転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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二 里に生まれ落ちて、今

 私が生まれた場所を「剣の里」と言って、古くから有数の剣士を輩出する山奥の隠れ里だ。

 要するに、私みたいな剣バカが生まれてもおかしくはない場所なのである。

 なのに周囲からの私に対する視線は、なにか怖いものを見る目だ。

 まぁ幼い頃、私がまだ剣に目覚めていなかった頃から、私に対する視線はそんな感じなのだけど。

 

 理由は容姿だろう。

 人とは思えないような、アルビノめいた容姿は幼い頃に亡くなった母親譲りのものだ。

 加えてそこに、他の子どもとは違う感性が備わっていれば、むしろ周囲が私を異質なものと扱うのは自然なこと。

 まあ、中身は元オタクの一般男性なのだけど。

 そんな扱いのおかげで、TSによるアクシデントを起こしても周囲が「カグラだから」と納得してくれたのは少しだけ有り難かった。

 逆に言えば、私は自分の性別も自覚のない、不思議ちゃんとして周りから扱われていたのだろうなあ。

 

 とはいえ、私が剣に目覚めたのは八歳の頃。

 今から二年前だ。

 剣の里では、八歳になると魔力を使って剣を振るうことが許される。

 理由は二つあって、一つはこの世界では八歳が一つの節目になること。

 工房や商店に弟子入りしたりして、子どもから大人になるための準備期間に入るための年が八歳なのだという。

 もう一つは、幼い身体で魔力操作を行うのは後の成長を阻害するから。

 前世でも、無理な筋トレを幼いうちにやるのはよくない、なんて話もあったな。

 

 そして八歳になった私は、魔力を込めて剣をふるった。

 それまで剣を振るうのは重い上に疲れるし、で全く楽しくなかったのだが。

 魔力を込めた途端、嘘のように軽くなった剣と、眼の前で父上が石を斬ってみせた光景は衝撃だった。

 この世界の人間は、こんなにも超常的な力を振るうことができるのか――と。

 

 それから、私は剣の鍛錬にのめり込み。

 その才能を開花させていった。

 ゲームのように、レベルが上ったらステータスもアップ。

 みたいな単純な強さの獲得はできないから、多少苦労はしたけれど。

 その分は努力でカバーした。

 元々、剣の里は山奥にあって、剣を鍛錬する以外には日常生活の雑務しかやることがない。

 私はそういった自分に割り当てられた雑務――家事だとか、炊事だとかをさっさと終わらせ。

 あいた時間は剣の鍛錬に勤しんだ。

 

 個人的には、ただ普通に剣の鍛錬をしているだけのつもりなのだけど。

 気がつけば、天衣無縫の修羅だなんて呼ばれるようになって。

 まっこと遺憾である。

 夜に抜け出して魔物を討伐することは……まあ、言い訳できないけどさ。

 

 

 +

 

 

 私は、一つのことに集中するとそれ以外のことができなくなるタイプだ。

 いや個人的には、集中している間も簡単に集中が途切れ、別のことを意識してしまったりするのだけど。

 人と比べたら、圧倒的に集中している時間の方が長いらしい。

 その分興味の薄い分野はとことん薄いんだけどね。

 

 そのおかげか、剣に関しては二年である程度の成果が出ている。

 それしかやることがないから、諦めることができないのと。

 単純に私の魔力量が同年代の子どもよりは多いかららしい。

 とはいえ魔力量に関しては、あくまでちょっと才能がある程度の範疇。

 大人になればもっと量は増えるし、魔力は使えば使うほど増えるそうだから。

 いずれは差がついていくんだろうけど。

 

 さて、なんでこんな話をしているかというと、私の集中力が切れたからだ。

 朝の雑務を終わらせて、早速鍛錬に繰り出した私。

 二時間ほど、魔力量増加のために魔力を消費していたが、魔力が半分を切ったところで飽きが来てしまった。

 ここは一旦気持ちを入れ直してから再開するしか無い。

 

 そういう時の対処法は三つ。

 あえて残しておいた、どうでもいい家事を片付ける。

 里の犬猫と戯れる。

 そして最後の一つは――

 

「…………」

「……えっと」

「…………」

「……どう、でしょう」

 

 私は、一つ年下の少女の剣をじいっと眺めていた。

 ぶっちゃけ、特に考えがあって眺めていたわけではない。

 暇だから眺めていただけなのだが、アドバイスを求められたのでなんかそれっぽいことを言わないといけない。

 少なくとも……

 

