滑らせて双眼鏡を落としてしまった。

 

「っと、しまった――よし、大丈夫壊れてない」

 

 異常がないのを確認したヨロイニキは再び双眼鏡をあてて観察に戻ろうとして

 

「――!!?」

 

 一瞬、視界に過ったナニカに息をのんだ。

 双眼鏡を覗き込んだままでしょうかん前に視界を戻そうとした際の一瞬。

 そんなほんの一瞬だけ視界に映ったもの

 だが覚醒者の優れた感覚と本能は、一瞬のそれを見逃さず、そして訴えた。

 

 今、ドストライクなボーイッシュな子が間違いなく居た!と。

 

 内からの声に導かれるままに必死で彼方此方を双眼鏡を振り回す様にして探すヨロイニキ。

 そして彼は見つけ出した。

 

 耳当ての付いた帽子とゴーグル、ズボンと白いシャツの上に黒のジャケット。

 更にその上に茶色いコートを羽織っている。

 黒髪の短髪に整った端正な顔と黒い大きな瞳、中性的とも取れるクールな容貌と身に纏う活動的な雰囲気が合わさりボーイッシュな印象を与えていた。

 そして最重要ポイントたる尻についてはこちらを向いているでまだ見れていない。

 

 しかし前から見える腰回りからでもすらりとした曲線と良く鍛えられた引き締まった下半身が、見えずとも良き尻だと教えてくれていた。

 

(おおおおお!! ちょっと若い、というか幼いけどそれ以外完璧! 必中! 皆中! 那須与一!)

 

 ヨロイニキの好み的にはもう数年後ならパーフェクトだがそれは今のヨロイニキにとって些細な事だった。

 

 なお、DKぐらいのヨロイニキがJCぐらいのキノネキを幼いやロリとみなしていいのか、DKがJCと付き合ったらロリコンになるのかは有識者による議論が待たれる所である。

 

 話を戻すと、横に誰も乗ってないのに動いているバイク、おそらくは専用シキガミを連れている事から間違いなく同胞の黒札。

 黒札相手の観察はシキガミと同じくトラブルの元として三バカ達も自重している。

 

(だが、そんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!!)

 

 大事な事なので頭の中で二回繰り返して観察開始。

 ここまでドストライクな相手に出くわすなど運極振りでない身にはまたとない幸運。

 多少のトラブルや身の危険は受け入れて然るべきリスクでしかなかった。

 将来のシキガミ作製の為に、その容姿と何より尻派として尻を目と脳裏に焼き付けんとするヨロイニキ。

 そして視線の先で歩いていた相手がこちらから見て後ろ向きに方向を変え、今こそ好機とその尻を穴が開く程に見つめ――

 

「!!?」

 

 ――ようとした矢先、突如彼女が振り返ってこちらを向き、()()()()()()

 驚きで目を見開き、呼吸が止まるヨロイニキ。

 

 固まったヨロイニキの視界の中で、少女が右腕を持ち上げ手で銃の形を作って――

 

「うわあああっ!?」

 

 ――ばーん、と子供がやる様な仕草をした瞬間、ヨロイニキは倒れる様な勢いで後ろに跳んでいた。

 

 あの瞬間、まるで本当に撃たれる様な、否、撃たれた様な感覚に襲われたのだ。

 

「うお!? なんだあ!?」

「何ですか!?……何もないようですが」

 

 急に叫んで倒れ込んだヨロイニキに驚いた二人が何事だと尋ねるが、心ここに有らずのヨロイニキは何も反応せず、荒い呼吸を繰り返していた。

 

(あの反応とこの感覚、間違いない! ただの高レベル黒札じゃない、ありゃ修羅勢だ!)

 

 転生者俺たちの中で、理由は様々なれど戦いに長け、戦いを好み、戦う事が目的となった者達。

 どう考えても下手にちょっかいをかけて良い相手ではない。

 警告だけで済ませてくれたのなら、それを幸運として大人しく引き下がるのが賢く正しい。

 だが

 

 

(それでも……それでもオレは! あの素晴らしい尻をどーしても見てぇんだよォォーーッ!!)

 

 

 心の中の魂の絶叫であった。

 ぐううう、と膝をついて地面をダンダン叩きながら唸るヨロイニキにサスケニキとクロマニキが魔眼でも食らったのかと困惑していた。

 

(どうすれば……どう……すれば……誰か、誰かオレに教えてくれ、道を示してくれー!)

 

 必死に考えても良い案など全く浮かばず、誰でもいいから教えてくれと悩むクロマニキの脳内に2m以上の巨漢が現れ、天啓が如く告げた。

 

 

 ――何事も暴力で解決するのが一番だ――

 

 

(いや誰だよ!?)

 

 全然知らない健康の二文字も目映いガスマスクを付けた赤い装束のゴリラみたいな巨漢に思わずツッコむクロマニキ。

 サスケニキならレッドゴリラ=サン!マスター・レッドゴリラ=サン!と叫んでいただろうがヨロイニキにそこまでニンスレの知識はなかった。

 

(暴力で解決って百パー勝てない相手に暴力でどーせいと!? そもそも勝てたとしてもどうすんだよ! この勝負オレの勝ちださあ尻を見せろって命令すんの!? もしくは気絶させてズボン脱がせてから尻を拝めと!? どっちも色んな意味でシャレじゃすまんし下手せんでも前科つくわボケェ!!)

