転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す 作:暁刀魚
コドクヘビをなんとかしてから、魔法少女姿で消費した魔力を回復させつつ、これまでのことを振り返る。
一番の疑問は、どうやってシドウ様はこんなにピンポイントで喧嘩を起こせるのかということ。
まず、喧嘩自体は珍しいものではないらしい。
実際、シドウ様とは関係ない喧嘩があちこちで起きたり起きてなかったりするし。
血気盛んな冒険者がこれだけ集まってるんだ、火種自体はどこにでもあるんだろう。
ただ、それに火をつけた人間がわからない。
なんでもダグスさんいわく、見知らぬ冒険者の野次で、気づいたら喧嘩に発展するそうだ。
その冒険者が誰かわかれば、何かしら手がかりになるのだろうが。
少なくとも、シドウ様ではないそうなので、本当に誰にもわからないんだとか何とか。
「思うのですが、その謎の冒険者はシドウ様を見つけるための、方法の一つなのではないでしょうか」
「と、いいやすと?」
「まず、その冒険者がシドウ様の関係者であることは確実で。だけど、何かしらの方法で正体を隠している。それを見つけられる能力があれば、その関係者がシドウ様探しに協力してくれる、みたいな」
「なるほど……」
実際はそこに加えて、シドウ様が会ってくれるかはその時の気分次第というランダム要素も加わる気がするが。
「つまり、その関係者を探すってことですかい?」
「あくまで、関係者を探すのは方法の一つですけどね。多分、もっと総合的にこっちの才能を図ってるんだと思います」
例えば、さっきのコドクヘビの騒動。
アレもシドウ様はきっちり観察しているはずだ。
というか、シドウ様の魔力が
きっと、それ以外のタイミングはさほどこちらに興味がないのだろうな。
「ようするに、私がシドウ様に会うために行った行動全てを向こうは判断材料としているわけですから、一番得意な方法でシドウ様へ会いに行かなくてはなりません」
「まぁ、それもそうですかい」
というわけで、私が一番得意な方法を選択することにした。
具体的には――
「さぁさぁ! 我こそはという戦士は、この剣の里のカグラに挑むが良いでしょう!」
私は、修練場でそこら辺にいる冒険者に喧嘩を売っていた。
周囲の冒険者が私に視線を向ける。
魔力を回復させるためインターバルを挟んだとは言え、先程まで私が騒動の中心にいたのだ。
当然ながら、注目するものは多い。
「あの旅装、やはり剣の里の人間だったか」
「その割には、さっき魔術を使ってたよな? やたらと無駄の多い魔術だったが」
「そもそもあの胸で剣士は無理だろ」
なんだかいろいろ言われているものの、これまでの冒険者ギルドに比べると引いてる冒険者は少ない。
先ほどあれだけ大暴れしても、普通に私を観察している冒険者が多いのはなんだか感動だ。
そして、そんな場所だからこそ――
「…………」
「あ、貴方は……先程護衛をしていた冒険者さん……! 仕事終わりに修練場で鍛錬ですか……!」
最初に私へ声をかけてきたのは、先程武器商人の護衛をしていた寡黙な戦士だ。
仕事終わりに修練場へやってきたら、先程顔を合わせた私が対戦者を募集している。
これ幸いと手を上げたらしい。
「私も、貴方とは一度手合わせしてみたいと思っていました。ですから――」
「…………!」
「殺さないように加減しますから、一撃で沈まないでください……ね!」
故に、私はそのまま勢いよく飛び出す。
不意打ち、というほどではないが。
ほとんど開戦と同時の一撃。
更には三重の多重強化までしている。
この世界で、これを受けられる人間は果たして何人いるのかという一撃を――
「受け止めますか!」
「……!」
寡黙で表情も動かないけれど、わかる。
この人は、笑っている!
