転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す 作:暁刀魚
いよいよマギナ様と模擬戦をする時がやってきた。
たんのしみいいいいいい!
そして、兵士を連日ちぎなげしていた私と騎士団トップの模擬戦は騎士団の人たちにとっても楽しみなことだったらしい。
七刀がこっそり模擬戦していいわけねえだろ! くらいの勢いで見学したいという声が上がり、多数の観客が詰めかけていた。
場所はどこかといえば、騎士団が誇る城壁の
そこに映像を映す感じの魔道具が浮かんでいて、それを通して観戦する感じだ。
便利だなあ、この魔術。
『さぁて、よく集まってくれたねえ! 今日は我が騎士団の誇る騎士団長殿が、最近話題の少女と真っ向勝負! この大陸最強クラスの剣士による戦いだ! またとない機会を見逃さないことだねえ!』
司会を買って出たアルケ様が、観客達を盛り上げるべくマイク越しに口上を述べる。
このマイクは魔道具ではなく錬金で作られたものらしい。
便利だなあ、錬金術。
「さてはて! ついにこの日がやってまいりましたねえ! お覚悟を、マギナ様」
「どこからでもかかってきてください」
私の目の前にいるのは、先日の鎧を身に纏ったマギナ様。
鎧を纏っているからか発言に澱みはなく、なんともいえない威圧感が感じられる。
対する私はいつも通りだ。
すでに疾討は抜き放たれ、腰には幻象。
口元には、大輪の笑みが浮かんでいるだろう。
これは、抑えようと思っても抑えられない……ぞ!
「マギナ様には、色々と聞いてみたいこともあるんです」
「なんでしょう」
「……申し訳ありません、聞きたいことは山ほどあるのですが、今は刃を振いたくて仕方がないのです! つまり!!」
私は勢いよく足に力を込めて、
「戦いの中で、問いましょう!」
飛び出した!
『試合開始だああ!』
アルケ様がそれに合わせて号令をかけ、私たちが激突する。
マギナ様の手には一本の無骨な剣が握られていた。
デザインは本当に量産型といった感じで、大きさは二メートルくらい。
グレートソードという種別になるだろうか。
シドウ様のそれよりは大きくはないが、存在感は負けていない。
それが、私の刃を受け止めている。
「いいですね!」
ぶつかり合い、お互いの膂力をここで測る。
今の私は四重強化。
シドウ様よりスペックが低いなら、これで十分やりあえるはずだけど――
「うわっ!」
原理は見ればわかる。
ぶつかり合ってから更に力を加えたんだ。
魔力をブースターのようにふかしている!
「ではこれなら!」
続けて幻象を起動させて身体能力をアップさせ、斬りかかる。
流石にこれは、どうあがいても受け止めきれないはずだけど――
「甘いですね」
マギナ様の背中に魔法陣が浮かんだ。
同時に鎧から魔力が吹き出し、幻象の力を込めた一撃が、容易に弾かれる。
隙を晒す形になったので、私は慌てて距離を取った。
「ま、まさかこれも対応されるとは……五重強化すら対応してしまうのですか?」
「ええ、可能です」
その言葉に嘘はない。
本気で私の五重強化に対応してみせると言っている。
なんとなく、ここまでのやり取りで理屈はわかった。
たしかにそれなら
「魔術で事前に、
「それだけではありません」
再び斬りかかると、それをマギナ様は容易く受け流した。
こちらの攻撃をすべて最初からわかっているかのように、反応して見せる。
おそらくこれも……魔術!