 

 脳内で全力でツッコみながら頭を抱えるヨロイニキ。

 チクショウ流石オレの脳内だ、バカしか出てこねえよと嘆くヨロイニキの脳内に今度は一冊の書物が現れる。

 

 表紙に書いてある題名は『葉隠』

 

 日本でも有名な武士と武士道について記された本である。

 ヨロイニキも一応読んだ事はある。

 

 子供の頃、便秘になったサスケニキが青木まりこ現象*3を狙って図書館に行くのに無理やり付き合わされた際、サスケニキがトイレに行き、クロマニキがカーマ・スートラを読もうとして司書さんにお説教された結果ヨロイニキ一人が残されてしまい、その間に読んだのだ――但し、漫画版の葉隠であったが。

 

 

 ――武士道といふは死ぬ事と見付けたり――

 

 

 本から厳かな雰囲気で伝えられる言葉にヨロイニキは再び困惑した。

 

(どういう事? 死んでどうすんの? 死ぬほど尻見たいけど、死にたい訳じゃないし、死んだって尻見れないだろ?――!!)

 

 何かに気付いたヨロイニキは目を見開いた、そう、それはまさしく天啓であったのだ。

 

「やはりゴリラより侍の方が頼りにされていた 今回のでそれがよく分かったよ葉隠感謝」

 

 そう呟いてヨロイニキが立ち上がる。

 その瞳と空気はまるで今から決闘へと向かう侍の如く。

 

「――うおおおぉぉぉオオ!」

 

 雄叫びと共に前方の崖の様な坂へと走り出すヨロイニキ。

 

「おまえ何やってるんだヨロイニキーーッ! 崖ダイブはともかく理由(わけ)を言えーーッ!」

「ホントに何があったんですか!? ガチで魔眼食らったんですか!? ジャスト一分で悪夢(ユメ)を見せられてんですかー!?」

 

 後ろからの幼馴染二人の声も無視して崖の様な坂を鵯越(ひとよりごえ)の逆落としの如く――馬に乗ってないので猿みたいな、というか猿そのものな動きで全力で駆け下りていった。

 

 

 

 ヨロイニキ、彼は三馬鹿ラスの中で最も熱き心と蛮勇とも言える勇壮さの持ち主であった

 

 

 

 と、格好良く言えばまあそう言えない事もないかもしれないが、要は三人の中で一番考えなしで、その場の思い付きで動いて痛い目を見るタイプのバカである。

 

 

 

 

 

 

 他に人のいない山道をのんびりと歩くキノネキとその相棒で珍しいバイク型のシキガミ・エミール。

 久しぶりの山梨支部の景色を楽しみながら偶には自らの足で歩くのも良いかと日向ぼっこも兼ねての散歩を楽しんでいた。

 

『普段からもっと気を付けなきゃ駄目だよ。キノは可愛いんだから』

「分かったからもう勘弁してよエミール」

 

 まるで母親のような物言いの己のシキガミと先程から繰り返されるお説教のような注意に苦笑しながらキノネキは応える。

 

 突如感じた視線。

 修羅勢にしてガンスリンガーにしてスナイパーでもあるキノネキが自身に向けられた視線に気付かない訳もなく。

 ただの視線なら警戒しつつも無視したかもしれないが、その視線に――まあ実に分かりやすい邪なモノを感じた所で軽い警告をしたらあっさりと視線が途切れたのでそこでおしまい。

 と、思ったら先程のばーんに何をしてるのか尋ねてきたエミールに説明したら日々の彼是も含めたお説教が始まってしまったのだ。

 

「うお~~!!」

 

 だが、今回はエミールの方が正しかった。

 

 まあ注意していたらバカとの接触が避けられたか、というと疑問ではあるが。

 まるで親子か姉妹みたいなやり取りをする主とシキガミの邪魔をする無粋な叫び。

 遠くから聞こえる声と近づいてくる気配に振り返ったキノネキとエミールは揃って目を丸くした。

 

 狙撃手の鋭い目に映るのは先程こちらを見ていた相手と同じ気配の男性?がこちらへ一直線に駆けてくる姿。

 武士や甲冑に詳しくないキノネキでも分かる程、彼方此方の甲冑を寄せ集めた鎧*4を更にギリースーツ風にした物を纏った一目で黒札と確信出来る珍妙な格好であった。

 

 キノネキとて危険な女の一人旅をする身、与太者の相手は慣れっこだ。

 また山梨支部で見た目と年齢で様々なちょっかいをかけられた事も何度もある。

 

 故に覚醒した故の万能感や傲りから、警告された事で激昂したよくいるゴロツキ・チンピラの類と考えたのだが。

 

(敵意や殺意は感じない。でもこれは……必死というか、決死? 何か凄い覚悟してる?)

