【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。   作:貧弱一般メガテンプレイヤー

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 他の作者様の作品で登場するウチのバカ共を見て、頭の中の三馬鹿ラスが「自分達だって24時間、365日Y談してる訳じゃない」と抗議してきたので投稿します。

 時系列的にはガイ連参加直後→名も無き黒札時代→コテハン命名→通称・三馬鹿ラス確定な感じですが、元よりその辺ふわっとなアンソロジー的作品ですのであまり気にせずお読みください。
 あと一話より居ることだけ書かれていたある存在が今回ようやく初登場します。

 マカーブルさんから頂いたイラストです。

 『こっそりグッジョブしているちひろネキ』
 
【挿絵表示】



6

 ――吾輩はシキガミである。名前はまだない――

 

 などと思う程自我を持っていない彼は簡易型シキガミ。

 ぱっと見鬼太郎の一反木綿みたいなシキガミがふよふよと山梨支部を移動している。

 彼は支部内の見廻りを命じられた巡回用シキガミ。

 元よりショタおじの膝元たる山梨支部内にてショタおじが把握出来ない事等殆どなく、見廻りの必要などなさそうである。

 

 しかし、人とは実情より目に映るものを信じる者が多い生き物だ。

 

 また覚醒の後に本霊の影響で精神が不安定になる者、常人を超えた力を手にしてタガが外れる者。

 それらに安心感を与える為、一線を越えるのを踏み止めさせる為、目に見える存在は重要である。

 加えて只でさえ俺たちの誰よりも忙しい、ショタおじの仕事を少しでも減らせるのならば減らすべきであろう。

 そういった理由から彼は巡回用シキガミとして、命じられた範囲の命じられた仕事を淡々と熟していた。

 

 まだ早朝と言ってよい時間、軽く身体を動かす場所として、山中に少し開かれた場所を彼が通り掛かると、三つの人影が走って周回していた。

 それだけ見れば早朝からランニングに励む修行熱心な、または運動好きな黒札であろう。

 

 

 

 ただし、その走り方が前傾姿勢をとりつつ胸を張り、上半身が全くと言っていいほど上下動しないままで、すごい速度でステップを刻むように走る――所謂、十傑集走りと言われるものであった。

 

 

 

 暫くぐるぐると周回していた学校のものと思われるジャージ姿の三人は、内一人が足を止めると残り二人も急停止の後、一人の元へUターンする。

 

「おいどうしたよ急に止まって。後お前結構あちこち身体が揺れてんぞ」

「はぁはぁ、ひぃふぅ、ふー……いや、ぶっ続けで走るの流石にキツイですって、そりゃ身体もブレますって」

「んだよなっさけねえなあ、それでも人間超えた覚醒者かよ、自慢の物理反射(テトラカーン)が泣くぞ」

 

 根性なしめと嘲る二人に貧弱もやし扱いされた一人が怒りの声で抗議を行う。

 

「うっさいですよ! 私は貴方達身体を張るしか能のない脳筋とは違うのです! 私は頭脳と魔法で勝負する知略型なんですよ!」

「現在使える魔法が一つもない奴が一体どうやって勝負するんですかねえw それにお前だって十傑集走りすんの賛成しただろうが」

「そーそー、覚醒して人間超えた今のオレ達にふさわしー走り方つったらこれっきゃねえって決めたじゃねえかよ」

 

 偶然ガイア連合を知り、三人揃って参加した名も無き黒札にして、幼馴染同士の彼らはショタおじのハードな方の修行でその日の内に覚醒に成功。

 その翌朝である現在は覚醒により人を超えた身体能力の把握と制御に努めていた。

 

 

 ――と言えば聞こえはいいが、実際は凄いよ人を超えたよマンマミーア!俺達超人になったぜイヤッフー!と興奮して揃って早々に目を覚まし、その人を超えた能力に浮かれてアレコレお試しして遊んでいただけである。

 

 

「まあ所詮本能的に呉用タイプなお前じゃそんなものか。そっちの李中と合わせて身の丈にあった振る舞いを今から身に着ける事だな」

「誰が『私はなんと言う過ちを』が定台詞の軍師ですか! ちょっと自分が素早いからと調子にのって!」

「おいなんでオレが素晴らしき人に真っ二つにされた奴なんだよ! それならせめて周通*1の方にしろや!」

「へーん、悔しかったら俺を捕まえてから言うんだなー、まあ絶対無理なんですけどねw」

 

 ウザさ全開のドヤ顔でシュタタタと走り出すそのスピードは確かに他二人では追い付けそうもない程で。

 こちらを揶揄う様にどっかの格ゲーボスのげんじんしんの如きダカダカダカと走る姿にギリギリと歯を食いしばる二人。

 

 そして俺なら分身の術だっていけるかも!とシュバババと高速反復横跳びを始める始末、だが――

 

 

「あっ」

 

 ――解けた靴紐に気付かず、踏んづけてバランスを崩し――

 

「あ゙~~~っ!!」

 

 ――勢いが止まらず横っ飛びにそのまま近くの森に突っ込んだ。

 

 

 そして森の奥の方からあ゙~、という声と何かがゴロゴロと転がる音が遠ざかっていった。

 

 

「……なんか転がっていってねーか? あいつ」

「……あの森の向こうは坂でしたね、そういえば」

 

 暫しの沈黙。

 

「きっと何処かの何かに引っかかりますよ」

「あいまいだなあ、こいつぅ」

 

 笑顔でスルーする事にした二人であった。

 

 

 

 ――十分経過――

 

 

 

「流石に遅くねえか? あいつ何時まで転がってんだよ」

「確かにこれは……でも一体どうして……あ」

 

 何かを思い出したように一人が呟く。

 

「森の向こうの坂、抜けた先は下りの山道でしたよね。で、その先に曲がり角と崖があった筈」

「でも曲がり角まで大分あるし、曲がり角のすぐ先が崖じゃあねえぞ。途中に木柵もあったし」

 

 ここで二人は脳内シミュを開始した。

 

 説明しよう!生まれた時からの幼馴染同士である彼らはお互いがやりそうな事を脳内でシミュレーションし、予想する事が出来るのだ!

 なおその正解率は約五割程、当たるも八卦当たらぬも八卦というやつだ!

 

 つまりあんまり当てにはならないぞ!

