【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。 作:貧弱一般メガテンプレイヤー
今回はクロマニキの回となります。
よってエロ・下なネタとは少し違うか?ですが、中々に業の深い感じのアレな内容になりますのでご注意下さい。
またいつも通り時系列その他を無視した外伝やアンソロジー時空とお考え下さい。
マカーブルさんよりまたイラストを頂きました。
ネタバレ防止であとがきに掲載させて頂きます。
「――というわけで、あの呪い合戦は続編を作らせるのに反対する黒札達がプロデューサー呪おうとしたのが発端だったそうだ」
「そいつはまた何つーか……巻き添えくった連中が気の毒っつーか、そこまでやるかってー話だなあ」
「まあ黒札同士でも割と気軽に呪い飛ばし合ってますからねガイ連って。なら現地人相手ならもっと遠慮しない連中も居るでしょうねえ」
とある地方のとある山中。
現地の名家からすれば入れば何人たりとも死あるのみの異界にて。
簡単な霊具と聖水にて作られた簡易な結界(ガイ連と黒札基準で)の中でアガシオンが周囲警戒をする横でのんびり雑談を交わす三人。
近頃とある現地の三人の漁師*1のせいでダメな方やバカな方と頭に付けられる事に大いに抗議したい、でも相手の貫禄に何も言えない自称・三羽烏、他称三馬鹿ラスである。
「一応最初は富豪系俺たちとかの伝手で降板させるっつう真っ当――じゃあねえが、まあ表側の方法使おうとはしてたらしい」
「で、それが失敗したから裏の手使おうとしたと。そいつはちっとクリエイターへのリスペクトってもんが無さすぎじゃねーか?」
「とはいえ前世だとそのシリーズが件のプロデューサーのせいでアカン事になったのは事実。ファン故にそれを何としても防ぎたかった気持ちも理解できます」
呑気な様子で駄弁る有様には異界内にも関わらず全くの緊張感というモノが見えない。
彼らが此処に居るのは最早説明不要の何時もの事――やらかして塩漬け依頼を命ぜられ、その為にやってきたのである。
ある日に中国三大奇拳の一つ南朝寺教体拳*2にチャレンジした三人は、多数の蝙蝠型のレンタルシキガミを借りて見事空を飛ぶことに成功した。
そこまでは良かったのだが、調子に乗って秘義・
結果事務所の屋根に大穴を空け、負傷者こそ(当事者三人以外)出さなかったが一発アウト判定でペナルティを食らったのであった。
その際に事務所に居たノンデリニキ目掛けてまるで狙ったかの如く落下したのだが、流石の壁越えの高レベル黒札。
響いた破砕音と気配を敏感に察知し、脳天直撃コースで降ってきたサスケニキを横っ飛びで回避。
続けて回避位置目掛けて落ちてきたヨロイニキをバク転で躱し、最後に態勢を立て直す間も与えず突っ込んできたクロマニキをインディ・ジョーンズ顔負けの前方ダイブで避けてみせた。
その見事、且つ華麗なアクションに普段彼に苦労している事務所の面々も思わず拍手喝采を送り、ノンデリニキも両手を挙げて称賛に応えたのであった。
直後に『あああーっこれは僕のイメージじゃあない……こういうのはあの三人の役だ!』と頭を抱えて嘆いていたが。
余談だが、拍手されるノンデリニキを見た彼のシキガミが『まさかうちのマスターが事務所の人達から称賛される時がくるなんて』と人知れず感涙に咽んでいたが、この話とは全く関係はない。
閑話休題
そして現在の彼らへの依頼は異界にて現れるボス悪魔の退治だが、場所こそ判明しているが、何時出てくるかは不明というもの。
よって早朝から張り込み、夜になったら帰還、そして翌日また朝から張り込み開始の繰り返しである。
散々塩漬け依頼を熟した三馬鹿ラスにとっては今回は楽なので良かったなあと笑い合うレベルの内容である――前回のとある神社で祀られた祭神の愚痴を只管聞き続けるという依頼*4に比べれば楽過ぎてうっかり申し訳ないとすら思えてくる始末だ。
異界に入って出くわす雑魚悪魔を敢えて派手にオーバーキルする様を何度か見せつければ、後はもう異界内の悪魔が寄ってくる事はない。
それでも寄ってくる最低限の知能も本能もない雑魚は結界とアガシオンで対応可能。
ならば後はお目当てが出るまでのんびり待てば良いと、何だかんだで慣れているバカ達は持ち込んだ漫画を読んだり駄弁ったりして時間を潰していた。
なお、異界内でY談はやらない。
幾ら雑魚ばかりでも異界内での殴り合いは避けるぐらいの警戒心その他は流石のこいつらも持っている。
何よりもY談をする時は誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。三人で静かで豊かで……という転生者五つの誓い、その一つだからである。
ただ最近しょっちゅう本人に聞かれてシバかれるのでその心配のない異界内でやった方がいいのでは?という意見が何度か三馬鹿ラス内での議題に挙がっているが。
そんな具合に呪い合った結果、多数の黒札がピーを漏らすという大惨事が起きた事件を話していた三人だが、サスケニキがクロマニキの持つ本を指さした。
「ん? それ何の本だ? てっきりお前のシキガミ嫁計画書と思ったが違うよな?」
「あ、ホントだ。カバー違うな」
ヨロイニキも今気づいたと声を挙げ、会話中もずっと本に目を通していたクロマニキが質問に答える。
「これはシキガミ制作についての本ですね。制作部の人に聞いて初心者向けの物を教えてもらいました」
「へー、って初心者向けなのにそのブ厚さなのかよ」
「そういやお前将来シキガミ作りたいって言ってたな」
元より勉強関係が三人の中で一番苦手なヨロイニキがうえー、といった様子で顔を顰め、サスケニキが本気だったんだなあという顔をする。
「んー? 将来って事は今は作る気ねーの? 本読んで勉強してんのに?」
「今やってもレベル上げと合わせて中途半端になってしまいますからね。始めるのは壁越え後、レベル30以上になってからと考えてます。レベルが高くなってからの方が習熟がずっと早いのは先達が証明してますし」
「壁越えかー、先の話というか、お前本気で壁越え狙ってんだなあ」
不思議そうに聞くヨロイニキに将来設計を語るクロマニキ、そしてサスケニキが感心したように呟いた。