 

 予想したものとは違う雰囲気でこちらに全力疾走してくる相手に困惑しながらも、修羅勢としての経験は意識せずとも即座に迎撃出来る態勢を取り、エミールもキノネキをサポートする位置を取る。

 何時でも腰の愛銃を抜き撃ち可能なキノネキ目掛けてまっしぐらに進むヨロイニキ。

 

「とおあーっ!」

 

 互いの顔がはっきりと見える距離まで近づいた所でキノネキが声を掛けるより早く、ヨロイニキが地を蹴り跳び上がった。

 

(奇襲!?――いや、こっちまで届かない)

 

 即座に反応し咄嗟に銃を握るがこれはこちらには届かず、途中で地面に落ちると判断し発砲はまだ控えるキノネキ。

 そして跳躍したヨロイニキはキノネキの読み通り、彼女の手前の地面に水泳の飛び込みのような態勢で接地、のち前転からの――

 

 

「すんませんでしたーー!!!」

 

 

 ――見事なジャンピング&スライディング土下座をぴったりとキノネキの目前で決めたのであった。

  

「……」

 

 色々と予想や想像を完全に外された事態に何も言えないまま固まるキノネキ。

 修羅勢としての、スナイパーとしての観察眼が、無駄に洗練された一連の動作が何度も何度も練習を繰り返した上でのものであると、全く要らない情報を伝えてくるが無視する。

 

(……わざわざ謝る為に追っかけてきたって事は、悪い人ではないのかな? 格好からしても変わってる人ではあるんだろうけど)

 

 目の前の土下座する珍妙な鎧武者にそんな思いを抱くキノネキだが、目の前のバカは更に想像の上をいった。

 がばっと勢いよく頭を上げると、短刀を取り出し鞘を抜く。

 突如抜き身の刃物を持ち出した事にキノネキが警戒するより再び早くヨロイニキが叫んだ。

 

 

「腹を切ります!!」

 

 

「えっ、ちょっ! ええっ!?」

 

 いきなりの切腹宣言に完全に混乱するキノネキ。

 

(え、何でいきなり切腹!? 覗きを指摘されたのが恥ずかしくてもう生きていられないって事!? でもそれなら最初から覗きなんて! あ、そのつもりはなかったけど偶々目に入ったとか? けどならあの分かりやすい邪な視線は――)

 

 混乱した頭の中をぐるぐると様々な言葉や感情が回る中、それでも自殺未遂を止めようとする良い人なキノネキだが。

 

「ちょっと待って! 命と身体は大切に! 覚醒者なら大丈夫かもしれないけどそれでも軽々しく――」

 

 

 

「腹斬った後意識を失うまでの間だけでも――――どうかその素晴らしい尻を見せてください!!」

 

 

 

「――は?」

 

 目の前のバカは更にキノネキの想定の遥か斜め上を二段飛ばしで駆け上がった。

 

 ――陰腹――

 

 主君への忠義を絶対とする武士道において、その主君を諫める際に予め腹を切っておき、死ぬまでの時間で諫言を行うという切腹の一種。

 また『葉隠』においても死の覚悟を常に持つ事によって生死を超えた境地に到達し、武士としての分を落ち度なく全うできると説いている。

 

 まあ本来の意味は置いておくとして、ここに至るまでのバカの思考の転換をまとめると。

 

 覗いて見るのは無理だ!→よし正々堂々正面からいこう!→普通に頼んでも断られるに決まってる!→ならば命がけでいけばワンチャンある!?

 

 といった流れになる、取り合えずレッドゴリラ=サンと山本常朝氏*5にバカは腹切って詫びるべきであろう。

 

「生尻見せてなんてゼータク言いません! 見たい見たくないでいったらメッチャ見たいけど! でもズボンの上からで十分です! 切腹でもアウトなら心臓刺すんでそっから死ぬまでの間でいいっす! どうかお願いし――」

 

 

 

 エミール の ぶちかまし! 超会心の一撃!! バカを はるか かなたへ はねとばした!

 

 

 

 エミールの全身全霊を込めたその一撃は最早ぶちかましというレベルではなく、ライダーブレイクを名乗っても差し支えないレベルの破壊力。

 

 エミールの纏う怒りのオーラは西の守護者・広目天が背後に見える――のではなく、小型バイクに窮屈そうに乗る広目天が見える程であった。

 

 如何なる技法によるものか、正面からぶち当てたにも関わらず高速で回転しながら飛ぶヨロイニキ。

 その回転によるジャイロ効果によってまるでライフル弾のように高速、かつまっすぐに地面と平行のまま彼方へと吹っ飛んでいき、鎧姿のバカはキノネキ達の視界から消えた。

 

 

『一ミリたりとも気にしなくて良いよ、キノ。寧ろ忘れよう、今すぐに』

 

「……ああ、うん。それはちょっと、いやかなり難しいかな」

 

 

 憤懣遣る方無いといった様子のエミールに、まだ立ち直れてないキノネキは何処か茫然としたままそう答えるしか出来なかった。

 

 

 

「「……」」

 

 そしてそんな一部始終を隠れて見ていたサスケニキとクロマニキ。

 

「あのバカ、バカだバカだとバカにしてきたが」

「ええ、あそこまで大バカ者だとは」

 

 銃弾と化して消えていった幼馴染をバカと罵る二人。

 しかし、その表情は口ほどには悪意が込められてはいなかった。

 そして二人はヨロイニキの消えた方向へと静かに敬礼の姿を取る。

 

 言葉もなく、涙もなく、ただ無言で、命をかけた大バカ者な幼馴染への男の(うた)を送った。

 