そのまま私は刃を何度も叩きつけ――
「”沈黙”が押されてるぞ!」
「いや、押されてるどころか……」
沈黙と呼ばれた戦士が、後退していく。
それは、そう。
押す、どころか。
「あは――ッ!」
「――あいつ、沈黙を圧倒してやがる!」
圧倒だ。
やがて、私は壁際まで沈黙さんを追い詰めると、沈黙さんの武器である長剣を弾き飛ばした。
「――ありがとうございました」
「……」
沈黙さんは、残念そうにしながらも丁寧に会釈をする。
そうして、弾き飛ばされた剣をひろうと、修練場の端に引っ込んだ。
このまま私の乱痴気騒ぎを見ているつもりらしい。
「さぁ、次に挑んでくるのはどなたですかぁ!」
その言葉に、私達の戦闘を見ていた冒険者たちが一歩引く。
どうやら沈黙さんは、冒険者ギルドではかなり上位に位置する人らしい。
まぁ、実際そんな感じしてたし、見た感じ現在この修練場にいて沈黙さんより強い可能性があるのはダグスさんくらいだ。
だから、彼らが遠慮するのもわかるのだが、ここは私に挑んでくれないと困る。
なので――
「おやおや、誰もいないのですか? 別に私はここにいる全員をまとめて相手してもいいのですよ!」
――挑発する。
「私のほうが、強いですから!」
それを今から、証明するために。
「……流石にそこまで言われちゃ、引っ込んでいられねぇなぁ」
「盛るのは発言じゃなくて、胸にしておけよ!」
冒険者達も、ここまで挑発すれば乗らざるを得ないようだ。
各々に自分の得物をてにして、私を囲む。
さぁ、乱痴気騒ぎに乱痴気騒ぎを重ねよう。
具体的に言うと――
ここに人を集めて、通路で喧嘩できるほど人がいなくなるまで!
そう、私の解決法は単純だ。
シドウ様の元へ向かうまでに、喧嘩による妨害が発生してしまうなら。
喧嘩が発生しなくなるくらい、ギルドの通路から人を減らせばいいのである。
方法は見ての通り。
喧嘩を売って、ギルド中から冒険者を集めてしばき倒す!
他の冒険者ギルドならそうも行かないが、ここは冒険者の街。
多少の喧嘩が日常茶飯事なら、私もその文化に則るまで!
というわけで、挑みかかってくる冒険者をまとめて剣で薙ぎ払う。
殺すわけにはいかないので、そこにだけ注意しつつ。
一振りごとに数人をまとめてふっとばすのだ。
「ぐおおお!」
「ダメだ、身体強化に差がありすぎる!」
流石に「ラリス」までやってくるだけあって、挑んでくる冒険者には勢いがある。
実力の差はあれど、私に対して全く臆していない!
しかも数がかなり多い、十人とか二十人とかそんなレベルじゃない。
以前の、「カルマン」の街で宿痾教徒の拠点を襲撃した時のアレを、更にパワーアップした感じ。
興奮も当然ながらパワーアップだ。
「次! 次次次! まだいますねぇ!」
「うおおお! 逃げてられるか! こういうバケモンに挑んでこその冒険者だろうがぁ!」
意識が研ぎ澄まされていく。
数を相手する時、大事なのは如何に自分の強さを相手に押し付けるか。
相手は如何に私より弱くとも、とにかく数だけはいるのだ。
それに対処するための方法は一つしかない。
圧倒的な強さで以って、蹂躙する!
強さがほしい、誰にも負けない強さが!
しかし、段々と相手の勢いが弱まってきている。
なぜ? 私はもはや最高潮と言っていいほど高ぶっているというのに。
どうしてそんなにも弱ってしまうのか。
おかしいではないか、もっともっと暴れたい! 暴れたりない!
「――姐さん!」
その時だった。
それまでの無象とは隔絶した”強さ”が襲いかかってくる。
私はそれを、意識することなく受け止めた。
「……ああ、ダグスさんでしたかぁ。あはは、ダグスさんも私とやってくれる気になりましたか?」
「あ、あーいや……姐さん」
私の言葉に、ダグスさんは何やら歯切れの悪い様子。
むう、ダグスさんは私と遊んでくれないのだろうか。
「いいじゃないですか、やりましょうよ! ダグスさん、今の一撃からして以前よりさらに強くなりましたね? 今なら、多重強化の私とも戦えそうですよ!」
「そいつは光栄なんですがね……というか、ぜひまたの機会に頼みたいんですが」
ええ、だめなのか。
なぜ? どうして?
私はこんなにもダグスさんと戦いたいのに――
「……姐さん、当初の目的忘れてやすよね? もう十分倒せたから、今ならシドウの旦那のところまで行けやすぜ」
――はっ!
多分今日一番自由なカグラさん