【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。 作:貧弱一般メガテンプレイヤー
今回ウチのバカ共とある意味共通点があるなあと勝手に思ったキャラをお借りしました。
内容は何時も通りのバカ共の突撃ですが、相手が何時もとちょっと違うのでやる事も少し違います。
が、相変わらずの連中のやる事ですので広い心で見て頂ければ幸いです。
「そんな訳でそのツイフェミはガイ連を抜けたらしい。まあもし残ってたら間違いなく幼女ネキあたりにガチめにボコられてたろうがな」
「うえー……勘弁してくれよ。転生した先でまであーいう連中と関わり合いになりたくねーよ、オレはよう」
「で、その残党というか仲間だった連中が少数とはいえまだガイ連に残ってると。嫌な話ですねえ、あの手の連中は懲りも反省もしないでしょうし」
ある日のガイア連合山梨支部。
公園の一角のベンチにてだらけた様子でお前らが言うなな内容を駄弁る三人のDK。
最近子供の黒札や子供シキガミからお笑い芸人志望のお兄ちゃん達と何故か呼ばれるようになった当人達は大いに不本意な三馬鹿ラスの三人である。
「お笑いは笑わせるものであって笑われてちゃダメだぞにーちゃんたち」
「売れるまでやるのが売れるコツだってとーちゃん言ってたぞ、あきらめずにガンバ!」
「有名になったらサインもらってあげるよー、色紙そっちで用意よろしくね」
等と生意気なおガキ様達に言われて誰が芸人じゃゴラァ、うっせーぞチビ共余所で遊んでろとうまい棒渡して追っ払う、某嵐を呼ぶ園児の紅さそりなスケ番グループの如き三人の姿が幾度も目撃されていた。
「でもよー、このメガテン世界でフェミ活動とか無謀じゃねーか? 終末きた日にゃ女の権利どころか人権すら残るかどうかって世界だぜ?」
「ところがどっこい、有名どころの強者黒札って結構女が多いだろ? 今こそ男の圧政から女性を解放する時、みたいな事ぶち上げてるんだとよ」
「有名な女性黒札って、TSした前世男性も割と多いんですけどねえ? 勝手に旗印にした挙句に騙された、裏切られたと名誉男性扱いするのが目に浮かぶんですが」
アガシオンの強化の為作成部に彼を預け、空いた待ち時間で特にする事もなく、怠惰に過ごしていた三馬鹿ラス。
メイドさんのスカートのミニとロングの違いと良さを語り合った後に、過去スレで見た以前ガイ連にて自分達とは別ベクトルでやらかしたフェミ*1とその仲間達という楽しくないがスルーも難しい話題をげんなり顔で続ける三人。
前世での経験からそういった連中には碌でもない思い出しかなく、間違いなく自分達と相性がとことんまで悪いのは文字通り骨身に染みている。
三馬鹿ラスからすると関わりたくないから全力で距離を取っているのに、わざわざこちらを探しまわって文句を付けたり罵倒してくる連中というイメージなのだ。
如何なお気楽極楽なノリと勢いで生きてるバカ共でも、自分達を生まれてきた事自体が間違い、存在価値がない、自分達に従えば百歩譲って生存は認めてやる、とまで言う奴らに何も思わぬ筈もないし、そんな事言う連中と関りたいとも思わない。
ボコボコにされたり殺される事もしょっちゅうだが、折角の良き居場所で良き隣人達の多い、楽しく過ごせるガイア連合が相性最悪の連中の巣窟になる等、三馬鹿ラスにとっては悪夢でしかなかった。
自分達の同じ趣味人や同好の士も多いし、幹部勢やショタおじを見るにそうなる心配はないと思いたいが、何が起きるか分かったものじゃないのがメガテン世界だからなあとも思うのだ。
そんな楽しくない話にげんなりしていた中、サスケニキが何かに気付いた様に視線を固定した。
それに気付いたクロマニキが尋ねる。
「どうしました? 何か珍しいモノでも見つけました? まともで博愛主義な天使とか」
「過激派でない天使なら別にいてもおかしくねーだろ。キックボードで疾走するナマモノネキでも居たか?」
「そいつはもう日常風景レベルで珍しくもないな。ナマモノネキ追っかけてるのが幼女ネキじゃなくて黒死ネキならレアな光景だろうけどな、ってそうじゃなくてあれだ」
混ぜっ返してきたヨロイニキに苦笑しつつ返したサスケニキがある場所を指さす。
その先には公園内に設置された丸テーブルとイスに座った人物がいた。
ボサボサの伸びた赤毛を後ろで結んだ、遠目でも中性的な非常に整った容姿の三馬鹿ラスより少しだけ年下に見える少年であった。
「んー……知らねえツラだな。おめーらの知り合いか?」
「いえ、私も知りませんね。貴方の友人ですか? サスケニキ」
目の上に手をかざしたヨロイニキが二人に尋ね、クロマニキも首を振って否定する。
自然二人の視線がサスケニキに集まると、サスケニキが答えた。
「いや、知らない人だ」
はっきりと迷いなく答えたサスケニキに、ヨロイニキ、クロマニキは暫し無言になった。
「……そいつはつまり、全然知らねえ赤の他人ってことだよな?」
「うむ、そのとおりだ」
「……じゃあ何で注目したんですか? そして何で話題にするんですか?」
「うむ、それはだな」
何なんだコイツな顔をする二人にオホンと無駄に勿体ぶったサスケニキが話し始める。
「このまま時間が来て俺達がアー坊を迎えに行ったら、彼とはもう会う事は多分ないだろう。終末後の彼是でどうなるかは分からんが、恐らくまた彼と会う確率はほぼゼロと考えてもいい筈だ」
その内容に訝し気にしながらも頷くヨロイニキとクロマニキ。
そしてサスケニキがカッと目を見開いて叫んだ。
「だがどうだろう!」
「もしかしたら彼に話しかけたのが切っ掛けで何かもの凄い必殺技なんかをピコーンと閃くかもしれない! 彼が将来シェルターのトップとかに出世して俺達の事を覚えてたら何かくれるかもしれない!」
「可能性、そう可能性だよ君達」
何時の間にか立ち上がっていたサスケニキが演説の様に身振り手振りを加えて語る。
そんなサスケニキを冷たい目で見ていたクロマニキがぽつりと呟いた。
「……で、どうすると?」
