転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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五十八 いよいよ対決、ダンジョン最奥のボス!

 あれから私とリンカねえさまは、一週間武器型魔物のエリアにこもった。

 もう一生分の武器型魔物を倒して倒して、倒しまくったのである。

 もともと下層にはあまり冒険者がいないのもあって、湧いた魔物の殆どは私達で退治したと思う。

 いやぁ、大興奮だった。

 武器型魔物はその特性上、生物として他に見れない特徴が多い。

 特に、武器が単独で浮遊しているタイプはゲームだとたまにいるけど。

 リアルで見るとなんとも不思議な感じだった。

 

 結果として、下層に怪物が出るとかそんな噂が生まれたりもしたが。

 私達は一般的な里の剣士なので存じ上げませんね。

 なお、六日目にはシドウ様が加わっていたことも付け加えておきます。

 犯人はこの人です!

 

 さて、ダンジョンは七日で階層が変わる。

 それに合わせて七日目に休暇を取る……のは、前に話したと思うけれど。

 リンカねえさまは武器型魔物を倒したくて七日目もダンジョンに潜るそうだ。

 私は別に武器型魔物でなくとも構わないので、七日目は休みにした。

 それで、以前七日目の休みにシドウ様のところへ行ったら留守だったので、行ってみたのだが。

 今回も留守のようで、レイナさんに謝られてしまった。

 まったく、どこに行ったのだろうシドウ様は。

 ぷんすこ(ぶりっ子っぽく振る舞ってみた私。多分周囲からは怖がられる)。

 

 それにしても、シドウ様はどうやらダンジョンがリセットされる前日は毎回何処かへ出かけているらしい。

 出かける先も同じのようで、先週の七日目にリンカねえさまと私対策をしたのかと想っていたが。

 どうやら違うようだ。

 じゃあどこへ出かけているのかと言うと、やはり例の”公然の秘密”につながっていくんだろうなぁ。

 というわけで、シドウ様に会うのは諦めてダンジョン探索だ。

 

 すでに私達は下層の第三階層まで足を進めている。

 そこからは、一日一階層攻略していれば一週間のうちに最終階層へたどり着くことも難しくない。

 正確にはただ階層の攻略だけを目的に一直線でゴールまで突き進めば、一日で最終階層にもたどり着けるのだが。

 流石にそんなもったいないことはしたくない。

 これに関しては、リンカねえさまも同意してくれた。

 というのも、武器型魔物は倒すと武具をドロップするのだ。

 その試し切りがしたかったらしい。

 とんでもない数の武具がドロップしたからなぁ。

 

 というわけで、一日掛けて階層の魔物を殲滅しながら次の階層へ進むことを続けること数日。

 私達はダンジョンの最終階層――”ボス”が待ち受けるエリアへとたどり着いた。

 ダンジョンにはボスがつきもの、それはこの世界に於いても変わらない。

 さぁ、楽しい楽しいボス戦の始まりだ!

 

 

 +

 

 

 ――――そして。

 

「足崩します!」

「了解!」

 

 私の眼の前には、巨大な狸型魔物。

 名前は「ポン君」というそうで、君は呼称であると同時に君主の君でもあるらしい。

 頭には、でかい王冠が乗っていた。

 そんなポン君の横を駆け抜けて、そのまま振り向きざまに刃を振るう。

 ポン君の体が切り裂かれ、鮮血をほとばしらせながら体勢を崩す。

 

「でかした!」

 

 そこへリンカねえさまが、四本の腕に武器を携えて飛び上がる。

 目を張るのが、サブアームに握られている巨大な野槌だ。

 とにかくでかい、ポン君の顔よりも。

 本当、どこにしまっているんだろうあの武具。

 ともあれ、それをねえさまがポン君の顔に連続で叩きつけつつ、四方八方から飛び道具も乱舞。

 更にはメインアームの剣二本が、ポン君の目を突き刺した。

 

「これで……!」

 

