現代ダンジョン潜っていたらTSトラップ踏んだ件   作:highvall

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第三話

 

微睡みの意識の中で昔の学校のころを思い出していた。

見た目が良くなく、コミュニケーションが苦手だった俺は、みんなから距離を置かれていた。そんな状況でも、なんとか変えようと努力したが中々実を結ばなかった。それはスキルを覚醒した時も変わらなかった。隠密という地味なスキルで、パーティーへ入れてくれと頼んでも困った顔をされながら断られたりした。

それが悔しくて、恥ずかしくて、嫌だった。

そんな自分自身を変えるために『アフロディーテの涙』を探していたのだが……そうだ。俺はダンジョンにいるんだ。

それに気づいた瞬間、俺の意識は急速に浮上する。

 

「んっ……」

「起きた?」

 

目を開けると、目の前には見知らぬ背中がある。周りを見れば、壁が凄い勢いで後ろに行き、凄い速度で走っているのがわかる。だけど不思議なことに揺れをほとんど感じない。

自身の体を核にすると知らないコートを羽織っている。

 

「さすがに、あのままにしておくのは申し訳ないと思ってね」

「あ、ありがとう……ございます」

 

……誰かに優しくしてもらうのはいつぶりだろうか。

 

「可愛らしい少女を助けるのは騎士として当然のことだよ」

 

青年は冗談めかして答えるが、俺は複雑な気持ちになり唇を噛み締める。

助けてもらったのに、こんなことを考えるのは失礼だと思うのに考えざるを得ない。果たしてこの青年は、俺が美少女じゃなくても助けてくれたのだろうか?

答えは出ていたような気がするが、それを考えるのが嫌になる。

そんなことを考えていると青年は俺のことを背負ながらも声をかけてくる。

 

「そういえば、君みたいな少女が一人でなぜこんなところに? 仲間は?」

 

俺は青年の問いかけに答えるか迷った。

もし、理由を話して俺が男だったと判明すれば見捨てられるのではないかと不安に思ってしまったのだ。

あんだけ、女体化したこの体を頼りなく思っていたのに、こういう時に利用しようとする自分に苛立ちすら覚える。

 

「すまない。聞くべきじゃなかったかな」

 

俺が答えずにいると、青年はテンションを落とした声で話す。

どうやら、俺は仲間に見捨てられたか、仲間が全滅したのかと誤解を与えたようだ。

 

「いえ……自分こそ、すいません」

 

結局俺も彼の勘違いを否定せずに、理由を隠すことにしてしまった。

 

その後は会話が続かず、時間だけが過ぎていく。

 

気付けばダンジョンの外に到着していた。

 

「さてと」

 

青年は屈み、俺は青年の背中から降りる。

青年は立ち上がると俺と向き直る。

青年は少しばかり俺のことを見つめると、顔を赤らめながら視線を逸らす。

 

「コートは……そのままあげるよ」

 

そういやオーガに服を破られたんだっけ。俺は恥ずかしさを覚えて、コードを深く羽織る。男だったら気にしないはずなのに、なぜかこの体で恥ずかしさを覚えるのはなぜなのか、疑問に感じないわけではないが……なぜか気づいたらそうしてしまった。

俺は俯いていたら、青年から心配そうに声がかかる。

 

「この後帰れそう?」

「えっ……あっはい」

 

俺はハッとして顔を上げ、頷く。

すると青年は安堵するかのように笑みを浮かべる。

 

「良かった。じゃあ、気を付けてね」

 

青年はそう挨拶すると、踵を返してダンジョンの方に潜っていく。

あの高難易度ダンジョンを一人で行くというのか……その姿には憧れる。

あっ。お礼をしてない。

 

「あ、あの。ありがとうございました。この恩は必ず」

 

今の自分に何かが出来るわけでもないが、危機的状況を救ってくれたこの青年に感謝を述べずにはいられなかった。青年は振り返る。

 

「気にしなくていいよ。僕の騎士道がそうしろって言っただけだからさ」

 

俺は深々と頭を下げ、青年がダンジョンに消えていくまで待っていた。

彼がダンジョンに消えてやっと俺は上体を起こす。

 

いろいろあったが……とりあえず帰るか……。

俺は、ダンジョンを背にし帰り道についた。

 

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