転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す 作:暁刀魚
さて、「ラリス」の街で愉快な日常を送る傍ら。
私とリンカねえさまはダンジョンの攻略を続けていた。
それに関して特に触れることがなかったのは、前にも言ったと思うけど。
とにかく語ることがなかったからだ。
一日から二日かけてダンジョンの中を攻略し、階層を突破する。
ずっとこれの繰り返しだったからだ。
はっきり言って、ひたすら地味。
敵の強さは少しずつ強くなっているものの、そこまで脅威ではない。
ダンジョンには他にもトラップと宝箱があるのだが。
前者に関しても、脅威になるものはあまりなく。
後者に関しては、私達の実力を考えると今いる階層の宝箱はとってもあまり旨味がない。
お金にも困っていないから、その階層を適正としている冒険者に譲るべきという話になった。
なのでまぁ、端的に言うと。
「……ダレてきましたね。ダンジョン探索」
「!?」
私がぽつりと、そんなことを口にした時だった。
リンカねえさまが、驚愕の表情を見せたかと思うと、少し私から距離を取った。
手には即座に武具が握られている。
え、何事?
「ど、どうしたんですかリンカねえさま?」
「あなた……何者!? あの戦闘バカのカグラがそんなこと言うはずないわ!」
どうやら、私が想像もしていなかったことを口にしたことで、リンカねえさまは混乱しているようだ。
「そこまで言わなくても! 私だって戦闘に疲れる時だってありますよ!」
「そんなはずないわ! カグラは戦闘のことしか頭になくて、鍛錬で発情する変態で、胸には強さへの渇望が詰まってるのよ! この変態!」
「悪化してます! あと最後の罵倒は余計ですよね!?」
とにかく、慌てている様子のリンカねえさまをなだめて、なんとか納得してもらう。
幼い頃の私とリンカねえさましか知らない恥ずかしい秘密を話したのだ。
具体的には、「この刃物と結婚する! 初夜を共にする!」と突然刃物を抱いて寝た結果。
血まみれかつ腕を切り飛ばした状態でねえさまが発見されたことだ。
宣言されたのは私で、発見したのも私なので証明には十分だ。
ちなみに腕は魔道具でくっつけていた、この世界の魔道具はすごい。
「じゃ、じゃあ……貴方は本当にカグラなのね? ……大丈夫? どこか悪いんじゃない? 命の危機なら介錯するわよ?」
「介錯はしないでください! どこもわるくないですよ!」
「じゃあやっぱり……胸が大き過ぎるのが悪いのね!」
「ねえさま胸弄り好きすぎませんか!?」
あ、しまったこれは言い方に語弊がある!
……いやあんまり語弊ないな、温泉とか入ってると常に胸を凝視してたな。
今にも弄りたそうにワキワキしているな。
「こほんこほんこほん! 私だって、あまり代わり映えのしないダンジョンにダレることだってありますよ」
「考えても見なかったわね……だって戦闘中はいつも発情してるし」
「戦闘中は別です。でもそれ以外の探索は強さに繋がらないんですよ」
むしろ戦闘中は楽しくて楽しくて仕方がないくらいだ。
だけど、探索中戦闘が常に発生しているわけではない。
戦闘していない時間の方が多いかもしれないな。
「というか私、成果が出ることにやる気を出すタイプなんです」
「ああ、それは何となく分かるわ」
私のことを近くで見ているリンカねえさまなら、なんとなく解ってくれることなのだけど。
成果の見えない努力に対する私のモチベは、はっきり言って低い。
才能が乏しく、幼い時期から限界の見えていた剣術に身が入っていなかったのはこれが原因だし。
多重強化は重ねがけに成功すれば普通の身体強化と比べて目に見えて出力が向上する。
その点、ダンジョンの探索は代わり映えのしない通路をただ歩くだけ。
気がついたら探索が終わっていて、疲れだけがあとに残るのだ。
あの時感じていた興奮もどこへやら。
ああ、私の本質はやっぱり鍛錬以外の娯楽に餓えている存在なのだなぁ。
「とはいえそれは、ここがまだ中層だからそう感じてるだけでしょ」
「まぁ、それはそうなのかもしれませんが……」