「このままフェミの話するのもつまんないし、アー坊の迎えの時間まで暇だから声掛けてみよう。で一人だとちょっと怖いからお前らも付き合ってくんね?」
「子供か!」
「あだっ!」
照れくさそうに後頭部掻きながらそんな事言うサスケニキにヨロイニキがスパーン、と言葉と拳の両方でツッコんだ。
「全く……もしヤバい相手だったらどうするんです? 見た感じ如何にも武術やってるみたいだし、レベルも私達より上ですよ多分」
「そんな警戒することねえよ、此処に居る以上黒札かその関係者だから大丈夫だって。それにそんなヤバい奴ならのんびり公園の椅子に座ってないさ」
その少年の佇まいや雰囲気からクロマニキが慎重な意見を述べ、サスケニキは考え過ぎだと楽観的に語る。
「んー……まあ大丈夫なんじゃねーの? レベルだって十も二十も離れてる訳じゃなさそーだし、三対一だ。いざとなりゃ逃げるぐらいは出来んだろ。実際ヒマだしヒマつぶしにはいーんじゃねえの?」
「よしっ、決まり! じゃあ行くぞ」
ヨロイニキが賛成にまわった事でサスケニキが決まったとばかりに動きだす。
それを見てクロマニキが溜息付きつつ付き合い、ヨロイニキも後に続く。
なお、割と大きい声で喋っていたので件の少年にもバカ共のやり取りは丸聞こえ故に、近づいてくる三馬鹿ラスにホントに来たと少年側は困惑しきりだったが。
「おっす!」
「こ、こんにちは」
にこやかに話しかけてきた見知らぬバカ――サスケニキに戸惑いつつも挨拶を返す少年。
実際アイサツは大事、古事記にも書いてある。
「――ふむ。ちゃんとしたアイサツが返ってきた。恐れていた『こんにちは! 死ね!』な修羅系ではないようだ」
「ええ、まともなのと同時に押忍にメス、なんて返事してくるどっかのアホと違って普通な人のようです」
「おい、なんでテメーらこっち見た。オレそんな滑った返しなんかした事ねーだろーが*2」
即三人でひそひそ話――しっかり聞こえている――を始める三馬鹿ラスにますます当惑してしまう少年。
そんな彼の様子を気にもせず笑顔でサスケニキが再び話しかける。
「まあ別に何も用はないんだが! 暇だったので暇潰しに声掛けてみたんだ、ごめんね!」
「そ、そうなんですか」
「そーなんだよ! で、君は一人で座って何してたのかな? 誰かと待ち合わせとか?」
「……少し、考え事をしたくて」
「――何、考え事」
無駄に明るくフレンドリーに――馴れ馴れしいとも言う――振る舞うサスケニキに戸惑いながらも答える少年。
その返事にピクとサスケニキが反応する。
「それはまさか――流れる雲を見て、この国の行く末を憂いておりました、みたいな美形ぶった鼻に付く事を抜かすつもり――」
「「――ふんっ!」」
「ぐぺっ!?」
真剣な雰囲気でそんな戯言ほざいたバカの後頭部に待機していたヨロイニキとクロマニキが鞘入り刀と杖でフルスイングを入れる。
地面に顔面を叩きつけたサスケニキをヨロイニキが足を掴んで引きずって距離を空け、その代わりにクロマニキが前へ出る。
「すいませんね、あのバカの暴言は忘れてもらえると助かります。何なら一発殴りますか? 今ならサービスでおまけにもう一発ついてきますけど」
「おうコラ。どこの誰とも誰の関係者かもわかんねーのにいきなりケンカふっかけてどうすんだよ、このダボがぁ」
「か、堪忍やぁ、ぐぇっ、仕方なかったんやぁ、うぼっ」
笑顔で友人?への暴行を提案する一人とその後方で胸倉掴んで何度もリバーブローしながら恫喝する一人と殴られるままの一人という三人の姿に何も言えないでいる少年。
そして改めて顔を見ると、確かにそんな台詞を言っても様になりそうな程の美少年である。
きっと彼が憂いを帯びた顔で空を見つめていたらそれだけで年の近い少女や年下好みの女性が黄色い声を挙げる事であろう。
「だからって嫉妬したって仕方ないでしょうに。『可愛いは正義』と同じく『イケメン無罪』は世の真理。否定したとて意味は無いのです、そうでしょう?」
「……すいません、意味が分からないのですが」
「おや失礼。まあそちら側の貴方には関係のない事ですが、バカや不細工はちゃんと自覚して、遠慮して生きていくのが大事という事なのですよ」
やれやれと外人みたいなオーノーのポーズで如何にも物の分かったような事を言うクロマニキ。
だが先にサスケニキがやらかしたから冷静になっただけで状況次第で同じ事をやるのがこやつらである。
それに可愛いは正義、イケメン無罪といっても世の中には限度というものがある。
例えばこいつらの素顔がガンダムSEEDのシン・アスラン・キラだったとしてもきっと周囲の扱いは変わるまい――むしろ前世のファンだった黒札にキラ達を汚すなと暗殺されるかもしれない。
「あの、黒札の方達ですか?」
「ふむ、そう尋ねるという事は貴方は黒札ではないのですね」
「はい、僕の家族がガイア連合の黒札で、僕は金札です」
「そうでしたか、その通り私はガイア連合の黒札です。後ろの連中もですが、ガイ連でも下から数えた方が早い連中なので全然気にしなくていいですよ」
「「おいコラ」」
一人で自分だけがまともとばかりに振る舞うクロマニキに後方から制裁を終えたヨロイニキとじんわりと肝臓が痛むサスケニキがツッコむが、クロマニキは無視を決め込んだ。
「それで、考え事とは何だったんですか? 同じガイ連の誼、それに見たところ私達のが少しは年上のようです。ガイ連の先輩として少しは協力出来るかもしれませんし、よければ聞かせてくれませんか?」
まともぶった仮面に加えて先輩面まで始めたクロマニキに、後方でサスケニキとヨロイニキがうえー、と吐く真似をしていた。
そんな中、暫し考え込んだ少年は躊躇いがちに口を開く。
「強いて言えば、人間関係でしょうか」
「……もしかして、女性相手ですか?」
「えっ」
何故それを?といった顔になった少年に対し、クロマニキはカッと目を見開いて詰め寄る。
「もしや女性からモテ過ぎて困ってるとか、四六時中逆ナンされて訓練が出来ないなんていう悩んだ振りしたマウント――」
「ハイヤーッ!」
