転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す 作:暁刀魚
「それで、私が好きそうな”遊び”って、結局なんなんですか?」
「くくく、そうだな。おもしれぇもんも見れたし、教えてやるよ」
シドウ様の言う「面白いもの」は私のデカパイではない。
天運の方だ。
この人、私のデカパイに一切意識を向けないぞ。
すごい人である。
で、私が好きそうな”遊び”とは――
「このカジノに併設された闘技場でなぁ、魔物と魔物を戦わせて――」
「行きましょう!!」
なにそれ、すっごい気になる。
魔物と魔物が戦ってる!?
もしかしてその勝敗を賭けてらっしゃる!?
すごい!
見てみたい!
うっひょー!
――というわけで、やってきました闘技場。
円形のコロッセオは、ファンタジー世界でたまに見かけるアレだ。
「ここでは、魔物同士を戦わせてその勝敗を競う”魔闘”をやってるんだよ」
「おお……も、もしかして他にも人と人が戦う武闘大会系のイベントも!?」
「ああ、やってるぜ」
「ひゃあーーーーっ! 出場させくだしゃひーっ!!」
そのままの勢いで飛び出そうとしたけど、止められた。
なんでも、武闘大会は今の時期はやってないらしい。
そんな…………
「うぅぅ……生殺しすぎます……武闘大会……武闘大会……うぅ……」
「そもそも、大会がやっててもお前さんは出禁だろうよ。お前さん、強敵と戦った時の寸止めとかできんのか?」
「………………………………努力します」
「武闘大会は相手を殺したら失格だ。手加減ができるようになるまでは出るんじゃねぇぞ」
「はい……」
そんな…………あんまりです……この世は地獄です……救いなんてありません……
私はその場に崩れ落ち、ぐずぐずと泣き始めた。
周囲から視線が集まるのも構わず、泣いた。
最初の内はシドウ様を責める視線が過半数だったけど、泣いた。
やがて泣いているのが私だとわかると、半数が視線を逸らした。
そんな中、私は泣いた。
やがて視線が概ねデカパイに向けられたけど、私は泣いた。
「あー……その、なんだ。そもそもお前さんを誘ったのは魔闘の賭けをさせたかったわけじゃねぇんだよ」
「……と、いいますと」
「魔闘の一部に、魔物と人がたたか」
「行きます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
かくして私は、喜び勇んでコロッセオに向かうこととなった。
なお、出番は1時間後だった。
待ち遠しすぎて、また泣いた。
+
魔闘、魔物同士を戦わせてどっちが勝つかを賭ける遊びだそうだ。
賭け方はただ勝つ方を賭けるだけでなく、倒れるまでに何分かかるか、とか。
複数の魔物を同時に競わせて、どいつが何番目に倒れるかを競っているらしい。
魔物はダンジョンから捕獲したものが運ばれて来て、それを放流しているとかなんとか。
なんとも冒涜的な遊びだなぁ。
まぁ、それくらい倫理観終わってるほうが中世風ファンタジー異世界の治安が悪い街って感じもして。
個人的には嫌いじゃない。
ちなみに、もし魔物が人に襲いかかったらどうするのか聞いてみたら。
「んなもん、見物客はほとんどが冒険者だ。よってたかってボコすに決まってるだろ」
とのこと。
ちょっと傲慢がすぎる遊びで笑ってしまった。
そして、今回私が参加するのは、魔闘の中でも人魔闘技と呼ばれる種目。
人と魔物が戦って、魔物を倒すのに何分かかるかを賭けるのだ。
魔物が人を倒すことは想定されていない。
なにせこの種目、参加できる人間が限られているからだ。
具体的に言うと――
「普段は
人間側が、基本シドウ様オンリーだからだ。
いやだって、万が一にも負けて死んだらあまりにもアレだろうし。
シドウ様もそんなことで他人の命の責任を背負いたくないらしい。
「レイナさんとかは参加しないんですか? 強い人に模倣するとかして」
「馬鹿野郎お前、レイナをそんな危険な目に遭わせられるわけ無いだろ!」
「私はいいんですね……いやぜひともやりたいので、やりますけど」
ええい親バカめ……
何にしても、イベントが始まるまでの待機時間で、なんとか私は気持ちを落ち着けることが出来た。
お陰で現在は冷静に、開始を待つことが出来ている。
「ちなみに、戦う魔物はどんな魔物なのですか?」
「そいつぁおめぇ、実際にやってみてのお楽しみってやつだ」
「ほほぉ。楽しみですねぇ楽しみですねぇ、たのたのしみたのしみしみしみしみみみみみ」
「おちつけ」
「はうぁっ!」
首元をチョップされて、私は正気に戻った!
