転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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百三 マッドアルケミソードマン

 アルケ。

 七刀の一人にして錬金術師の剣士。

 ついたあだ名が錬金剣士。

 七刀としての称号ではない。

 そっちは……なんだったっけ。

 その性格を一言で言うと、

 

「いやぁー! おっもしろいねえ、その幻象! 宿痾の主が武器だった!? それの意識を塗りつぶして使ってる!? しかも周囲を弱体化させる厄介能力持ち! うーんm、素晴らしい!!」

 

 マッド。

 典型的なマッド系アルケミストがそこにいた。

 いやあ、話には聞いていたけれど、すごいですねえアルケ様!

 めちゃくちゃグイグイきます。

 目は血走り、口元はいつもの私みたいに狂気に染まる。

 これぞ研究者の鑑、みたいな。

 んで、私はといえば、

 

「そうでしょうそうでしょう! 本当に素晴らしいですよこの武具は! 使い倒してよし、乱雑に扱ってよし、横暴の限りを尽くしてよし、それでいて劇的に強くなれるのだから最高です!」

 

 私も結構テンション高かった。

 ここ最近ずっと幻象を振り回してたから、面白いおもちゃを見せびらかす子供の気分。

 もう十三何ですから走らない、と思いつつもやめられない止まらない。

 まぁたしか二十代半ばのアルケ様が、同じように楽しそうなんだからいいだろう。

 

「アルケ様の剣術も素晴らしかったです。やはり七刀、錬金術師でありながら剣の才にも溢れています!」

「もっと褒めてくれても構わないよお! そう言うカグラくんもすごいじゃあないか! 魔力を多重構造にして少ない魔力で爆発的な強化をもたらす。カグラくんの魔力でもこれほどまでに圧倒的な身体強化を得られるんだから、これこそ変態的技術の到達点だよお!」

「でへへへへへ!」

「いよ! 変態! デカパイ! 異常性愛者!」

「それ本当に褒めてます?」

 

 なんてやりとりをしながら、私たちはお互いにシンパシーを感じていた。

 片やマッドアルケミソードマン、片やデカパイロリソードマン。

 お互いに通ずるものがあるのだろう。

 今なんか私の自分に対する表現がおかしかったな?

 

「ところでカグラくんはどうしてそんな格好をしているんだい?」

「あー、胸が大きくなりすぎて服のサイズが合わなくて」

「それは大変だね! そうだ、元の衣服は持ち歩いているかい?」

「ええまあ、持ち運ぶだけなら魔導袋がありますし」

 

 ガサゴソと、服を取り出してアルケ様に見せる。

 するとアルケ様も何やら布のようなものを取り出した。

 

「それは?」

「これは僕が開発した着付け布と言ってねえ、()()()()()()()()ことで服のサイズを後から調整できるのさ」

「錬金術すごいですね?」

 

 そんな概念的なあれやこれやを!?

 なんか狐に摘まれてる気分だけど、サイズを直してくれるならありがたい。

 早速服をアルケ様に渡して着付け布を使ってもらうと……

 

「なんか服を亀甲縛りし始めたんですけど」

「着付け布は服を緊縛するのが趣味でねえ。あ、人を縛る趣味はないから安心してくれていいよ? ただなぜかこの光景を見せると、誰も着付け布を使ってくれなくなるんだ」

「でしょうね」

 

 うーん、錬金術師ってこう言うものだったかなあ。

 まぁ便利なことには違いない。

 それからしばらくして、ちょうどいいサイズになったのでいそいそと衣装を変えた。

 こら! いい年した成人女性がロリ巨乳の着替えを覗こうとするんじゃありません!

 

「と言うわけで、いい感じになりました。ありがとうございます!」

「いえいえ。ああちなみに、魔力を服に流し込むと一部が光るようにしておいたから」

「へー、どれどれ」

 

 びっ(胸元のある二箇所から光が放たれる)。

 

「こらっ!!」

「よくできてるねぇ……あだっ!」

 

 バシンと一回叩いておいた。

 ただこれ、かなり光量があるのでなんかしら使い道はありそうなんだよなあ。

 今パッと思いついただけでも、結構いろんな使い方が想定できるし。

 まあ……いっか。

 

「それで、アルケ様。どうして宿痾教徒の中に紛れ込んでたんですか?」

「よく聞いてくれたねえ!」

「顔が近い!」

 

 そして顔がいい!