「セイハーッ!」
「はぶっ!?」
瞳孔かっぴらいて寝言抜かそうとしたバカの頬をサスケニキとヨロイニキが両側からサンドイッチパンチをぶち込んで黙らせた。
おおお、と頬を押さえて蹲るクロマニキの襟首をサスケニキが掴んで後ろに引きずっていき、今度はヨロイニキが前に出る。
「見ての通り、ありゃ自分が賢いと勘違いしてるタイプのバカだからな。犬かなんかが吠えてるとでも思っていいぞ」
「自分で言った事三分もたってないのに忘れるとは斬新な脳みそだな。どうやら全力でシメられたいとみえる」
「がああああ! つ、つい無意識に口がてギブギブギブ! これ以上は! 何かミシミシと不味い音がしてますからぁ!」
本気の卍固めをかけるサスケニキに必死でタップするが知るかとばかりに締め上げられて悲鳴をあげるクロマニキ。
少年の方はもしかしてこれ何かの撮影か何かなのでは?と思い周囲に誰か隠れてないか視線を巡らせていた。
「えーと話を戻すと、女性関係で何か悩んで一人で考え込んでたって事でいーんだよな?」
「……はい」
「んー、恋愛モノでアドバイスできるなんて自分でも思わねーけど……それでも誰かに言ったらち気分がちったあマシになるんじゃねえの?」
少し顔を赤くした少年に先に二人がやらかしたのでその分落ち着いているヨロイニキが少しばかり普段よりまともな事を言う。
「だな。こいつらも腐っても黒札だ。メシアンとか他所の神や悪魔の連中に漏らすような真似はしねえよ」
「痛たたた……ええ、逆に縁もゆかりもないからこそ言いやすい事もあるでしょう。こんな連中でも壁に話すよりはほんのちょっとマシですよ」
「先にみっともないマネした奴らがなーにぬかしてやがる。葉隠でも大事なことはかんけーねー奴に相談しろって書いてたぜ?」
ケジメを済ませて戻ってきた二人も加えて互いをナチュラルに罵りながらも少年の話を聞く態勢になる三馬鹿ラス。
その言葉を受けて暫し悩んでいた少年は、やがて意を決した様に話始めた。
――美少年説明中――
「ふーむ、チンピラに絡まれてた女性を助けたら黒札で」
「で、礼だってメシさそわれたらまたバカ共に襲われて」
「それを再び返り討ちにしたら、付き合う事になったと」
少年の話を聞いた三馬鹿ラスは腕組みしてうんうんと頷く。
「――何というか、ベタな話だな! 実際ベタ! まさにボーイ・ミーツ・ガール!」
「おうよ、手垢べったべたで最早一周回って逆に新鮮にすら思えてきたぞオレは」
「ベタとは言い換えれば王道ですからね。いつの時代にも求められる物といえます」
「は、はあ、どうも……」
何やら変に盛り上がっている三人に、何か照れ臭くなってしまった少年。
そんな彼を尻目にサスケニキが深々と溜息を吐く。
「ったく、同じ日ノ本でこんな青春真っ盛りなイベントが起きてるのに、何で俺の傍に居るのはポン菓子みたいな脳みそ持ちなんだか」
「ホントになー、なんでこんな自分を竹中半兵衛と思ってる斎藤竜興がオレの幼馴染なんだよチキショー……」
「分かってはいた事ですが本当に不公平です、天というものは。何故このような質の悪いバカとの縁などを私に与えたのか」
「「「…………」」」
ボカスカボカスカボカスカボカスカ!!
「……あの、大丈夫ですか?」
「ああ、まあ何時もの事だからさ」
「おー、別に気にしなくていいぞ」
「見た目程傷は深くないですから」
「何時もの事なんですか……」
罵り合った上に三つ巴の殴り合いを始めてボロボロになった挙句、何事もなかったかの様に振る舞う三馬鹿ラスに、少年はもう今日で何度目かも分からない何とも言えない表情を浮かべていた。
オホンと咳払いしたクロマニキが話を戻す。
「それで何を悩んでいたんですか? 聞く限り彼女が出来て喜びこそすれ悩む理由はなさそうですが」
「それは――」
「――分かったぞ!」
少年が答える前にインターセプトしたヨロイニキが挙手して叫ぶ。
「アレだ! 家で決められた許嫁が居て、その娘になんて伝えりゃいいのか悩んでるんだろ!?」
「いえ、僕に許嫁は居ませんけど」
「あるぇー? そうなん? 雰囲気とかいかにも良いトコの坊ちゃんって感じだったからさあ」
「別に家はお金持ちとか名家ではないですよ? 昔からの家業はありますけど、って後ろ!」
「へ?」
突如叫んだ少年の声に従い振り返るヨロイニキ。
「「――ちっ」」
そこには100トンと書かれた木製ハンマーを振りかぶり舌打ちするサスケニキとクロマニキの姿があった。
「うおおおっ!? な、なにやってんだテメーら!」
「そりゃこっちの台詞だ。今のはどう考えてもお前が『次のデートでCまでいっちゃおうか悩んでるのかぁ!』とか言う場面だろうが」
「全く、自分がどういう立ち位置なのかをちゃんと把握して欲しいものです。何無駄に賢しくなってるんだか」
「ザッケンナコラー! 勝手に人の立ち位置決めてんじゃねーぞゴルァ! 大体なんでオレんときだけデカい得物スタンバイしてんだよ!」
「いつもゴツイ鎧着てるお前が悪い! これぐらいやらんと不公平だろうが!」
「そもそも無駄に打たれ強いのが悪いんですよ。嫌なら自らラクンダ使うぐらいの謙虚さをもちなさい」
バカのくせにバカな事言わないのが悪いと吐き捨てる二人に完全にキレ顔になったヨロイニキ。
今にもさっきの乱闘再びといった雰囲気だが、ヨロイニキがふん、と鼻を鳴らして勝ち誇る。
「はっ、先に無様さらしたやつらに言われても何ともねーよ。見る目のねえバカには分かんねえだろうがな!」
見ろ!と少年の手を指差す。
「このたくさんのマメとタコ! この手を見りゃそんなチャラい事言わね―奴だってすぐ分かる! 手にはそいつの人生が出るんだよ!」
武術鍛錬によると思われるマメやタコのある少年の手を勝利を称える様に持ち上げて掲げるヨロイニキと困った顔の少年。
「嘘つけーっ! 持ってる装備から剣士だと思って勝手に仲間扱いしてそんな事言わないとか思っただけなんだろうが!」
「大体その言葉自体が『へうげもの』からのもろパクリでしょうが! 浅知恵がみえみえなんですよこの知力25!*3」
