転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す   作:暁刀魚

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七十四 異世界肝練り

 ムキムキデカパイ狐獣人(ニセ)テーマパークから戻ってきた私の前に、異様な光景が広がっていた。

 ギルドのホール、普段であれば多くの冒険者が談笑したり食事を楽しむ場所だ。

 というか、私が転移陣に入った時はそうだったのに。

 いつの間にか――

 

「――肝練り行くわよおおおおお!」

 

 怪しい儀式が始まっていた。

 肝練り!? 肝練りってあの肝練り!?

 よくみれば、リンカねえさまがギルドホールの中央に吊るしている銃に火をつけている。

 それがぐるぐる回って、最終的にはどこかへ発砲されるのだ。

 

「避けちゃダメ! 逃げちゃダメ!」

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」

 

 なんか混ざってない?

 ともあれ、それを囲んで冒険者たちが神妙にしている中。

 銃から弾丸が放たれ――

 

「あ、こっちき……はうぁっ!」

 

 私の脳天に突き刺さる。

 常時身体強化は剣士の基本、ちょっとおでこにたんこぶができるだけで済みました。

 

 

 +

 

 

「いやぁごめんごめん、まさかそんなピンポイントでカグラに当たると思ってなくて」

「それはいいんですけど……なにやってるんです?」

 

 さっきから、リンカねえさま主導で肝練りをやっていたらしい。

 異世界肝練り、存在していたのか……

 ちなみにネーミングは私の寝言から着想を得たような。

 現代知識無双かな?

 

「ここにいるのは、表ダンジョンに挑む連中よ」

 

 今回の作戦において、私とシドウ様以外の冒険者は二つの役割を任せられている。

 一つが先程まで私がいた二つ名組。

 裏ダンジョンを攻める冒険者たちだ。

 対するこちらは表ダンジョンを攻める通常冒険者組。

 どうして攻めるのかと言えば、それについては裏ダンジョンと同じ理由。

 ただまぁ、魔物の強さを考えると裏ダンジョンと比べたらそこまでの重要度ではない。

 こっちはあくまで、外に魔物を出さないようにするのが目的といったところか。

 

「ただまぁ、仕方のないことなのだけど全員そこまで熱心に冒険者をしているわけではないのよね」

「でしょうねぇ」

 

 ここにいる冒険者は、冒険者としては未熟な立場だ。

 号数で言えば大体の冒険者が四号か三号。

 二号以上の冒険者は、全員裏ダンジョン組である。

 なお、五号以下の冒険者は作戦に参加しない。

 参加を希望しなかった、四号と三号の冒険者もだ。

 ここにいるのは、あくまで希望したものだけ。

 なのだが――

 

「……やっぱり、度胸が足りてないのよね」

 

 参加こそ希望したものの、やはり六大宿痾と戦うには色々と勇気が不足しているらしい。

 というのも、彼らが参加した理由は多くの場合「金」と「その場の勢い」だ。

 シドウ様があの場で冒険者を煽ったことで、それに乗せられて参加したものが多い。

 報酬も三号や四号の冒険者にとっては破格すぎるレベル。

 後から参加を辞退することもできるので、なんだかんだここにいる人間はやる気がある。

 そしてやる気があるからといって、度胸があるかは別の話。

 というわけで、そんな度胸を補うための方法がこの肝練りらしい。

 ああよか宴じゃ!

 

「あんたの寝言って、ホント参考になるのよねぇ。こういう変な案がポンポンでてくる」

「私の寝言はびっくり箱かなにかですか」

 

 んで、それを主導しているのが私の寝言からインスピレーションを受けたリンカねえさまというわけ。

 「ヨース」からここに来るまで、ずっと二人旅をしてきたのだ。

 そういう寝言を聞く機会は結構あっただろう。

 うーむ、不覚。

 

「まぁでも、コイツラに関しては問題ないでしょ。なんだかんだ肝練りにも参加してるし」

「最終的には、戦力になりそうですか」

「まぁね」

 

 というわけで、そんな表ダンジョン組だが、それを指揮するのはリンカねえさまの仕事だ。

 現在の「ラリス」において、最も権威があり強いのは「七刀」の称号を持つものだ。

 そのうち、私とシドウ様が狐火に直接挑む以上、冒険者の指揮は行えない。

 なので、自然とリンカねえさまが冒険者の指揮を取ることとなる。

 裏ダンジョン組は指揮がなくとも戦えるから、リンカねえさまが指揮するのは表ダンジョン組というわけ。

 