 

 

 

 ――シミュレーション開始――

 

 

 

「あ゙~~~っ!」

 

 悲鳴と共にゴロゴロと坂を転がり落ちる一人のバカ。

 

「ぐっ、な、なんのこれしき! ここで……こうだ!」

 

 途中で何とか態勢を立て直し、地面を蹴って前転宙返り。

 しかし勢いを殺しきれず、再び前のめりに転ぶ所をもう一度飛び上がって宙返り。

 そこでバカは気付く。

 

(! これ前世で見たアレが出来るんじゃ……!)

 

 そのまま再び前方へ宙返り、次にジャンプしてヘリコプターの様に横に高速回転。

 

 

「ハハハ! イケる! これイケるぞ! 『〇ーリンガール転がってみた』をリアル再現! しかも映像加工もなしに自力で!」

 

 

 そして止まるどころか自分から勢いをつけて前へと回転、側転、ローリングソバット、空中逆立ち回転蹴り、捻りを加えた宙返り、バク転と様々な技を繰り出していく。

 

 最後に大きく跳び上がり屈身前方宙返りで高速回転しながら着地とポーズを決め――

 

 

「あ」

 

 

 ――ようとしたら、下に地面がなかった。

 

 

 再現に夢中になった結果、途中で木柵に気付かぬまま飛び越えてしまい、更に前方の崖にも全く気付かず、大ジャンプしてしまったバカ。

 如何な覚醒者とはいえ足場が無くてはどうにもならず――

 

 

「うーぁ うーぁ ぅーぁ……」

 

 

 ――昔のストファイのKOみたいな悲鳴と共に、アワレなバカは真っ逆さまに崖から落っこちてしまったのでした。

 

 

 

 ――シミュレーション終了――

 

 

 

「「……」」

 

 再びの暫しの沈黙。

 

「オイィィィ! 何やってんだアホォ! よりにもよって覚醒した次の日に、しかもこんなんで命落としてどうすんだお前ぇ!」

「序盤での蘇生費用や蘇生系アイテムは高価なんですよ! こんな理由で借金背負ってスタートとか冗談じゃねーってんですよ!」

 

 練習した十傑集走りも忘れる程の大慌てで、崖の方へと全力で向かう二人でしたとさ。

 

 幸い?にも脳内シミュよりジャンプが低かった結果、崖へ張り付くようにしてしがみ付いたバカを発見。

 人を呼ぼうとしたり、脱いだジャージを結んでロープ代わりにしようとしたり、崖を降りて引っ張り上げようとして危うく自分が落ちかけたりとわちゃわちゃしてる間に巡回用シキガミの連絡を受けたシキガミが到着。

 

 無事バカは助けられたものの、ちひろさん含む先輩黒札達からがっつりお説教を食らう事となり、これがこいつら――後にサスケニキ、ヨロイニキ、クロマニキのコテハンと三馬鹿ラスという通称を全部他者から与えられる三人組――の記念すべきガイア連合での初のやらかしと初のお説教となったのである。

 

 そして山梨支部にやって来たその日の内に厳しいモードの修行を決め、次の日修行で覚醒、そしてその翌朝にこの騒ぎという、この連中のソードマスターヤマトも真っ青な超高速展開を知らされたちひろ達は絶句。

 

 

 居合わせたちひろさんを含む全黒札達は端的に『とんでもないアホが入ってきてしまった』という思いで一致したのであった。

 

 

 なお彼らの考えは半分外れで半分正解だった。

 

 正解は予想通りこいつらがとんでもないアホだった事。

 

 

 外れはこいつらが『正直ここまでとは思わなかった』というレベルの想像を超えるバカだった事である。

 

 

 

◇ 

 

 

 

 ある日の朝、そろそろ皆が起き出し、朝食や活動を始める時間。

 巡回用シキガミが見廻りを行っていた。

 そして彼が支部に複数ある少し身体を動かせる広場に通りかかると、自転車に乗る者が居た。

 どこにでもあるママチャリをチリンチリンと走らせる、とんがり帽子とローブ姿。

 

 

 

 しかし、ハンドル部分に微動だにせず腕を組み直立する覆面ニンジャが直立しており、更に後ろの荷台部分にもキメラ鎧の鎧武者が同じく腕組み姿勢で背筋を伸ばして立っていた。

 

 

 

 そんな珍妙な三人乗りの自転車がかなりのスピードで走っている。

 そのままのスピードで曲がろうとした自転車がかなり傾き、ニンジャの方は人間離れした体幹とバランス感覚で耐えるが、耐えきれなかった鎧武者側は咄嗟にジャンプして地面に着地。

 それを機に自転車も止まり、ニンジャの方もハンドルの上から飛び降りた。

 

「おいおい、そのぐらい持ちこたえろよ。それじゃ何時まで経っても次のステージに行けないぞ」

「しょーがねーだろ。お前と違ってこっちは鎧着てる分色々大変なんだよ、バランスとか」

「こっちとしてはさっさと次の段階行って欲しいんですけどね……せめてバイクにして欲しいです」

 

 ぜいぜいと荒い息を吐くローブの訴えをスルーしてニンジャが続ける。

 

「腕組み直立で乗り物に乗って登場というのはニンジャとしては避けて通れない(わざ)の一つだからな。バイク、車のボンネット、モーターボートの舳先、セスナの上……そして何時かは新幹線の上やジャンボジェットの翼の上でも決めてみたいもんだ」

「それ絶対最低でも修羅勢クラスのレベルかステがいるでしょうが。大体それならなんでこいつもやってるんです? そんな真似する鎧武者や侍とか居ましたか?」

「なに言ってんだテメー、てめえは鎮三山の黄信*2を忘れたのかよ。ばっちり車の上でポーズ決めてただろーが」

 

 百歩譲ってもあれは武将や将軍であって武士でも侍でもないだろと脳内でツッコむローブ。

 

 二人を乗せた自転車を延々と漕がされて疲労した身で言うだけ無駄なツッコみはしたくなかった。

 

「ほら続けるぞ。俺達は練習が出来て良し、貧弱モヤシは日頃の運動不足が解消出来て良し、誰も損しない」

「そーそー、これぞまさしくウィンウィンってやつだな、そらがんばれがんばれ」

「……win-winとか言う奴って大抵向こう60こっち40ぐらいにした上で平等・寛大って顔してくるから滅茶苦茶腹立つんですよね」

 

 ぽつりと深い恨みを込めて呟くローブだが、二人に引っ張られて自転車に乗せられて、再びチリンチリンと漕ぎ始める。

 

 そしてヤケになったローブは全力の立漕ぎで自転車を猛スピードで走らせた、だが――

 

「おいバカ! 何やってんだ! 前見ろ前ー!」

「はよ止めろってヤベえ! 茂みん中ツッコむ―!」

 

 ――その結果前方への注意が疎かになり、ニンジャと鎧武者の悲鳴で慌ててブレーキを全力で握りしめた。

 

 バキィ!