「ええと、君らさっきの人と一緒に居た二人だよね? 一体どういう事か聞いてもいい? 罰ゲームか何かだったの?」

 

 無論キノネキが二人に気付かない筈がなく、訳が分からないといった顔で尋ねるキノネキと、奴の仲間かと今度は何時ものポーズでバイクのシートの上に浮かぶ将門公のオーラを放つエミールに、バカ二人は隠れ場所から飛び出すと先程のヨロイニキのものに劣らぬ美しいジャンピング土下座を決めたのであった。

 

 

 ――バカ共説明中――

 

 

「……」

 

 バカ二人にさっきのバカの事を説明され、今度はキノネキが背後に宇宙猫のオーラを背負う。

 シキガミ設計の為に悪魔しょうかんを隠れて見ていた、ここはまあ分かる。

 こんだけ距離取って山中に隠れてやる時点で理解し難いが、全く分からないって事はない。

 

「それが何がどうなったらボクの前で切腹するって流れになるのかなあ……」

 

 が、そこからの一連の流れは全くの意味不明であった。

 

「多分だけどこっそり覗くのが無理で、じゃあ正面から堂々とお願いして見ようと考えたんじゃあないかと……」

「で、そのままだと断られて終わりだから陰腹して命懸けで頼めばいけるかも、と思ったと思われます」

 

 二人とも生まれた頃からの幼馴染なだけはあり、ヨロイニキの考えをほぼ百%正確に推測出来ていた。

 

「いやホント申し訳ない。あのボーイッシュ狂いのバカがご迷惑をお掛けして……責任とってあのバカと横の奴がきっちりと罰を受けますので」

「はい、修羅勢の方と問題を起こす気はありません。あの尻フェチな愚か者と隣のニンジャモドキが腹を切ってお詫び致します」

 

 自分達は巻き込まれただけであのバカにはこちらも困ってるんですオーラ全開でヨロイニキともう一人に全責任押し付ける気満々のバカ二人。

 

 キノネキは二人の格好――ギリースーツ風の忍者装束とローブ――の時点で多分この二人もさっきの人の同類というか色んな意味でお仲間なんだろうなあと思っていたが。

 

「あー……こっちも別に実害はなかったし……なかったのかな? その人ももう(エミールが)一発入れたし、これ以上どうこうする気はないよ」

 

 土下座したままの二人に何とも言えない顔で、この件はこれまでとするキノネキに、先程のヨロイニキの様にがばっと頭を上げて立ち上がるバカ二人。

 

「さっすが~、高レベル黒札様は話がわかるッ! 」

「どうもお邪魔しました! では失礼致します!」

 

 揃って綺麗な敬礼をビシッ!と決めると吹っ飛んでいったもう一人のバカの方へとだばだばという擬音が聞こえそうな走り方で一目散に逃げ去っていった。

 まだ混乱と困惑が抜けきらない顔のままでキノネキがぽつりと呟いた。

 

「分かってたつもりだったけど……黒札って変わった人も結構居るよね」

 

 

 

『キノ、あれは変わってるんじゃなくてバカっていうんだよ。しかも多少どころかパーフェクトだよ、あいつら』

 

 

 

 そんなキノネキに辛辣にツッコむエミールだった。

 

 

 

 

 

 

 この後、エミールの言う通り忘れてしまおうとしたキノネキだが、知己を得た幼女ネキから大爆笑したバカ三人の話を聞いて、あいつらだとしっかり記憶に刻まれる事となる。

 更に合法ロリ同盟の仲間で盟主の破魔ネキからも連中のやらかしを聞かされ、ああ、自分はまだマシだったんだなあと感慨にひたるのであった。

 

 と、油断したのが失敗だったのか、はたまたフラグだったのか。

 論争する連中こと通称三馬鹿ラスに出くわし、怒りのレミントンM31をブチ込む事になるのは別の(作者様の)話である。*6

 

 なお、連中が北神奈川支部にて塩漬け依頼をやるにあたって――

 

 

「報酬なくていーっす! だから尻観察させて下さいお願いします! シキガミ作製の参考以外にはしませんから! キノネキの見た目のシキガミとか作ったりしませんから! セルフギアス・スクロール使いますから! お願いします!」

 

 

 ――ヨロイニキが再び見事なジャンピング土下座と共にそんなアホな懇願をかました。

 

 色んな意味で固まる雰囲気の中、ガラガラと台車を押しながら残りの三馬鹿ラスが登場。

 台車の上のダンボールから何かを取り出し、よければどうぞ使って下さいと周囲に配る。

 

 何かの正体はM79 グレネードランチャー・暴徒鎮圧用ゴム弾入りであった。

 

 配り終えた所でサムズダウンしながら輝く笑顔で促した。

 

「「――GO……!」」

 

 暫しの間発射音が断続的に響いた後、ボロ雑巾になったバカを二人が台車に乗せて箒とちり取りでゴム弾をちゃんと掃除する。

 

「どうもご迷惑お掛けしました。んじゃ依頼行ってきまーす――おい起きろこのバカ、俺達を巻き込むなってんだ」

「そのM79は良ければそっちで使って下さい。私達じゃ使い道ないので*7――地返しの玉の代金、今の内に財布から抜いときましょう」

 

