転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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五十一 お友達のレイナさん

 あの後、見つけた里の剣士さんとそれはもう盛大に遊び倒した。

 楽しくて楽しくて楽しくて仕方がなかったが、そうしていると更に他の里の剣士さんも我慢できずに寄ってくる。

 最終的に、一人、また一人と捕獲して、仕合して、倒した。

 

 その場にリンカねえさまもいたので戦ったのだけど、残念ながら結果は前回と一緒。

 リンカねえさまの剣技は、他の里の剣士や二つ名持ちとは一線を画する。

 他の人は私の三重強化に一部比肩するところはあるけれど、一部だけだ。

 それだと戦闘は成立しても、勝敗は明らかである。

 対するねえさまは、身体強化の精度も私の三重とほとんど変わらない。

 剣技に関しても、人読みだけじゃ対応できないくらいの練度だ。

 私の剣の技術はこれ以上上達しないから、強くなるには四重強化を身につけるかリンカねえさまを倒すための戦術を組み立てないと行けない。

 今回は、そこがどうにもならなかった。

 

 というわけで、その日は大満足の一日だった。

 ただ、一つ不満があるとすれば、ダグスさんが戦ってくれなかったことだな。

 準備ができていないということだけど、何があるんだろう。

 

 ――それから数日、私が街を歩いていると、ふと一人の女性が目についた。

 その女性は、どこにでもいる普通の冒険者といった感じで、特別な感じはしない。

 だけど、私は直感から彼女を意識して……あることに気づいたのである。

 なので、女性に声をかけることにした。

 

「――こんにちは、レイナさん」

 

 そう、レイナさんだ。

 変身魔術で姿を変えているけれど、私には解る。

 とはいえ、帰って来る反応はある程度予想がつくのだけど。

 

「……どちらさまですか?」

「んん、やっぱり変身した姿になりきってますね? ちょっと失礼しますよ?」

「わ、な、何をするんで……ひゃあっ!」

 

 てい、と首元を叩いた。

 するとポンッ、とその姿が見慣れたレイナさんのものに変化する。

 

「な、なんで解ったん、です……か?」

「直感です。とはいえ、私を見た時に”どちらさま”と言われた時点で確信しましたけどね」

「え、あ、うぅ……そうですよね。今のへんた……カグラちゃんを知らない人はいませんよね……」

「元凶!」

 

 てし、とチョップを加えた。

 あう、とレイナさんは鳴いた。

 ごめんなさぁい、と謝られたので頭を撫でてお許しします。

 なんてやり取りをしてから、話を戻して。

 

「うぅ……絶対にバレないと思ったのに……今まで、見抜けたのはパパしかいなかった……んですよ?」

「ふふふ、そういう意味では、私の人読みもバカにできませんね。より精進して行きますよ」

「あうう……頑張って……ください……あれ、でもそれだと、カグラちゃんがパパより……強くなっちゃう?」

 

 そりゃまぁ、何れはシドウ様を越えたいと思っているけれど。

 

「やはりレイナさん的には、シドウ様より私が強くなるのは困りますか」

「え、と……あぅ……パパは最強なので……カグラちゃんが越えられなくて悲しい思いをするのは……困るかも、です」

「想像以上にお父上への信頼が強い!」

 

 シドウ様が最強であるということを、一切疑っていない。

 これほどまでに、疑いが感情に全く混じらないとは思わなかった。

 なんというか、シドウ様も大概親ばかだけど、レイナさんもお父上が大好きなんだなぁ。

 

「あ、あの……ごめんなさい!」

「急にどうしたんですか!?」

「え、えと……パパとカグラちゃんが戦ったら、カグラちゃんがボコボコにされちゃうと思って……!」

「結構言う事いいますねレイナさん!?」

 

 なんというか、アレだ。

 私に対する変態発言から感じてはいたことだけど、アレだ。

 

「レイナさんって……親しい相手には結構図々しいですね?」

「えぅ!? そ、そうなんですか!?」

「そうですよ。……もしかして自覚がないんです?」

 

