転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す 作:暁刀魚
「――カグラお姉さん!」
ふと、私を呼ぶ声がする。
リンカねえさまが、戦いを終わらせてやってきたのだろうかとも思ったが。
どうにも、声が違う。
というか――
「――リオン?」
商人の子、リオンだった。
え? なんでこんなところに、と思ったが。
「カグラお姉さんすごい! あれ、宿痾の主だよね!?」
「あ、あー……見ていましたか?」
そもそも私は、市街地で戦闘を行っていたのだ。
途中から、お互いに周辺被害を出すような大規模戦闘をしていなかったから、忘れていたが。
そりゃあアレだけ騒げば、「ヨース」の街にいる人たちも気がつくだろう。
見れば周囲には、遠巻きに私を見る人の影があった。
「……ここは危ないですよ。瘴気は蔓延していないと思いますが、万が一があります」
「ボクは大丈夫、カグラお姉さんに身体強化をちょっとならったから」
「それは……だとしてもです。そもそも、近くで見ているのもダメですよ。巻き込まれるかもしれなかったんですから」
少なくとも私は、周囲を気づかえるほど余裕がなかった。
宿痾の方も気づいていなかったようだけど、だからこそなおのこと危険だ。
「それに、カグラお姉さんなら絶対に勝つって信じてたもん!」
「なんだか照れますね……別に絶対勝てると断言できる相手ではないのですが」
「でも、お姉さんは勝ったよ!」
勝ったことを喜んでくれるのは嬉しいけれど、褒め殺しというのはなんだかむずかゆい。
というか、だ。
「それと……これから色々と忙しくなるので、一度離れたほうがいいですよ。衛兵とか、冒険者とか……後、リンカねえさまも来るでしょうし……」
「あ……宿痾の主が、いきなり現れたんだもんね。何か、大変なことが起こったんだよね」
「そうです。……まぁ、色々と……ありまして」
一から説明するのは、流石にあまりに時間が足りない。
だったら、とりあえずこの場から立ち去ってもらうのがいいだろう。
幸いにもリオンは聡明な子だ。
私の言っていることを、きちんと理解している。
「ああ、それにしても……」
「カグラお姉さん?」
「ちょっと太陽が……眩しい……ですね」
なんだか、頭がくらくらする。
眼の前が真っ白になって、意識が遠ざかって。
「カグラお姉さん!? お姉さん!?」
ああ、これは……疲労でぶっ倒れるのか。
この世界に転生して以来、ずっと身体強化で身体を鍛えてきたから。
こんな限界を迎える感覚、久しぶり――
+
それからの話をしよう。
目が覚めたら、なんか私が伝説になっていた。
宿痾の主を討伐し、力尽きた剣士カグラ。
そんな話が、「ヨース」の街で広がっていたのだ。
いや、死んでないから。
確かに体中トゲで串刺しにされてたし、四重強化のやり過ぎで倒れてしまったけれど。
死んではいない。
流石にそこまで無茶するような戦いではなかった。
宿痾の主に負けるならともかく、体力切れで死ぬほどじゃない。
とはいえ、この街――というか国にはびこる宿痾教徒の拠点を破壊し。
そこにいた人造宿痾の主すら討伐したのだ。
まあ、私が話題になるのはおかしくはない。
でもリンカねえさまだっていたし、リンカねえさまも人造宿痾を倒しているのだけど?
と、思うが。
姉さまいわく。
「――私はすでに、七刀として有名だから名誉なんていらないわ。それに、あんな派手に市街地で大立ち回りすれば仕方ないでしょ」
とのこと。
名誉に関してはぶっちゃけ私もいらないのだけど。
まぁ、こちとら一応まだ十二歳だ。
面倒なことは姉さまや、故郷の父上に任せてしまっていいだろう。
後者に関しては、こういうことは大得意なんだし。
ただまぁ、そうやって色々投げたとしても。
私個人に対する「人気」はどうしようもないとのこと。
そりゃそうだ、あの戦闘は本当に多くの人が見ていたらしいのだから。
その最後が夜明けの黎明の中で勝利し、力尽きることだというのなら。
まあ、伝説の一つや二つ、生まれてもおかしくない。
外を出歩く度に視線が集まるので、またローブ姿に戻ってしまった。
というか、ローブ姿でないと出歩けないくらい私はやらかしてしまったのだ。
だって、あんな痴態を晒してしまったのだ。
ちょっと人にお見せできない表情で発情しながら戦っていたのをバッチリみられていたのだ。
街を出歩くと、なんか恥ずかしそうに住人から顔を逸らされるのだ。
それでいて、尊敬の視線も感じる。
なんだろうこれは、私は一体どうなってしまったのだ!?