 ビシッと敬礼した後ガラガラと台車を押して出ていく二人と物言わぬ骸となった一人。

 

 

 北神奈川支部の人々は連中を表す表現――10人中9人が『正直ここまでとは思わなかった』と言うレベルのバカ――を『言葉』でなく『心』で理解したのであった。

 

 

 

 

 

 

 北神奈川支部、相変わらずの華やかなキノネキの周囲だが、現在そこに一つの異物があった。

 携帯用イスに腰掛け、携帯用テーブルにおやつを用意したローブ姿のバカ、クロマニキである。

 邪魔にならないよう近づき過ぎず、さりとて離れすぎもせず。

 そんな絶妙な距離でコンビニで買ったアップルパイとミルクティーを味わいながら目の前の光景を花畑を見つめる少女の様な瞳で眺めていた。

 

「……ふふふふふふ、良いですねえ。いやあ実に素晴らしい」

 

 クロマニキはき〇ら系のキャッキャッウフフなソフト百合からガチハードコアな〇ズも大好きな男である。

 

 そんな彼にとって北神奈川支部はまさに楽園、英語で言うとパラダイス。

 

 楽園観察に塩漬け依頼を片付けた後の諸々の身体と精神の疲労もみるみるうちに癒えていく。

 目の前の微笑ましい光景と合わせればコンビニスイーツも行列の出来る有名店の極上スイーツの味わいだ。

 無論嫉妬の感情もあるが、それがアンビバレンツな感傷になり、それもまた良きアクセントで刺激であるとクロマニキは楽しんでいた。

 

「まーたやってんのか。お前仕舞にゃお巡りさん呼ばれて捕まっても知らんぞ」

「だよなー。テメー警告なしで銃ぶっ放してもOKが出るレベルの面になってんぞ」

 

 そんなクロマニキにツッコみ入れる別行動だったサスケニキとヨロイニキ。

 

 

「うっさいですよ。女の子達がキャッキャッウフフしてるのを見ると自然に顔がにやにやしてしまい『自分ちょっとヤバいかも?』と思ってもなお止められない、それが男という生き物なのです」

 

 

「まあその意見には賛同せざるを得ん――個人的にはセーラー服とか制服だったら青春とか日常、あとクロスオーバー感マシマシでなお良しだったな」

「あー、クロスSSとかお祭り系作品の違う作品のヒロイン大集合ってやつな。ならオレはブルマー&体操着求む、スパッツも有りで」

「ブルマーですか……保護活動をしてる黒札有志達も居るのでこの世界では前世の様に滅んでしまう悲劇は起きないと思いますが」

 

 未来の為の自然保護、環境改善を論ずる様な雰囲気でブルマーの未来を語る三馬鹿ラス。

 勝手に人のアップルパイを摘まむ二人を睨みながらクロマニキがともあれと結論付ける。

 

 

「楽しそうな女の子達を眺めて私達が幸せになる事は何の問題もない訳です。やはり世界は美しく、キャッキャッウフフする女の子達はより美しい。つまり女の子は素晴らしいのです! 女の子万歳!」

 

 

「「女の子万歳!」」

 

 そんなアホ言ってた三人だが何故ここに来たか思い出したサスケニキがクロマニキに告げた。

 

「――っと、それはそれとしてだ。ちっと人手が居るんだ、お前も手伝え」

「ふむ?」

 

 ペットボトルのミルクティーを飲み干すとクロマニキは興味深そうに顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

「よーし並んで順番に持ってけ、一人一つだ。ちゃんとあるから取り合いすんなよ。コラそこ! 二度並びはアウトだ、覚醒者ナメんなよキッチリ全員覚えてんだからな」

 

「一回やったら交代だぞ、場所空けてやれ。自分のが年上だからもっかいやらせろだぁ? じゃオレのが年上だから交代しろ、文句ねえな?――おい泣くな! 別の用意してやっから!」

 

「はい、これを回してこの数字の数コマを進めて下さい。え、この漢字の読み方? これはいぶしりゅうと読みます。え、壊した?……何しました? 普通こんな壊れ方しませんよこれ!」

 

 

 北神奈川支部には近くの市町村だけでなく、キノネキの実力を頼って海外の名家等も寄らば大樹の陰として多数の避難民が合流している。

 そして避難先での生活を整える為大人達は奔走し、その間子供を残すしかない。

 また不幸にも両親を失い孤児となった子供達も居る。

 

 そういった子達をまとめて集めた託児所兼孤児院みたいなとある一角、そこで子供達相手にわちゃわちゃしている三馬鹿ラスの姿があった。

 

「……正直、どうなる事かと思ったけど、ちゃんとやってるね」

 

 そんな光景を見て意外そうにキノネキが呟いた。

 支部内の子供預り所みたいな場所が急病やトラブルで人手が足りず、どこからかその事情を知った三馬鹿ラスがガキ達の相手をしてやろうかと提案。

 その提案にキノネキは非常に警戒心を露わにしつつも自分達はショタ趣味はない、ロリ三原則は鋼鉄の掟等と主張するこいつらは、バカではあるがそっち方面で実際やらかす程アレではない*8と考えて許可を出し、その上で自分も念の為ついて行ったのである。

 