「ぬうう、テメーらどうしてその秘密を!? あとメガテンだと知力25はむしろ高いだろうが!」
ギャーギャーと口と拳で小競り合いを続ける三馬鹿ラスに、自分の知ってる黒札と色んな意味で違い過ぎて、ホントに黒札なのかちょっと疑い始めた少年。
「で、このっ、話を戻す、あだっ、けど、うりゃっ、何を、はぶっ、悩んでたんだ?」
パンチとキックを止めないままで話しかけるヨロイニキ。
止めた方がいいのか考えていた少年の顔がその問いに曇り、暫しの沈黙の後、静かに話始める。
「……理由はどうあれ、責任は取らないといけない。『男なんだからやった事の責任は取れる男になれ』って教えてくれた人を裏切る事はしたくない。だから正式にお付き合いをする事はいいんです」
その表情に三馬鹿ラスも他二人への攻撃を止める。
助けた相手と付き合うのに、責任とか随分真面目だなあと思いつつも話の続きを促す。
「でも、僕とお付き合いをする事で、相手の人を逆に苦しませたり傷つけてしまわないか、寧ろ不幸にしてしまうんじゃないか……そんな思いが、どうしても頭から離れないんです」
何かに堪えるような、何かを怖れるような、そんな憂い一杯の声と顔で語る少年に、三馬鹿ラスは無言で顔を見合わせた。
「……タイム! ちょっと作戦タイムを!」
そうサスケニキが告げて、シュババと距離を取った三人が円陣を組んで全力で声を潜めて話し合う。
「……想像以上に何か重い感じの話になった件について。さてどうしたもんかな」
「でもよ、何であんなに不安がってんだ? ふつー彼女が出来たらもっと浮かれるもんじゃねえの? いたことないから想像だけど」
「多分、こちらに言ってない別の事情があるのでしょう……そこはスルーしましょう、このメガテン世界の覚醒者となればどんな厄ネタ抱えててもおかしくないのですから」
クロマニキの言葉にうんうんと頷くサスケニキとヨロイニキ。
「でもよー、もう脱出するべきじゃねーか? オレらじゃムリだろこれ」
「確かにどう考えても愚痴吐き用の壁程度にしかなれないでしょうねえ」
「……いや、まだ粘ってみよう」
重そうな話と雰囲気に既に及び腰なヨロイニキとクロマニキだが、サスケニキのみが続行の構えをみせる。
理由を視線で問うてくる二人にサスケニキは無駄に腹をくくった表情で答えた。
「言い出しっぺとしては脱出に抵抗があるというのも無論あるが、まあ考えてみろよ」
あるんかいという顔になる二人に構わず話を続けるサスケニキ。
「あの少年、現地民としてはSR級の上澄みで、身内に高そうな装備用意してくれる黒札が居て、そんであの容姿だぞ。将来どうなると思う?」
「どうってそりゃあ……モテモテだろうなあ、現地民や悪魔、下手すりゃ黒札からも」
「きっと昔の雑誌に載ってた『勝ちまくりモテまくり』とかリアルでやれちゃうでしょうね」
そんな感想を返すヨロイニキ、クロマニキに大きく頷きながらサスケニキが告げた。
「そう、そんぐらい出来ちゃいそうな少年だ。そして考えてみろ、そんな子が一人の相手と若い身空で添い遂げると奥ゆかしく言ってるんだ――それは実に『遠慮して生きている』と言えるんじゃないか?」
その言葉にヨロイニキもクロマニキもはっとした表情を浮かべて考え込んだ。
「俺はガイ連の先輩として、僅かだが年上として、そして何より遠慮して生きていく同胞として、少しでも協力してやろうと思う――お前らはどうする?」
「……そいつを言われちまったらなあ。しゃーねえ、なんか出来るとも思えねーけどやるだけやってみるか」
「先輩云々と最初に言い出したのはこの私です。致し方ありません、自らの発言の責任を取るとしましょうか」
無駄に決め顔になったヨロイニキとクロマニキに、サスケニキもうむ、と頷くと円陣を解いた三馬鹿ラスはシュタタと少年の元へと戻った。
「作戦タイム終了! 分かった、余り役には立てないだろうがミヤモト・マサシも『三人集まればブッダ』と言っている! 相談に乗ろう!」
ビシッとポーズを決めてやる気を示す三馬鹿ラスに、少年は本日何度目かの『なんだろうこの人達』と思ったのであった。
◇
「でだ。相手を不幸にしてしまうかもという不安か……うーん、このメガテン世、ゲフンゲフン! 昨今の世相ならまず強くなるのが一番だと思うが」
「それはもうやってるからなあ、手のマメや装備みりゃ分かる。それにムチャなレベル上げや強化は色々危ねーだろ。下手すりゃ悪魔やミュータントになっちまうぞ」
「それに手っ取り早い手段ではあっても最適解とは言い難いですしね。強いなら何でも上手くいくのなら、世の中苦労はないです」
理由は兎も角、本気になった三馬鹿ラスは、少年と同じテーブルに付いて真剣に話し合っていた。
肝心の少年は連中のその場のノリの行動に付いていけず戸惑っていたが。
そして少年の方を向いたクロマニキが話しかける。
「とはいえこれは相手の居る話。ならば一番に話すべきはその相手でしょう。お付き合いしてる人には伝えたんですか? あと貴方の身内の黒札には?」
「……」
そう問いかけるクロマニキに対し、少年は少し俯いて無言になった。
「――まあ、そうですよね。言えませんよね、相手の娘には」
「同じようにその黒札の身内にもな。ま、その気持ちはよく分かるぜ」
「そりゃー意地ってもんがあるもんなあ、男と漢と男の子にはよー」
苦笑しつつクロマニキが言い、残りの二人も同意する発言に驚いた様に少年が顔を上げ、そんな少年を見て三馬鹿ラスは腕組みしてうんうんと頷く。
「そりゃ男なら誰だって自分の彼女に弱音吐いてるとこや格好悪いとこなんか見せたい訳ないよな、すげえ良く分かる」
「つまんない意地とか言われるけどさー、男としちゃあ意地の一つも張れないでどうすんだよって思っちまうよなー」
「下らないと言われるかもしれませんが、何だかんだ言っても男って矜持に依って立つ生き物な所ありますからねえ」
「まあでも間違ってはないと思うぜ? だってそんな意地も張れないでいざって時にその娘を守れるのかって話だしな」