……せめてもの救いは、リオンが私の痴態を理解していなかったことかな。
純粋に尊敬の目で私を見てくる。
逆にその視線が痛いかもしれないが、まぁよそよそしくされるよりはマシだ。
さて、そんなやらかしは置いておいて。
一旦、他の私に起きた出来事を話しておくと。
まず目が覚めたら病院みたいな場所だった。
医者である治療魔術師からは「回復早すぎでしょ」と言われたりしつつ。
退院すると、今度は衛兵に呼び出されて話を聞かれた。
といっても大半はリンカねえさまが語っているし、リンカねえさまが見ていない部分は別に目撃者がいる。
私がやったことと言えば、事実確認だけだった。
そんなこんなで、色々と忙しくしていると半月くらいが経過し。
私が「ヨース」の街にやってきて、一ヶ月程度が過ぎた。
+
「というわけで、カグラはこの後どうするわけ?」
「この後ですか?」
私とリンカねえさまは、私が泊まっている宿の一室で話をしていた。
最近は私が有名すぎるせいで、二人でいるとまともに外で話ができない。
もっぱら、この部屋に集まるのが定番と化していた。
「旅の目的は、見聞を広めることです。その指針として、父上から他の七刀に会ってくるよう頼まれてる感じですね」
「で、その一番手として私と出会った……と」
「リンカねえさまが、この国の食客でよかったです」
「ああ、それなんだけど」
ふと、リンカねえさまがある頼み事をしてくる。
これからも旅を続けるなら、一度この国の首都によってほしいとのこと。
リンカねえさまがお世話になっている人と、引き合わせたいそうなのだ。
「別に、今すぐである必要はないわ。今回の件は里長に処理してもらうよう頼んだから、王宮に顔を出す必要はないし」
「ならまあ……そのうちに」
といっても、次の目的地は正直決まっていない。
それなら当然のように、次に向かうべきは首都になるのだろうけど。
「ただそうね……七刀に会いたいのよね?」
「ええ、まぁ。強くなるうえで、強者との出会いは近道の一つですから」
「だったら――」
ふと、ねえさまは考え込みながら、私に提案する。
「先に、七刀に会わない?」
それはある意味、願ってもない提案だ。
「ヨースの街から王都へ向かう最中、一度他国に出るルートがあるのよ」
「少し遠回りになると思いますが――」
「ええ、そのルートの途中で、七刀の一人に会いに行けるの。それも――」
この国の地図は、ある程度頭に入っている。
確か他国に出るルートを通る場合。
通りがかる街といえば――
「ある
この大陸有数の、ダンジョン街があるはずだ。
そしてそこにいる、というのであれば。
私も里で噂を聞いたことがある。
その人は――
「現七刀
シドウさま。
剣の里の人間なら、知らないモノはいない。
現七刀最強。
それはすなわち、この大陸において――現状最も強い人類であるということだ。
「最強を目指すなら、彼に会っておく必要があるでしょ?」
「あはは……そうですね」
「それに……今のカグラは本当に七刀とは強さの領域が別方向すぎるから……私一人だと七刀にしていいか判断がつきかねるし」
なんというか、それは――願ってもないことだ。
まず、ダンジョン街というのがいい。
この世界にはファンタジー異世界らしくダンジョンが存在し。
そこには多くの冒険者が集まっている。
ダンジョンには強い魔物がわんさかいて、それを討伐する冒険者も強豪揃い。
その頂点が、シドウさまだ。
それにしても、七刀か。
なってみないか、と父上から言われてはいるものの。
果たして本当になれるのだろうか、私。
父上の推薦も親ばかが混じっていないとは限らないし。
さて、それは一度置いておいて――
「行きましょう。そのダンジョン街。名は――」
「
「ダンジョン街ラリスと、”七刀最強”シドウさまの下へ!」
かくして、次なる旅の目的は定まった。
ダンジョン、最強。
なんとも心躍る響きだ。
ああ、次は何が私に待ち受けているのだろう――
というわけで、第二章はここまでになります。
次回からちょっと旅の道中の出来事を挟みつつ「ラリス」編に入ります。
冒険者の街で、カグラが大暴れ! お楽しみに。
ここまでお読み頂き、本作を面白いと思っていただけた方は、
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特に評価は高評価が入るとカグラみたいになります。
何卒、よろしくお願いいたします!
カグラが七刀になれるかどうかのやり取りを若干追加しました。