「ええ、本気です――だから貴方達も協力して下さいよ! 将来的にもやれる事が増える点からも目指して損はないでしょう!?」
「「――だが断る!」」
「このサスケニキが最も好きな事のひとつは貴様の頼みを『NO』と断ってやる事だ!」
「オレあんま頭良くないけどよー、オメ―が協力っつってこっちを利用して楽する気マンマンってのは分かるんだぜー」
「くっ、これだから明日の小遣いしか頭にないような連中は……!」
揃ってあっかんべーするサスケニキ、ヨロイニキにぎりぎりと歯を食いしばるクロマニキ。
最も二人の言う通り二人を利用して楽する気満々なのは事実なのでどっちもどっちであろう。
「でもよー、それなら何で制作部に行かなかったんだ? 別に先にシキガミ作れるようになってからレベル上げでも良かったんじゃね?」
再び尋ねてくるヨロイニキに、顰めっ面のままでクロマニキが返答する。
「何でって――じゃあ聞きますけど、もし私が悪魔と戦わないで最初から制作部行ってたら、貴方達、どうします?」
その問い掛けに顔を見合わせた後、サスケニキ、ヨロイニキは笑顔&Vサインで告げた。
「「大爆笑&嘲笑」」
「取り合えず腰抜け、腑抜け、負け犬の三段階活用での大笑い不可避だな」
「しょーがねーよなー。侍としては臆病者はバカにしなきゃだもんなー」
「で、異界から帰ったら必ず訪ねてその日の成果と一緒にお前がレベル上がったか聞きにいくな」
「しょーがねーよなー。武士としては打ち取った相手の報告はしなきゃいけないもんなー」
「最後はギターを持って、君に歌を送ろう」
「曲は――『世界に一つだけの花』で」
そうして無駄にハモりながら歌い始めた二人に青筋ピキピキさせたクロマニキが叫ぶ。
「ええ! 絶対そうするって思ってましたよ! だからそうしなかったんです!!」
他の二人にマウント取られまくった挙句、反撃すら出来ないという事態をクロマニキが、否、三馬鹿ラスが受け入れる筈がなかった。
「で、話を戻すが、シキガミ作りたいって何かやりたい事があんのか? 量産型シキガミ販売したいとか」
「それも勿論あります。だって折角色々作れるんですよ? やってみたいじゃないですか」
「まーその気持ちは分かる。オレらみたいな連中ならロボットとかアンドロイド作れるなら作りたいってやつは多いだろーな」
元よりオタク系趣味持ちの多い黒札である。
悪魔や神相手に無双。
様々なシキガミという名のロボやその他を作成。
悪魔や人間含めたハーレム(逆ハー含む)。
出来る出来ないは置いておいて、これらに憧れる黒札は多い事だろう。
当人にやる気さえあれば実際に実行可能なだけの才能を持っているのが黒札であるが。
「ショタおじ製のシキガミにはどうやっても及ばないでしょうが、自分で作れば大量に作れるというのは間違いなくメリットです」
「そんなにたくさん作んのかよ?……あー、オメ―の夢には大量にシキガミいるもんな、そりゃショタおじ頼みじゃ無理だ」
クロマニキのガイ連の幹部どころかショタおじでも無理そうな夢*5を思い出したヨロイニキが呆れた顔で理解できたと返す。
「ええ、流石に満員の日本武道館は物理的に無理そうなので隙間なく美女埋め尽くされたプールにタキシード着て飛び込むので妥協しようかと」
「妥協って言葉の意味を今すぐ辞書で調べてこい、ウィキペディアでもいいぞ」
夢という名の戯言を語るクロマニキにサスケニキが吐き捨てる様にツッコむ。
だが、もし出来るなら間違いなく他二人も同じ事をやるのは疑いようのない事実である。
「それに言い方は悪いですがセットで揃えたい、コンプしたいってあるじゃないですか。例えば艦これの金剛のシキガミが居たら比叡、榛名、霧島のシキガミだって欲しくなるでしょ?」
「あー……その辺は分からんでもないな。もしアズレンのベルファストのシキガミ持ってたらそりゃ俺もロイヤルメイド隊揃えたくなる」
腕組みして深々と頷くサスケニキ。
はいはいと手を挙げてヨロイニキも賛同する。
「分かる分かるぞ! 三国志ゲーやってて関羽、張飛仲間にしたら趙雲と黄忠と馬超と魏延も加えたくなるもんな!」
「何でそこで三国志が例えに出るんです? あと何故魏延? シリーズによっては代理で五虎将軍に入りますけど」
「そこは女キャラを例に挙げるべきだろ。浜風とマシュとラスオリのノーム*6とかさあ」
「いやそれも違うでしょ、ボカロとかアイマスとか幾らでも挙げられるのに何でわざわざカップやきそば現象を?」
クロマニキがツッコみ、サスケニキも続き、だがその内容にクロマニキが反転してツッコむ。
ツッコまれたヨロイニキは不満気なふくれっ面になった。
「んだよー。じゃあお姫ちんとラスオリのナイトエンジェル*7と雪泉さんならどうよ?」
「それ中の人繋がりですか?……って中の人&尻か! どんだけ尻しか見てないんですか貴方は! あと雪泉さんは分類は巨乳キャラでしょ!」
「なにおう! 雪泉さんはお尻マウスパッドあるから尻キャラでいいんですー! そんで尻のなにが悪い! 胸や太ももにはない入れられるという他にない強みが尻には――」
「おうそこまでだ。異界内でY談は禁止だぞー」
ヒートアップしかけたヨロイニキをどうどうとサスケニキが宥める。
クロマニキもオホンと咳払いして雰囲気をリセットして話を戻す。
「エロスを抜きにしても、沢山のそんなシキガミ達をリアルで見たくないですか? 前世でMMDとかやった事なくても動画見たことはあるでしょ?」
「あー、投稿とかはしなかったが自分用にちょっと弄った事はあるな」
「オレは見る専だったなー。動かすのはオレには難しくてムリだったわ」
「私はちょっとだけ投稿した事ありましたね。で、MMDでもPCスペック的に難しいぐらいの人数で、色んな神曲を歌い、踊るキャラ達、しかもリアルで……見たいと思いません?」
そんなクロマニキの問いかけに、二人は前世で好きだった色んなキャラクター達が、前世で聞いた様々な神曲を歌い、踊る姿を脳裏に思い描く。
暫しの沈黙の後、サスケニキとヨロイニキは笑顔で深く頷いた。
「――ああ、陳腐かもしれんが、リアルで大勢の色んなキャラが『千本桜』を歌い、踊る姿。そいつは確かに見てみたい」
「オレもだ。オレは『ドーナツホール』がいいなあ」