なあ?と他二人に対して問うサスケニキに、ヨロイニキとクロマニキも頷いて同意する。
そんなやり取りを見た驚いた表情のままだった少年がぽつりと呟いた。
「やっぱり、皆さんも黒札なんですね」
「え、何。どしたの急に」
少年の発言にハテナ顔になる三馬鹿ラス。
「あ、ごめんなさい。悪い意味じゃなくて……以前黒札の人達は個人差はあるけど、皆何処か大人びてたり、年の割に色々経験を重ねた様子の人が多いって聞いた事があったんです。僕とそんなに変わらないのに、大人びてるなと思って」
「あー……まあ稀に良くそうらしいな」
「えーと、確かにそーゆー奴多いのかもなー」
「まあその、色々あるんですよ、そう色々」
黒札の身内とはいえ、黒札が全員前世持ちの転生者だと馬鹿正直に教える訳にもいかないので、三馬鹿ラスは奥歯に物が挟まった様な言い方で誤魔化した。
なお幾ら前世含めたら彼らは親子以上に年が離れているとはいえ、こいつらが大人びてると思うのは間違いなく錯覚であろう。
咳払いしたサスケニキが話題を戻そうとする。
「兎に角だ、相手に相談が出来んなら別の手を考えにゃならん。その為にも情報がいるな」
「だな、敵を知り、己を知れば百戦危うからずってやつだ」
「そういえば、そのお付き合いしてる人ってどんな人か聞いてなかったですね」
言われてみればと、今更な話に気付いた三馬鹿ラス。
サスケニキが早速少年にぐぐっと詰め寄って尋ねる。
「で、どんな子? 美人系? 可愛い系? 年下? 年上? スレンダー? ナイスバディ? パツキン? 黒髪? 日本人? コーカソイド? アジア系?――あいたっ!」
「落ち着けドアホ」
ゴチンと鈍い音が響き、拳骨を垂直にバカの頭に入れて止めたヨロイニキと蹲るサスケニキ。
無意味な圧力にちょっと圧倒されてた少年は、バカが襟首掴まれて所定の位置に戻った事で、返事を返す。
「と、年上の人……です。どちらかというと、綺麗な人、だと思います」
「ほうほう、年上のお姉さんか。優しくリードされちゃったりなんかして?」
「きれーなお姉さんは好きですか? 嫌いな奴はいねえよ! ってやつだな」
照れた顔の少年をにやにやしながらこのこのーと突っつくサスケニキとヨロイニキ。
が、クロマニキは少年の様子に何かを感じとり、同時に何かを嗅ぎ付けた。
「……ちょっといいですか? 確認ですけど貴方何歳ですか?」
「え、十五歳ですけど」
「やっぱ年下か。まあ見た目からそうだろうとは思ってたけど、この業界見た目が当てにならないからなあ」
「どーみても年上にゃー見えねえもんなー、先輩、もしくはパイセンと呼んでもいーんだぜ?」
「はいそこ、お黙る。そうですか、ありがとうございます。ではもう一つ質問します」
先程のサスケニキ程ではないが、ぐっと詰めたクロマニキがじっと少年を見つめながら問い掛けた。
「正直に答えて下さいね?――貴方とお付き合いしてる女性って、幾つですか?」
「……十九歳、です」
「そうですか」
少しだけ目を逸らしながら答える少年に、ふむと頷いた後、クロマニキは告げた。
「――で、本当は?」
「…………二十、五歳です」
更に目を逸らしながらの回答に、三馬鹿ラスも暫く無言になった。
「ボーイ・ミーツ・ガールじゃなかった、って言ったらやっぱ怒られるか? まあ男が幾つになっても少年の心を持ってるのと同様に、女の心の中にはお姫様が住んでるっていうらしいしなあ」
「『心はいつも十七歳』という名言もあるもんな。しかしまさかの二桁差か……どう考えても男と女が逆だったら犯罪臭パないっつーかぜってーお巡りさん出張ってくる案件だよなあ、これ」
「イメージはそうですけど、一応逆じゃなくてもポリスメン呼べな内容ですからね? そりゃこの業界自体が法律何それ美味しいの、塩ふって焼いたら香ばしかったりするのなとこありますけど」
いきなりの事案発生に流石の三馬鹿ラスもざわ…ざわ…せざるを得なくなっていたが、黒札にはよくある事と思い直すと、得られた値千金の情報に思考を回す。
「しかしだ、これはあれだよな?」
「ああ、間違いねーと思うぜ」
「ならば、取るべき手段は」
アイコンタクトを交わした三人は最後の確認とばかりにサスケニキが尋ねる。
「もしかしてなんだか、相手の黒札って、少年を好みど真ん中だとか理想の相手とか言ってなかった?」
「え、どうしてそれを」
一字一句の違いなく当てられた事に驚いていると思われる少年の反応に、自分達の予想が当たった事と、伝えるべきアドバイスが確定した事で三馬鹿ラスは互いに頷き合うと、少年に向き直って話し始めた。
「まず最初に謝っておく、少年の意地や気持ちが分かると肯定しておいて、今更意見をひっくり返す事になってすまない」
「それでもだ。一番いい手が分かっちまった以上は、教えなかったりウソついて遠回りな手を言う方がヒデーじゃんと思うんだ」
「結論から申し上げますと――お付き合いしてる女性に、今の気持ちや不安を話して悩みを共有する事、それが間違いなくベストな方法です」
サスケニキの言う通り、先程の意見を翻した内容にそれが出来ない、したくないから悩んでいた少年は顔に微かな不満を浮かべるが、少年が言葉を発する前にサスケニキが掌を突き出して遮った。
「言いたい事は分かる! 不満なのも分かる! でもこいつが間違いなくベストなんだ、ホントに! 実際本当!」
「『武士は犬と言われても畜生と言われても勝つのが大事』*4って言うだろ!? ここは意地を捨てる時なんだってマジで!」
「取り合えず話を最後まで聞いて下さい! 話せば分かる! 話せば分かる! 話せばきっと分かりますから!」
「「「――だって少年が理想なんていう俺たち
まるでこの世の真理を、変わることなき絶対の法則を語るかの如くに断言する三馬鹿ラス。
何故なら前世からの――もしかしたら前世は男とか今世からショタに目覚めたといった可能性もある筈なのだが――ショタコンであろう歴戦のショタ好きな黒札が、こんな美少年に弱音を吐かれたり憂いに満ちた貌をされて喜ばない等という事があり得るだろうか、ある筈がない、反語。