 悲鳴を上げるポンくん、倒れ込んだその腹めがけての私の攻撃。

 まず天井まで四重強化でかけあがり、天井を足場に射出する。

 三重強化で直接飛び上がるより、この方が速いのだ。

 四重強化を少しでも早くマスターするために、戦闘でできるだけ使っていきたいという理由もあった。

 何にせよ、四重強化の最高速で叩きつけられた私の疾討は――

 

「終わりですっ!」

 

 ポン君を一刀両断してみせた。

 

 消えていくポン君を見送る。

 結構な強敵ではあった。

 身体スペックで言えば、私の三重強化に追いつけるかどうかといったところ。

 リンカねえさまとどっこいくらいだと考えれば、ちょうどいい感じだろう。

 更には厄介なギミックも複数あって、ぶんぶくアタック(私命名)、茶釜大光線(ねえさま命名)と、どちらも面倒極まりない攻撃手段だった。

 とはいえ、それを加味しても――

 

「……この大規模ダンジョンを形成した宿痾の主とは到底思えない強さでしたね」

 

 はっきり言って、想定よりずっと弱かった。

 というのも、「ラリス」のダンジョンは大陸でもトップクラスの規模を誇るダンジョンだ。

 特に下層の難易度は非常に極悪と有名であり、ダグスさんでも攻略に苦戦しているという。

 私達は何事もなく攻略していたが、それは七刀クラス――大陸最強クラスの剣士二名がパーティを組んでいたからだ。

 私とリンカねえさまが難なく攻略できない難易度のダンジョンがあったら、そこから溢れた魔物で国が滅びる。

 

「ええまぁ、うん、そうね……」

「というかそもそも、この強さならシドウ様がダンジョンを攻略してないわけないですし」

 

 そうなのだ。

 このたぬき型魔物「ポン君」、結構強い。

 少なくとも一般的な宿痾の主くらいの強さはある。

 でも、以前戦った合体宿痾の主よりは明らかに弱い。

 私なら問題なく単騎で倒せるだろうし、リンカねえさまも武具を何本か破壊すれば倒せるはず。

 とすれば、シドウ様が倒していないわけがないのだが。

 

「不思議よねぇ、なんでかしらねぇ」

「……あの、リンカねえさま? 口に出してはいけない秘密があることは理解していますが、ここには私とねえさましかいないのですから、別に話しても問題ないのでは?」

「ええと……そうねぇ」

 

 というわけで、リンカねえさまの反応からして。

 ここには間違いなく何かが隠されている。

 だけど別に話してもいいと思うのだが……ねえさまの歯切れは相変わらず悪かった。

 

「なんというかその……アレよ。他にもいるかもしれないでしょう。この話を聞いている存在が」

「ああ……はぁ。まぁ、何となく分かるようなわからないような」

 

 それはようするに、今私たちが倒した魔物である「ポン君」が宿痾の主ではないという話で。

 となれば、()()()宿()()()()というやつが、どこかにいるのだろうけど。

 じゃあそいつがどこにいるのか、という話になれば――

 

「まぁ、貴方なら何れシドウから話されるはずよ」

「そうなりますか。……ところでそれは自白と受け取ってもよろしいですか?」

「ナンノコトカワカラナイワネ」

 

 なんて、適当な話をしながら転移陣に向かって私達はダンジョンを後にする。

 それにしても、「ラリス」のダンジョンに眠る本当の宿痾の主、かぁ。

 なんとも気になる話だ。

 正直、楽しみで仕方がない、けど。

 未だこのダンジョンの主が討伐されていないということは。

 シドウ様よりも強い宿痾の主が、この世界に存在するのではないか。

 それがどんな存在かと言えば……つまり――

 なんてこと考えながら、私は転移陣に乗るのだった。

 

 

 なお、ポン君を倒したことでドロップしたのはポン君のきんたまだった。

 誇張されまくった狸のきんたまが、更に誇張されまくっていた。

 でかい!




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