「私は『Girls』が好きでしたね」
嘗ての思い出とまだ見ぬ先の未来へと思いを馳せる、何処か優しさすら感じさせる、そんな彼ららしからぬ暖かな空気が今の三人の間にあった。
「で、エロス抜きにとか抜かしてるが――普通に踊ってもらうのとは別に全裸でダンスさせる気マンマンなんだろ、お前」
「やらねー訳がねーよなー。ヒモみてーなスリングショットとか逆バニーとかのエロ衣装でも踊ってもらうつもりなんだよな?」
先程までの空気が嘘みたいな冷たい目で指摘するサスケニキとヨロイニキ。
ぴしり、と音を立ててクロマニキが氷付く。
「他にも色々な格好考えてそうだよなあ。滅茶苦茶スリット入ったチャイナドレスとか、海女さんみてえな晒と褌とか、裸Yシャツとか」
「あえて着せる、とか言って逆に露出の少ないカッコとかもありそーだな。着ぐるみとか、ゴスロリ衣装とか、園児の使うスモックとかなー」
服装の例が挙がる度に、心臓をドキッと激しく鳴らし、幾度も身体を震わせるクロマニキ。
冷や汗だらけの顔のまま引き攣りながらも笑顔を浮かべる。
「……ふ、ふふふ。さ、流石は幼馴染にして我が最大のライバル達、鋭い読みです。見事、と言っておきましょう」
「わからいでか。お前を知ってる奴なら表裏どっちの世界の奴でも九割九分九厘分かるわ」
「スゲーな、前世込みでもここまで全然うれしくねーほめ言葉は初めてだぞ」
先の計画を一分の隙もなく当てられて脳内で火曜サスペンス劇場のBGMを鳴らしながら、意地でも強がってみせるクロマニキにサスケニキとヨロイニキは心底呆れ顔で返す。
そういう奴だと良く知っているので呆れはしても今更どうこう思う事はないのだが。
「まあそれはいいとしてだ、一つ聞きたいんだがよ。何でそこまで自分で作るのに拘るんだ?」
サスケニキの問いかけにクロマニキが目線で続きを促すと、そのままサスケニキは自分の感じた不可解な点を話始める。
「そりゃ自分で作る方が好きにやれるってのは分かるが――別に制作部に頼んでも問題はないだろ? レベル上げに全振りして大金稼げるようになってシキガミ制作依頼する方が寧ろ効率的だ」
「言われてみりゃそうだな。出来上がるのがモッコスや邪神セイバーみたいのなら意地でも自力で作らにゃならんだろうが、んなこたぁ絶対ねーんだもんな」
そう、そこまでクロマニキが自分でシキガミを作る事に拘る理由が見つからないのだ。
幼馴染である二人はクロマニキの事を――彼のエロスへ懸ける情熱を良く知っている。
幼少期、周囲と馴染めない、コミュニティに入れないといった事はなかった彼らだが、前世の記憶をすぐに全部思い出せた訳でも、記憶に問題がなかった訳でもない。
そんな中でもクロマニキは情熱を失う事はなかった。
ゲーセンで脱衣麻雀をプレイする為に必死で麻雀のルールと役を学んだ。
AVを見る為にビデオの操作や配線を全力で覚えて、代わりにレンタルしてくれる影武者を見つけてきた。
ネットでアダルトサイトを見る為にネット環境やプロバイダー業者について学び、近所でPCに強い人を探し、交渉の末中古PCを格安で調達し、海外サイトを見る為に辞書片手に英語を覚えた。
ガイ連を知る切欠ととなった巨乳美女――人魚ネキのストリップダンス動画の情報を持ってきたのもクロマニキだ。
似たような事は他二人もやったし協力もしたが、最も情熱を持ち、一番努力したのはクロマニキであると二人も認めている。
だからこそおかしいのだ。
彼らの知るクロマニキならば理由なく回り道などせず一直線に、情熱的に突き進む筈なのだから。
「ふむ、私が迂遠な事をするのは変だと、そう言いたい訳ですか」
確認するように語るクロマニキに、サスケニキ、ヨロイニキは首肯する。
幼馴染故に見過ごせぬ違和感を感じる二人に、クロマニキは何処か満足気に答えた。
「今迄の私ならやらない、その通りです。では結論から申し上げますと――」
「――今の私には、新しい夢がある。そしてその為に己の手でシキガミを作らねばならない、それが理由です」
「ガイア連合に参加して、様々な出会いと経験を経て、私は別の、新たな夢を見ました。だからですかね? 今迄の私らしくないのは」
そう笑顔で語るクロマニキに、サスケニキとヨロイニキは驚いていた。
あのクロマニキがエロスを後回しにする。
その事実に二人は心の底から驚愕し――
「そうか……そいつは良かったな」
「ああ、おめでとうを言わせてもらうぜ」
――同時に祝福した。
それ程の夢を見つけた事に。
再び彼ららしからぬ、温かみと優しさを感じる雰囲気が三人の間に生まれた。
こんなどうしようもないドスケベ野郎でも、変わる事が出来るんだなあという超上から目線での優しさと祝福ではあったが。
「それじゃあ、聞かせてくれないか。お前のその新たな夢ってやつをよ」
「だな。どんだけでっけえ夢か、オレらに教えてくれや」
「ええ、勿論です」
優しい笑顔で尋ねるサスケニキとヨロイニキに、クロマニキもまた満面の笑みと共に告げる。
「幼女ネキや人魚ネキやキノネキ等の容姿のシキガミをですね――」
「イヤーッ!!」
「黒閃!!」
「――がぎゃばん!?」
クロマニキ目掛けて放たれたサスケニキの拳が正確に心臓を打ち抜く。
衝撃を心臓に通す事により動きを止める、富田流にて金剛と呼ばれる技が炸裂した。
ほぼ同時に鳩尾にヨロイニキのパンチが撃ち込まれる。
横隔膜を叩き、電気が走ったように動けなくなるソーラー・プレキサス・ブローが決まった。
二種の打撃で動きが止まったクロマニキ。
そしてその隙にクロマニキを間に挟んだ位置に移動したサスケニキとヨロイニキは左腕を高々と掲げて叫んだ。
「マグネットパワー! プラス!」
「マグネットパワー! マイナス!」
「「クロース・ボンバーッ!!」」
「あぎゅぶえっ!」
ツープラトンを決められたクロマニキは断末魔と共に倒れ、とんがり帽子が宙を舞う。
サスケニキはとんがり帽子を掴むとぺいっとクロマニキ目掛けて放り捨てた。
「――よし、埋めるぞ」
「わーった。周りにはなんて言う?」
「ハーレム作るっつって中東に旅立った事にしよう。こいつ知ってる奴なら皆納得するさ」
「だな。異界だとなんかが掘り返しそうだな、出来るだけ深く埋めるぞ」
