転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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三十三 温泉の霊峰

 現在私達が歩いている山岳地帯には、宿場町がある。

 山岳地帯の入口にそれぞれあって、そこで旅人は物資を買い込んで山越えをするのだ。

 

「んー、ついたわねー」

「のんびり旅したから、結構かかっちゃいましたね」

「これでも、休憩所半分スキップしたから、他の旅人の倍の速度で歩いてはいるんだけどね」

 

 現在、私達は「ラリス」側の宿場町に到着していた。

 山岳地帯には幾つかの休憩所があって、それらは普通の旅人が一日歩くとたどり着けるくらいのちょうどいい位置に存在している。

 私達は剣士なので、それを半分スキップしたのでかかった行程は、平均の半分といったところ。

 結構なペースなのだが、やろうと思えば一日で山岳地帯を踏破できるのが身体強化を鍛えた剣士である。

 

「ま、流石にそれは風情がないわね。道行く人とぶつかって事故ったら大惨事だし」

「ですねー」

「それにしても――」

 

 リンカねえさまが、街を見渡しつつ感慨深げに空気を吸い込む。

 さて、「ヤーファン」側の宿場町は特にこれといった特徴がないのだが、反対側――つまり隣国のダンジョン街「ラリス」に近い宿場町には、ある特徴があった。

 それは――

 

「硫黄の香りが、温泉街って感じするわねぇ」

 

 温泉だ。

 この大陸には、入浴の文化が根づいている。

 というのも、剣の里開祖のシンラが、随分と入浴好きだったらしいのだ。

 各地で温泉に入りたいがために、入浴の文化を広め。

 魔術で手軽にお湯が用意できるのもあって、今ではそれなりに高い宿ならお風呂は必ずついている。

 ただ、大抵は水魔術によって用意された、いわゆる銭湯だ。

 天然の温泉がある街は、今の時代でも結構レアである。

 

「剣の里を思い出しますねぇ」

「剣の里を出ると、なかなか温泉って入る機会ないからね。せっかくだしゆっくり堪能していきましょう」

 

 かくいう剣の里にも、温泉が湧いている。

 山奥にあるということもあって泉質は非常によく、これがまぁきれいな乳白色の硫黄泉なのだ。

 

「とはいえ私が入ると、視線がきついんですよねぇ。お陰で、里にいたころも朝に滝行で済ませることが多かったですし」

「もったいないわねぇ。今ならどうせ何をしても視線を集めるんだし、ちょっとくらい良いでしょ」

「それは……まぁ」

 

 里にいた頃は、まだ前世の感覚が抜けてなかったのもあって、そういう場で視線を集めるのがなんだか恥ずかしかったものだ。

 今では、フードを被って顔を隠していないと、よっぽどのことがない限り視線を集める。

 特に胸部が。

 そういう理由もあって、流石に慣れてきたのは事実。

 どうせ今までも、宿のお風呂に入る時は視線を集めてきていたし。

 

「じゃあ、入りましょうか」

「いいわね! じゃあ宿を取ったらこの街の外湯に出発よ!」

 

 何やらリンカねえさまのテンションが高い!

 私は手を引っ張られながら、今日泊まる予定の宿に向かうのだった。

 

 

 +

 

 

 リンカねえさまがこの温泉街を利用するときに、必ず泊まるという宿にチェックインして。

 私達は温泉街の外湯にやってきていた。

 いわゆる、誰でも入ることのできる公衆浴場。

 現代でも温泉街なら時折見受けられるそこは、この世界でも健在だ。

 

「そういえば、硫黄の温泉はお肌をキレイにする効果があるらしいですよ」

「それで昔から、剣の里の人間には美形が多いのかしらね」

 

 なんて話をしながら、脱衣所に入る。

 中には結構な数の人がおり、温泉街が賑わっているのが見て取れた。

 

「……やっぱり視線が集まりますね」

「まぁ、カグラはホント目立つからねぇ」

「ねえさまだって、結構な美人さんだと思いますけど?」

 

 同性が相手だからこそ、遠慮ない視線は多く感じられる。

 確かに私のほうが視線を集めてはいるけれど、ねえさまだって美人だ。

 

「私はほら、カグラほど大きくないから」

「やっぱりこれですか」

「男から視線をあつめることはあっても、同性から視線を集めることはアンタほどないわよ、私」

 

 自分の胸を、服の上から持ち上げてみる。

 なんというか、まぁ。

 大変大きく育ったものだ。

 ここまで育てるつもりはなかったのだけど、なんか勝手に育ってしまった。

 というか、年齢的にまだ大きくなる余地もあるし。

 なんて思いながら、私は旅装を脱いで――

 