無駄に自信と確信に満ち溢れた三人の姿に少年も戸惑いながらも耳を傾ける――なお幸い
「詳しくは言えねえけど、同じ黒札だから分かるってやつなんだって! ミヤモト・マサシも『疑いだすとキリが無い』と言っている!」
「ぜってーそうなるから! 確実! そうコーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実! 黒札ならそーなるから!」
「必ず上手くいきます! いかない筈がない! もし上手くいかなかったら木の下に埋めて貰っても構いませんから!」
「同じ黒札だから、ですか……」
少年からすると訳の分からない理屈だが、それでもやたらと必死に訴えてくる様子に思う事があったのか、納得しきれずとも考える様子を見せた。
「それにです。貴方責任を取るって言ってましたよね? つまりお付き合いだけでなく、その先の事――結婚まで考えてるんでしょう?」
クロマニキの問いかけに、それについては迷う事無く頷いてみせる少年に、同じく頷いてクロマニキは続けた。
「それならば、尚の事話すべきだと思います。ただお付き合いしてるだけなら兎も角、結婚して家族になるというなら、弱みや不安な部分を隠したままで、とはいかないでしょう」
「あー、確かにな。どんなに頑張って誤魔化そうとしても、家族として過ごすうちに何時かきっとボロが出るだろうな」
「……」
クロマニキとサスケニキの言葉に、否定出来ないものを感じたのか無言になる少年にうんうんと首肯したヨロイニキが語る。
「一緒に居たら否が応でも色々分かっちまうもんだからなー、調べようとしなくったって気付いちまう事もあるしなー。例えばオレなんかガキの頃から一緒のせいでこいつらの秘密とかいくらでも出てくるもんな」
「小学校でクラスの女子に『義理だから絶対勘違いしないでね』ってもらったチョコの包み紙、今でも大事に保管してるとか*5」
「そうですね、限界に挑むと口一杯の風船ガム膨らませて、顔どころか頭全部ガム塗れになった結果丸坊主になったとか*6」
「だな、踏切で真剣白刃取りやろうとして失敗して、直撃食らって呻いてる所に追撃のアッパーカットも食らわされたとか*7」
「「「……」」」
オラオラオラオラオラァ!ドララララー!ムダムダムダムダァ!
「あー、それでだ。抵抗はあると思うけど相手と話した方が良いと思う」
「どの道いつかは言わなきゃならんなら今やっても変わんないだろうしな」
「案ずるより産むが易しと言います。きっと上手くいきますよ」
真面目な話をしてたと思ったらの再びの殴り合い、そしてまた何事もなかったように話を戻す三馬鹿ラスに、少年はこの人達何処まで本気なんだろうか、それともこれがこの人達の本気なのだろうかと悩んでいた。
その時クロマニキがポンと手を叩き、サスケニキに耳打ちした。
「そうだ、ちょっと耳を。少年に――」
「――ふむふむ、それはいい考えだ。じゃ、行ってくる」
そしてシュタタタとサスケニキは何処かへ向かって走り去り、腐っても速特化の覚醒者のサスケニキはあっという間に見えなくなった。
そのスピードを見た少年は思わずといった様子でぽつりと呟いた。
「皆さん、やっぱり覚醒した黒札の方達なんですね」
「まー自称とはいえあいつニンジャだからなー、足は速えさ」
「あれ、もしかして私達黒札かどうか疑われてました?」
そんなやり取りをするうちにシュタタタと戻ってきたサスケニキは大きめの手さげ紙袋を抱えていた。
「待たせたな! と、では【これを君にあげましょう。】」
そうして持ってきた紙袋をはいどうぞと少年に渡す。
いきなり渡されたそれを咄嗟に受け取ってしまった少年は戸惑いながらも尋ねた。
「わ。これは一体?」
「賛成するつっといて手のひら返ししちまったからな。そのワビ代わりって事で」
「貴方と貴方のお付き合いしてる方のこれからの為に、色々参考になると思われる色々な作品の詰め合わせです」
遠慮せず持ってけと笑うサスケニキと中身の補足をするクロマニキ。
その言葉に袋の中を見る少年だが、紙袋の中身は更に厚めの紙袋が入っており、中身が見えない様になっていた。
「中を見るのは後で部屋で一人ん時にしとけ。相手にも秘密にしといた方がいーぞ。こういうのは内緒でやるモンだからな」
ヨロイニキの言葉に袋を開けるのを止めた少年は思わずといった様子で呟く。
「作品、という事は映画や小説という事ですか」
その声音に疑念を読み取った三馬鹿ラスはそう捨てたもんじゃないぞと笑って答える。
「他にも漫画やゲームなんかもあるぞ。映画や小説みたいな出会いや恋愛に憧れる女の話は聞いた事ないか? そう馬鹿にしたもんじゃないぜ」
「そーそー。例えば剣の訓練なら真剣振るのが一番かもしれねーけど、竹刀や木刀つかった稽古がムダってわけじゃねーだろ?」
「恋愛するのが人なら恋愛作品を作るのも同じ人です。鵜呑みするべきではなくとも全くの筋違いという事もない筈です。黒札相手なら尚の事に」
「……そう、なんですか? でも会ったばかりの人にこんなに沢山――」
自信ありげな三馬鹿ラスの言い分に迷いながらも、大量の本その他を貰う訳にはと少年が返却しようとしたその時。
「ああっ! もう時間過ぎてるぞ!」
「げっ、マジか!? マジだ!」
「つい話に集中しすぎましたか!」
公園の時計で現在の時間に気付いたサスケニキが大声を上げ、ヨロイニキ、クロマニキもしまったと叫ぶ。
「既にインストラクションは終わっている! ダイジョブダッテ! オタッシャデー!」
「そいつは好きにつかってくれ、もっかい言うが中を見るときゃ一人でな。武運を祈る!」
「それでは失礼しますね! 貴方と貴方のお付き合いしている未来のお嫁さんに幸あれ!」
ビシッと手を挙げて別れの言葉を伝えると三人はすたこらさっさと走り去っていく。
去り際に、風呂入れよ!歯磨けよ!顔洗えよ!風邪ひくなよ!上手くやれよ!頑張れよ!とドップラー効果を聞かせながら遠ざかっていく三馬鹿ラスを少年は茫然と見送るしか出来なかった。