冷たい声で死体処理と証拠隠滅を話し合う三馬鹿ラスの二人。
見下ろすその目は殺虫剤をかけられピクピクするゴギブリを見る目であった。
「――って待てぇい! 何ですその一切の迷いのない行動は! 仮にも幼馴染を相手に一瞬足りとて逡巡しないってどういう事です!? オーダー66受けたクローントルーパーだってもうちょっと躊躇いますよ!」
叫びながら跳ね起きるクロマニキにちっ、浅かったかと舌打ちしつつ戦闘態勢になるサスケニキとヨロイニキ。
「うすらやかましいわ! とんでもねえ野望持ちやがって、この怪人すね毛剃り後三日目の脚男が! 俺らまで巻き添えくってたまるか!」
「火薬庫でガソリンまいて花火する趣味はねーんだよ! 自分にエンチャント・ファイアして炎を死装束にしたけりゃ一人でやれや!」
「ええい、落ち着きなさいアホ共! 人の話は最後まで聞けと――」
「死人に口なし、平安時代の哲学剣士、ミヤモト・マサシの言葉である! という訳で死ねー!」
「問答無用! 言い訳無用! もうしゃべらんでもよか! ちぇすとぉおー!」
「話せばわかる! 話せばわかる! 話せばわかれー!」
一人は殺されて埋められない為に。
二人は巻き添えで殺されない為に。
こうして生き残る為の、善も悪もない、恨みっこなしの野生の勝負が始まったのでした。
――バカ共野生の勝負中――
シネー、だのダイヤボー等の叫び声と共に激しく争い合う三馬鹿ラス。
二対一で前衛二人対後衛一人というすぐ終わってもおかしくない戦いは、長期戦に突入していた。
理由はクロマニキ側は生存最優先で相手が話を聞く気になるまでの時間稼ぎに徹している事。
何より以前*8の経験がクロマニキの中で生きていた事である。
あの時は奮戦虚しく討ち死にしたが、あの苦戦で得た戦訓は確かにクロマニキの中に残っていたのであった。
生命を守る為に戦う三馬鹿ラス、そしてこの場には現在もう一つ、生きる為に足掻いているモノが居た。
「……オ、ォォオオ……ワ、レ、ハァ……」
ボロボロでズタズタの身体を必死に動かし、地面を這いずってこの場から逃げようとしている一匹の悪魔。
彼はこの異界のボス悪魔であり、この地で多数の犠牲者を生んだ悲劇の元凶であった――瀕死で地べたを這う姿からはとてもそうは見えないが。
異界の主である彼は姿を現した時、目の前にこちらに向かって全力ダッシュするローブとそのローブを追っかける忍者と鎧武者という光景に理解が出来ず一瞬固まってしまった。
「イヤーッ!!」
「セイヤーッ!!」
大喝一声、忍者と鎧武者がローブ目掛けて攻撃をしかける時でもまだ悪魔は動けずにいた。
その結果――
「近くにいた貴方が悪い!」
「ギャアアアア!!?」
――ローブに二人の攻撃へのガードベントにされてしまったのである。
そのまま『悪魔バリアー!』と散々盾に使われた挙句、これ以上は盾ごと抜かれると判断したクロマニキによって『キョウジスペシャル!』とミサイルの如くぶん投げられた。
で、ヨロイニキに邪魔!とパリィされて地面に叩きつけられてそのまま放置されてしまった。
そして現在は死にかけの身体を引き攣って何とか生き延びようとしている。
最早プライドも屈辱も憎悪も全て投げ捨てて唯々生きる為に必死に逃げようと足掻くその姿は、惨めでも生物としては正しい姿であった。
が、目の前の地面に現れた小さな影に、はっと顔を上げた悪魔は絶望した。
瀕死のボス悪魔を、ふよふよと宙に浮く壺に入ったアガシオンが無機質な瞳で見下ろしていた。
アガシオンは道具の知恵・攻*9によりちっちゃな手に持ったアギストーン――山梨支部で一山幾らで売られている見習いが練習で作った劣化魔法石――をぽい、とボス悪魔へと放り投げる。
「――――!」
悪魔は何かを口にしようとして、その間も与えられる事無く炎の中で消滅した。
最期に彼が言いたかったのは、命乞いか、交渉の要望か、それとも恨み言か。
それすら知られぬまま、何者にも顧みられぬままの最期は、さぞかし無念であったことだろう。
それが多数の罪と死を重ねたこの悪魔に与えられた相応しい罰であったのかもしれない。
そしてアガシオンは異界のボスが残したアイテムやマッカ、MAGを回収すると、未だ野生の勝負を継続する三馬鹿ラスを見つめ、何やら変わった仕草をする。
人間でいう盛大な溜息と頭痛を堪える様な所作をみせた自我のない筈のアガシオンは、ボスの様にバカ共の戦いに巻き込まれて、或いは盾や武器代わりにされて滅んだ悪魔達の残したドロップ品の回収を始めた。
その背中はまるで休日出勤を命じられたサラリーマンの如き哀愁を漂わせていたという。
――バカ共野生の勝負継続中――
「は、話を……ゼヒュー、ゼヒュー、聞く、気に、ゲホッゴホッ、なりまし、たか……?」
「フーッ、フーッ、よしっ、ゲフッ、ゴフッ、話、だけは、ゼイゼイ、聞いて。やる……」
「い、言っと、ハァ、ハァ、くがな、ひぃ、ふぅっ、まだ、無罪じゃ、ねえから、な……」
互いに体力を使い果たした所で漸く一時休戦となる三馬鹿ラス。
といってもサスケニキ、ヨロイニキは体力が回復しだい襲い掛かるつもりで会話はその為の時間稼ぎとしか思っておらず、クロマニキも二人の狙いを百も承知の上で、会話に持ち込めばバカ共等どうにでもなると考えている。
『右手で握手しながら左手にナイフを隠し持つ』という言葉があるが、こいつらの場合は『ナイフを持った方の手で握手しようして悪戦苦闘』というべきであろう。
「まず明言させてもらいますが、人魚ネキや探求ネキやキノネキとかの姿のシキガミにエロい事する気は誓ってありません。何なら指一本触れもしません、セルフギアス・スクロール使ってもいいです」
そう言い切ってみせたクロマニキにサスケニキとヨロイニキは多少なりとも話を聞く事を考える。
このドスケベ野郎が指一本触れないとセルフギアス・スクロールを使っても良いというのなら単純なエロス目的ではないと判断出来るからだ。
まだ見抜きという可能性もあるので信用するべきでないとも考えていたが。
ならば何のために?と考える二人にクロマニキがまた襲い掛かられる前に話を進めようとした。
「じゃあ何の為にあの人達の姿のシキガミを作りたいかというとですね――」
「分かったぞ!」
