転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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十五 後の始末

 あの襲撃事件からこの世界の暦で一ヶ月が経った。

 その後、私が制圧した拠点にいたチンピラと黒幕一味らしき魔術師は捕縛された。

 魔物に関しては、どうやら魔術師が魔力を供給し続けないと消滅する仕様らしく。

 一定時間が経ったら勝手に消滅。

 事件は一応の解決を見た。

 

 私としても、今回の襲撃は大当たりだった。

 アレだけ多くのチンピラと戦えたし、最後には多重強化が必要な強さの魔物とも戦えた。

 もう少し魔物が強いほうが私好みだったが、流石にそれは望みすぎというものだろう。

 それ以外は、何から何まで私の望みどおりで怖いくらいなんだから。

 

 今回の事件を終えて、私周辺の環境は結構変化した。

 まず、なんか多くの冒険者が私を「姐さん」とか呼ぶようになった。

 多分ダグスさんの影響なんだろうけど、流石にそれはむず痒い。

 とはいえ、これでめでたく「カルマン」の街でも私は修羅扱いを受けるようになったわけだ。

 喜ばしいのか? と言われるとまぁ……別にいいか。

 違う、と声を大にしていいたいけど、それが受け入れられるわけないのは剣の里で身にしみてるし。

 あと、今回の件の功績で三等級冒険者になった、これで受ける依頼は概ね制限がなくなったので喜ばしい。

 

 次に、「カルマン」の街から表彰を受けた。

 街にはびこる悪党を一網打尽にしたのだから、当然と言えば当然なのだろうけれど。

 何故か表彰を受けながらも、なんとなーくこちらを表彰する衛兵さん達が私を死んだ目で見ている気がする。

 私がチンピラを一人も殺さなかったことで、街の牢屋がパンパンらしいんだけど。

 まぁ、それは関係ないんじゃないかなぁ……多分。

 なお、表彰式の間私は衛兵さんと一度として目を合わせられなかった。

 

 ダグスさんは、どうやら旅に出るらしい。

 後述の理由で私が「カルマン」の街を離れるのもあるんだろうけど。

 ダンジョンのある街でもう一度自分を鍛え直すのだそうだ。

 旅先で、また出会うこともあるかも知れないな。

 それと、ダグスさんが別れ際に言っていた事には、後で自分なりの答えを出さないと行けない。

 まぁ、そこら辺の話は今は関係ないから置いておこう。

 

 んで、最後に私個人の話。

 リンカねえさまが、今回私が制圧した組織の大本を壊滅させるべく動いていると知った。

 しかも拷問……尋問したところ、組織の本拠点は前から少し話題になってた港湾都市「ヨース」にあることが解ったのだ。

 いや、正確には聞き出したわけじゃなくて、観察に依る推測だけど。

 流石に組織の幹部だけあって口は割らなかったからね、自慢の観察眼で見透かさせてもらった。

 つまり、港湾都市「ヨース」に行けばリンカねえさまに会える。

 何より私が制圧した拠点に、攫われた子どもたちはいなかった。

 つまり、その本拠点へと連れて行かれたということだろう。

 今回の事件、まだ何も終わっていない。

 これは「ヨース」の街に行かなくては、いけないな。

 行かなくては! いけないな!

 

「――というわけで、私はこの街を去ることになりました」

「港湾都市に……ねぇ。いや、それはいいんだけどさ」

 

 現在、私はこれまでお世話になっていた娼館で、ソアナさんと話をしていた。

 ソアナさんの方も、手伝いの礼に秘伝のドーナツレシピを教えてもらったようで。

 お互い、娼館でのお仕事はこれでおしまいだ。

 二人してやり手婆から、娼婦にならないかと誘われていたが。

 

「……この子達、どうするつもり?」

「え? いやぁそれは――」

 

 そんなことはさておき、ジトっとした目つきでソアナさんが私を見てくる。

 ソアナさんは、部屋であることをしている禿達の方を指さした。

 私は少しだけ視線を逸らしてから、観念して禿達の方を見る。

 そこには――

 

「やぁ!」

「てぇ!」

 

 どこからか持ってきた木の棒を素振りする、禿達の姿があった。

 はい、概ね想像がつくかもしれませんが、私の影響です。

 

「みんなしてカグラに夢中になっちゃってさぁ、カグラみたいになりたい、将来は剣士になりたいって言って聞かないよ?」

「そこまで憧れるほどのことは、してないつもりなんですけど……」

「いやいやいやいや」

 

 だめかぁ。

 個人的には、私の影響ではないと言い張りたかった。

 私だって、周囲の人間が私に憧れるのは教育に悪いことくらい理解している。

 修羅なんて呼ばれてるし、やたらとこっちを見てくる子たちの視線が熱っぽいし。

 とはいえ、基本的に理由は解っている。

 

「まぁでも、皆さんが私に憧れる理由は、私の顔がよくて強いからだと思うんですよ」

「めっちゃはっきり言うな……」

 

 なにせ、前世ではここまで周囲から憧れの感情を向けられることはなかったのだ。

 それはつまり、今の自分と前世の自分に決定的な違いがあるということ。

 であればそれがなにかといえば、答えは容姿と強さ。

 そりゃまぁ、強くてかっこいい人間に憧れる気持ちは解らなくもない。

 私だって、岩を斬る父上に憧れたから、強さを追い求めているわけで。

 