「魔術とは、魔力と術式さえアレば、あらゆる現象を再現することが可能です。カグラちゃん、あなたの膂力は確かに素晴らしい。あなたの剣術は大陸随一。ですが、それは事前に準備した魔術であれば再現可能な行動です」
私の一撃は、巨大な岩を容易く切り裂くことができるだろう。
しかし、それは魔術にだって同じ事ができる。
あくまで手軽なだけなのだ。
事前の準備さえしておけば、このように剣を振るうのと同じ速度で魔術を展開することも可能。
マギナ様の戦い方は――ようするにそういう戦い方なんだろう。
「ねえさまから聞いていると思いますが、純粋な実力で私はカグラ様には勝てません。しかし、こと一対一の戦いであれば話は別。特に、事前に準備する時間があれば――私は貴方を容易に超えることが可能です」
「なるほど!」
「――このように」
それは、あまりにも唐突に、しかし決定的な反撃だった。
私の攻撃が、一瞬だけ緩む瞬間。
普通なら、隙とすら言えないような隙。
しかし事前にそこで隙が生まれると分かっていれば、合わせられる。
要するに、私の行動パターンを学習し、致命的な隙を自動で鎧が攻撃するよう術式を組んでいるのだ。
まるでAIを用いたプログラミング。
魔術というのは、最高峰の専門家が扱えばこんなにもサイエンスに機能するのか。
何にせよマギナ様は、致命的な刃の一突きを私に向かって放ってきた!
「なんの!」
本来ならこの一撃で決着がつくような、そんな攻撃だった。
しかし、それで敗れるようでは最強を名乗るに値しない。
強者とは、たとえ絶対に負ける一撃であってもしのいでしまうものなのだ。
いかにしてそれを凌ぐのか。
答えは簡単。
「――
動物的な獣の本能が、本来なら気にする必要のない隙を致命的だと事前にうったえてきた。
故に私は、ここで反撃がくる前提で動いている。
だから対応できた。
幻象を抜き放ち、迫る刃を受け止めたのだ。
しかし、そこで攻撃が終わることはない。
この防御は、かなり無茶な態勢で行っている。
「詰めていきます」
攻守が入れ替わった。
マギナ様が剣を振るう番だ。
私はそれを二刀流で受け流す。
しかし、どんどん形勢は悪くなっていき、追い詰められてしまう。
詰めていく、とマギナ様は言った。
本当にまったくそのとおりで、こちらの行動が常にこちらの敗北へと繋がっていくのだ。
完璧に、私の戦い方を学習されてしまっていた。
「いや! はや! 恐ろしいですね! これぞ七刀! このままでは! 負けて! しまいます!」
「――その言葉は少し正しくないですね」
刃を振るいながら叫ぶ私に、耳元でマギナ様が呼びかける。
まずい、と思った時には――
「もう、負けています」
私の体は、マギナ様の剣によって貫かれていた。
「ぐ、あ……」
「魔術であれば、少し腹を裂いた程度ならすぐに治療できます。安心してください」
いいながら、剣を抜き去るマギナ様。
いやはやまったく、完膚なきまでの敗北だ
でもしょうがないじゃないか、鎧を着て会議室に現れた時から、マギナ様がこういう戦い方をすることは読めていた。
だからマギナ様の本領を味わってみたくて、私は仕方がなかったのである。
あわよくばそのまま勝ってみたかったけど、流石にそれは難しいらしい。
というわけで――
「良い稽古を……ありがとうございました!」
「っ!」
私は先程まで待機していた城壁の外から、五重強化と幻象の合わせ技で一瞬にしてマギナ様の後方に回り込み、一閃。
鎧が反応し攻撃を防いだものの、マギナ様本人は至極驚いているようだった。
「な、なぜ!?」
「今まで戦っていたのは、幻象が生み出した分身です! 本体の私は今まで外に潜んで分身を操作しながら戦っていたのですよ!」
そうした目的は二つ、分身を用いた戦い方を習熟したかったのと、マギナ様の不意をつくため。
「無駄なことですよ! どのような戦い方をしても、私には勝てません!」
「さて、どうでしょう。先程まではただの剣士として私は戦っていました。ですがここからは――」
私は改めて疾討を構え直し、笑みを浮かべる。
「勝利に執着する修羅として、
さぁ、ここからもっと楽しくなるぞ!