転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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六十五 シドウ様をぶっ倒せ

 さて、シドウ様から自分を倒すのが一番の強さの近道だと言われた。

 それはそうなのですが……問題はその方法である。

 シドウ様と組み手をするのがいいのかもしれないが、今回はその方法を取らないことにした。

 理由は幾つかあるが、私の強みの一つが意外性だと思っているからだ。

 多重強化や魔力の刃がそうだが、私は他者とは違う方法で強くなることが得意だ。

 無論、身体強化の比重変更みたいな他の人も使ってる技術も取り込むけれど。

 要するに、あっと驚く手段で相手の度肝を抜くことが得意なわけ。

 

 特に、現在の私の伸びしろは四重強化が限界。

 その状態で、シドウ様と鍛錬をして四重強化を身に着けても。

 今度はこちらの手の内がシドウ様へ筒抜けになってしまう。

 これでは、私の四重強化とシドウ様の出力の間にあるちょっとの壁を埋められない。

 

 しかし私の四重強化は、もうだいぶ完成に近づいていて。

 後は実践の中で身につけるだけの状態。

 ここまでくると、必要なのは強敵との戦闘経験だ。

 となるとやはり、ある程度の強者と戦うことが完成の近道である。

 問題は、その条件を満たせる強者がシドウ様くらいしか思い当たらないというところである。

 もしくは武器型魔物に発情しているときのリンカねえさま。

 後は――

 

「――というわけで、レイナさん」

「は、はひっ」

 

 神妙な顔で、私はレイナさんに声をかけていた。

 現状、この街でシドウ様や暴走リンカねえさまに匹敵する強者に()()()()存在はレイナさんしかいない。

 模倣の天才、変化能力を持った魔術師に、手を貸してもらえないかと思ったのだ。

 ――が、しかし。

 

「シドウ様に勝つため、手を貸してもらえませんか?」

「え? 絶対嫌です……」

「即答されました……」

 

 まさかそこまではっきりと拒絶されるとは思わなかった。

 

「パパは世界最強の剣士なんです、誰が勝つとかありえないんです」

「シドウ様強火ファン過ぎますね……」

「つよびふぁん……?」

「ああ、お気になさらず」

 

 元々レイナさんのシドウ様に対する信頼と親愛はなかなかのものだったけれど。

 もし私がシドウ様を倒したら、いきなり暗殺してきそうでコワイ。

 

「とはいえ私としても、シドウ様に勝てるくらい強くならないと行けない事情はあるのですよね」

「……それは、わかりますけど」

「解っていただけますか。もし私がシドウ様に勝ったら闇討ちしたりしませんか」

「…………ど、努力しますっ」

「そこは安全を約束してください!」

 

 ともあれ、その後交渉の末、闇討ちはしないと約束してもらった。

 後、単純にレイナさんも私の目的である鍛錬の相手としては不足らしい。

 

「その、私はパパを模倣したりできないし、カグラちゃんも模倣できるのは三重強化してるところまでで……」

「四重強化の私は模倣できませんか」

「はい……」

 

 というわけで、結局相手に関しては目処が立たなかった。

 他に考えられる方法とすれば、下層の魔物を片っ端からどつくくらいだろうか。

 方法を思いつかないので、とりあえず以前からレイナさんに聞きたかったことを聞いてみることにした。

 

「それにしても……私の多重強化ってそんなに難しい技術なんですかね」

「えう……難しいと思いますよ? 他にそんなことしてる人も見たこと無いですし」

 

 私のことを変態扱いしたレイナさんは、多重強化の難しさをシドウ様と同じくらい理解しているはず。

 だから、どこが難しいのか聞いてみたかったのだ。

 

「カグラちゃんを模倣しようと観察した時、私すっごくびっくりしました。こんな複雑な魔力操作をしてる人、初めてみましたから」

「レイナさんの模倣力なら、きっと多重強化も模倣できると思うんですけどねぇ」

「うう……カグラちゃんってば、大胆……」

「それはどういう発想でそういう発言に行き着いたんですか!?」

 

 こほんこほん。

 レイナさんの模倣は、相手に心の底からなりきる技術だ。

 そして私の多重強化もまた、あくまで技術である。

 私のメンタリティをコピーできるなら、そこから生まれた技術もコピーできると思うのだが……

 

「やっぱり無理ですよ……私自身に、そこまで他人を模倣しきる自信がありません」

「ああ、レイナさんの模倣に限界があるのは、レイナさんの心の持ちようが問題でしたか……引っ込み思案ですものね」

「……自信だけに」

「レイナさんって普通にメンタル強くないですか?」

 

 そこで冗談言える度胸があるなら、きっと完璧な模倣だってできるはずだ。

 それでもなお、模倣ができないのは……

 

「完璧な模倣ができてしまうと、元に戻れる自信がない……ってところですか?」

「うぅ……はい」

「まぁ、実際そういう危険はありますよね」

 

 メソッド演技をする役者は、役に入り込むあまり日常生活を壊してしまうこともあるという。

 そういう意味で、完璧な模倣は危険だ。

 ああでもそれなら、完璧じゃなければ模倣はできるのか?

 

「……レイナさんの模倣は、あくまで精神的に枷をつけることで完璧な模倣にならないようにしてるだけ、ってことですよね」

「まぁ……そうなる……のかな? そこまであんまり考えたことがなくって……」

「うーん、天才。で、あれば……ですよ」

 

 私は色々と、頭の中で推測を重ねていく。

 仮説を立ててそれを脳内で検証して、一つの考えをまとめていくのだ。

 こういう発想力が私の強みである、と。

 今なら胸を張って言えるだろう。

 やがて、私はある結論に至った。

 そのために、まずは確認作業だ。

 

「でしたら、レイナさんって六大宿痾を封印する魔術って使えるんですか?」

「えう? その……ママが使ったっていう?」

「そのそれです」

「む、無理ですぅ……アレは本当に高度な魔術なので……」

 

 そこはまぁ、シドウ様も言っていたことなので違和感はないのだが。

 レイナさんだって大陸有数の魔術師のはずだ。

 

「流石にそこまで高度でなくてもいいので、普通の宿痾に対して使う封印術式とか……できれば自分を生贄にしない感じで」

「それならできますよっ。封印の際に自分を犠牲にしなきゃいけないのは六大宿痾が相手だからなので、生贄も必要ありません」

「ふむ、ふむふむ」

 

 レイナさんに色々と質問をして、情報を確定させていく。

 できることとできないことを脳内で振り分けて、思いついた考えを肉付けしていくのだ。

 やがて私は、一つの決定的な質問をレイナさんにする。

 

「ではレイナさんは――六大宿痾にかけられた封印が解けた場合、それを安定させることは可能ですか?」

 

 私の中で、一つの考えが脳裏をよぎったのだ。

 私の四重強化と戦える相手。

 シドウ様以外で、四重強化を完成させるための戦闘経験を積める相手。

 

「え、えっと……それくらいなら……でき、ます」

「断言しましたね。レイナさんのその断言は、自信があるということです」

「えぅ」

「……で、あれば……よし」

 

 ――――いるではないか、この「ラリス」にもう()()

 

 

「六大宿痾のところに行きましょうか」

 

 

 というわけで、六大宿痾を鍛錬の相手にすればいいのだ。

 

「えっ」

 

 我ながら、

 

「ええええええええっっ!?」

 

 名案である。

 なお、レイナさんからはめちゃくちゃドン引きされた。

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