 三バカがいきなりピンクパンサーのテーマをかけながらドリフコントな入室した時は正直後悔しそうになったが。

 

 そして何時ぞやのヒゲダンスや、ヴァシュロンダンス*9、変なおじさんや更にドジョウ掬いも踊った――何故かドジョウ掬いは西洋人から拳法だか何だか分からずパニックを起こされていたが。

 更に元になったのが外国(スウェーデン)の曲で動きが単純――両手を頭の上にくっつけながら腰を振る――だから子供にも踊りやすいだろうとウッーウッーウマウマ(゚∀゚)を子供達に教えて一緒にノリノリで踊り、その頃にはすっかり打ち解けていた。

 

「外国の子供も多いっていうから、トーク系だとどうしても色々文化とかツボが違って難しいなと」

「なら見た目とか雰囲気で笑える踊りとか変な動きやる方がウケがいいかなーって」

「後は真剣に、且つ本気でやる事です。子供向けと子供だましは似て非なるものですから」  

 

 そう語る三馬鹿ラスに変なとこで真面目だなこいつらと思ったキノネキはきっと悪くない。

 

 そして予め用意していたのか、それとも何処からか調達してきたのか、お菓子やおもちゃ、ゲーム機やボドゲで子供達と遊んでいた――ドカポンシリーズやテラフォーミングマーズ*10を取り出した時は再び後悔しそうになるも、こいつは流石に止めとこうとしまったので安心したが。

 

「まさかあの連中が子供達と真面目に遊びに付き合うなんて、世の中分からないものだね」

 

 雨の中で捨て猫を拾う不良を目撃したような気分になったキノネキだが楽しそうな子供達の様子に嬉しい誤算だったと笑顔で遊ぶ子供達を眺めていた。

 その隣で自称キノネキのお姉ちゃんことトゥルーデネキ*11が何とも言えない顔で呟いた。

 

「……いや、あれは」

 

 

「おおい! れいほう独占はルール違反でアウトだぞ! CPU限定か持ち回りでの回数制限ありにしとかないとリセットボタン押しという禁断の手に出るやつが出ると――ってだかられいほう使うなってーー!」

 

「決算マスか、よし人生最大の賭けやるぞ! え? 今でも二位なのにって? 毛利元就も天下を取るつもりでやって初めて地方統一が出来ると言ったんだぞ。一位を目指さなきゃ二位にも成れねーんだぜっと……ぬあーーーーっ!!」

 

「待ちなさい! スーパーズルと不死英雄戦士(アンデッドヒーロー)相手にニコレ使用はリアルファイトになりかねません! ただでさえバリア嵌め禁止というガーヒープレイヤーなら一度は言った合い言葉持ちのキャラです、貴方達にはまだ早い!」

 

 

「……いや、何でもない」

 

 あれは子供に付き合ってるんじゃなくて精神年齢とか精神レベルが同じで普通に一緒に遊んでるだけでは?と思ったトゥルーデネキだが口にはしない。

 お姉ちゃんとして、心優しい大事な妹の優しさ故の勘違いを指摘したりはしなかった。

 

 覚えてる人は少ないかもしれないが一話にて述べた通り、前世と今世の記憶の間で苦しんだり、子供コミュニティに馴染めず&やらかす*12といった事も無く、素のままでふつーに子供に混じってバカ扱いされながら生きてきたのがこいつら三馬鹿ラスである。

 

 兎も角これなら大丈夫と思ったキノネキは、広がった支部の担当範囲の異界潰しに出かける事にした。

 

 そして、キノネキはこの判断を後に心底後悔する事となる。

 

 このバカ共が悪意はなくとも、時には善意からでもやらかす――例として幼女ネキに善意でいらん事言って八極拳叩き込まれた――連中だという事を忘れてフリーにするべきではなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 夕暮れの街中をキノネキがエミールに乗って走る。

 異界は何れもキノネキから見れば低レベル、潰すだけならなんでもない仕事である。

 

 だが数が多いのと、キノネキでは潰すだけでその後の地脈、霊脈の後始末が出来ず、割と早く異界が復活してしまうという問題があった。

 

 幾ら楽な仕事でも賽の河原の如く無意味な作業の繰り返しは色々と精神的な疲労が嵩む。

 そんな残業帰りのOLの様な精神状態で支部に戻ったキノネキだが、支部の中に入ると声を掛けられた。

 

「キノおねーちゃんおかえりー!」

 

 まるで待っていたようにおかえりを言った少女はキノネキがただいまを返す間もなく身を翻すとおねーちゃん帰ってきたよーと叫ぶ。

 すると彼方此方からおかえりーと言いながら多数の子供達が一斉にキノネキの前に集まる。

 そんな微笑ましい光景に思わず口元に笑みを浮かべるキノネキ。

 

 前世で見た、読んだ作品のヒーロー達が子供達の声援があればどんな困難にもヒーローは負けないと言っていた気持ちが、少しだけ分かった気がしたキノネキだった。

 

 と、ここまでなら良い話であったのだが。

 

 パタパタと子供達が整列していく。

 そして先程の少女が一歩前に出ると、叫んだ。

 

 

 

「おねえちゃんをたたえよ!!」

 

 ドンドコドンドコ

 

「「「たたえよ!!」」」×たくさん

 

