現代ダンジョン潜っていたらTSトラップ踏んだ件 作:highvall
高難易度ダンジョン。
その隠された一室。
「ハァ……ハァ……やっと、やっとだ」
俺の目の前には部屋の中央の台座の上に置かれたポーションがある。
高難易度ダンジョンのどこかに存在すると言われている幻のポーション。
その名を『アフロディーテの涙』という。
その効能は……『アフロディーテの涙』を浴びたものは誰もが羨む絶世の美男美女になれることが出来るという。まさか実在していたとは……。
アレを手に入れればイケメンに……いや、一攫千金も夢じゃない。
これを手に入れるために苦労した。自分のレベルに釣り合わないこの高難易度ダンジョンで敵との接触を避け、時には追われながら必死に探し回った。そして、それらの努力は無駄ではなかったということだ。
俺は疲れと傷でフラフラになりながらも中央の台座に向かって進む。
あともうちょっと……あと少し。
台座の目の前にまで到着し『アフロディーテの涙』に手を伸ばす。
疲労困憊の状態で目の前に垂らされた甘い蜜。どこか油断していたのだろう。
足元にピンク色の魔法陣が浮かび上がる。
「ッ!!」
なんの魔法陣か分からない。だけど重要なのはそれではない。
急いで回避を試みるが、間に合いそうにない。
だが、泣きっ面に蜂というべきか、不運に不運は重なる。
こつん。
「あっ」
避けようと身をよじった結果……俺の手が『アフロディーテの涙』に当たってしまった。
台座から転げおちる『アフロディーテの涙』を何とか拾おうとするが、上手くつかめず……俺はそれでも諦めきれずに地面に倒れ込みながらも、手を伸ばす。
パリンと音共に砕け散り、中身が溢れる。
掴み損ねた俺は、絶望に打ちひしがれながら地面に頭を強打し、意識を失った。
意識を失う直前に見た光景は、視界を埋め尽くさんばかりのピンク色の光だった。
「うっ……」
頭を強く打ち付けたせいか、鈍い痛みが襲う。ゆっくりと体を起こす。
一体何があったんだっけ……ぼんやりと記憶を遡ると、血の気が引いていく。
「あのポーションは⁉」
俺は藁にも縋る思いであたりを見渡すと、そこには砕け散ったポーションの瓶のみが転がっていた。
くそっ、くそ! 折角ここまで辿り着いたのに。
だけど気になることがもう一つ。意識が途切れる前に見たあのピンク色の光はなんだったのだろうか? 初めて見る魔法陣だったが、どこか別の部屋に飛ばされたとかいうわけでもないようだ。
となると、デバフ系か? 俺は自身の身体に何らかの影響が出ていないか視線を自分の胸のあたりに向ける。
視線を向けたところで、思わず突飛な声が漏れ出る。
「えっ……」
そこには見慣れない二つの丘。果たしてこれは現実なのか?
俺は恐る恐る手を伸ばし、その丘に触れる。
ふにゅん。
Tシャツ越しにも感じるこの弾力と、押した指を包み込む抱擁力……本物だ。
どういうことどういうこと。
俺は混乱しながら、何がいったいどうなっているのかわからずテンパってしまう。
いや待て、そういや俺の大事なアレは?
俺は……確認するのも怖いが、手を恐る恐る股間に伸ばす。
そこには……長年連れ添った友人の姿はなかった。
俺は荷物から小さい手鏡を取り出し、覗き込む。
そこには、卵型のフェイスラインに黒髪ロング。整った眉に、のびのびとした睫毛。ほとんど見慣れないものだが、唯一変わらないのは瞳の色だ。アメジスト色の瞳が鏡を反射してこちらを見つめている。
どうやら……俺は、女の子になってしまったらしい。