 

 が、覚醒者の全力に普通のママチャリが対応出来る筈もなく、握撃くらったブレーキレバーが砕け散る。

 

 そしてその瞬間、ローブは即座に判断を下した。

 

 

「脱出!」

 

 

 自転車から横に飛び降りて受け身を取りながら地面をごろごろと転がるローブ。

 

「運転手がみんなより先に離れるか普通は!?――アイエエエ!?」

「こ、このすくたれ者ーっ! イ゛ェアアアアアアア!」

 

 そして残されたニンジャと鎧武者は中途半端なブレーキとローブの脱出で宙を舞った自転車と一緒に、仲良く二人で南斗人間砲弾になって茂みの中へと突っ込んでいった。

 

 ふう、と額を拭って帽子を被り直す様子には幼馴染を見捨てた罪悪感はなく、寧ろ新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝の様な爽やかな面持ちであった。

 

 まあ腐っても覚醒者の二人がこの程度の事でどうにかならないという確信もあっての事ではあったが。

 

 しかし、

 

 

 ――ドンガラガッシャン!!

 

 

 想像したよりずっと下の方から響いた想像したよりずっと大きい何かの破砕音に思わず固まるローブ。

 

「うわあぁあっ!? んだもしたん! (ない)があった!?」

「――こぉの出歯亀どもがぁ! ウチの身体はゆーちゃんのもんで、ゆーちゃんのゆーちゃんはウチのもんや! いてこましたるー!」

「え、盛るペコされてドエロイナナコ先生!?――って待って、ちょっと待って話をひでぶっ!」

「誤解っす! これは不幸な事故で決してワザとでもノゾキでもな、あべし!」

 

 遠くから聞こえるそんな声に固まっていたローブはぽつりと呟いた。

 

「……ああ、この茂みの先は崖で、その下は第四か第五かの宿舎がありましたね、そういえば」

 

 そして暫しの沈黙。

 

「――さて、シャワーを浴びて汗を流したら朝食にしましょう。運動した事ですし、今日はベーコンエッグ、ワカメのみそ汁、さんまの塩焼き、山盛りのキャベツでご機嫌な朝飯といきましょうか」

 

 

 遠くから聞こえる前世で見たアニメキャラと同じ声の怒号と幼馴染の悲鳴と少年とも少女とも聞こえる制止する声、更に殴打音や何かの破砕音が激しく響くのを全力で聞こえない振りをして、少しの冷や汗と共に借りている宿舎へと早足で去っていった。

 

 

 そして不幸にも朝からおっぱじめようとしてた柴犬とおサルさんな夫婦の宿舎の部屋の天井をぶち抜いて落下したニンジャと鎧武者は出歯亀と勘違いしたおサルさんな嫁によってボコボコにされた。

 理由が理由なので説明しても信じてもらえず、そのまま警備室に突き出されるも、一部始終を見ていた巡回用シキガミの報告によって事故と認められたのである。

 

 

 まあそれはそれで勿論説教は食らったし、加えて黒医者ニキ*3に『少しは控えろと言っただろ!』と被害者夫婦が説教されるのに巻き込まれてしまい*4、肉体的にも精神的にもふらふらになってから解放された。

 

 

「遅かったですね、こちらは先に朝食は済ませましたよ」

 

「……斬新な挑発だな。どうやら余程徹底的にボコられたいと見える」

「てめーに今日を生きる資格はねぇ!!」

 

 そしてご機嫌な朝飯後のこぶ茶をきめる満足気なローブに全力で殴りかかり、乱闘騒ぎを起こして今度は三人揃ってお説教されたのであった。

 

 

 更に覚醒者も泊まる宿舎の材料が通常の物だけの筈もなく、弁償するのは財布的に厳しい三人はその代わりに皆が嫌がる面倒な依頼――汚染されてしまった霊樹を浄化する為、時折霊樹から生まれる悪魔を退治する、但し何時悪魔が湧くかは不明なのでずっと見守る必要がある上、浄化が終わるまで繰り返し――をやる事で勘弁してもらう。

 

 なお依頼内容を聞いた三人は『悪魔版ドモホル〇リンクル?』と感想を漏らし、現地では絶対言わない様にとがっちり釘を刺されたのであった。

 

 

 これがやらかした後、罰として塩漬け依頼を熟すという現在まで続くこの連中のサイクル、その始まりの第一歩である。

 

 

 

 

 

 

 とある日の午前、皆が職場や学校に居る時間帯。

 巡回用シキガミが見廻りを行っていた。

 外での作業や一時的に車や納品された物を置くのに使う開けた場所にシキガミが通りかかるとそこに三つの人影があった。

 

 一人は真剣な様子で何時でも飛び出せる様に軽く腰を落とした姿勢のニンジャ、サスケニキ。

 

 一人はこちらも真剣な様子で一抱えもある石というより岩を抱えた鎧武者、ヨロイニキ。

 

 最後の一人はやっぱり真剣な様子でじっとそんな二人を見つめる黒魔導士、クロマニキ。

 

 そしてシキガミは経験による学習に従い、暫し見回りを止めて三人を監視する事を選択する。

 

 暫しの間沈黙が続くが、次の瞬間、クロマニキが叫んだ。

 

「ヨロイニキ!」

「キャオラッ!」

 

 クロマニキの声に合わせる様に、ヨロイニキが掛け声と共に抱えていた岩を全力で投げる。

 約四十五度の角度で投げられた岩が宙を舞う。

 そして岩も睨む様に見ていたクロマニキが再び叫ぶ。

 

「サスケニキ! 今です!」

「イヤーッ!」

 

 気合と共に駆けたサスケニキが助走をつけて、空の岩目掛けて飛び上がる!そして狙い通り、サスケニキは宙の岩の上へと見事着地!

 

 ゴウランガ!

 

 未熟とはいえ超人的ニンジャ跳躍力と身の軽さあっての見事なニンジャのワザマエ!