「悪くなかったです。幼いうちに魔力を消費して少しでも魔力量を増やすのが、強くなる近道だと父上も言っていました」

「あ、ありがとうございます!」

 

 うん、悪くはないと思う。

 正直、私は半ば感覚と経験で剣を振るっているので、彼女の剣の良し悪しがわからない。

 でも悪いことはしていないので、知識の受け売りをしつつ答えておく。

 単純な話、私みたいな剣士二年目の素人が見るより、里の教えに従うほうがいいだろう。

 蓄積されたノウハウが違うのだ。

 

「……はあ! やあ!」

 

 とはいえ、それは彼女の剣を見ている私には関係ないこと。

 単純に見ているのが楽しいのだ。

 魔力の流れとか、それによって起こる破壊の結果とか。

 人が魔力を使っている様を見るのは楽しい。

 他人が操作しているゲームを横で眺める感覚だ。

 

 それに、どういうわけか。

 私がアドバイスをした子は、剣術の伸びがいい。

 ただ父の教えを彼らにも伝えているだけなのだけど。

 最初のうちはあまり遠慮しなくてもいいという理由で、年下の子の剣を見ているだけだったのに。

 今では、里の見習い剣士が何かと私に剣を見てもらいにやってくる。

 これが男子だけなら、見た目にやられてるだけなんだろうなと察せられるものの。

 女子まで自分も自分もとやってくるから、私としては困惑しきりだ。

 

 で、それはそれとして。

 不意に私の感覚が、あるものの接近を告げる。

 

「……皆、止まってください」

 

 私の、あまり大きくない声が鍛錬場に響く。

 すると、一瞬にして全ての子が()()()と動きを止めた。

 ちょっと壮観だけど、ちょっと怖い。

 何が彼らをそこまでさせるのか。

 とはいえ、私の言いたいことは単純だ。

 

「魔物が接近しています」

 

 その言葉に、半分が動揺を見せて、半分がやはりかと納得した様子を見せる。

 私がわざわざ稽古を止めさせるということは、予期せぬ事態が発生したからだと知っているためだろう。

 

「幸い、一匹だけのはぐれのようです。私が対処します。ですが、他の魔物がいるかもしれないので、接近は誰か大人に伝えてください」

「は、はい!」

 

 言われて駆け出したのは、私が声をかけた少女だった。

 なんとなく、そういう雰囲気だったからだろう。

 なんかごめんね。

 

 ――少しすると、魔物が姿を見せる。

 

「……ゴブリンですか」

 

 ちょっと面倒だ。

 なぜって人型だから。

 人間を殺したことのない私に、前世一般人だった私に、人型魔物の討伐は少し重荷だ。

 とはいえ、二年も魔物を斬っていたら流石に慣れる……というか麻痺するけど。

 とにかく、私は手元においておいた剣を手に取ると、鞘からそれを抜き放つ。

 

 刀のような、細い曲刀だ。

 純粋な刀ではない、もしかしたら剣の里の創始者は刀を振るっていたのかも知れないけれど。

 今の剣の里に、刀の鍛造技術はないのだ。

 なのでそれっぽく似せているだけ、ただ似せているだけとはいっても、性能が低いわけではない。

 

「――」

 

 ぎゃぎゃぎゃ、と鳴き声を上げてこっちに突っ込んでくるゴブリンに、自分から踏み込む。

 向こうは素人同然の隙だらけな動きをしていて、斬り込むのは容易だ。

 故に、一閃。

 

 一撃で、私はゴブリンの首を刎ねた。

 

 息を呑む音がする。

 この中には、魔物との実戦経験が少ない子どももいる。

 私みたいに、自分から里を抜け出して魔物と斬り合うような酔狂な人間は少ないのだ。

 だからこそ周囲には、私が異質に見えるのだろうけれど。

 今やっていることは、単純に魔物を討伐しただけだと、言い張っておきたい。

 

「皆のもの、無事か!?」

 

 とか思いながら剣を鞘に納めていると、父上をはじめとした大人たちが焦った様子でやってくる。

 明らかに、鍛錬場にゴブリンが迷い込んだだけでは説明がつかないような焦りっぷりだ。

 何か起きたのだろうなぁ、と。

 私は呑気に考えるのだった。




本人的には普通なつもりだけど、なんかやらかしている感を感じて欲しいお話です。
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