「――ふっ、分かってくれましたか」
が、その前に叫んだサスケニキにクロマニキは微かに微笑んでみせた。
あくまで軍師である自分が敢えて譲った*10ものとはいえ、仮にも自分達のリーダー役、物事を理解するだけの分別は持ち合わせていたかと思うクロマニキ。
「貴様、飲食可能にしておいてからトイレ行くの禁止と命令するつもりだな!? 赤面とかしそうにない人達の赤面顔をそうやって拝もうという魂胆か! 何という鬼畜外道の所業!」
「何ィ! 全く見損なわねえが、むしろ何時か絶対やると思っていたが! ついにそこまで堕ちやがったな! おまけにスカト〇にまではしるとは何て奴だこのビョーキ野郎め!」
「違ぁぁぁあああうっ!! 万物神羅万象何もかもが間違ってますよぉ!」
全力で絶叫するクロマニキ。
やはり所詮はラオモト=カンを真似するモスキートとビーハイヴを足して割らないサンシタであったかと期待した己の不明を嘆いた。
「違わんだろ、貴様が赤面した女の子が三度の飯より好きな事は当に調べがついてんだよ!」
「おお、何時だったか『人魚ネキが顔赤くするとこ見たいですねえ、わっほい』とか言ってただろーが!」
「そりゃ好きですけど! 言ったかもしれませんけど! でもわっほいは絶対言ってない!」
今にも再び襲い掛かってきそうな二人に待て待て待てと必死に止めながらも叫ぶようにクロマニキが訴える。
「そもそも! 照れたり恥ずかしがって顔真っ赤にするのが良いんですよ! トイレ我慢させて顔赤いのは何というか色々ちょっと違うでしょう!? 例えるなら甘いシュークリーム食べたい時にどら焼き渡された様な気持ちです!」
「「む……」」
その叫びに納得するものを感じたサスケニキとヨロイニキは動きを止める。
止めるが、まだ戦闘態勢は解かない。
だって例えに食べれないゲテモノや激辛じゃなくてどら焼きが出てくる時点でそれはそれでアリとは思ってるなコイツと正しく見抜いていたから。
「じゃあ、何をするつもりなんだよ」
「ええ、何をしたいかというと――」
「そーか、わかったぜ!!」
「――ホントに分かってます?」
今度はヨロイニキが割って入り、クロマニキは疑わし気に見つめた。
三人の中で最も考えなしで動く奴ではあるが……戦闘でも日々の彼是でも斬り込み役であるが故に、これでも割と弱点とか本質等を無意識に見抜く事もないではないがと半信半疑な思いを抱くクロマニキ。
「幼女ネキやカス子ネキ、黒死ネキの姿のシキガミに『殴ってすいません』『バカにしてごめんなさい』って土下座で謝らせるつもりか! てめーそんな江戸の敵を長崎で討つにも程があるマネを!!」
「ぬうう! 何と卑怯陰湿極まりない! こち亀の両津と本田とボルボと左近寺のダメな部分だけ集めた奴とは思っていたが両津が大原部長のロボットにした様な事を企んでいやがったか!」
「そうじゃなーーい!! 最早江戸と長崎どころか邪馬台国の敵をアクシズで討つレベルでしょうがそれぇ!」
再びクロマニキは心から叫んだ。
割といい年になるまで民名書房の引用を信じてたようなバカにほんの僅かでも期待した自分が心底情けないと内心でも叫びながら。
「兎に角私は幼女ネキも黒死ネキもカス子ネキも、勿論他の人達も別に恨んでなんかいませんよ! 貴方達は恨んでるんですか!?」
「いや全然。でもお前は恨んでなくてもそれを口実にして何かやるタイプの奴だとは思ってる」
「だな。わざと相手怒らせたり殴らせたりしてふくしゅーじゃーとか言うなろう系だろオメ―は」
「こ、こいつら……! 大体幼女ネキ達を土下座させても嬉しくも何ともないってんですよ! どうせ土下座するならこっちがしてそのまま素足で踏んゲフンゲフンゲフン!」
怒りと興奮で何かを口走りかけたクロマニキがワザとらしい咳払いで誤魔化す。
そんな彼を見た二人は『ああ、とうとうソッチ方面にも癖が』『仕方ねーよ、正直時間の問題だった』とひそひそ声で話し、また一つ高み、いや低み?へと至った幼馴染へ嘲りと哀れみの入り混じった目を向けた。
兎も角、一応?ヨロイニキからの疑惑も解けた――有耶無耶になったとも言う――所で仕切り直して漸くクロマニキの説明を聞く態勢となる三馬鹿ラス。
「えー、何をどうしても最短の道にはならない遠回りをしましたが、私が何をしたいのか説明させてもらいますね」
「「おー」」
パチパチと拍手するサスケニキ、ヨロイニキ。
オホンと勿体ぶった様子で話し始めるクロマニキ。
「まず場所を用意します。お屋敷一軒が理想ですけど、無理なら大きな大部屋でも良いです」
「「ふむ」」
「で、そこにシキガミ達に居てもらいます。勿論必要そうな物は用意します」
「「ふむふむ」」
「格好は色々ですね。元になった人達と同じでも良し。全然違うタイプの服装も良し。可愛い服、綺麗な服、何かの制服や作業着、ジャージとかも有りだし、お化粧やアクセサリーなんかのお洒落も良しです」
「「……ふむ?」」
「何をするかは自由です。一人で遊ぶのも読書や勉強やお昼寝やぼけーとするのも良し。互いにお喋りしたり遊んだり討論したりも良し。ふらふらしたり研究したり戦闘訓練するのも無論良しです」
「「……」」
「――そして私はそんなシキガミ達を眺めながらメロウコーラを飲むのを日課にしたいんです」
フェイスフラッシュを照射された腐ったドブ川のような瞳でクロマニキはその目的を――己の夢を語った。
暫しの間、沈黙が続く。
「……クロマニキ、いや、クロマニキ=サン……正直、これを俺が言うのは自分でもどうかと思うんだが、それでも敢えて言わせてもらう」
「オレもこの言葉は使っちゃイカンとは思ってんだ。でもよ、この言葉以外じゃ、今のオレのこの感情を表現しきれねェんだよ」
「「――キモい」」
「ちょっとぉ!?」
サスケニキ、ヨロイニキの端的な、しかしこれ以上なく両人の思いと感情を表現した台詞に激昂するクロマニキ。
「貴方達が、他の誰でもなく貴方達がそれを言いますか! 貴方達がその言葉を言うんですか!!」
「す、すまん。でも流石に俺達でもこう言わざるを得ないというか、これ以外の言葉が出てこなかったんだ!」
「いーや! 貴方達は誰より知ってる筈だ! その言葉の重みを! その救われなさも! だからこそ、貴方達は、貴方達だけは言っては、使ってはいけない言葉だ! 貴方達はそれを知ってる筈だ! 筈なのに!」