 空を飛ぶ岩の上で足を開いて腰を落とし、背中に手を回した姿勢を維持するサスケニキ。

 そして岩が地面に落下する直前に再び跳躍し、ずしんと地面に落ちた岩の横へと着地した。

 

 

「――ヤッター! 遂に成功したぞ! 桃〇白の柱飛び!」

 

 

「朝からずーっと繰り返してようやく一回! 長かったなあ……」

「でも一度成功すれば後は問題点を洗っていくだけの作業です。大きな一歩ですよ」

 

 イエーイとハイタッチとハグで互いの健闘と成功を讃え合う三人。

 ヨロイニキの発言通り、彼方此方の地面が凹んでおり、何度も岩を投げたと思われる跡が残っていた。

 

「まあ柱じゃなくて岩で、しかも投げるのと乗るのとタイミング図るのはそれぞれ別の奴がやるという蒼天のソウラのメド〇ーア状態なんだけどな」

「しょーがねーだろ。柱投げんのは流石に無理だしそもそもどーやって柱用意すんだよ。原作通り勝手にどっかの柱抜いたら説教だけじゃすまねーぞ」

「サスケニキには岩を投げる程の力のステはなく、ヨロイニキには岩に乗れる程の速はないですからねえ」

 

 今後の改善点を話し合い始めた三人は車座になって座り込む。

 

「今のままだと滞空時間が短すぎてあんま練習にならねえんだよな。飛び乗った次の瞬間には飛び降りなきゃならん」

「あのなあ、ふつーあのサイズの岩持って投げれる時点でおかしーんだからな? 修羅勢をデフォにされても困るぞ」

「まあリアルで桃白〇と同じ事するなら所謂壁越えしなきゃ無理でしょうからねえ。その辺は将来の課題という事で今出来る事から考えましょう」

 

 うーん、と腕組みして現状でも出来る改善策を考える三人。

 真剣な雰囲気だがやってる事は普通にネタ以外の何物でもない。

 

 黒死ネキに笑ってはいけないシリーズみたいな人生と評されるのは伊達ではないのだ。

 

「では、乗るのを岩から軽い物にするのはどうですか? 軽ければそれだけ高く、遠くまで投げられるでしょう」

「んー、でも軽い物だと乗った時点で勢いなくなって落下するんじゃないか?」

「取り合えず試してみりゃいーんじゃね? ダメならちょっとずつ重いモンに変えてきゃいーだろ」

 

 そして立ち上がったヨロイニキが試しにコレでどうだと外倉庫の傍のロッカーから竹ぼうきを取ってくる。

 取り合えずやってみるで意見がまとまった三人は再び先程の配置につく。

 

「さっきよりずっと軽いですからその分スピードも速いです。なので今回は先にサスケニキが動いてヨロイニキが合わせる形でいきます」

 

 そう告げるクロマニキに二人が了解とばかりにサムズアップを返して準備完了。

 

「イヤーッ!」

 

 ニンジャシャウトと共に跳躍するサスケニキにタイミングを合わせる様にヨロイニキが竹ぼうきを振りかぶる。

 

「チェストォ!」

 

 そんな掛け声と共に竹ぼうきを投げるヨロイニキ。

 

「あっ」

 

 しかし、朝から岩を投げ続けたヨロイニキの腕は疲労が知らず知らずの内に溜まっていた。

 また岩から軽い竹ぼうきになった事で、角度や力加減も変えねばならず、それは繊細な作業であり、疲労によるズレは無視出来ないものである。

 

 つまり何が言いたいかと言うと、これは不幸な事故であった。

 

 

 

 三人の脳内に、呼び出しベルの様な、または仏具の(りん)を鳴らした様な音――言ってしまうとチーンとか、キーンみたいな音が彼らにだけ聞こえた様な気がした、気がしただけであるが。

 

 

 

 受け身も取れずに地面に墜落し、両手でとある場所を押さえて声も出せずに死にかけの芋虫みたいに蠢くしか出来ないサスケニキ。

 

 如何な覚醒者とはいえ、弱点はあった。

 

 まあ修羅勢クラスなら弱点じゃ無くなってるかもしれないが、少なくとも現在のサスケニキにとっては弱点であった。

 

「……ブホッ、す、スマン! くぐっ、スマン、ワザとじゃ、ぶぶっ、ねえんだ、くっ!」

「ぷっ、だ、くくく、大、ぐふっ、丈夫、です、ぷふーっ、か? ぶふふっ!」

 

 そんな哀れで情けない、でも笑えるサスケニキの姿に必死で吹き出すのを我慢しながら無事か尋ねるヨロイニキとクロマニキ。

 

 言うまでもなく、サスケニキは激怒した。

 

 未だ消えぬ痛みも吐き気もそれ以上の怒りと憎悪が塗り潰して、激情のままに身体を駆動させる。

 

「き、貴様に……わ、笑う、資格が、あ、あるとでも……思ってんのかコノヤロー!!」

「ぶべらっ! はべらっ! もぐらっ!」

 

 跳躍からの連続キックがヨロイニキの顔面に炸裂!

 

 なおベノクラッシュみたいな連続蹴りというよりはスマブラのヨッシーのばた足キックみたいな、あんまりかっこ良くない見た目なのはご愛嬌。

 

「ひ、人の顔面サッカーボールみたいに蹴りやがってテメー! 謝ったじゃねえか!」

「あれが謝罪なら中指押っ立てても平和のサインで通じるわ! そもそも謝ってすむならイザナギとイザナミだって別れてねーんだよ!」

 

 こうして忽ち始まる殴り合い。

 速度で勝るサスケニキが一発殴られる間に三発殴り返し、丈夫さで勝るヨロイニキが十発の打撃を一発の反撃でチャラにする。

 

 なんていう技術を用いた格闘戦だったのは最初だけ。

 

 すぐに顔を抓り、髪を引っ張るな子供みたいな取っ組み合いに切り替わり、掴み合ったままごろごろと地面を転がって離れた後は石の投げ合いに変更。

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

「トゥ! トゥ! ヘァー!」

 

 呆れた顔のクロマニキが見守る中、気合の入った掛け声と共に石を投げるバカ二人。

 サスケニキがニンジャの如く相手の投げた石をキャッチして投げ返せば、ヨロイニキは顔以外への投石は防御力に物を言わせて石を投げるのに集中して対抗する。

 

 そんな状況が続くと埒が明かないと判断した二人は同時に行動を変える。

 サスケニキは先程自分にジゴクを見せた竹ぼうきを拾い、ヨロイニキは拳より大きい割と人が死ねるサイズの石を鷲掴む。

 両者が思い切り振りかぶる中、静観していたクロマニキが遂に業を煮やして叫んだ。

 

