転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す 作:暁刀魚
「そういえば、この街にやってきてから結構経ちますが。シドウ様以外の剣の里の剣士と会っていませんね」
「ああ、そのこと?」
ある日の朝、リンカねえさまと二人で朝食を取っている時。
剣の里の剣士と会っていないことを思い出し、話題に出した。
パンにサラダにドロップ肉という、質素なのだか豪勢なのだかよくわからない料理に舌鼓を打ちつつ。
リンカねえさまが何か知っているようなので、話を聞く。
「向こうが避けてるのよ。この街には何人か里の剣士がいるけど、全員ね」
「なんと! なぜ避けるのですか、一緒に
「だからよ」
ぴしっと、私にこの世界のフォークを突きつけてくるリンカねえさま。
私としては、ぜひとも手合わせ願いたいのだが。
「アンタと戦っても勝てないの。一般的な里の剣士の実力じゃあね」
「むむ」
「だから、勝てるように修行してるわけ。もし顔を合わせるとしたら、その時は向こうが勝てると想ったときよ」
「おお!」
それは、なんとも心躍る理由ではないか。
なんでも、この街にいる剣士は、シドウ様に会いたくてやってきたのだという。
でもシドウ様は、自分が認めた人物としか会おうとしない。
結果、会うことができずにいるのが、この街の里の剣士なのだそうだ。
会うことができればシドウ様の薫陶を得ることができ、それを得たら街を去るのが一般的。
「対して貴方は、街に来た初日からシドウと顔を合わせて、しかも勝つために修行をしてる。そんな貴方に、合わせる顔がないそうよ」
「ううーん、それは確かに致し方ない理由ですねぇ」
なるほど確かに、彼らが私に会いに来ない理由としては自然な理由だ。
が、それはそれとして。
「でも、私はその人達に会いたいです! 私から会いに行く分には、何ら問題にならないですよね!?」
「まぁ、うん。きっと追いかけっこになるけど、頑張って見つけたならいいんじゃない?」
「はい!」
というわけで今日は、逃げ隠れする里の剣士さん達を探すことにするのだった。
+
リンカねえさまは、そういうことなら私は自分の用事を済ませると言って別行動。
代わりにダグスさんが暇していたので、一緒に里の剣士を探すことになった。
こんなことにも付き合ってくれるダグスさんはいい人だなぁ。
さて、里の剣士探しである。
どうやって探すかと言えば。
「里の剣士さーん! あーそびーましょー!!」
「……姐さん、本当にその方法で探すんですかい?」
「もちろんです!」
大声で呼びかけながら、あちらこちらを歩き回ることだった。
ギルドの中から、街の中まで。
色んな場所を歩き回る。
ダンジョンの中は流石に広すぎて無理だけど、里の剣士は複数人いるそうだから、全員がダンジョンにいるということはないだろう。
「いや、でも流石にこれじゃあ、でてくる相手もでてこないんじゃあ?」
「いえ、問題ありません。私の狙いは
「……どういうことですかい?」
「見てのお楽しみです」
しばらくそうやって「あーそびーましょー!」をしながら歩き、最終的に私は修練場へとたどり着く。
私が入ってくると、修練をしていた人たちが視線を一斉にこちらへ向けた。
なぜか修練場へ遊びに行くと、毎度毎度視線を向けられるようになってしまったのだ。
遊びに行く度に、そこら辺の冒険者と
というかよく見たらリンカねえさま、いるじゃないですか。
用事って鍛錬だったんですね、誘ってくれたら一緒に鍛錬したのに!
そんなことを考えていた時である。
どこからともなく、私へ向けて光の魔術が飛来する!
「おっと!」
「うお!」
それを避けて、一歩下がる。
直後に、一人の女性が私に向かって飛びかかってきたのだ!
迫りくるは光をまとった拳、それを私は疾討で受け止める!
