転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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十一 誘い受け白髪美少女剣士

 かくして、私はローブを被って行動するようになった。

 冒険者ギルドに顔を出す時以外は、基本ローブ姿である。

 ギルドでそうしないのは、既に顔を覚えられていて意味がないからだ。

 

 そんなわけで、今の私は誘い受け中の白髪美少女剣士といった装いである。

 いやぁ、誘い受けをするためにローブを羽織っているから、白髪も美少女も剣士も全部見えないのだけど。

 それはそれ、これはこれ。

 後はいつ、いい感じのチンピラが喧嘩を売ってくれるかだ。

 そうしてワクワクしながら、ギルドで等級を上げるために依頼を受ける日々を続けていたのだが――

 

 

 ――成果は全くといっていいほどなかった。

 

 

 まぁ、正直そんな気はしていたのだ。

 いくら警戒される理由を無くしたからって、じゃあいきなりチンピラに絡まれるかといえばそんなことはないし。

 何より、この街は人が多すぎる。

 私みたいな小娘が一人で街の中をウロウロしていても、事件に巻き込まれることなんてほとんどない。

 それでも、顔をさらして剣の里の旅装で歩き回るよりはまだ、可能性は高いと思うんだけど。

 それに、ギルドの受付さんが言っていたのだ。

 

「――最近、この街って治安が悪いんですよ。カグラさんなら心配いらないと思いますけど、気をつけてくださいね」

「そうなのですか? 全然そんな気はしませんが」

 

 その時の会話を思い出す。

 アレは確か、ここ最近「カルマン」の街周辺で起きている異変がないかと問いかけたときだった。

 現在、私はおもに3つの目的で動いている。

 一つが旅で見聞を広めること。

 これに関しては、特に言うこともないだろう。

 もう一つが、七刀を探すこと。

 残念ながらギルドに情報はないらしい。

 そして最後の一つが、大陸各地で起きている事件がないか調査すること。

 この事件について、ギルドの受付さんに聞いたら帰ってきた答えが、これだ。

 

「まぁ、表向きにはそこまで大きな変化はないんですけどね。でも街の外に魔物が増えたことで、野盗の類が活動を減らしてるじゃないですか」

「そんな話は前に聞きましたねぇ」

「でも活動は減らしてても、数が減るわけじゃないんですと。ということは、野盗は今どこかにいるはずなんです」

「街の中、ということですか」

 

 野盗の類が数を減らしているというのは、以前も聞いたけれど。

 というか、実際に「カルマン」に来るまで一度も野盗の類と出くわさなかったけれど。

 まさか街の中に集まっているとは。

 

「だから、そいつらが集まって何か悪いことしてるんじゃないかって噂があるわけですね」

「ははぁ。そういうことであれば、一応気には留めておきますが」

 

 ――だったら、もう少し私に面倒事が降り掛かってもいいじゃないか。

 他の人には一切降りかからず、私にだけ面倒事がやってきてほしい。

 ただし、物理で解決できるものに限る。

 

 とまぁ、こんな理由で野盗連中の襲撃を今か今かと待っていたのだが。

 全く襲いかかってくる気配はなく。

 一体どうなってるんだと思うものの、ここで気付いてしまった。

 まず第一に、冒険者の類は私の顔を覚えているので絡んでこない。

 冒険者というのは、街で一番チンピラに近い存在だ。

 犯罪を犯していないだけのチンピラというか。

 そんな連中が多い。

 そして他の、ガチで犯罪を犯している連中は街で集まって何かしてる、となると。

 私に構ってる暇なんてないんじゃないか?

 そうなると。

 

 現在、私に声をかけてくる輩はいないんじゃないか?