 

「あーもういい加減にしなさい! 何時まで続ける気ですかビーハイヴ*5に十文字ワーグナー!!」

 

 

「「なんだとコノヤロー!!」」

 

 クロマニキの言った禁句(タブー)に即座に反応して身体毎向き直るバカ二人。

 

「「あっ」」

「えっ」

 

 しかし身体毎向いてしまったせいで既に完全に投擲モーションに入っていた腕は最早止まらず、竹ぼうきと拳大の石は、クロマニキ目掛けて全力で放たれた。

 

 そしてクロマニキの顔面に石と竹ぼうきが命中する――

 

「テトラカーン!」

 

 ――直前にクロマニキの最初に覚えた魔法にして切り札、テトラカーンが発動。

 

 物理反射によってそのままのスピードで竹ぼうきと石がそれぞれ今度はサスケニキとヨロイニキ目掛けて飛んでゆく。

 

「イヤーッ!」

 

 サスケニキは咄嗟に全力でのけ反り、古代ローマカラテ技、ブリッジにより回避!ワザマエ!

 

「鉄塊!」

 

 ヨロイニキは強固な十字(クロスアーム)ブロックで正面から防ぎ逆に石を粉砕! ゴウランガ!

 

「危ないでしょうが! 私は貴方達みたいな体力バカでも今更頭打ってもバカになる心配がないお頭とは違うんですよ!?」

 

 バカ共の暴挙に怒鳴りつけるクロマニキ。

 しかし禁句を言われたサスケニキ、ヨロイニキの怒りは既に有頂天になっていた。

 

 

「モスキート=サンまでは許そう、だがビーハイヴ呼ばわりだけは許さん! イマカクト=サンめ、ハイクを詠め。カイシャクしてやる!!」

 

「またその名前でよんだな今郭図のくせに! 明日の朝刊載ったゾテメー!!」

 

「そっちこそ人を『出ると負け軍師』扱いするなって何度も何度も言ってるでしょうがアホンダラァ!!」

 

 

 禁句を言われてヒートアップした三バカ共が三つ巴の取っ組み合いを始めようとしたその時。

 

 

 ――ガシャァァァン!!

 

 

 遠くから響いたガラスの派手に割れる音にぴたりと動きを止める。

 

 音のした方向を向くと、間違いなく先程テトラカーンで跳ね返された竹ぼうきが飛んでいった方と一致している事を確認した三人。

 暫しの沈黙の後、サスケニキが誰ともなく尋ねた。

 

「……確か、あっちにあるのって」

「……事務所、ですねえ」

「……今日、ちひろさん居たっけ」

「……居ましたねえ、確かに」

 

 サスケニキの問いかけにクロマニキが答え、再び沈黙が続く。

 そして互いに掴み合っていた胸倉を離すと、三人は無言のまま周囲の片付けに入る。

 あちこちの穴ぼこを埋めて、岩を邪魔にならない様に除けて、手分けして自分達が使う前の状態に戻す。

 

「――よし! ではこれより我々はレベリングの為、異界へのアタックに向かう! これは現時点では〇白白の再現は難しいとの判断故の結論である!」

「「サーイエッサー!」」

 

 ビシッと起立したサスケニキが宣言し、ヨロイニキ、クロマニキもビシッと敬礼して返事する。

 

「確実にレベルアップする為、異界内での厳しい活動が予想される! 故に我々は()()()()異界に向かう! いいな!?」

「サーイエッサー! オレたちは朝から異界に居ました! ここで岩投げたりしてませんでした!」

 

 ヨロイニキの発言に頷きながら更にサスケニキが続ける。

 

「また、今回の任務は長丁場となるだろう! 具体的には数日程! その覚悟を持って臨む様に!」

「サーイエッサー! その頃には多分ほとぼりも冷めてる筈、いえ何でもありません!」

「その通り、我々はレベリングに励むだけだ! その間のアレコレには一切関係がない! いいね!?」

 

 何か言いかけたクロマニキを睨んで発言をシャットアウトさせたサスケニキは締めとばかりに告げた。

 

「ではこれよりオペレーション『グリーン・メイビー・イアーロブハント』を開始する! 各員の奮闘を期待する!」

 

「「サーイエッサー!」」

 

 ビシッと揃って敬礼の後、三人はその場から全力で駆け去っていった。

 

 

 

 なお、ずっと見ていた巡回用シキガミの報告により、バカ共は異界入口前にて取り押さえられ、作戦は始まる前から失敗に終わったのでした。

 

 

 

 そしてこの後の話だが、まず何が起きたかと言うと、飛んでいった竹ぼうきは窓をブチ破って事務所にエントリー。

 

「あぎゃぁぁあああ!?」

「きゃああああ!? な、何が? ほ、ほうき? え、だ、大丈夫ですか!?」

「うわー……完全に刺さってる……ぷっ」

「お、おい! 笑ってる場合か! 早く医務室へ!」

「いやでも動かすと不味くないか? 下手に動かして箒がもっと刺さったら、くくっ」

「でも素人が抜くのも危ない様な……けどこのままも流石にちょっと、ぶぷっ」

「じゃあ医務室いって誰か呼んで来い! 早く!……うぶっ」

 

 受付にてちひろさんと話していた黒札の尻に命中、見事に穴に突き刺さるという悲劇が発生。

 

 

 事前のサスケニキの金的と同じく食らった側は悲惨だが、見てる方は爆笑モノというコントの如き事態に事務所は色々な意味で大騒ぎとなったのである。

 

 

 当然、被害者の黒札は激怒。

 捕まって連行され神妙に並んで正座する三バカに対し、これでもかと言わんばかりの罵倒とセットで賠償を要求した。

 しかし未覚醒である黒札のマジギレではおバカでも覚醒者の三人が怯え怯む筈もなく、罵倒混じり、というより十割罵倒の説教もスルースキルカンストのこいつらには蛙の面に小便。

 ショタおじ製のシキガミを譲渡しろ等という無茶な賠償請求も、元々持ってないこいつらにはどうしようもなく、あまりに無茶な要求は逆にちひろさんから注意される始末。

 