台風一過としか表現出来ない有様に暫し立ち竦んでいた少年だが、抱えている紙袋をみて呟いた。
「……これ、どうしよう」
割と最近にチンピラや破落戸の様な黒札に襲われた――しかもガイア連合製の道具でとあっては、どうしても警戒心が先に立つ。
が、自分の知る黒札――件のチンピラ連中を含む――とはあまりにも違い過ぎる先程の三人に、判断を決めかねていた。
しかし、もしかしたらあの振る舞いは演技であり、こちらを何らかの罠にはめようとしているのでは――
「いや、それはないか」
そこまで考えたところで自分の考えを否定する、思わず声に出してしまう程に。
もし何らかの罠を狙っての演技ならば、信頼を得る為にもっと善人、人格者として振る舞う筈だ。
あんな――その、何というか、色々とユニークな人達を演じる理由はどう考えてもないと己の疑いを一蹴した。
一蹴したが、それはそれでこの紙袋の中身をどうするかという問題はそのままな訳で。
「今更だけど、あの人達の名前も分からないんだよなあ……」
結構な時間話してたのにお互いに名乗りもしてなかったという事実に、自分が本当に混乱してたんだなあと実感する少年。
そのまま色々と考えていた少年だが、やがて手さげ紙袋を持ち直すと歩き始める。
「姉さんにあの人達の事聞いてみよう、もしかしたら知ってるかもしれない。紙袋については……どうするかはその後で決めよう」
名前は分からずとも、色んな意味で目立ちそうなあの人達なら、姿を伝えれば姉はすぐ分かるだろうと考えながら。
なお、その結果が連中を知ってる者なら当然の結果だが、連中を知らない少年にとっては色んな意味で想像の遥か斜め上をゆく事になるのを、彼はまだ知らない。
◇
そして同じ頃、アガシオンを迎えにとっとこ山梨支部を駆ける三馬鹿ラス達。
走りながらヨロイニキがサスケニキに問い掛けた。
「なあ、なんでおめーあの少年に手ぇかしたんだ? オレはおなじ剣士、侍のよしみってやつだがお前は違うだろ」
「ですよねえ。正直何時爆発しろと叫びだすかと思ってフルスイングの準備してたのに無駄になってしまいました」
「人の事言えた義理かテメーら!――まあ爆発しろと思わなかったと言えば嘘になるが」
「やっぱりな」
「だと思いました」
「だから人の事言えねえだろうがおのれ等ぁ!……だってよう」
何とも言い難い顔をしたサスケニキが続ける。
「ここはメガテン世界だぞ? 次あった時には死に別れたとか普通にあり得るんだぞ」
「あー……確かになあ。ガイ連なら大体は蘇生出来るとはいえ百パーとは限らねえしなあ」
「魂持ってかれたらアウトですしねえ……下手すると母子合体悪魔人*8みたいな事態すら」
「「おい、やめろ、マジやめろ」」
レギュレーション違反なイベントを例えに出したクロマニキをマジ顔で制止するサスケニキとヨロイニキ。
兎に角だと少し顔色が悪くなったサスケニキが叫ぶ。
「そりゃあさ、爆発しろとは思うさ! だけど俺が見たいのはもっとこうプークスクスと笑える黒焦げアフロで口からケホッと煙吐くようなやつなんだよ! ガチで血と肉片が飛び散る爆発なんか断じて望んでもないし見たくもないんだよ! 分かるだろ!? 分かれ!」
「ああ、うん。爆発しろといってマジで爆死されるのは流石にシャレになんねーからな」
「言った後で『愛し合う2人はいつも一緒!!*9』とかなった日には罪悪感で死んじゃいますもんね」
ヨロイニキ、クロマニキもサスケニキの言い分に納得せざるを得なかった。
少し悪くなった雰囲気をぶち壊す様に三馬鹿ラスは大声で話す。
「まあ中々見所がありそうな少年だったしきっと上手くいく筈だ! ヨシ!」
「相手の黒札の姉ちゃんもきっと前世からの夢がかなうだろうから、ヨシ!」
「私達も暇つぶししながら人助けという徳を積むことが出来たから、ヨシ!」
「「「トリプルチェック、じゃなくてトリプルウィン、ヨシ!!」」」
そんな事を言いながら空気を立て直し、てってけ走る三馬鹿ラス。
が、雰囲気を変えたにもかかわらず、三馬鹿ラス達は何か違和感を感じていた。
何が原因か分からない、首筋にねっとりと纏わりつく正体不明の悪寒。
例えるならば、これを押したら自分に悪い事が起こる、そんなボタンがあるとして、今そのボタンをずっと撫でまわされているような感覚。
そんなモノを身体の内側から強く感じた三馬鹿ラスは、思わず呟いていた。
「「「なにかまた悪い予感がしてきたのう……」」」
◇
ある日のガイア連合山梨支部、事務所にて。
「三馬鹿ラスの大バカ共は何処!!? 出てきなさい三馬鹿ラス!! あのろくでなし共は何処にいるの!!」
「キャア!」
「何歳差からおねショタと呼ぶのを許されるのかクロアネキと議論すると福島支部へ行きました!」
大事な大事な可愛い弟*10に全年齢とR-18両方の多数のおねショタ作品をプレゼントするという暴挙を行ったバカ共に制裁するべくぶちギレ金剛で爆音と共に入口を吹き飛ばして飛び込んできた恋ネキと、悲鳴を上げる名誉店長ネキ、慄きながら三馬鹿ラスの行き先を答えるちひろネキの姿があったという。
なおこち亀においては一週間かけて説得して何とか元の鞘に収めているという設定がある。
が、溺愛する弟にちょっかいだされて怒髪衝天な恋ネキの怒りが、その程度で静まる筈もなく。
打首獄門の上、市中引き回しという裁きが申し渡されたが、流石にそれは止められ。
罪一等を減じての無人島への島流しはこいつら何だかんだでキャンプの様に楽しみそうと却下。
馬型シキガミに繋いで山梨支部内を引きずり回すのは子供が目撃したら教育に悪いという判断で取り止め。
最終的に、山梨支部内での清掃その他の奉仕活動――ただし鉄球付き足枷や某亀な仙人の修行の様な甲羅や77の輝輪といった重りを多数装備して――という判決が下る。
そして山梨支部にてボッコボコな顔で大量の重りに加えて首に『私は純粋な少年を悪の道に誘いました』『教育に悪いので子供は近づかないで下さい』等と書かれたプラカードを掛けて雑用シキガミ達とひーこらしながら清掃活動や補修を行う三馬鹿ラスが居たのであった。