 端正な顔つきが、いかにも女性に好かれそうな感じ!

 

「実はだねえ、多分君もこの状況から察してはいると思うんだけど、僕たち境界騎士団は、君と宿痾教徒をぶつけようと言うことになった!」

「ああやっぱり」

 

 そして魔境を上映する人類組織は境界騎士団というのですね。

 かっこいい。

 

「しかし、君に何も言わずにぶつけるのは、いささか理不尽なところがあるだろう? そこで僕は考えた!」

「な、何をです?」

 

 そして、両手を広げたアルケ様は高らかに宣言するのだ。

 

 

「宿痾教徒の()()さ!」

 

 

 おお。

 随分と大きく出たなあ。

 長く活動している根っこの深い団体とのことだけど。

 殲滅できるものなのだろうか。

 

「まあ、完全な殲滅は難しいだろう。しかし、この状況があまりに魔境に蔓延る宿痾教徒をどうにかするのに都合がいいのは、君も理解しているだろう!」

「まあそうですね……正体不明の瘴気が突如として湧いて出た。ここで今倒れてる連中をなんとかしても、おかわりがやってくるでしょうし」

「それだけじゃないのさ!」

 

 ビシィ! と言う音が聞こえてきそうな感じで指を突きつけてくるアルケ様。

 

「今の君は、()()()()()()()()()宿()()なんだから!」

「あっ!」

 

 言われてみればそうだ。

 私は幻象を上から塗りつぶして、完全に道具としてしまったけど、幻象そのものが消えたわけじゃない。

 むしろ幻象は健在なのだ。

 本体である能力も、瘴気も何もかもそのままに。

 意識だけが、私と言う主人のものになっているだけ。

 

「そこで僕は考えた。内部から宿痾教団に潜り込み、君と協力して教徒を一網打尽にする!」

「おお!」

「ついでに、最初の調査隊に潜り込めばこうして君とスムーズに合流できるからね、剣の里の格言に曰く、一石二鳥ってやつさ」

 

 なお、正体を隠して襲いかかったのは、腕試しがしたかったかららしい。

 それは仕方ないね!!

 

「でも、反対されませんでしたか? かなり危険な任務ですし、最高戦力の一人であるアルケ様が拠点を離れるのはリスクがあります」

「うむ、まぁマギナからは最後まで反対されたけどね、でも作戦を成功させる利点以外にもいくつかこの作戦を実行する理由が僕たちにはあったんだ」

 

 なんとなく、マギナ様とアルケ様の関係性が窺える発言だ。

 

「まず、君と言う戦力が加入すれば、僕がいなくなっている間に魔物が増えても対処できる見込みがあった」

「おお、光栄ですね」

「一応言っておくけど、今の君は文句なしに大陸最強だからね? シドウのやつは認めないだろうけどさ」

「ありがとうございます」

 

 幻象ありなら、すでに六大宿痾ともほぼ対等に渡り合えるのが今の私だ。

 それがないと、シドウ様ならうまく五重強化の未熟さを突いてくるだろうから、確勝とはいえないけど。

 単純なスペックだけなら、まあ私が一番で問題ない。

 母上が、この世にはいないから。

 

「んで、もう一つは……」

「もう一つは?」

 

 少しだけ勿体ぶった様子で、アルケ様は言葉を止めて、

 

 

「……君が頑張りすぎて、現在魔境の魔物は平常時の半分くらいになってるんだ。つまり騎士団そのものは結構暇なんだよ」

 

 

 そっかあ。

 何にしてもまぁ、悪いことではない。

 ただそうなると……

 

「それだと、騎士団のところに行っても今は面白いこともなさそうですね」

「まぁ……今はかなり平和だね。要するに、僕としても君は教団全滅に協力した方が旨みがあると言うわけだ」

「もちろん、やらせていただきますよ! 任せてください!」

 

 と言うわけで、私たちのやるべきことは決まった。

 宿痾教団の殲滅。

 なかなか難しそうだけど、六大宿痾の方が間違いなく強いんだから、やってやれないことはないだろう。

 頑張るぞー!