 仕舞には被害者なのに注意を受けた事や態度は神妙でも全く堪えた様子のない三人と上手くいかない諸々で苛立ちが頂点に達した黒札が三人を殴ってしまった。

 結果、ちゃんと謝罪して反省した態度*6の相手、しかも学生をいい年した成人男性が暴行するという図になってしまい、喧嘩両成敗でお互いに賠償なしというちひろさんの判決が下され、件の黒札にとってはまさしく踏んだり蹴ったりな顛末となった。

 

 無論未覚醒者のパンチなど、一番打たれ弱いクロマニキすらノーダメだったのは言うまでもない。

 

 そして三バカにとっては被害者の黒札の説教などあくまで前座。

 本命という名の逃げたかった恐怖のちひろさんの説教*7&ペナルティのお時間――と予想してたのだが。

 

 

 

「……なんか、あっさり終わったな。今回随分と罰が軽いと思わねえか?」

「だよなー。悪けりゃ塩漬け依頼、良くてもオレらで支部丸ごと大掃除とか覚悟してたぜ」

「確かに変ですよねえ。窓だけなら兎も角、軽いとはいえケガ人まで出したのに」

 

 不思議そうに歩くバカ三人。

 恐れていたペナルティは何故かなく、ちひろさんのお説教こそあったものの、それすら途中で中断――事務所に来たエネルニキが、どうしてもちひろさんが必要な案件があると連れて行ってしまったのだ。

 

 罰や説教を受けたい訳ではないが、理由も分からず釈放されるのもそれはそれで色々と座りが悪い。

 

「そういえば、なんか事務所の雰囲気が変じゃなかったか? 派手に窓割ったのに明るいというか良い事あったって感じだったような」

「あー……確かに〇ーソン名誉店長ネキ*8も苦笑してたし、なんでか知らねー黒札からも親指立ててグッジョブされたぞ」

「いやロー〇ンは要りませんから――言われてみると、ちひろさんも説教の時、何処か雰囲気とか空気が何時もより柔らかかった様な……」

 

 思えば、被害者の黒札以外、あんまり怒ってなかった様な……?

 

 暫くそうやって首を捻っていた三人だが、考えても仕方ない、あんま怒られなくてラッキー!と割り切った。

 

 

 

 考えても分からない事は考えない、それより面白い事を考えよう。

 

 三人の決めた転生者五つの誓い、その一つである。*9

 

 

 

 後でエネルニキにエネルニキの連れた外国の、南米から来たという女の子と一緒に夕飯を奢って貰ったのだが、食い終わる頃には件の黒札*10の事も、事件の事もすっかり忘れた三バカなのであった。

 

 

 

 

 

 

 ある日の午後、昼食後で眠気が出てくる時間帯。

 巡回用シキガミが見廻りを行っていた。

 やや中心部から外れた位置の、空いてる事の多い屋外訓練場の一つ、その傍を彼が通りがかった時である。

 

 

 

「ぬわーーーーっっ!!!」

 

 

 

「「メ、メディック! メディーック!!」」 

 

 火達磨になったサスケニキが転がり回り、ヨロイニキとクロマニキが大声で衛生兵(メディック)と叫びながら大きな布でバサバサしたり、バケツで水をぶっ掛けている。

 

 更に近くにはアガシオンとレンタル用の空を舞う大蛇の姿のシキガミが待機していた。

 与えられた命令通り緊急事態として医務室や警備室への連絡を行おうとしたシキガミだが、彼が連絡する前に火は消火され、待機していたアガシオンが回復魔法で治療を行うのを確認し、問題なしとして通報を止めた。

 

 そして新しく与えられた命令『あの三人が何かしてるの見つけたら観察、後で報告する事』に従い、見回りを一時中断する――なお止める様にとは命令されていない。

 

「こんのバカヤロー! 自信満々だからとやらせてみたらこのザマか! 忍城の水攻め並みの大失敗じゃねーかよ!」

「何をするかと思えば背中にブフストーン仕込むだけとかアホすぎるでしょう!? 何でそれで上手くいくと思ったんですか!」

 

 治療されて横たわるサスケニキを覗き込みながら思い切り罵倒するヨロイニキとクロマニキ。

 よく見れば確かにクロマニキの言う通り、黒焦げになったサスケニキの背中の一部が氷塗れになっていた。

 

「い、イケると思ったんだ……真司とドラグレッダーの絆なら、きっとやれる筈だと……」

「いや、ドラグレッダーいねーから。ただのレンタルした空飛ぶヘビのシキガミだから」

「だーれが真司ですか。貴方とはバカ扱いされる事以外何一つ共通点ないでしょうが、烏滸がましい」

 

 ダメージが残ってるっぽいサスケニキの呻きながらの発言を、分別が面倒なゴミを見る目で情け容赦なく一刀両断する二人。

 仮にも傷を負った幼馴染へと向ける目でも言葉でもないが、これが三馬鹿ラスのデフォである。

 

「ま、ヘタレで口だけのソイツにゃ無理なのは分かってた事だ。ここはオレが決めるぜ!」

 

 そう言って立ち上がったヨロイニキが堂々と宣言する。

 

 

「見事、ドラゴンライダーキックを、オレが成功させてみせようじゃねーか!」

 

 

 ドラゴンライダーキック。

 

 仮面ライダー龍騎の主人公、城戸真司こと仮面ライダー龍騎の必殺技(ファイナルベント)で、作中でも成功率・撃破率共にほぼ100%という文字通りの必殺技。

 その内容は相棒たる無双龍ドラグレッダーと共に空中に飛び上がり、ムーンサルトからキックの姿勢に移行、ドラグレッダーの火炎放射を背に受けて身に纏いながら跳び蹴りを見舞うというカッコ良くも中々に無茶なシロモノである。

 

 

 三馬鹿ラスはドラゴン型は人気故高いので、妥協して空飛べて火を吐ける大蛇型のシキガミを借りてドラゴンライダーキックの再現にチャレンジ。

 一番手のサスケニキは背中にブフストーンを仕込むだけという浅すぎる浅知恵で挑み、見事に火達磨+背中が氷漬けという無残な結果となったのであった。

 

 二番手のヨロイニキは自信に満ちた顔でレンタルシキガミの元へと向かった。

 

 

 

「ぬわーーーーっっ!!!」

 

 

 

「「メ、メディック! メディーック!!」」 

 

 火達磨になったヨロイニキが転がり回り、サスケニキとクロマニキが大声で衛生兵(メディック)と叫びながら大きな布でバサバサしたり、バケツで水をぶっ掛けている。

 再び待機していたアガシオンが回復魔法で治療をする中、黒焦げ且つ水浸しになったヨロイニキを残りの三馬鹿ラスが大声で詰問した。

 