 それはつまり、もしかして。

 いやでも、レイナさんの境遇を考えると当然と言えば当然なのだろうか。

 

「えと……その、私、同年代の知り合い……友達が……ほとんどいなくて……」

「ああやっぱり……ラリスの街って、子どもがほとんどいませんものね」

 

 これには色々と理由があって、「ラリス」の街自体が結構最近できたものだからだ。

 具体的に言うと、レイナさんの誕生と「ラリス」の誕生がだいたい同じくらい。

 つまり十五年くらいってこと。

 そんな新興の都市なうえに、ここは冒険者――外部からやってくる人間が非常に多いのである。

 だから「ラリス」で生まれた子どもは数が少なく。

 レイナさんの同年代は、ほとんどいないそうだ。

 

「同い年くらいの冒険者なら、カグラちゃんやリンカさんが……いるんですけど」

「お互い、短い付き合いですものねぇ」

 

 そこは私も、そう違いはない。

 旅にでてからというもの、人付き合いはどうしても短いものになりがちだ。

 「カルマン」に「ヨース」。

 それからリンカねえさまや「ラリス」の方々を含め、他にも多くの人と交流してきたけれど。

 そのどれもが、一期一会という感じだ。

 ただ、ダグスさんのように一度別れた人と再会することだってある。

 決して、別れだけが旅の全てというわけではないだろう。

 それに、だ。

 

「とはいえ、それならば私とレイナさんは友達ですから、問題ありませんね」

「ゔぇ!?」

 

 ゔぇ!?

 そこまで驚くことだっただろうか。

 これまでのレイナさんの発言の中で、一番大きな声だった。

 

「とととととと、友達!? お、恐れ多いですよ!?」

「私に言ってどうするんですか。それに、友達どうこうでいうなら、リンカねえさまもレイナさんのことを友達だと思ってますよ?」

「あうううう!?」

 

 レイナさんは、百面相を始めてしまった。

 顔を真赤にしたり、青くしたり。

 それはもう、すごい勢いで表情が変化していく。

 なんだか、可愛らしいな。

 

「そうですよ、友達。別に、悪いことではないんじゃないですか? 憧れはあったんですよね?」

「あ、あうあう……あ、あこがれは……ありますけど」

「なら決まりです、私達、友達ということにしちゃいましょう」

 

 そう言って、私はレイナさんの手を取って向かい合う。

 なんだか周囲の視線が気になるけれど、気にしない。

 後でリンカねえさまからしこたまからかわれそうだけど、それもまた良しだ。

 

「というわけで、私達は友達です」

「はひっ!」

「そうだ、せっかくですし、この後一緒に御飯なんてどうですか? この後の予定って、大丈夫です?」

「あ、えと」

 

 完全にテンパった様子のレイナさん。

 色々とあたふたしながらも、それでもなんとか私の方を見てくれた。

 

「こ、この後は……ママのお墓参りに行こうと思ってて……」

「おっとそれは……お邪魔しちゃ悪いですよね」

 

 なんとなく、そんな気はしていたけれど。

 レイナさんのお母上は亡くなられていたようだ。

 私の母上と同じように。

 魔術の才能があったというレイナさんのお母上、昔はシドウ様と冒険者パーティを組んでいたとか、聞いたことがある。

 

「あ、いえ! そ、その……ママにお友達ができたって……報告、したら。よろこんでくれると……思います、し」

「おお、それはいいのではないですか?」

「……それで、その。ご飯も、一緒に食べたい……です」

 

 やがて、恥ずかしそうにしながらもレイナさんは、まっすぐ意思を私に伝えた。

 なんか周りからほんわかした空気を感じるけれど、「ラリス」でもそんな空気を生み出すことができるんだなとか私は頭の片隅で考えていた。

 

「では、早速向かいましょう。道案内を頼んでいいですか?」

「う、うん……わかりました!」

 

 かくして、私とレイナさんが駆け出していく。

 なお、それから数日、私に対する二つ名に「変態」がつくことがなくなった。

 現金だなぁ。

 

 

 そして、三日で復活した。




珍しくのんびりしたお話です。
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