 

 

 ◯

 

 

「で、早速なんですが、この人たちどうするんですか? そもそもアルケ様はどうやってこの人たちの中に紛れ込んだんですか?」

「紛れ込む方法は簡単さ、頭に兜をつけて入信を希望したんだ」

「それで通るんですね……」

「うむ。そしてこいつらの対処は……こうするんだよ!」

 

 言って、アルケ様は懐から在るものを取り出す。

 それは……レンガ?

 地面にゴトゴトと落とすと、レンガは地面に埋もれていてく。

 そして”あるもの”が地面からぬぼっと顔を出した。

 そいつは――

 

「ゴーレムですか!?」

「そう、錬金術の基本とも言えるゴーレムクリエイトさ。ゴーレムにこいつらを拠点まで運んでもらうんだよ」

 

 石でできたゴーレムである。

 もう何ていうか、ゴーレムとしか形容できないほど圧倒的なゴーレムだ。

 うおー、すごいー、こんなしっかりしたゴーレム、すごいー(語彙の死)。

 

「こいつらを教団の拠点まで運んだら、そこからはどうするんですか?」

()()()()()()。今のカグラくんは幻象だからね。話に聞いた限り、幻象の最も()()()()()点は幻象が支配した人間の行動を模倣しようとするところだ」

「つまり、私が普通に振る舞っていても、幻象を持っていれば私が幻象であると言い張れる……と」

「そういうことさ」

 

 話をする私たちの前で、ゴーレムがひょいひょいと複数人の教徒をまとめて担ぎ上げていく。

 一体のゴーレムが一度に十人くらいまとめて担げてしまうらしい。

 パワフルだなぁ。

 

「僕達宿痾教徒は、例の瘴気が満ちた場所まで向かったところ、六大宿痾の幻象を発見。交渉の末、教団に幻象を招くことに成功した……と、こういう筋書きで行こうか」

「招かれることあるんですかねぇ、幻象」

「今は君にボコられて弱ってるからねぇ、完全に利用するつもりで招かれて”やる”ことならあるんじゃないかい?」

「ああ、教徒はそれで自分たちがひどいことになっても本望だから、お互いにとってウィンウィンなんですか」

 

 ようするにそれは……ふむ……えっと、つまり……よし。

 なんとなく概要は解った。

 教徒達もゴーレムに詰め込み終わったところで、私はアルケ様に問いかける。

 

「ちなみに、移動はどういたしますか? ここから徒歩で教団に向かうとなると……大変なのでは?」

「ここに来るまで退屈だったからねぇ、徒歩のつもりはないよ。こういうときのための錬金術さ」

 

 いいながら、再びアイテムを取り出すアルケ様。

 この世界の錬金術は、どっちかというと錬金釜をぐーるぐるさせてアイテムを生成するタイプである。

 両手をパン! と叩いてバリバリってタイプではない。

 なのでアルケ様は、事前に用意しておいたアイテムを取り出して使う。

 今回取り出したのは――

 

 

「あのこれ……バイクじゃないですか?」

「お、詳しいねぇ、私が少し前に開発した最新の錬成物なんだよ!」

 

 

 なんかこう、世紀末寄りなバイクだった。

 世界観壊れちゃいますよ!?

 

 

 +

 

 

「ひゃっはー!」

「ひゃっはー!」

 

 まぁ、便利なものは便利なので、慣れました。

 私は二人乗りができる大型バイクの後部座席に乗り込んで、アルケ様とひゃっはーしている。

 木々の合間をぎゅるんぎゅるんとすり抜けるのは、なんとも爽快感たっぷりだ。

 そして結構な速度が出てるわけですが、ゴーレムがどうしているかというと――

 

「……にしてもすごい光景ですね、後方のゴーレム」

「シュールでいいだろう? 僕のお気に入りさ!」

 

 ダバダバ走りで、私たちの後ろをついてきていた。

 十体くらいのゴーレムが、それぞれ結構な人数を抱えながらダバダバ走る光景は、なんともシュールとしかいいようがない。

 いやぁすごい光景だ。

 ちょっと怖くもある。

 

「しかし本当に多彩ですねえ、これほど多くの錬金術で作られた道具を見たのは初めてです!」

「ふふふふふ……僕は天才だからねえ、なぁんでも作れてしまうのさ! それに……」

「それに?」

 