「バカかオメーは!! 俺と全く同じ事して同じ結果になってんじゃねーか! 何でそれで自信に溢れた面出来んだよ!? 最早バカどころの話じゃねーぞ!」

「何で今さっきと同じ事やったんです!? ブフストーンをアクアストーンに変えただけじゃないですか! 納得いくようちゃんと説明しなさい!!」

 

 二人の怒りの質問にずぶ濡れ&黒焦げのヨロイニキは気まずそうに眼を逸らしながら、ぽつぽつと答える。

 

「い……いやそのー……さっき失敗したのはこいつが無能だからで、オレがやったら上手くいくんじゃねーかなって……」

「誰が無能じゃクラァ!! そしてその根拠のない無駄な自信はどっから湧いてきた! 母親の腹に置いてきた脳みそ取りに行くついでに返してこい、この砂漠バカ!*11

「んだとテメェ! 最初にフレイザードの出来損ないになった能なしが何いってやがる! テメーこそ今すぐ額にバカと刺青いれてこい! アホでもいいぞ!」

 

 互いに胸倉掴んで睨み合うバカ二人に、最後のバカが冷ややかに吐き捨てた。

 

「バカ同士仲が良くて結構。ついでに仲良く刺繍でもして、そのよく回る舌を縫い付けるのをオススメします」

 

「「ああん!?」」

 

 ガンを飛ばしてくる二人を嘲笑いながらクロマニキが自信たっぷりに告げた。

 

「さて、前座すら務まらないバカ共の出番はここまで。いざ真打ちの登場といきましょうか」

 

 そしてクロマニキがガサゴソと手荷物をまさぐりながら何をするのか話しだす。

 

「そもそも火炎耐性もないのに火炎放射食らって平気な訳ないでしょう。そんな事も言われなきゃ分からないとは情けない通り越して笑うしかないです。アハハハハハ!」

 

 そう言ってホントに笑うクロマニキを今にも殴りかかりそうな顔で睨むサスケニキとヨロイニキ。

 そして取り出した服を見せながらクロマニキが説明を始める。

 

「しかしながら現在私達の手持ちにそこまで強い火炎耐性の装備はありません。しかしこのキャッチブラウン*12は衝撃耐性があり、幸いあのレンタルシキガミは衝撃系魔法も使えます」

 

 何をするか分かっていない様子の二人をバカを見る目で見ながらクロマニキは更に詳しく説明を続けた。

 

「どうやら最後まで説明しないと分りませんか、全くどうしようもないですねえ。このキャッチブラウンを装備してシキガミに衝撃魔法を使ってもらい、その衝撃を利用してキックをするんです。そして更に足の裏にはアギストーンを仕込んでおく、これなら問題なく実行出来るでしょう」

 

 自信満々に語るクロマニキと、思い切り不満顔だがそれならいけるのでは?な雰囲気のサスケニキ、ヨロイニキ。

 

 

 なお、その方法なら実行は可能かもしれないが、肝心のドラゴンライダーキックの再現という当初の目的から明確にズレてしまっている事をツッコむ者はいなかった。

 

 

 既に三人の意識は、どんな形でも成功して残りの二人の上に立つというマウント合戦に完全に向いてしまっていた。

 

「貴方達はそこで見ていなさい。頭脳と格の違いというものを教えてあげます」

 

 満を持してトリを務めるクロマニキがレンタルシキガミの元へと向かった。

 

 

 

「ぬわーーーーっっ!!!」

 

 

 

「「メ、メディック! メディーック!!」」 

 

 火達磨になったクロマニキが転がり回り、サスケニキとヨロイニキが大声で衛生兵(メディック)と叫びながら大きな布でバサバサしたり、バケツで水をぶっ掛けている。

 三度待機していたアガシオンが回復魔法で治療を開始する。

 

「よく考えなくても俺らの中で一番運動オンチのお前が上手くやれる訳ねえじゃねえか! 自分を客観的に見れねえのかド級のモヤシ、ドモヤシが!」

「小細工した分一番悲惨なことになってんじゃねえかよ! こーの生びょーほーは大けがの元できじょーのくーろんヤローめ!」

 

 そう、魔特化のステでスキルも魔法系オンリーなクロマニキは覚醒者故の人を超えた身体能力はあっても、それを活かせる運動センスは全く持ち合わせていなかった。

 センスもなく、普段から精々逃げる為のランニングぐらいしかしてない彼に、センスをカバーする程に重ねた修練や経験なんてものがある訳もなく。

 

 ヨロイニキのいう通り、衝撃魔法は衝撃耐性で耐えたものの、キックどころか空中で態勢を完全に崩して吹っ飛び、そのまま地面に叩き付けられた挙句足に仕込んだアギストーンが暴発して火達磨になるという、無残極まりない結果となったのである。

 

「……くっ、私の作戦は間違っていなかったのに……実行するだけの身体能力がない、この身体の弱さが呪わしい!」

「いや、何か不治の病持ちみてえなこと言ってるけど、単にお前が運動不足なモヤシなだけだからな? 世間や世界が悪いみたいな台詞吐いてんじゃねえよ」

「世間はオメ―の親じゃねーぞ定期。そもそもその作戦最初に言ってたらすんなり上手くいってたんじゃねーのか? なんで黙ってたんだよ」

 

 悔し気に地面を叩く焦げたクロマニキに容赦なく事実を指摘するサスケニキと、ツッコみながらもっともな事を聞くヨロイニキ。

 その質問にバツが悪そうな表情でぽつりとクロマニキは答えた。

 

 

「……バカ二人の失敗が続いた所で成功したら、より私の作戦が引き立つと思って……」

 

 

「「どーせそんなこったろうと思ったよ! この畜生!」」

 

「それで結局自分で自爆してたら世話ないわ、このキング・オブ・イディオットめ!」

「そーいうセコい事ばっかしてっからテメーはダメダメなんだよ、この今馬謖! 今趙括! くされ儒者! エセ軍師!」

「貴方達にダメ人間言われる謂れはないってんですよ! この蔡和に兀突骨*13!」

 

 何時もの三つ巴の取っ組み合いを始める烏の如く真っ黒の三馬鹿ラス。

 その横で待機するアガシオンとレンタルシキガミ、そして離れた所から観察中の巡回用シキガミ。

 