「そこで私は考えました。ようはその強さと美貌を、多くの人が手に入れられればいいわけです」

「無茶いうなぁ」

「別に私のようになれ、というわけではありません」

 

 ようはこの子達が私のようになりたいと思っても。

 なる方法がないのが、一番の問題なわけだ。

 あ、私のようにって言っても、内面の話じゃないから。

 流石にそんなこと言ったら、ソアナさんがドン引きするの解ってるから。

 

「少し話は変わるんですが、私って昔から肌の手入れとか面倒だったんですよね」

「まず、アンタが肌の手入れをするような人間には見えないわ」

「昔はしてたんですよ? なにせやらないと周りがうるさいですから。それに、母上から譲り受けた美貌ですからね、私だって少しは気にします」

 

 まぁ、少しだけど。

 手入れをしていた頃だって、最低限しかやっていなかったけど。

 

「……ん? それって今はやってないってこと?」

「はい、別の方法を見つけましたので」

「具体的には?」

 

 さて、ここからが本題だ。

 私が禿の子達に教えた鍛錬の方法について。

 そう、別の方法とは――鍛錬である。

 

「魔力による身体強化は、身体全体ではなく特定の部位にだけ効果を発揮することができる、というのはご存知ですか?」

「へぇ、初耳。普段適当に使ってるから、全然意識したことなかったね」

 

 身体強化は、この世界の人間なら一定以上の年齢になったら誰もが使う技術だ。

 これのあるなしで、生活の利便性があまりにも異なる。

 重機とかないファンタジー世界で、重いものを運ぶのには身体強化がないと始まらない。

 ただ、身体強化に対する理解度に関しては、本当に人によってまちまちである。

 剣の里なら、部位強化というのは結構当たり前の知識だ。

 剣の里の教えていい技術と教えてはいけない技術のウチ、前者に該当するくらいには。

 

「つまりですね、身体強化を利用して()()()()()()()()んですよ」

「肌を……? いやまさか……」

「はい。肌を強化することには、美容効果があるんです」

 

 これは私が剣豪鬼の宿痾を退治して少ししてからのこと。

 ある鍛錬の最中、肌を強化することを思いついたのだ。

 結果は良好、私の容姿は以前と比べてさらによくなり、手入れも必要なくなった。

 

「特定部位の強化は、鍛錬においても有効です。私の里の後輩にヒオリちゃんという子がいるんですが、その子は肌強化による鍛錬を開始してから――化けました」

 

 容姿という意味でも、強さという意味でも。

 あまりにも、ヒオリちゃんは著しく成長した。

 近いうちに父上の許しを得て、ヒオリちゃんも里の外へ旅立つことだろう。

 

 

「な、そ、それは……」

「とまぁそういうわけで、肌強化の鍛錬を覚えるための方法を、この子達に教えました」

「――それ、私にもおしえてくれよ!」

 

 というわけで、その方法と基礎的な剣の振り方を娼館の子たちに教えたのだ。

 娼婦の姐さん方にも、当然肌強化の方法は教えている。

 大好評だった。

 そして勢いよく、ソアナさんが私の手を掴む。

 おおう、やはり女性というのは美容に目がないんだなぁ。

 

「へ、へへ……これは金のなる木だ……見つけたよ……誰にも渡さないよ……これで大金持ちだよ……」

「ソアナさん……」

 

 残念ながらソアナさんは美容ではなくてお金に目がないようだった。

 というか目がお金になっていた。

 ……これを聞いて美容ではなく金儲けに話が行く辺り、ソアナさんも肌の手入れが面倒族だったりしない?

 

「……残念ですが、無駄だと思いますよ」

「なんで!」

「剣の里には教えていい技術と、ダメな技術があるのですが……肌強化は教えて良い技術です」

「なんで!?」

 

 そう、ソアナさんが目をお金にするくらい、肌強化は金のなる木みたいな技術だ。

 これを金払って教えるだけで、大金持ちになれそうなくらい。

 だが、残念ながらそうは行かない。

 なにせ――

 

 

「……あまりにも広がりすぎて、すぐに大陸中に浸透しちゃうから意味ないんですよ」

 

 

 と、父上が太鼓判を押したからだ。

 

「そ、そっかぁ……」

「そうなのです……」

 

 まぁ、広がる過程である程度のお金稼ぎはできると思うけどね。

 多分ソアナさんが思うほどの収入にはならないだろう。

 なお、それはそれとして美容のためにもソアナさんは私に肌強化の方法を教わるのだった。

 

 ――このときの私は知らなかった。

 この鍛錬法が後に「神楽式鍛錬法」と呼ばれ。

 歴史に名を刻むことになるなんて。

 知るよしもなかったのだ――




というわけで「カルマン」編終了となります。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
次回から「ヨース」編が始まります。

https://www.pixiv.net/artworks/128642684
また、禿禿詐欺をしてる時のイラストを水霞様から頂きました。
あーダメダメエッチ過ぎます。
ダグスさんとこれで喧嘩したんですか!?

というわけで、今後とも本作をよろしくお願いいたします。
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