「わ、悪かった! わーるかったって! 謝るから! 謝るからちっと落ち着け! オレらが悪かったから!」
禁句を言われた時よりも怒りと激情を露わにするクロマニキを必死で抑え、宥めるサスケニキとヨロイニキ。
他の三次の方々と違って重い過去も因縁もこれっぽちも持たない連中だが、それでも生きていれば嫌な事、思い出したくない思い出なんてものは前世も含めりゃ幾らでもある訳で――まあ、どう考えても自業自得なモノが多いのだが。
取り合えずクロマニキが落ち着くまでに、少々の時間が掛かったのでした。
「――失礼、取り乱しました。ですが! あれはお互い使ってはいけない言葉の筈です!」
「正直スマンカッタ。でもな? 俺らにあれを言わせる程だったとも分かって欲しいんだよ」
「それな。本当に……本当に……それしか言う言葉が見つからないって感じだったもんな」
睨み付けるクロマニキに対してなあ?と頷き合うサスケニキとヨロイニキ。
「何が悪いというのです! 貴方達はキノネキや破魔ネキの姿のシキガミ達が仲良くわちゃわちゃしている所が見たくないんですか!?」
「いや、そりゃ見たいか見たくないかで言えば見たいけどさ。シキガミ作って場所まで自分で用意してやるのは流石の俺達もちょっと引くわというか」
「何でですか! 結嵌学園*11とかドクオニキのシェルターとかと比べれば遥かにまともでしょう!? 年齢制限もない未成年にもお子様にも安心・安全な内容じゃないですか!」
「あー……そのなんつーか、エロがないところがふつーの変態よりかえって危ねーっつーか逆により業の深さを感じさせてヤバさ倍づけ、みたいな?」
「くっ、こんなに私とバカ共で意識の差があるとは思わなかった……! 金儲けに使うつもりはないですが、もしお店にしたら黒札相手に繁盛間違いなしだというのに!」
「繁盛するのか……? いや、してもおかしくねえか、なにしろ俺たちだし」
「大繁盛ってのはねーだろうが、一部の超リピーターがいるタイプの店だろうな、多分」
自分は間違ってなんかないというクロマニキの主張にいやーどうだろな反応の二人。
「むうう、もういいですよ。ふーんだ、完成した後で自分も眺めさせてくれと土下座しても遅いんですからね!」
「ガキみてえな拗ねかたすんなよ。大体だな、あの面子相手にどうやって秘密でシキガミ作るつもりだ? 絶対不可能だろ」
不貞腐れたクロマニキにそもそもの問題点を指摘したサスケニキにクロマニキは何言ってんだこいつな顔で返した。
「秘密? 何の事ですか?」
「「えっ」」
その返事にサスケニキとヨロイニキは凍り付いた。
コイツ、まさか!?
「な、なあ、一つ確認なんだが……お前、もしかして本人に報告してやるつもりなのか?」
震える声で問い掛けるサスケニキと固まったままのヨロイニキ。
そんな二人に対してクロマニキは酷くあっさりと何でもないように答えた。
「ええ、エロい事しませんとセルフギアス・スクロール持って頼むつもりですけど、何か?」
戦慄・驚愕・茫然・絶望。
一瞬の内に様々なモノがない交ぜにになった混沌としか表現出来ない感情がサスケニキとヨロイニキの中を駆け巡った。
「ま、まさか、もう、すでに誰かに言ったり頼んだりしてねーよな……?」
「え? しませんよそんなの。まだシキガミも作れない状態で頼んでも意味ないじゃないですか。鬼が大爆笑しちゃいますよ」
続いてのヨロイニキの質問に、当たり前の事と言わんばかりな返事のクロマニキに、二人は心から安堵した。
そして同時に混乱する。
不利になれば真っ先に居なくなり、有利になれば最初から居ましたよな顔で何時の間にか居るのがクロマニキという男である。
そんな奴がこんなヤバい真似、例えるならば沖縄支部でメシアン万歳と書いた旗を掲げる、巨人グッズに身を固めて阪神電鉄に乗る、人魚ネキに例の流出ストリップ動画を見せるに等しき行為にどうして躊躇も怯えもしない?
キノネキに突撃したヨロイニキの様に、死をも承知の上でやるにしてはあまりにも普段通りすぎて必死さや決死の覚悟が全く感じられないのだ。
何故?どうして?という言葉だけで脳内を埋め尽くされたサスケニキとヨロイニキ、そんな二人をどうしました?と不思議そうに見るクロマニキ。
だが、サスケニキがはっ、とした顔になり呻くように呟いた。
「そうか、そういう事か。分かったぞ」
「マジか。オレにも教えろ、こいつどうしちまったんだ」
すすす、と距離を取ってひそひそ話に移行する二人。
「所謂バイアスってやつだ。」
バイアス。
単語の意味でいうなら『先入観』『偏見』を意味し、もっと分かりやすく言うなら思い込みとなる。
メガテンでの例ならベリアルとネビロスはロリコン、マーラはチ〇コ、ロウ勢力と天使はアレな連中、あたりであろうか。
え、思い込みじゃなくて事実?それは個々の意見・考え方という事で。
「バイアスって……自分は大丈夫、って思い込んでるって事か? でも何でだ?」
「正確にはエロスじゃないなら大丈夫って思ってんだ。エロ目的でないなら正直に話して頼めばいけると信じてやがる」
「いやねーよ。大体なんでそんな事になってんだ。エロ絡みでなくたってシバかれた事だって……ちょっと待て、まさかあいつ……そういう事、なのか?」
「……分かったみたいだな」
何かに気付いて茫然とした顔になったヨロイニキに、サスケニキが頷いた。
「あいつ、基本的にエロい事考えてるし、大抵の事はエロスか萌えに繋げるだろ?――」
「――だからあいつにとってはエロい事考えたからシバかれたって事になってんだ! そのせいでエロスじゃなきゃいけるってバイアスかかってんだよ!」
ヨロイニキの脳内の中で『な、なんだってー!?』と某ミステリー調査団が叫びを挙げた。
「さっきから一体どうしたんです? 以前のハイポーション*12の影響でも残ってましたか?」
憐れみと驚きと呆れが入り混じった何とも表現し難い顔でこちらを見つめる二人に怪訝な顔をするクロマニキ。
そしてサスケニキが躊躇うような困ったような、でも決めたような顔で話し始める。