 ドンドコドンドコ

 

「キノおねえちゃんをあがめよ!!」

 

 ドンドコドンドコ

 

「「「あがめよ!!」」」×たくさん

 

 ドンドコドンドコ

 

 

 

 両腕を高く掲げながら指を交差させるポーズと共に叫ぶ子供達に、完全に時間も思考も停止するキノネキ。

 ただただ茫然としたキノネキの視界の中でたたえよ、あがめよと繰り返しながらポーズを取る子供達の後方に真剣にドラム缶を打ち鳴らす三馬鹿ラスの姿が映り、キノネキは正しく現在の状況の原因を理解した。

 そしてキノネキは愛銃引っこ抜いてどっかの鉄な華の団長の如く叫んだ。

 

 

 

「――何やってんだバカァ!!!」

 

 

 

「わーーっ!! キノネキ、それ実弾! ゴム弾じゃないよな!? しかも異界帰りってことは悪魔用の特別弾だろそれぇ!」

 

「言いたい事は、いや! 遺言はそれだけかぁ!!」

 

「たのむ! 話をきーてくれ! チビ達にキノネキに日頃の感謝を伝えたいって頼まれたんだ! なんかそーいう歌とか踊りないかって!」

 

「それが何で映画の頭おかしい奴の部下の頭おかしい連中のあんな儀式教える事になるんだぁ!!」

 

「誤解です! 大元のネタはそっちですけどこれはそれを元にした礼号組の方ですから! その証拠にドラムじゃなくてドラム缶叩いてましたから!」

 

 とまあ、色んな意味で疲れも何もかも吹っ飛んだキノネキだが、子供達の喜んでくれるかな?という視線と頑張って練習してたという三馬鹿ラスの証言、そしてバカ共の協力の元子供達が一生懸命に作ったというちっこい神輿っぽい物を前に、キノネキに抗う術はなく――

 

 

 

「「「おねえちゃんをたたえよ!!」」」×たくさん

 

 ドンドコドンドコ

 

「「「キノおねえちゃんをあがめよ!!」」」×たくさん

 

 ドンドコドンドコ

 

「「「おねえちゃんわっしょい!!」」」×たくさん

 

 ドンドコドンドコ

 

「「「キノおねえちゃんわっしょい!!」」」×たくさん

 

 ドンドコドンドコ

 

「「「わっしょっしょーいっ!!」」」×たくさん

 

 ドンドコドンドコ

 

 

 

 子供達が頑張って担いだ神輿っぽい物に乗せられたキノネキ。

 バカ共がドラム缶を打ち鳴らし、子供たちがわっしょいわっしょいする、微笑ましいと言えない事もないかもしれなくもない、そんな光景。

 

 

 

 そして神輿っぽい物の上で正座して顔を両の掌で隠してぷるぷる震えるキノネキは、顔どころか耳や手といった見えている肌、その全てが真っ赤っ赤であったとさ。

 

 

 

 後で三馬鹿ラスがキノネキに校舎裏、もとい支部裏に呼び出されて盛大且つ凄惨にシメられたのは言うまでもない。

 

 こうして三馬鹿ラスの北神奈川支部のでの日々はドッタンバッタン大騒ぎ、というより七転八倒に終わったのであった。

 なお、この時の映像は北神奈川支部のキノネキの義妹・義姉の間で保存され、探求ネキといった一部の親しい黒札にも届いたというが、バカ共は関わっていない。

 

 

 

 

 

 

 そして連中が山梨支部に帰った後で、目を離していた際の彼是が他にもあった事が分かった。

 軽いものは日本の歌を教えてもらったという外国の子供の歌う歌――うれしいひなまつりが明かりを付けるのがぼんぼりでなく爆弾だったり、お料理行進曲がキャベツでなく忍者ハットリやキテレツだったり等。

 

 更にある程度の年齢の男子達にエロ本・AV・エロゲーまではいかずとも、グラビア写真集と映像、18以上推奨のゲームをこっそり見せる、または贈るといった所業も発覚。

 

 結果怒りのキノネキが山梨支部のバカ共の所に乗り込むも――

 

 

「十年にも満たなくとも先に世に生を受けた男として、あいつらに女は周りに居るだけじゃない、世界に女は沢山居るんだという事を教えてやりたかった――いや、教えてやらなきゃならないと思った。覚悟は出来てる」

 

「ちょっとでも将来の脳破壊やBSSの被害を減らしてやりたかった。別の方法があったと言われるかもしれねえけど、バカなオレ達じゃあんなやり方しか思いつかねえし、出来なかった。後悔はしてねえ」

 

「間に挟まろうとする大罪人が未来で生まれるのを防ぐ為でした。正しくもなく、間違ってもいたのでしょう。それでも誰かがやるべき事で、ならば誰かにまかせず自分達がやろうと考えました。逃げはしません、受け入れましょう」

 

 

 ――予想に反し、逃げる事なく山梨支部のオシラスにて白装束を着て正座して磔柱を用意して待っていた。

  

 キノネキからすると訳の分からない妄言による言い訳でしかなかったが、一部の黒札から『やり方は兎も角やりたかった事は分かる』と執り成しが入るという三馬鹿ラス絡みの件としては異例の事態が発生。