「ウケのためにそこまで体はるなんてやっぱすごいな、にーちゃんたち! あこがれないけど少しそんけーするぞ」
「でもそんなネタずっと続けるのムリじゃない? ほかのネタも考えなきゃあきられちゃうよ」
「これもお仕事なんだよね? おわったらまたみんなで遊んであげるからがんばってね!」
なお近づかないで下さいのプラカードがあるにもかかわらず、バカ達に声を掛ける子供は割と居たらしく、だから芸人じゃねえ、危ねーから近寄んな、何でこっちが遊んでもらう側?と息も絶え絶えにあっち行ってろする三馬鹿ラスの姿があったという。
この件の後、三馬鹿ラスは少年こと閑を時々カラオケやゲーセン等の遊びに誘ったりする様になってしまい、恋ネキだけでなく蜜ネキ*11と花蓮ネキ*12にとっても頭痛の元となる。
なお、閑のお付き合いしてる相手が二人で十九歳と答えたのが嘘でなかった事、加えて酒に酔った勢い込みとはいえ、年上女性二人を口説いてそのままハジメテで3〈ピー!〉までいってしまったというベタな王道の陰に隠れたエロゲの如き事実を聞いた三馬鹿ラスは驚愕。
結果本気四割、嫉妬三割、からかい三割で『そうそう出来ることじゃないっすよ閑センパイ』『マジぱねぇっすわ閑パイセン』といった具合に閑を閑センパイ、または閑パイセンと呼ぶ様になり、閑からのセンパイ呼びは止めて下さいよというやり取りが彼らの間でお約束になる――
「貴方達が先輩呼びしたらウチの閑まで貴方達の同類だと誤解されるでしょうが!!」
――前に、恋ネキ怒りの七星閃空脚*13でぶっ飛ばされ強制終了させられるのは、また別の話である。
おまけ・スキル【鬼神の加護】*14を教えられた三馬鹿ラスの反応
「つまり名前の通り鬼から与えられた力を使うスキルな訳だ」
「……はい」
「つーことは、鬼の力を使う剣士、侍ってわけか」
「それはつまり鬼の如き強さの、いえ鬼の力をもった、武者……」
「成程、棒読みな喋り方で空前絶後のバッサリ感で悪魔をぶった切るんだな!」
「で、棒読みじゃなくなったところでジャン・レノと一緒に信長を倒すのか!」
「そして力を封じて白髪になってズババババッサリ感で幻魔と戦うんですね!」
「え、ええー……?」
「あ、幻魔滅ぼすのは不味いか。メガテンの幻魔ってナタクみたいな人間の側が多い種族だし」
「あっちの幻魔は見た目グロくてゲテモノになった過激派天使みてーな連中だからなあ」
「でも幻魔界最高の剣士*15さんならワンチャン味方になってくれそうな感じしますよね」
「あー、確かに。俺キャラ含めてシリーズだと愛と哀しみのバッサリ感の2が一番好きなんだよな」
「すげーよく分かる! テーマソングもRUSSIAN ROULETTE*16が一番好きだなオレ」
「他や浜崎あ〇みも決して悪くはないんですけどねえ」
「なんか歌いたくなってきたな。カラオケいくか?」
「「さんせー」」
「……あ、あのー……」
「あ、閑たんインしたお!」
「「こんにちわ~^^」」
「よーしカラオケいくかー^^」
「「おー^^」」
「え、僕も?」
「おや、カラオケは嫌いですか?」
「いえ、行った事なくて」
「そっかそっか! んじゃ先輩が奢っちゃる、初体験といこうか!」
「こーいうのはデカい声出すだけでも楽しーもんだからな!」
「取り合えずYeah! とかWOW! とか叫ぶだけでも割とスッキリしますよ?」
「「「それじゃあいくぞ、オー!!」」」
「……お、オー」
その後、一緒にカラオケに行って、少し仲良くなった。
―以下どうでもいいバカ共の設定―
基本嫁持ちには嫉妬する、なおその場のノリ。
特に幼馴染系は自分達の幼馴染がああなのでヒートアップし易い。
が、話の流れ次第では今回みたいになる事もある、作中あれこれ理由を言ってるが基本はやはりその場のノリと勢い。
実は三人とも現地人、黒札、悪魔といった相手とお付き合いする気はないし、出来るとも思っていない、要は諦めている。
黒札なんだから振る舞い見直せばもう少し何とかなるのではという話ではあるが、連中にその気はなし。
これは「ありのままの自分を好きになってほしい」なんていう贅沢な虫のいい理由ではなく(そう思ってないとは言ってない)絶対にすぐボロが出ておじゃんになると確信してるから。
結果相手を幻滅させて互いにイヤな思いをするより最初から地のままで居る方がお互いにとって良いだろうと思っている。
理想のシキガミ嫁への拘りもこんな自分達でもシキガミ嫁ならばという思いが理由の一部、なおあくまでも一部である。
これらはメタ視点による解説であり、実際はここまではっきりと考えや理由が当人達の中で形になっている訳ではない――三馬鹿ラスの中ではもっと漠然とした、なんとなくといった自分でもよく分からない認識。
なので時にはモテる為のアクションその他を起こしたりもする、結局はその場のノリと勢いで生きている連中。
諦めてるのなら嫉妬したり羨ましがることもない筈なのだが、それはそれ、これはこれで嫉妬や羨むのがこやつらである。
鬼神の加護の説明の「閑が活躍する様を本霊が観たい為」を見て、日頃のやらかしやバカな生態を楽しまれているウチのバカ共とある意味同じだなあと思ったらネタが降りてきました。
でも書いてて元ネタの緋雨閑丸のイメージが強くなりすぎてしまった気がします、恋ネキの教育と愛情の成果か元ネタより明るくしっかりした子ですし。
作中の閑君は十五歳なので時には不安になる時もある+姉とも将来の嫁達とも大叔父ともチンピラ連中とも人生の芸風が違い過ぎる相手に戸惑っていたという事で。
色々な悩みを抱えたキャラがハイレベルなボンクラやおバカな連中を見てなんか悩まなくていい気がしてきた、となるシーンが筆者は好きです。
なので三馬鹿ラスを見た閑君が少しは気が楽になったらいいなあと思いますw
それでは最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。