「……ねえ」

「はい? なんでしょう、リンカねえさま」

「アンタ……まさかそれ、()()()()()()()の?」

 

 ふと、リンカねえさまがサラシの奥にある”それ”に視線を向ける。

 ざわ、ざわ……みたいな空気が脱衣所を包む。

 というか、この場にいる全員が私の胸に視線を向けていた。

 どんだけですか。

 

「そりゃまぁ、大きすぎるとジャマになるだけですし」

「押さえつけてても結構ジャマそうなんだけど」

「これくらいなら、慣れれば何とかなりますよ? とはいえ――」

 

 私がサラシに手をかける。

 ごくり、と生唾を飲む音が聞こえた。

 周囲が静寂に包まれている。

 なんですかこの空気。

 

「流石に、このサイズだと面倒ですから――」

 

 

 そう言って、サラシを解いた瞬間、脱衣所の時間が一瞬停止した。

 

 

 なんというかこう、人々の動きが止まったのだ。

 一斉に、呼吸すら忘れて私に視線が向けられている。

 それはさながら、雄大な山々を眺める登山者のような。

 長く険しい旅の果に、偉大なる霊峰をその目に焼き付けたかのような。

 そんな趣のある沈黙だった。

 

「ええと……」

 

 なんだろう、この。

 恥ずかしいというほどではない。

 正直、自分の女体にそこまで興味はないし。

 それを誇るつもりもないのだが。

 それはそれとして、居心地が悪い。

 なんでこんなに居心地が悪いのかと言われたら、正直自分ではよくわからないのだ。

 

「――――デッッッッッッッカ」

「躊躇なく言いましたね、リンカねえさま。酷いセクハラですよ、これは」

「いやでもデッッッッッッッカ」

「二度も言わなくていいですから!」

 

 リンカねえさまがでかい発言をしたことで、周囲の時間も動き出す。

 流石にあんなにジロジロとこっちを見てきたのが気まずいのか、他の女性陣は視線を逸らしている。

 ただ、逸らしながらもチラチラこっちを見ているのは気づいているんだからな。

 ねえさまは容赦なく見てくるけど。

 

「ほら、行きますよリンカねえさま。もう何時でも入れるんですから!」

「え、ああ……ごめんなさいってカグラ。いやでも、本当にデカすぎじゃない? むしろでかすぎるカグラが悪いんじゃない?」

「何言ってるんですか、もう」

 

 本当に何を言っているんだか。

 リンカねえさまの目はぐるぐるしていた。

 完全に正気を失っている。

 軽くていっ、と叩くと少しだけ正気を取り戻し。

 私達は温泉を堪能するべく、中に入る。

 

「いやしかし……まさかここまで大きいとは思わなかったわ」

「ヨースの街では宿が別でしたし、反対側の宿場町では個室に浴槽がありましたからね」

 

 お風呂の中を満たす温泉の香り。

 湯船は美しいエメラルドグリーンで、暖かさが旅で疲れた身体を癒す。

 前世では、正直そこまで風呂にこだわりはなかったが。

 この世界に転生してからは、結構入浴という行為がすきになっていた。

 多分、頻繁に身体を動かすからだと思う。

 肉体的には身体強化で疲れを感じることはないのだが、精神は別だ。

 疲れた心を湯船が癒やし、明日への活力に変えてくれる。

 その感覚は、なかなか他に代えがたい魅力があった。

 

「宿で一泊したら、次はいよいよダンジョン街ですか」

「カグラのことだから、またなにかとんでもないことをやらかしそうよね」

「む、なんと失礼な。ダンジョン街には私みたいな人がいてもおかしくないですよ」

「そりゃまぁシドウはいるけど……流石にカグラみたいな人間がそう何人もいてもらっちゃ困るわよ」

 

 どうだろう、ダンジョン街は無数の強い冒険者が集まる場所だ。

 クセの強さも、他とは段違いじゃないかと思うのだが。

 なんて思っていると。

 

「それに、その胸でやらかさないのは無理でしょ……」

「いやねえさま、どこまで胸の大きさを引きずるつもりなんですか。まだ正気に戻ってませんね?」

 

 胸にこだわるリンカねえさまに、チョップを何度も叩き込みつつ。

 私達は、久々の温泉を堪能するのだった。




この修羅、スケベすぎる……!(むっわぁああ)
おっとサラシが……

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