転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す 作:暁刀魚
レイナちゃんの言葉に、修練場が静まり返る。
もともとシドウ様がいること、さっきまで大暴れしていた私が二人もいることから、私達は凄まじく注目を集めていた。
そんな中での爆弾発言だ、周囲が静まり返るのも無理はない。
「だ、だって……! 体の中をぐちゃぐちゃにして、ずんずんってするんですよ!?」
ば、爆弾発言が更に続いている……!
おそらく、ぐちゃぐちゃにするっていうのは、多重強化の制御を失敗すると体内で魔力がめちゃくちゃに暴れまわることを指すのだろう。
そりゃ、危うい積み木を積み上げるようなものだから、失敗したらぐちゃぐちゃになるのは当然だ。
ずんずんっていうのは、私の多重強化が連続で身体強化を行うことによって発生するという意味だ。
一回ずん、と身体を強化した後。間髪入れず連続でずん、と強化する。
って意味だよね……? それであってるよね……?
「お、落ち着いてくださいレイナさんっ! 周りの目がありますからっ!」
「ひ、ひぃいい……」
ああ! 思わず声を出してレイナさんを怯えさせてしまった。
というか、シドウ様とリンカおねえさまは笑いをこらえてるんじゃないですよ!
笑うとレイナさんが正気になっちゃうからって、死ぬ気でこらえてるんじゃないですよ!
なんなら二人のほうが笑いこらえるの大変過ぎてすごい顔になってますよ!?
「あ、あんな大きいもの……変態的すぎますぅ……」
まって、流石にそれはよくわからない。
大きい!? 何が!?
変態的っていうのは、私の技術のことを言っているんですよね!?
「ああ……わかるぜ……大きすぎるよな……」
「変態的すぎるよな……」
そして、周囲の野郎どもは、なんか私の胸を見ながらあーだこーだ言っている。
大きいはともかく変態的はさすがに違うって!
見せつけるつもりの服は着てないって!
「あうあうあうあう」
「お、落ち着いてくださいレイナさん……!」
怯えるレイナさんと、それに慌てる私。
周囲の視線が私に対する変な視線で溢れかえり。
もう一体どうすればいいのかという、この状況。
最終的に耐えられなくなったリンカねえさまとシドウ様が爆笑し始めて。
レイナさんが正気に戻ることで、終息するのだった。
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「ご、ごめんなさい!! 私、テンパっちゃうと変なこと言い出しちゃって……」
「い、いえ……レイナさんはいいんですよ。そもそもレイナさんがいなくても、私は変態みたいななにかと見られてたでしょうし」
「そ、それはそれでどうなんだろう……?」
というわけで、レイナさんからの謝罪を私は受け入れていた。
現在、私達がいるのはギルドの食堂部分。
お互いに、夕食を食べようということで同席していた。
まだこの世界基準で成人ではない私以外は、軽く酒をいれながら歓談を楽しむ。
「まぁ、レイナがテンパって変なこと言っちゃうのは、前からそうだったし。ギルドの人達だって解ってるでしょ」
「そうだぞレイナ。レイナが気にすることはねぇよ」
「あなた達はもう少し私にもフォロー入れてくれてもいいじゃないですか……!」
珍しく正当な怒りを向ける私に、頭にデカイたんこぶを作ったリンカねえさまとシドウ様は視線をそらす。
あの後、私の怒りを正面から受け止め、たんこぶの作成を受け入れてくれた。
なのでまぁ、私としても二人をこれ以上責めるつもりはないのだが。
「それはそれとして……私に対する視線が多いです……!」
「も、元々パパって視線を集めるし……か、カグラちゃんもリンカさんも美人さんですし……」
そして現在、私達はとんでもなく視線を集めていた。
修練場のときもそうだったが、今はそれ以上かもしれない。
シドウ様とレイナさんの言う事が理由の一つでもあるけれど。
一番の理由は、私にたいする噂だろう。
さっきからひそひそと「変態」とか「大きすぎる」とか「デカパイ」とか聞こえてくる。
……なんか、割といつも通りな気がするな。
あと、それを言うならレイナさんも美少女だと思うけど、言ったらまた萎縮されそうなので別の所を褒める。
「それにしても……レイナさんの変身魔術はすごいですね」