「――遊んでほしいのは、お嬢ちゃんかしら?」
「お名前を伺っても?」
「”鮮烈”、この街じゃそう呼ばれてるよ」
現れたのは、一人の魔術師。
特異なのは両手両足に光をまとわせていること。
魔術師でありながら、格闘家でもある様子。
身のこなしは、非常に俊敏だ。
鮮烈というのは、彼女の二つ名。
この街では、一定以上の実力を持つと二つ名で呼ばれるようになる。
先日私と喧嘩した”沈黙”の男性も、二つ名持ち。
当然ながら、ダグスさんやリンカねえさま、私も持っていて私の場合は――
「会えて光栄だね――”変態修羅”ちゃん」
「あの……この街の二つ名の命名規則に則ってくださいます?」
「じゃあ、”変態”ちゃん」
「そっちじゃないですって!」
失敬な! いや否定はできないけど、失敬な!
ともあれ、私が喧嘩したくてしたくて仕方がない修羅ちゃんなのは御存知の通り。
そんな私が周囲に喧嘩を売って歩き回れば、力自慢の二つ名持ちが現れるのは必定。
剣の里の剣士さんを探してはいたものの、もし現れるとすればこちらだろう、と。
私はそう判断していた。
「何にせよ、挑まれたからにはお受けしましょう! 修羅として! 修羅として!」
「ふふ、よろしくねぇ!」
画して、私と”鮮烈”さんの仕合が始まった。
”鮮烈”さんは光魔術を振り回しながら、拳で戦う格闘家。
魔術もそれなりに扱うようだが、本分は格闘に寄っているようだ。
その技術は見事なもので、何より
私の三重強化と正面から打ち合える当たり、その速度は例の在野の刺客さんとさほど変わらない。
「本当に、技術に関してはそこらの冒険者と変わらないのねぇ。このまま、一方的に圧倒し続けていれば私が勝てるじゃない!」
「逆に、一撃でも当てればこちらの勝ちですよ!」
とにかく”鮮烈”さんは戦い方が巧いのだ。
こっちの攻撃を全て的確に捌き、速度でもって圧倒してくる。
少しでもこちらにダメージを与え、何れは体力勝ちを狙うような戦い方。
今のところ身体能力の差で捌ききれているけれど、長期戦となって集中力が切れてくればどうか。
「――と、貴方は考えているのでしょう!」
「……っ!?」
しかし、甘い。
私の得意とするところは人読み。
たとえ技術的には圧倒していても、戦いが長引けば長引くほど相手の”癖”を読み取れるようになる。
それは私の体力切れよりも早く。
見切るには、さほどの時間も必要なかった。
一瞬の隙を縫い、私が”鮮烈”さんに肉薄する!
「こ、の!」
「あはは! もう逃がしませんよ!」
即座に光魔術で撹乱して逃げようとするけれど、絶対的な速度はそう変わらないのだ。
こちらが動きを読めてしまうようになれば、自然と”鮮烈”さんが追い詰められていく。
最終的に――
「――私の勝ちですね」
「……私の負け、ね」
鮮烈さんの真横の地面に刃が叩きつけられ、地が割れる。
それを以って、この仕合は決着となった。
なお、割れた地面は土属性魔術を操る魔術師がささっと直してくれるので問題ない。
「貴方がシドウさんを見つけるために、修練場で暴れたと聞いた時から、ずっと戦ってみたいと想ってたのよ。その時私、ダンジョンにいたから」
「それは光栄ですね。いい仕合でしたよ!」
「ええ、こちらこそ楽しかったわ」
そうして、”鮮烈”さんと握手をして別れる。
そのまま観戦していたダグスさんの元へ私は戻った。
いやぁ、満足満足。
「お疲れさまでしたぜ、姐さん。しかしなんだって”鮮烈”と戦ったんですかい?」
「ふふ、答えは簡単です」
と、そこでダグスさんのもっともな質問。
それに対して私は、視線をある場所に向けて――
「剣の里の剣士は――戦いに惹き寄せられるものなのですよ!」
直後、物陰からこちらを見ている剣の里の剣士に、飛びかかっていった。
あーそびーましょー!
たまにはカグラの年相応なところも描いておかないといけません
年相応……?