 バイクの駆動音だけが響く魔境の森。

 魔物たちは姿を見せていない。

 私が狩った成果が出ているんだろう。

 あとはなんかしらのアイテムで魔物を避けているのかな、どちらもか。

 

「それに、君もなんとなくわかっているだろうけど、僕は()()()()()()からねえ」

「ああ、はい。先程の戦闘で少し感じました。私より少し少ないくらい……ですか?」

「君は年齢を重ねればもう少し増えるよ。まあそれでも平均の域は出ないし、それであそこまで動けるから僕とは別ベクトルの天才さ」

「ありがとうございます」

 

 そう、アルケ様は魔力が人よりも極端に少ない。

 私も一般人の平均レベルの魔力しかないが、アルケ様はそれ以下。

 本来なら、アルケ様が七刀になることはなかっただろう。

 けど、アルケ様には才能があった。

 

「だって言うのに、剣の才能だけは一丁前に七刀級なんだ。この世界は魔力がないと碌に戦えないのに、変な話だろう?」

「それを補うために、錬金術と言う手段を選んだわけですか」

「君が無限の努力による燃費の改善を選んだように、ね」

 

 言いながら、ちらっと視線をこちらに向けてアルケ様は笑みを浮かべる。

 親近感。

 お互いに才能の面で問題があるもの同士、私は剣の才能を多重強化と人読みで補っている。

 アルケ様は魔力の量を錬金術で補っている。

 私たちは似たもの同士なんだ。

 まぁ、()()()()()()()()んだろうけど、ここで指摘することじゃないな。

 

「錬金術は、魔力を用いない人の智慧だけで発展してきた技術さ。正確に言うと、魔力を外部に頼ると言う発想で成り立つ学問。そうすれば、誰でも錬金術が使えるようになるからね」

「おおー」

 

 ふと、遠くから何やら魔物の気配を察知する(アホ毛うにょん)。

 ドスドスと、クマのような魔物がこっちに勢いよく近付いてくるのだ。

 だいぶ私の活動圏内から離れたので、こうして魔物が襲ってきても不思議はない。

 そしてその実力はポンくんよりも上。

 普通にやるなら、七刀でも苦戦しそうな相手。

 

「アイアンドベアーだね、この辺りに出現する魔物の一体で、とにかく硬くて強い。シンプルだからこそ厄介な魔物だ」

「どうしますか?」

「ふふ、任せてくれたまえ!」

 

 私なら問題なく一刀両断できるだろう。

 しかし、アルケ様がなんとかできそうなので、そこまでは口にしない。

 案の定、アルケ様は不適な笑みを浮かべてバイクの軌道を一直線に熊へ向けた。

 

「錬金術の強みは、対応力さ!」

 

 言いながら懐からカセットのようなものを取り出すと、アルケ様はそれをバイクの所定の位置にセット。

 するとバイクのボディから、なにやら銃口のようなものが出現した。

 

「こいつはアイアンドベアーの装甲()()を溶かす強力な硫酸。こう言う特効のアイテムを用意できるのも、錬金術ならでは!」

 

 アイアンドベアーが姿を現す。

 鉄に体を覆われた、全長数メートルの巨大な魔物。

 そのボディへ向けて、アルケ様は硫酸を発射!

 直撃し、じゅううと熊の装甲が溶けていく。

 そして溶けたところに今度は剣を抜き放ち、

 

「まさに、錬金術こそ人類の叡智そのもの! 脅威に対し知恵を働かせ乗り越えてきたことの証明なのさあ!」

 

 

 アルケ様が、鉄の熊を一刀両断した。

 

 

「ま、こんなものかな」

「おおー」

 

 すごい。

 ちなみに倒した後のドロップ品はゴーレムが回収していた。

 お疲れ様です!

 

 それにしてもなんていうか、アルケ様って雰囲気はマッドな感じだけどかなり真面目な人だ。

 錬金術を志した理由も、やっていることも。

 だからこそ、宿痾教団を壊滅に追いやることにも全力なのだろう。

 そう思っていた。

 

 

 バイクでそのまま宿痾教団の拠点に突っ込むまでは。

 

 

「ひゃっはー!!」

 

 何してるんですか!?




ひゃっはー!
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