 最終的にまた塩漬け依頼をこなす事で銃殺刑は勘弁するという結果に落ち着いた。

 

 

 

 そして山梨支部にて裁判結果を紙に書いて走って知らせる人の如く『執行猶予』*13と墨痕鮮やかに書いた紙を持って執り成してくれた黒札に頭を下げるバカ共と、釈然としない顔で少し頬を膨らますキノネキと、苦笑しながらキノネキの頭を優しく撫でる探求ネキの姿があったという。

 

 

 

 その後また北神奈川支部にて塩漬け依頼をするついでに時折子供達の遊び相手をした三馬鹿ラスだが、しっかりと監視が付けられた。

 

 ちなみに、子供達のバカ共の印象は『遊んでくれる面白いけどなんか残念なお兄ちゃん達』であったという――子供とは大人が思うよりもずっと物事を良く見ているものである。

 

 

*1
Lilyala様作。【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 価値観の相違 より。これらの話を知ったバカ共なりの警戒

*2
唯一こいつらが持つ本霊由来の異能。三人の中で裏切者(脱童貞)が出た際、場所も含めてニュータイプの如く閃く

*3
書店の様な本が沢山ある所に足を運んだ際に突如こみあげる便意の事。名前はこの内容を投稿した女性のペンネームから取られた

*4
今更だがこいつの鎧は複数の有名武将の鎧をパーツ事に使ったごった煮キメラ状態

*5
『葉隠』の口述者

*6
山親父様作。【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅 三馬鹿ラスとの出会い

*7
依頼の際捕まえたダークサマナーとそいつと協力関係だった犯罪組織相手の押収品

*8
実際ガチでそっち方面でやらかす様なら間違いなく幼女ネキあたりが殺っている

*9
銃撃多重奏RPG「エンド・オブ・エタニティ」にてビッグマグナムを持つ男ヴァシュロンの名前から取られたダンス。三社コラボ作品のPXZでも披露され多数の腹筋を抹殺した

*10
1回遊ぶだけで平気で5時間とか掛かる超上級者向けボドゲ

*11
山親父様作。【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅 に登場する黒札。元ネタと同じく?妹大好きで生粋のロリコン。描写がないので元ネタみたいにパンツ一丁で空を飛ぶのかは不明

*12
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ よくいる?ダメダメ系転生者俺達

*13
『無罪』と書くのは気が引けるし流石にキノネキに悪いからとの事




―以下どうでもいいバカ共の設定―

・ヨロイニキ
 正々堂々や正直が必ずしも美徳ではない事を存在で証明してるアホ。
 北神奈川支部の塩漬け依頼は頑張ってやる、依頼頑張れば何時かOK貰えるかもと思ってるから。
 ノリはクリスマスプレゼントに高い玩具頼んだら親に却下され、その後家の手伝いをはじめるガキんちょ。
 あくまで理想のシキガミへの参考でキノネキ本人をどうこうって気はない、尻しかみてないって事なので逆により一層酷い気もする。

・クロマニキ
 今更だが百合スキーがお好きでしょなので北神奈川支部に来ると見守りおじさん状態になる。
 嫉妬もするけどそれはそれでスパイスだよ!と楽しむ業の深い奴。
 ヨロイニキの次に北神奈川支部の塩漬け依頼にやる気を出す。
 どこでやってもしんどいのが塩漬け依頼なのでそれなら楽しみがある所でやりたいと語る。
 テンションアップの影響か見学後は魔法の威力が上がっている模様、やる気は大事。

・サスケニキ
 別にやる気になる理由が無いのでブーブー言いながら二人に付き合っている。
 ただヨロイニキ、クロマニキでも前衛後衛と揃ってしまうので、キツいが二人でやってやれない事はないので最悪置いてかれるので文句言いつつ付き合う。
 一人だけレベル下になって二人にマウント取られるとか死んでも御免な上にヘタレなので置いてきぼりは断固拒否の構えである。

 基本的に三人共常に忍者装束、鎧、ローブに覆面と面皰と帽子で顔の見えない格好をしている。
 顔が見えないのに笑ったり怒ったりが分かるのは幼馴染同士だから――ではなく、初対面の相手でも分かるぐらい雰囲気とかオーラが分かりやすいから、あと言動。
 子供の相手は三人共以外と上手い、子供と同レベルだからなのかは不明。
 電脳異界の子供悪魔の遊び相手も多分いけるがその場合悪魔からの印象は『楽しく遊んでくれる玩具、ただしバカ』みたいになると思われる。



 実はこの作品の元は二話にて山梨支部でバカ達が遊んでいたシーンのボツの一つでした。
 後の山親父氏の作品で登場した際ボツにしなきゃ良かったなあと思ってたら山親父氏が難しいと彼方此方で評判の三馬鹿ラスの登場を頑張ってくれたのでボツにしてる場合じゃねえと復活させました。

 最初はエミールにヨロイニキがぶっ飛ばされるとこまでだったんですが、書きながらバイク旅を読み直してたらある話のタイトルを見たら後半のシーンのネタが降りてきてこうなりましたw
 改めて山親父氏、内の連中のご利用とキノネキを使わせて頂き、そしてちょっと弄りすぎたかもしれませんがありがとうございます。

 それでは最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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