「あー……その、何だ。お前の夢についてだが……俺達は応援はする。でも協力はしない。陰ながら見守らせてもらう事にする、星明子みたいに」
途中何か言おうとしたヨロイニキを手で遮り、そう伝えるサスケニキ。
クロマニキは笑顔でうんうんと満足気に頷いた。
「漸く理解出来ましたか。全くえらく手間がかかったものです。協力は元より期待してないですよ、寧ろ邪魔にしかならないですし?」
嫌味っぽくそう笑うクロマニキに少しピキッとくるが、沈黙!それが正しい答えだと無言の二人。
「まあ幼馴染の誼です。完成の暁には撮影した動画ぐらいは見せてあげますよ――さて、それではボスも始末した事ですし帰りましょうか」
ほんのちょっぴりの慈悲を見せた後帰り支度を始めるクロマニキを無言で見やるサスケニキ。
そんなサスケニキの腕を掴んでヨロイニキが声を低めて言い募った。
「おい! 止めねえのかよ!? このままほっとくのは流石にヤベえだろ!」
「止めて止まるもんじゃないってあの瞳見りゃ分かんだろ!?」
ひそひそ声で言い争うサスケニキとヨロイニキ。
「そりゃそうかもしれんが、だからってよぉ……」
「落ち着け。言葉通りなら、壁越えするまで、レベル30以上にならん限りあいつは実際に動かねえ、それならバレる心配もないって事だ」
「つまり、それまでは――夢を見ていられるって事だ。何時か、必ず覚めて消える夢でもな」
「……人の夢と書いて儚いってーのはホント良く出来た漢字だよなあ」
「本当にな。考えた奴は凄え頭が良いか、凄えイイ性格してるかのどっちかだぜ」
アガシオンから回収したマッカやアイテムを受け取りながら『ご苦労様です、本当アっくんはあいつらと違って良い子ですねえ』と褒めるクロマニキを、静かに見つめるサスケニキとヨロイニキ。
「それに、もしかしたら上手くいくかもしれないだろ? 万が一、いや億、いや兆……那由他の彼方かもしれんが」
「いやねーよ。それこそ沖縄支部や合法ロリ同盟がメシアン推しになるレベルの確率だろ」
「いやほら零と一の間は無限って言うし? それに昔の偉い人曰く、人間の想像する事は全部実現出来る事らしいからな」
「あんま頭良くないオレでも分かるぞ――あいつのは『想像』じゃなくて『妄想』って言うんだってな」
アガシオンの頭を撫でたり頬をぷにぷに突っつくクロマニキを見るサスケニキとヨロイニキの目。
それはまるで、地に墜ちるとわかっていながら、それでも太陽を目指してしまう、悲しきイカロスを見るようであった。
◇
こうして、クロマニキの夢を知り、それが何時か必ず壊れる夢と知りながら、サスケニキとヨロイニキは見て見ぬふりをした。
せめてその時までクロマニキが幸せな夢を見ていられるようにと。
クロマニキの夢が儚く消え去るのか、それとも奇跡が起きるのか。
それが分かるのはまた別の、そして未来の話である――――
「よう童貞節全開な方の三羽烏の三馬鹿ラス。お前ら一体何を企んだ? 吐け。今すぐ全部」
「「「げえっカス子ネキ!」」」
――――とはならなかった。
何か急に悪寒を感じたカス子ネキが占術で原因を調べ、結果三馬鹿ラスが――正確にはクロマニキが、だが――何かやろうとしてると出たので空飛んで尋問に来たのである。
クロマニキにしてみればまだ先の鬼が笑う話だが、別に今頼んでも問題がある訳ではないと包み隠さず話して堂々とお願いをした。
そしてカス子ネキの答えは
「――よりキモいしなおさら気色悪いわ死ね!!」
だった、まあ残当である。
で、カス子ネキの盟友二人、合法ロリ同盟に連絡がゆき、そこから合法ロリ同盟のキノネキ
から探求ネキ、幼女ネキから人魚ネキへ、といった具合にあっという間に連絡が行き渡り。
勿論、全員からNO!と言い渡されたのは言うまでもない。
未遂という事もあり制裁という名のフルボッコは勘弁して貰ったものの、幼女ネキや恋ネキ等にNOと拳や蹴りをセットにされたので結局ボコボコになったが。
結果エロい事しないと誓う為のセルフギアス・スクロールで皆の姿のシキガミ作りませんと誓う事になったクロマニキであった。
唯一それはそれで笑えるかもと黒死ネキのみがOKしようしたが、これに他の黒札から物言いが入る。
黒死ネキには魔装術と変化を用いた変身能力がある為、『このシキガミは変身した黒死ネキの姿のシキガミです』みたいなギアスの抜け穴になる懸念が指摘されたのである――なおクロマニキがその手があったという顔をしたので余計な事言ったと後悔したが。
黒死ネキからするとそれもそれで面白そうなのでバッチこいだったが、ここでカス子ネキのファインプレイが発動。
「でもさー、ホントにいいの灯っち、シキガミ作んのこのガイ連バカコンテスト優勝候補のこいつらだよ?――見た目と喋りが灯っちで中身がこいつらレベルのド級のバカになるんじゃない?」
このカス子ネキのツッコみに然しもの黒死ネキもアリかナシかで熟考に入らざるを得なくなり。
そしてこの機を逃さじと周囲も必死に説得、最終的にこの場の黒札全員対黒死ネキの変則バトル一回*13で黒死ネキもNOに回ったのであった。
こうして、クロマニキの夢は始まる前から――例えるならエントリーシートがそのまま返却された様な有様で終わったのである。
その夜、幼い我が子を失った親の様な顔で計画書を焚き火にくべるクロマニキに、サスケニキとヨロイニキは何時もの様におちょくる事なく、その焚き火でおでんを煮込む――のは流石に無理なので、サツマイモやマシュマロ、ウインナーやパンを焼いて、無言でクロマニキに渡す。
クロマニキも無言で受け取ると、三馬鹿ラスは焚き火を囲み、焼いた物を食べ、クロマニキの夢を三人で弔ったのであった。
が、ここで話は終わらない。
その後一連の出来事はスレにて挙げられ、スレでは『バカすw』『何で許されると思ったw』『やはり童貞な方の三羽烏はダメだなw』といった書き込みが多数なされた。
しかし、ここで一つの書き込みでスレの流れが変わる。
『でも合法ロリ同盟を膝抱っこする魔人ネキ、人魚ネキ、探求ネキの図はみたいかも』
この書き込みが呼び水となりスレは忽ちこういうのイイよね、こういうの見たいの大喜利大会が開始。
田舎ネキのおっぱい枕で眠る幼女ネキと黒死ネキ。
滅茶苦茶フリフリなドレス着て可愛いコールに顔真っ赤なキノネキと破魔ネキ。
