転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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四十五 七変化のレイナちゃん

「これは、変身魔術というものです。自身の肉体を一瞬で別のものに変化させることが可能なのですよ」

「お、おお……」

 

 眼の前で、私と同じ姿、同じ顔、そして同じ声の少女が喋っている。

 何よりもすごいのは、その一挙手一投足が私にそっくりである、ということだ。

 人読みに長けた私だからこそわかる、容姿と声は同じでも。

 その一挙手一投足は、観察による模倣であるということが。

 

「といっても、そこまで便利なものではありませんよ。できるのはあくまで変身まで。何よりちょっとの衝撃で元に戻ってしまいますから」

「でも、レイナのそれは次元が違うわ」

「――()()()? リンカねえさま、私はカグラですよ」

 

 お、おお……と、内心本気で驚いてしまった。

 いわゆる、アレだ。

 メソッド演技に近いものだろう。

 役を演じるのではなく、役そのものになりきるような。

 それを、レイナさんはほとんど呼吸みたいに行っている。

 シドウ様は言っていた。

 私とレイナさんは話が合うかもしれない。

 それはこの、人読み技術の高さから来ていたんだな。

 で、あれば。

 ちょっと私も試してみようか。

 

「ぁ、あぅ……リンカ、さん。カグラに変身してるのは、私の方だよ?」

「え!?」

「ぶはっ!」

 

 リンカねえさまが私の演技に本気で驚き、シドウ様が吹き出した。

 どうやら、結構にていたみたいだな。

 

「むぅ、こうして私がレイナさんの演技をしているのを見ると、なんだか違和感がありますね」

「えぅ……ご、ごめんなさい。う、上手くいってない……よね?」

「待って!? いやほんとに区別つかないんだけど、ほんとに入れ替わってないのよね!?」

 

 困惑するリンカねえさまが楽しくて、演技を続けたくなる。

 声色は変えていないが、声の出し方と表情はかなり似ているはずだ。

 だけど、そこでシドウ様が笑いながらも本気でストップをかけてきた。

 

「ははは……そこまでにしておいてくれ、お前さんはともかくうちの娘は役に入り込みすぎると、刺激をあたえねぇと戻ってこれなくなるんだ」

「あ、そうなのですね。ではこのくらいに」

「シドウ様、何を言っているのですか?」

 

 そこで、二人の私の反応が別れた。

 私――つまりレイナさんの演技をしているだけの私は素に戻り――レイナさんが変身している私は疑問符を浮かべたままだ。

 なるほど、こういうことか、と納得する。

 そして――ふと、思いついた。

 

「そういえば、ここまで私のことを真似られるなら――身体強化の精度も真似られるのでは!?」

「お、いいことに気づいたな。レイナ……じゃねぇカグラ、こっちのカグラと一戦模擬ってみちゃくれねぇか」

「いいのですか!? わ、私と戦えるなんて――」

「ふふふ、いいですねぇ、そうこなくては。まったく――」

 

 そして、私ともう一人の私は。

 

 

「「さいっこうじゃないですか!」」

 

 

 お互いに、すごい笑みを浮かべて同意して。

 リンカねえさまがドン引きした。

 

 

 +

 

 

「あははははは!」

「あははははは!」

 

 お互いに、鏡合わせのように木刀を振るい、ぶつけ合う。

 素晴らしいことに、もうひとりの私――レイナさんの剣の腕は私と全く同じ。

 ……要するに普通だった。

 加えて言うと、私の多重強化は疾討以外で使用すると武器が壊れるため使えない。

 リンカねえさまの持ってる最高級武具を使えば耐えられるかもしれないが、それを疾討が握らせてくれるのかという問題があった。

 加えて、そんなもん叩き壊しても私の今の手持ちじゃ弁償できないという問題も。

 なので今回はお互いに、普通の身体強化で戦っている。

 

 そうなると――

 

「……多重強化しないと、カグラってそこまで強くないのね」

「努力と工夫の天才から、努力と工夫の成果を奪って強くなれるわけねぇだろ」

 

 という、外野からの野次が突き刺さる結果となった。

 まぁ私が自分のアドバンテージを全て捨て去っているのが悪いのだけど。

 それはそれとして、そんな私と全く同じ動きをしてみせるレイナさんの真似っ子はすごい。

 シドウ様いわく、”トランス”と呼ばれるその技術は、レイナさんの力量で再現できる技術は全て再現できるそうだ。

 全て!? やばくない!?