 その時、レンタルシキガミと巡回用シキガミがアガシオンを静かに見つめ、その眼差しに気づいたアガシオンと視線を重ねた。

 

 彼らがアガシオンを見つめる瞳は、自我を持たない筈にも関わらずまるで『苦労してるな』『頑張れよ』そう伝えようとしているかの様で。

 

 

 

 そしてそんなシキガミ達の視線を受けたアガシオンは同じく自我がないにも関わらず、人間でいう特大の溜息を吐いた――そんな風に見える仕草で返したのであった。

 

 

 

 取っ組み合いを続ける黒焦げの三馬鹿ラス。

 

 そんな三人を見守るシキガミ達とアガシオン。

 

 そして大空より彼ら皆を分け隔てなく照らす陽気な太陽。

 

 そんなごくありふれた一日の、ごく当たり前の昼下がりの、ごく平凡な三人の日常の、何気ないとある出来事の一幕でしたとさ。

 

*1
全部 ジャイアントロボ 地球が静止する日 より。スパロボにも登場したがロボより人間のが強い&インパクトが上という凄い作品

*2
水滸伝ではなくジャイアントロボ 地球が静止する日の方。あっちも元ネタは横山光輝版水滸伝だが

*3
塵塚怪翁様作。【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法 に登場する黒札。前世も今世も医師という生粋の医師にしてガイ連の誇る凄腕マッドの一角。その能力故に多数の作品に登場するが、同時に多数のいう事聞かない患者に苦労している人

*4
二人とも将来シキガミ手に入れたら絶対同じ事になると確信出来るから一緒に聞いていく様言われた

*5
ニンジャスレイヤーに登場するニンジャでアイサツ中に攻撃するというもはや言葉も出ぬほどのスゴイ・シツレイな戦法を使う。どのぐらいシツレイかというとこれだけ続いているニンジャスレイヤーでそれやったニンジャがコイツ一人しかいないぐらい

*6
見た目だけ

*7
件の黒札と同じく未覚醒だが、彼女の説教と威圧はこいつらもスルー出来ない。寧ろ特効が乗る

*8
skakira様作。【カオ転三次】ヘタレた黒札の奮闘記  に登場する黒札。見た目秋月律子そっくりの転生者。当人は低レベルだが『アイマスの仲間』という黒札の集まりとその繋がりは決して侮れない(大御所のミナミィネキと元ネタのアイマスのアイドル達の万能っぷりと多様性っぷりから)と個人的に思ってたり。

*9
その内容は割と頻繁に変わる

*10
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ 新規で転生者を事務員で雇うメリット に登場するモブ黒札。モブだがあの狩人ニキを引かせたスゴい奴。個人的に例え幼女ネキにボコられても悪い意味で変わらなさそうな凄みを感じる。

*11
その心は?果てしないバカ

*12
真・女神転生4に登場する店売り上半身装備

*13
三国志14にて二人しかいない知力1の武将




―以下どうでもいいバカ共の設定―

・アガシオン
 存在は一話から言及してたが漸く初登場な子。
 見た目は壺に入ったメガテンシリーズそのままの姿、但しドット絵のぷにょっとした感じの可愛い方。

 パーティー唯一の回復魔法の使い手で、PTでの役割は勿論ヒーラー。
 しかしステータスは体が中心で、実はパーティーではヨロイニキの次に打たれ強い。
 これはクロマニキの『回復役から狙うなんてどんなバカでも考える』『多少回復能力が低くても倒れ難い回復役こそが自分達には必要』という意見によるもの。
 同じく『数を増やしても各個撃破されるだけ』という考えにより、三人共同で一つのアガシオンを購入・強化するという形になった――なお、三バカ全員がアガシオンの主は自分だと思っている。

 シリーズまんまの見た目なのはアガシオンを女の子にするのは無理(本編よりそれやると只の賑やかしになるとの事)なので揉めないかと思ったら、ポケモン(サスケニキ)アイルー(ヨロイニキ)ゾイド(クロマニキ)のどれにするかで殴り合いになっても決まらなかったから。
 同様に名前も決まらなかったのでアガシオンが名前の状態、なお呼び方は全員バラバラ。

 扱いは意外にもよく、ちゃんと強化もするし、状態にも気を遣っている――というより三馬鹿ラス達が他二人よりアガシオンの方を大事にしてる(回復役に何かあったら自分が危ないから)と言った方が良い。

 ステやスキル強化に全振り状態なので自我は殆どなく、ロボットやゴーレムみたいな命令に従うのみといった存在――の筈なのだが、時折呆れたような目で三馬鹿ラスを見たり、溜息をつくような仕草をしており、三馬鹿ラスから気のせいか?でも何か変じゃないか?と不思議に思われている。

・サスケニキ
 モスキート=サンと呼ばれてもネタで返すがビーハイヴ呼びはマジギレする。
 以前呼ばれた時は投げっぱなしジャーマンからの無言の容赦ない連続ストンピングを決めた。
 余人には分からぬ拘りがあると思われる。
 アガシオンの事はアー坊と呼ぶ。

・ヨロイニキ
 十文字ワーグナー呼びは絶対許さない、絶対にだ。
 だが割とよく呼ばれるので、そろそろマジで腕の一本ぐらい斬るかと思ってる。
 思ってるが合間合間の大事――幼女ネキに殴られたり、キノネキに撃たれたり、黒死ネキに殺されたり――で毎度有耶無耶になる。
 アガシオンの事はア太郎と呼ぶ。

・クロマニキ
 『出ると負け軍師』は自分に相応しくない固く信じてる。
 物の道理の通じぬ蛮族共に何を言われても、と思おうとしてるが蔡和と兀突骨にバカにされるのはやっぱりムカつくので怒る。
 アガシオンの事はアっくんと呼ぶ。
 当初はアステール(ギリシャ語で星)としゃらくさい(サスケニキ&ヨロイニキ談)呼び方をしていたが、戦闘中咄嗟にアっくんと呼んでからそっちが定着した。



 他の作者様のあとがきで書いてる内に長くなるというのを見て自分だけじゃなかったと安心してしまいました。
 シキガミ嫁いないなら他所の販売用シキガミ買ってカバーするのはありではと思いつつ、こいつらが多数のシキガミ所持とか色々アレな事になりそうとも思ったり。
 特にディストピア様のとこのディスガイア系シキガミこいつらが買ったら何がどうなってもヒドイ事になる未来しか想像出来ないですw

 それでは最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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