伊達メガネとビジネススーツ装備で出来る女&有能秘書感満載の邪視ネキと探求ネキと恋ネキ等の癖全振りなもの。
委員長な名誉店長ネキにお説教される悪ガキなクロアネキ*14、怪獣ネキ、TS魔人ネキとまーまーと仲裁する蟲姫ネキ。
人魚ネキ、サクラコネキとお歌の時間や『よい子のお約束』の唱和をする幼女ネキ、黒死ネキ、カス子ネキ、178ネキ*15等の日常っぽいもの。
プロレスの手四つで力比べして同時に互いのおっぱいの押し付け合いになってる人魚ネキと魔人ネキ。
粛聖!! ロリ神レクイエム☆を歌い踊るちひろネキ、邪視ネキ、恋ネキ、モルガンネキ*16、名誉店長ネキ。
『621、いやめぐみちん、じゃなくてオールドンマイネキ、お前に意味を与えてやる。仕事の時間だ』『随分と派手に打ち上げたものだな、戦友。それとも…ルビコンの解放者、いやオールドンマイネキと呼ぶべきかな』『オールマインドです! 何でわざわざ言い直すんですか!?』とルビコンごっこをするカス子ネキ、幼女ネキ、オールマインドネキ*17といった何この……何?なモノといった様々な内容が書き込まれた。
最終的に内容がR-18に移行した所で複数人による呪詛が叩き込まれてスレは強制終了したが、図らずも黒札相手に繁盛間違いなしというクロマニキの主張が証明される事となったのである。
この事態を受け、放置したらクロマニキの様に行動に移すバカが出る恐れがあると幼女ネキを中心とした黒札達が行動を開始。
『そんなにコラボしてる所が好きなら味わわせてやろう』とスレと幼女ネキのチャンネルに動画が挙げられる。
そこには獅子東方不敗拳*18をターゲットに決める幼女ネキ、恋ネキの姿があった。
他にもツイン・バード・ストライク*19を繰り出す邪視ネキとトゥルーデネキ、人魚ネキ分身三姉妹によるトライアングルアタック*20等の合体・連携攻撃が続く。
なおキノネキ、破魔ネキによるロイヤル・ハート・ブレイカー*21――をさせられそうになって逃走する二人の動画もあったが。
これらの動画の後に黒死ネキと人魚ネキの権能による精神攻撃――黒死ネキが蒐集した情報を基にした人魚ネキによる悪夢――も用意すると宣言された。
つまり実行するならこれらを受ける覚悟をしろとの警告動画であった。
この警告を受けてなお挑戦する勇敢にして愚かなるチャレンジャーが、クロマニキの夢を継ぐ者が現れるのか。
それは今度こそまた別の、そして未来の話である。
なおコラボ攻撃の最初の犠牲者は無謀なチャレンジャーではなく、本人じゃなくてシキガミなら本人だと有り得ないシチュでもアリだよね!とキノネキガン責め、幼女ネキ弱々なキノネキ×幼女ネキ本をナマモノネキが執筆。
その結果幼女ネキとキノネキによるランページ・ゴースト*22を叩き込まれ、見事栄えある最初の犠牲者となったのであった。
その日の夜、夜空をまるでナマモノネキの将星の様に、または封神台へと飛ぶナマモノネキの魂魄の如く、大きな流れ星が夜空を流れた。
そしてエロとはいえクロマニキの夢を形にしたとも言える行動への思いを示す様に、星空に浮かぶナマモノネキへと拱手する三馬鹿ラスの姿があったという。
―以下どうでもいいバカ共の設定―
・クロマニキ
エロじゃなければいけると信じてたが、勿論通らなかった。
でもこの夢は決して間違いなんかじゃないんだから!と語り、間違いだらけだアホとツッコまれる。
アガシオンことアっくんには可愛がる感じで接する。
言う事聞かないバカ共と比べてちゃんと言う事聞くのが可愛くて仕方ない模様。
・サスケニキ
そんなにそういうの見たけりゃ保育所や孤児院でもやれば?と思ったがこいつら(自分も含めて)が保育所や孤児院やるなんてオランウータンに核ボタンみがいてもらうよりヤバイと思い至り言わなかった。
アガシオンことアー坊には信頼出来る仲間として接する。
孤高なニンジャにはナンシーやタカギの様な頼もしい協力者が必要との事。
・ヨロイニキ
三人の中で勉強は一番苦手、難しい本を読むと眠くなるので今回は基本他人事な顔してた。(学校の方は前世込みでギリなんとかしてる)
それでも未来の嫁の為にもシキガミ関係は頑張って覚えようとは一応思ってる、思ってるだけ。
アガシオンことア太郎には運動部系の先輩みたいに接する。
自分の次にしぶといのもあり、他の根性なし共とは違うと高く評価している。
・アガシオン
黙々とバカ共のフォローを頑張る部下の鏡にして健気な従者。
もしかしなくてもこのPTで一番有望なのはこの子かもしれない。
連中のやらかしの後始末を淡々と行う姿は黒子やADの様だと笑ってはいけない人生録の視聴者から隠れたMVPとして評価されている。
別に重い過去も因縁もないが、こんな連中なのであんま思い出したくない思い出は割とある。
それを思い出すこともあるが、すぐに忘れるor凹むがすぐ復活なので結局意味はない。
作中クロマニキが激昂したのは言ったのが同類で幼馴染で下に見てる相手に言われたからでそれ以外なら別にそんなに気にしない――三人共言われ慣れてるし今更だからである。
突っ込まれる前に白状しますとネタ元は鬼灯の冷徹のサタン様です。
で、こんな事するのはウチのバカ共だとクロマニキだろうとなりクロマニキ回になりました。
筆者は全巻持ってないけどセールスで少しずつ電子書籍で買ってるぐらいには鬼灯の冷徹が好きなので、ディストピアさんとこで鬼灯様が登場した際何時かネタにしようと考えてましたが、只でさえ忙しい鬼灯様が高レベルでも支部長でも特殊な権能持ちでもないウチのバカ共と絡む理由が思い付かず、結果作中ネタ使ったこの話が生まれました。
マカーブルさんに頂いたイラストです。
いつもイラストありがとうございます。
『普通に似合うゴスロリ衣装の黒死ネキ』
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『滅茶苦茶フリフリなドレス着て可愛いコールに顔真っ赤なキノネキ』
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それでは最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。