「それにしても……なんだか申し訳ありません。私達だけ美味しいところをいただいちゃって」

「ん? 別にいいのよ。どうせ私が行っても役に立たないし……あんた達ほど私は強さに執着してないしね」

 

 リンカねえさまの立場は複雑だ。

 七刀の一人であり、間違いなく剣の天才である。

 ただ、最強ではない。

 少なくとも、「ヨース」にいた時は四重強化をマスターしていなかった頃の私でも()()()()()()()勝てる相手だった。

 「ラリス」に来てからは色々と修行し、特定条件下であれば四重強化をしている私ともやりあえるくらいにはなっていたのだが。

 今のリンカねえさまの強さって、どのくらいなんだろう。

 

「リンカねえさまって、今どれくらい強いんですか?」

「人読みすればわからない?」

「わかりますけど、リンカねえさまから答えを聞きたくって」

 

 まぁ、”視て”しまえば一応の答えはわかるのだ。

 でもそれは、リンカねえさまの本質までを見透かせているわけではない、と思う。

 なにせ戦闘中に直接読んだわけではないのだから。

 リンカねえさまなら、隠そうと思えば隠せるはずだ。

 

「――今の私、レイナが変身した狐火なら単独で倒せるわよ」

「マジですか」

「マジよ」

 

 え? それってつまり狐火レイナさんとどこかでガチバトルをしたってこと?

 私の知らない間に? いつのまに?

 

「ず、ずるいですよ!? どうして私の知らないところで戦っちゃうんですか」

「いや戦ってないから。あくまでレイナの見立てで私なら死力を尽くせばギリギリのギリギリレイナの狐火に勝てるんですって」

「……その場合、レイナさんを殺すことになってしまうから試せない?」

「そんなところ」

 

 なるほどぉ。

 私がシドウ様と一緒にいることが多い分、リンカねえさまはレイナさんと一緒にいることが多い。

 だから、そういう話をする機会もあったのだろう。

 他にも、レイナさんの人読みは私より精度が高いから、読み取ることが可能なんだろうなぁ。

 

「というわけでまぁ、私もある程度は強くなった。カグラには強さも成長速度も追いつけてないけど……だからあんまり心配しなくてもいいわよ」

「……ですか」

「あんたは気にしすぎなのよ」

 

 どうやらリンカねえさまには、私がリンカねえさまが狐火討伐に加われないことを気に病んでいるとバレていたようだ。

 いやまぁ、隠すつもりもないのだけど。

 直接指摘されると、少し恥ずかしい。

 

「それに、私とあんたの旅はまだ終わったわけじゃないしね。今回のことが終わったら、次はまた王国に戻るでしょ?」

「会わせたい人がいる、でしたっけ」

「そう。だから私はまだあんたの隣で色々と吸収できるわけ。多分どこかで一度別れると思うけど――その時までに、私なりの結論が出せていればそれでいいわ」

 

 なるほど。

 流石はリンカねえさま、こういうところはとてもしっかりしている。

 まぁとにかく、リンカねえさまはいつもどおりのリンカねえさまだ。

 それが解っただけで、何ら問題はない。

 

 と、その時。

 

 パァン、と乾いた音が鳴った後。

 

「んぎゃあ!」

 

 私の脳天が再び撃ち抜かれた。

 ちょっとまってください、肝練りの銃は狙いがランダムなのになんで二度も私の脳天が撃ち抜かれるんですか!?

 

「カグラ、大丈夫?」

「私は大丈夫ですけど」

 

 それにしても、と周囲を見渡す。

 冒険者達は二度も撃ち抜かれたにもかかわらず無事な私と、二度も脳天を撃ち抜いた銃にビビっているわけだが――

 

「……この肝練り、死人はでてないんですよね?」

「…………死人はね」

「………………ねえさま?」

 

 死んでないだけ、みたいな反応はやめてくれませんかリンカねえさま!?

 なにか言ってくださいリンカねえ――ぎゃん!(三発目)




カグラの寝言は便利ですね。
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