「え、えぅ……そんなことないですよ。見ての通り、模倣できない技術もあるし……」
「少なくとも、容姿や言動の模倣としては完璧だと思いますよ」
なんでも、変身魔術は練度が低いと再現も微妙になるそうだ。
だけどレイナさんは私を完璧に模倣してみせた。
私という人間を、それほどまでに観察している証拠だろう。
「シドウ様の元へ向かう時、喧嘩を誘発させて道を塞いだのもレイナさんですよね?」
「あ、うん……気づいてたん……ですね」
「そりゃあまぁ。シドウ様の関係者で、アレができるのはシドウ様本人を除けばレイナさんくらいでしょう」
どうやらレイナさんは、シドウ様の指示を変身魔術で正体を隠して実行することで喧嘩を誘発させていたらしい。
まず、見知らぬ冒険者になりすまして喧嘩が発生しそうな人たちの元に向かい。
こっそり喧嘩を誘発させる一言を発言するのだという。
発言内容はシドウ様が考えているそうな。
「わ、私はパパの言われた通りにしてるだけ、ですよ……」
「それでも、実際に行動を起こしてるのはレイナさんでしょう。すごいと思いますよ」
「とんでもない問題行動だけど、この街だとよくあることだからそこまで問題に感じないのは、私がおかしいからかしら……」
よこでリンカねえさまがそんなことを言うけれど。
むしろねえさまの方が正しいと思います……いやまぁ、気にしない人が多いと思うけどこの街。
「それに、私の身体強化に匹敵する身体強化の精度、すごすぎます!」
「あ、アレは……変身魔術を使ってる時のトランス状態だからできること、で……」
「それでも、ですよ!」
何よりも目を瞠るべきは、私と全く同じ練度まで引き上げられた身体強化の技術だと思うが。
どうやらレイナちゃんは普段それほどの身体強化ができるわけじゃないらしい。
どころか――
「……それに私、トランスしてないと剣術も全然、ですし」
「まぁ、カグラとどっこいってところだなぁ」
とのこと。
要するに、普通。
魔術ばかり研究していると運動不足になるので、それなりには鍛錬をしているが。
それなり以上ではない、というくらい。
才能が魔術と人間観察に寄っている分、剣術には才能が向いていなかったのだろう。
「……なんだか、私と同じ特異点感がありますね」
「魔術の才能は母親譲りだし、トランスさえしてりゃ少なくともリンカには負けねぇから、お前さんほどじゃねぇよ」
「あ、あう……パパ……リンカねえさま並は……言い過ぎだよ……」
「いや、私よりカグラの方が現状で強いし、カグラの三重まで模倣できるなら、私より強いのは間違いないけど……」
「あうあうあうあう」
私がレイナさんを褒めていると、シドウ様とリンカねえさまも加わってきた。
そこからは、ひたすらレイナさんすごいが続く。
「髪も綺麗だし、お肌ももちもちだし。羨ましいわよね」
「あ、あうあう。髪はともかくお肌は、最近ヤーファンの方ではやってる健康法を取り入れたからでぇ……」
え、あの健康法すでに隣国まで広がってるんです?
それはそれで驚きですね。
「うちの娘はすげぇだろ……うちの娘はすげぇだろ……」
「シドウ様、さっきからそれしか言ってませんよ!」
「語彙が死んでるよう、パパ……!」
それはそれとして、嬉しそうなレイナさんは微笑ましい。
なんて、やっていると。
「レイナさんすごい!」
「えへへへ……」
「レイナすごい!」
「うぇへへへ……」
「娘はすげぇだろ……」
「どぅへへへへへ……」
褒めるたびに、何やらレイナさんの笑い方が怪しくなっていく……!
結果として――
「へ、へへへ……そ、そんなにすごいなら私……! 脱ぎます!」
何やら変な方向にかっ飛んでいった――!
変態はどっちですかレイナさん!
「と、このように褒めすぎるとレイナは暴走するわ」
「言ってないで止めてください、リンカねえさま!」
というか、これは、……アレだ。
「もしかして、酔ってませんか皆様!?」
リンカねえさまは赤ら顔。
さっきから「娘すごい」botと化しているシドウ様はぐでんぐでん。
レイナさんも真っ赤っ赤。
かくして、酒を飲んでいない私以外が、結構お酒に弱いことが判明するのだった。
どうしようこれ……
珍しくカグラがまともだったオチ。
このタイトルで!?
評価や感想、お気に入りありがとうございます。
カグラに体の中をぐちゃぐちゃにして、ずんずんってされたい人が多いようで嬉しいです(?)。