 

 ――衝撃である。

 ショックである。

 驚愕の真実である。

 

 私は今回、この誘い受けの期間を自分の冒険者等級が四等級に上がるまでと定めていた。

 冒険者の等級が四等級になれば、戦闘系の依頼を受けられるようになる。

 そうなれば、こんな効率の悪すぎる誘い受けをしなくてもよくなるのだ。

 加えて、「カルマン」の街周辺に七刀はいないようなので、四等級になったのに合わせて街を去るつもりだった。

 

 とはいえ、だからといって完全な無駄骨で終わるとなると、それはそれで悲しい。

 なんとかして、少しでもいいから成果を出せないものかと思った私は、四等級に昇格したその日。

 最後の賭けにでることにした。

 

 

 +

 

 

 ――夜。

 私の姿は、娼館などの施設が立ち並ぶ治安の悪い場所にあった。

 大人の男の冒険者が、女を買ったりして遊ぶための区域。

 他にもカジノや酒場など、とりわけ治安が悪くなりがちな施設が多い。

 こういう場所なら、何かしら出てくるのではないかという希望だ。

 なのだが――

 

「……さっきから…………っと! スリしか……すり寄ってきません……」

 

 スリだけに、などと言っている場合ではない。

 ローブ姿の幼子な私を狙う、私と同じか少し下くらいの年齢の子どもたち。

 無論、回避は容易だしこれも一種の鍛錬と思えば、悪いことではないのだが。

 イマイチ、これを修行と思うのは気乗りしない。

 

 もともと、前世は平凡で取り柄のない人間だった。

 こうして異世界で修羅などと呼ばれるようになって、それでも過去の倫理観を捨てたわけではない。

 私くらいの年で、こんな場所でスリをする子どもに対する同情は、少なからずあった。

 そう考えると、もし仮にこの後チンピラと相対した時。

 私はそいつらを()()()()のかっていう問題はあるのだが。

 つまるところ――

 

「――ねぇアンタ、孤児じゃないならこんなところにいるべきじゃないよ」

 

 なんて考えていると、声をかけられた。

 聞き覚えのある声だ。

 この声は――

 

「……揚げ物屋台のお姉さん?」

「――――カグラちゃん?」

 

 以前、私に声をかけて揚げ物を売ってくれたお姉さんだった。

 茶色い髪の、背は高く胸は小さい。

 気立ての良さそうな美人のお姉さんだ。

 

「これは奇遇ですね。お姉さん。このようなところで何の御用ですか?」

「……それはこっちのセリフだよ。どうも、心配するだけ無駄だったみたいだけど。それにしたって、アンタはここにいていい人間じゃないと私は思うけどね」

 

 揚げ物屋のお姉さん――ソアナと名乗ったお姉さんは、こんなところに私がいることを呆れているようだ。

 なんとなく、「まさか女漁りかギャンブルに来たんじゃないだろうね」みたいな言葉を、いったん飲み込んだのが感じられる。

 

「まさか、女漁りかギャンブルに来たんじゃないだろうね」

「一旦飲み込んだのに言うんですか。どっちも違いますよ、私の目的は噂を確かめることです」

 

 ほう、とソアナさんは目を細めた。

 ちなみにソアナさんは、もともとこの辺り出身の孤児だったらしい。

 色々あって、最終的に表通りで店を構える揚げ物屋さんになったけど、幼い頃は苦労したそうだ。

 んで、今はそんなソアナさんを支えてくれたとある女性に、お菓子づくりを習いに行くところなんだとか。

 ドーナツ菓子の話、本気だったんだ……じゃない。

 

「噂ってことは……チンピラ共が集まってなにかしてるって、アレかい?」

「そのアレです」

「ってことは――なるほど、調査に来たってわけだね」

 

 納得した、といった様子でソアナさんが頷いていた。

 だが、残念ながら私の狙いは違う。

 

「――いえ、暴れてもいい相手を見繕って暴れるためです」

「えっ」

「他にも、悪事を働く連中を退ければ、それで冒険者の等級を上げる貢献度稼ぎになるかと思いまして」

「えっえっ」

「ああ後あれです。私、剣の里の七刀様を探しているのです。残念ながら街の表側には情報がなかったので、連中を叩くついでに裏側の情報を探ろうかなぁ、と」

「えっえっえっ」

 

 我ながら、一石三鳥のいいアイデアだと思うのだが。

 残念なことに、それを聞いたソアナさんは――

 

「……剣の里って、こんな危ない思考の奴しかいないのかい?」

 

 と、ツッコミを入れてくるのだった。

 それは流石に剣の里への風評被害ですよ!

 あと、危ない思考ではありません!




※危ない思考です。
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