それはそれとして楽しみ過ぎてうっひょおおおおお!
「はは、楽しそうで何よりだ。そら、出番だぞ」
「いってきまぁあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」
ドップラー効果って、自分で高速で駆け抜けても発生するんですね(?)
かくして、私はコロッセオに降り立った。
「おい見ろよ、変態修羅だぜ」
「相変わらず……でけぇな」
すると、観客からいろいろな言葉を投げかけられる。
なお、一応耳に入って入るが、頭にはいっていない。
今の私は、魔物との戦闘に意識を囚われていた。
魔物魔物魔物魔物魔物……
「なんか発情してねぇか?」
「見られるのが好きとか、やっぱ変態修羅だな……」
ん? なんか言われてるけど眼の前の魔物に集中しすぎて聞こえなかった。
なお、でてきたのは特定のデカイ魔物ではなく無数のいろいろな魔物だ。
なんというか、単体で私と戦闘を成立させる魔物は希少なのだろう。
腐蝕クモですら単体だと即殺して終わりだからなぁ、クモそのものの特性もあるけど。
とはいえ、対複数も私は大好物だ。
「うぇひ、へひひひひひ! ひひひひひひひひひ!」
「笑い声怖いって!」
観客の歓声? まぁ、多分歓声……が響く中。
私は魔物を狩って回る。
一匹一匹を切るごとに、その感触が伝わってくる。
柔らかい肉、硬い壁。
デカイ魔物に、小柄な的。
数多の種類を切って、切って、切るたびに。
その血肉が私を潤していく。
「コドクヘビの時や、その後の大暴れもそうだったが。よくもまぁあそこまで愉しそうに暴れられるもんだ」
多くの人々に見られながら戦うというのは、存外に悪くない気分だ。
先日、合体した宿痾の主と戦ったときも多くの観衆が私の戦いを見ていた。
あの時はそれを、終わってから意識したものだから大して思うところはなかったけれど。
なかなかどうして、刺激的な体験だ。
見られているということは、それだけ強者としてふさわしい戦い方をしなくてはならない。
ただでさえ剣士としては未熟の身。
その上弱いなんてことがあったら、あまりにもはしたない女だと言わざるを得ないな。
「――ああ、全く。私も大概好きモノですね」
シドウ様にこんな場所まで連れ出されて、衆目に晒されながら剣を振るう。
それこそ、はしたないと言われても否定できない行動である。
が、それでも。
楽しくて仕方がないのだ。
斬って、斬って、斬って。
そうすることで、強さを証明することが。
強くなると実感することが、楽しくて仕方がない。
この世界に於ける、私の唯一の娯楽。
それを、私はただただ実感していた。
――ところで。
なんだか、少し。
歓声が小さくなっている気がするのだけど、それは気のせいだろうか。
やがて、でてくる魔物も少なくなって。
ついに最後の一匹を斬り伏せた時――そこにあるのは歓声ではなかった。
あたりを見渡すと、こう、なんというか。
恥ずかしそうに、観客たちがもじもじしているのだ。
観客には男女問わず、様々な人がいたけれど。
皆一様に。
まぁ、うん。
なんというか。
顔のいい女が発情しながら暴れまわってたら、いくら十二歳の小娘でもこう、イケナイ気分になりますよね。
うん、今回ばかりは私も変態修羅と言われても何も否定できないと思います。
はい。
好きモノって……そういう意味じゃないんですけどね!
流石に減らしました。サイズは据え置きです。