「ここの下層はすごいらしいわよ? 多重強化の必要な魔物がわんさか出るとか」
「よし、今すぐ下層を目指しましょう!」
というわけで、探索にダレているなら探索を効率化してしまうことにしよう。
探索したくなったら、普通に探索すればいいだけだし。
というわけで私は、まず魔力をチャージしていく。
「……何をしているの?」
「ダンジョンの内部構造を魔力で把握します。まぁ見ててください」
チャージの仕方は、いつぞやのバイバイラットと同じだ。
四重強化まで魔力を練り上げて、ぶっ放す。
今回はただ放つだけではなく、薄く広げるようにする。
理由は二つあって、一つは他者に迷惑をかけないため。
濃密な魔力をぶっぱなすと、他の冒険者がそれに気づいてしまう可能性がある。
迷惑がかかるのだ。
それは避けたい。
そしてもう一つは――まんべんなく魔力を階層全体に広げるため。
「そらぁ!」
「……ん、なにかした?」
よし、成功だ。
隣で私の魔力を感じているリンカねえさまが、魔力に気づいていない。
リンカねえさまの察知能力が私やシドウ様ほどではない、というのはあっても。
七刀の察知能力が低いわけではないのである。
それを掻い潜れるなら、十分と言えた。
「魔力をダンジョン内部に放ちました。こうすると、魔力を通して私の感覚に――」
捉えた。
私の意識下に、”反響”が届いてくる。
「魔物の位置が返ってきます。これで、ある程度魔物の居場所を把握し、それを元にダンジョンの構造を推察するんです」
「……とんでもない技術ね、でも確かにカグラならできるか」
リンカねえさまの反応は結構冷静だった。
こういうところで動揺しないのは、リンカねえさまの強さを端的に表しているな。
ともあれ。
「それでは、この情報を元に次の階層を目指しましょう!」
「ええ」
というわけで、私達はダンジョン内を飛び回り。
魔物を倒し、魔物を倒し、魔物を倒し――倒して倒して倒して倒して、途中で魔物と間違えて人間に襲いかかって新種の魔物「デカパーイ」に勘違いされたりしつつ。
私達はダンジョン内を駆け回る。
それはもう、多くの魔物を倒しまくった。
目に付く魔物はとにかく切る! 切る、切る、切る!
そうこうしているうちに、次の階層を見つけることができた。
「いやぁ……終わりましたね!」
「そうね……」
ダンジョンの階層を区切る、転移陣に足を運ぶ。
今日は満足したので、一旦ギルドへ戻ることとしよう。
そうしてギルドに戻ると、周囲は冒険者でごった返していた。
「大満足でした!」
「いや、まぁ……うん。途中からそうじゃないかと思ってたんだけど、カグラ」
大きく伸びをしながら、満面の笑みで私がそう言うと。
リンカねえさまが私のデカパイをガン見しながら、呼びかけてきた。
「アンタ、途中から探索のことどうでもよくなって、魔物と戦うことの方が楽しくなってたわね?」
「……………………あっ!」
言われてみれば、そもそも私はダレてきたダンジョン探索をスムーズに進めるため、魔力による魔物探知をしたのだ。
それが気がついたら、いつの間にか魔物を倒すことに夢中になり本来の目的を忘れていた……
「おかげで、掛かった時間は普段とそんなに変わらなかったわね」
「それは……なんというか、すいません」
「いえ、いいのよ。私としても――」
いやぁ、すっかり目的を忘れていたのだけど。
でもよくよく考えれば、リンカねえさまも剣の里の出身だ。
なんだかんだ戦うことは好きなはずで、あまり気にしてはいない――
「アンタのデカパイがめちゃくちゃ揺れてて、見ごたえあったから」
……いやねえさま、どんだけ私のデカパイが好きなんですか。
スケベさんめ!
――なお、後日ダンジョンで確認された新種の魔物として「デカパーイ」の情報を募る張り紙がギルド内に掲出された。
そして情報提供と称して、さまざまなデカパイ美女の絵が張り出されたのだけど。
それはもはやデカパイ美女の絵を書いたり見たりしたいだけじゃないか!
このスケベさんどもめ!
スケベさんどもめ!
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