 いや本当にすごい。

 

 普通にやれば、もし私と私以外の人間が全く同じ技術でぶつかりあった場合。

 勝つのは私だ。

 だって私は、相手の考えが読めるレベルの人読み技術があるのだから。

 剣術の腕は低くとも、相手の考えを読めればその裏をかくことは容易い。

 だけどレイナさんに対しては絶対に無理。

 私と全く同じ人読み技術で、私と全く同じ剣を振るうのだから。

 

「このままやっても、一生千日手になりそうですね!」

「素晴らしいですね! 一生やりませんか!?」

「……これ、どっちが本物のカグラかわかる?」

「……一生やろうって言ってる方じゃないか?」

 

 正解ですシドウ様、よくわかりましたね!?

 

「とはいえ、このまま長く続けていても変化がありません」

「とすれば――」

「……これは、変化をさせようっていい出したのがレイナよね?」

「いや、いい出したのがカグラだな」

 

 本当によくわかりましたね!?

 一生やろうって言った口でそのまま変化を起こすとは、ふつう思わないだろうけど。

 そこはシドウ様の人読み技術ってことか。

 なんにせよ、私達は互いに――

 

「――やりますか!」

「あ、ちょ!」

 

 ()()()()で、斬りかかる。

 私達が強化の練度を高めたのが解ったのだろう、リンカねえさまが止めようとしてきた。

 木刀なんて一本いくら程度のものだが、たとえそんな木刀ですら壊れるのが忍びないのだろう。

 とはいえ、それより早く――

 

 

 ぶつかった木刀は()()()()()()が、木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

 

「あれぇ?」

 

 思わず、驚きながら距離を取る。

 そして困惑しながらレイナさんが変身した方の私を見ると――

 

「あっ! 多重強化ではなく普通の身体強化です!」

 

 レイナさんがずるをしていた。

 なんと、多重強化による身体強化ではなく、ごくごく一般的な普通の身体強化で私の多重強化並の精度を出しているのだ。

 私の多重強化に武器が耐えられないのは、多重強化の構造に因る問題なので。

 普通の強化であれば、武器は破壊されない。

 結果として、真っ当に強化された木刀は私の多重強化を受け止めたのだ。

 

「理屈としては解りますけど、私を真似するうえで多重強化ができないのは片手落ちですよ!」

「そもそも、カグラを模倣すれば私よりレイナの方が身体強化の精度が高いってのが、個人的には衝撃なんだけど。昔はできなかったわよね……?」

「そんだけ、俺の娘は成長してんだよ。すげぇだろ、うちのレイナは」

 

 私達が口々に言う仲、レイナさんが変身している私の身体にノイズが走る。

 これは、変身魔術が解除される兆候だろう。

 少しすると、レイナさんは元のレイナさんへと変化した。

 むう、もう少しやりたかった!

 いやまぁ、レイナさんが多重強化できないと解った時点で、模擬戦でやるべきことは全て終わっているので問題はないんだけど。

 ……それはそれとしてやりたかった!

 と、思っていたらレイナさんがとことこと私の側から離れていって。

 シドウ様とリンカねえさまの後ろに隠れた。

 え、なんで?

 

「あの、レイナさん?」

「……わ、わたし……その……」

 

 そんなレイナさんは、顔を真赤にしている。

 なんだか肩で息をしているので、おそらくは先程の”模倣”による疲れだろう。

 加えて、人見知りによる恥ずかしさもあるだろうか。

 それにしてもなんかこのレイナさん……

 

 とか、思っていたら。

 

 

「そ、そんな変態みたいなこと、わ、私できません!」

 

 

 ド直球の爆弾発言が飛んできた。

 まって、えっちだなって思ったのは悪かったから!

 公衆の面前でその物言いは待ってぇ!?




そんなことはないとデカパイ氏は弁明しており……

カグラが変態だと思う方は
評価感想お気に入り等いただけますと幸いです。
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