トビカガチは実質セクレト   作:HR217の一般ハンター

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一話の『やなせたかしい』というヒグマの表現は、そういうネタです。分かってやっているのかもしれませんが、何十件も同じ誤字報告を送られては流石に困ります


ハンターは免許制らしい→つまりハンター試験がある→ハンター試験と言えば……ねぇ

 

 

 ドンドルマ、大陸でも屈指の大都市。人と富と文化の集合地であり、マティーニ殿達の拠点でもある。

 

「どうだ! デケェだろ!」

「あぁ、ここまで大きいとは思っていなかった」

 

 火傷した喉が癒え、二週間前から会話が解禁されたトニック殿は想像よりもやかましい方であった。喋らない上に全身鎧ということで感情が分かりにくく、落ち着いた性格と認識していたのだが……実際には真逆であった。

 

 性格は冷静沈着とは程遠く、常に前向きでアグレッシブ。楽しい事が大好きな、超が付く程のアウトドア派である。基本的に船内には居らず、甲板ではしゃいでいる。他二人は暇さえ有れば勉強に励んでいる都合、普段は舵取りのマティーニ殿と二人らしい。その為、私と義妹が居る今の甲板は『いつもよりスーパーにハッピーだぜ』らしい。

 

 

 さて、現在は巨大な河川を砂上船で航行している。後十分もすれば、陸に降りることになるだろう。砂上船も根本的には通常の船と同じようなモノらしく、水上でも運行可能なのだ。

 

「それじゃあ、そろそろ下船の支度を。ドンドルマの港は人が多い。すぐに離れるのがマナーさ」

「ふむ、それもそうだ」

「カロロッ」

 

 マティーニ殿達は船室内で寝ているが、義妹は船内には入れない。ということで、私も甲板で寝ていた。遠征すれば大型モンスターを何頭も狩猟する一流ハンターの砂上船らしく、甲板でなら義妹も広々とスペースを使えている。

 

 ゲリョスというモンスターの皮で作ったベルトポーチを、義妹の身体に巻き付ける。私の背嚢やベルトポーチ以外にも、そこにも荷物を収納する。このベルトポーチには、義妹に荷物を持たせられるだけでなく、野生ではないと他者に認識させる効果がある。出来れば首輪が望ましいとのことだが、流石にそれは出来ない。そういった理由で、実利も兼ねてこのような形となった。

 

 マティーニ殿から貰った手鏡で、身嗜みも確認。ただでさえ、私はモンスターを連れているのだ。不格好な見た目は不信を招き、やがて不信が惨事へと至る事も有り得る。

 

 世界一のイケメン、なんて自称するだけあってマティーニ殿は大変美しい方だ。武装しているからハンターと認識されるだけで、私服姿ではどこぞのお嬢様にしか見えない。美容にも明るく、大量の化粧品や鏡が船には積まれている。私も幾つか化粧品を貸して貰っており、日焼け止めなんかを塗っている。紫外線はお肌の大敵だからな。……この世界は、技術・文化のレベルがグチャグチャである。

 

 

 

 

 

 

 下船した私達は、足早に港を離れた。欧州的な雰囲気が漂うドンドルマの玄関街には、数多くの人々で満ちていた。東京23区程ではないが、そこら辺の政令指定都市ぐらいの人口密度はありそうだ。

 

「カン村すら壊滅した以上、キミには一切の身分が無い。改めて確認するけれど、ハンター資格を取得を目指し、ドンドルマハンターズギルドでハンター登録をする……という進路で良いんだね?」

「然り」

「よし、それじゃあまずはオトモン登録をしよう。オトモンは登録はハンターしか出来ないから、手筈通りボクが一旦登録を代行する。あまり褒められた行為でもないが……まぁ、ボクはイケメンだから大丈夫だ。ここで少し待っていてくれ」

 

 私達は今、ハンター達の集会所の厩舎に居る。マティーニ殿は一人で集会所の中に入っていった。それから十数分後、マティーニ殿は職員と思わしき男性を連れて戻ってきた。

 

 

「この子が、マティーニ殿のオトモンにしたいというトビカガチですか」

「あぁ、そうだ。綺麗な毛並みだろう?」

「そして、貴方が我が師ベネットのご子息サント・リー・スピリツ・シーコウ。お話は伺っております。ベネット氏の遺児でありマティーニ殿からも推されているとなれば、歓待以外の選択肢はございません」

 

 父については、ライデン殿から詳しく話を聞いている。なんでも、ゴア・マガラという極めて危険なウイルスを撒き散らすモンスターや、バゼルギウスという爆撃機のようなモンスターの襲撃からドンドルマを守った英雄らしい。

 

「こちらの書類にサインを。便宜上マティーニ氏のオトモンとはなっておりますが、このトビカガチの安全性についての連帯保証人となっていただきます。構いませんね?」

「無論」

「……はい、ありがとうございます。それでは、本日よりこちらのトビカガチはマティーニ氏のオトモンとなります。ハンター資格の取得に成功した際には、所有権変更手続きに来て下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 トニック殿は、ドンドルマでも有数の大商人の御曹司であった。そこに一流ハンターとしての本人の収入もあり、極めて裕福である。所有する一軒家は大きく、庭も極めて広い。その為、トニック殿の庭で居候をさせて頂くことになった。義妹は身体が大きく、基本的に建物には入れないからな。

 

「よぉアミーゴ!今日も頑張ってんな!」

「あぁ、ありがとう」

「カロロッ!」

 

 庭に刺したアケノシルムのような巨大な傘の下で義妹と勉強していると、トニック殿が二つのトレーを持ってやって来た。右手のトレーの上には、5kgは有りそうなチーズバーガーセットが二つ。左手のトレーの上には、ファンゴと思わしき山盛りの生肉。

 

「よぉし! そんじゃ食うぞ!」

 

 教科書に栞を挟み、チーズバーガーを持ち上げる。前世じゃ見たこともないサイズのチーズバーガーに、口を大きく広げてかぶり付く。些か品の無い食べ方だが、そんなものには野生下で慣れた。気分はアメリカ人である。トニック殿は意外にも料理上手で、味はかなり良い。

 

 

 

 

「いやー、食った食った! ハンター試験開始まで、後少し! ハンターになる者として、目一杯食わねぇとな!」

「『腹が減っては戦ができぬ』とはよく聞く言葉だが、事実故によく聞く言葉なのだ。食事の大切さは、よく分かっている。今日の食事も、大変美味であった。トニック殿、感謝する」

「カロッ」

「おう!」

 

 私は手と顔を拭き、勉強道具を仕舞う。義妹に軽くブラッシングをして、自身の身嗜みも確認。背嚢を背負い、トニック殿に一礼。

 

「それでは、挑んでくる」

「グォゥッ!」

「頑張れよ! アミーゴ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 現在、私はギルドの用意したハンター試験会場に居る。オトモン使いとして特例の措置を与えられている民族ではない為、義妹はトニック殿の庭で待機である。人間の世界も悪くないが、義妹と共に居られる時間がそう多くないというのは極めて大きな欠点である。

 

 ハンター試験は複数のテストで構成されており、筆記・体力・実技・面接の四つである。今は筆記試験の採点が終わり、私含む合格者達が体力試験と実技試験の会場である闘技場で二次試験開始の合図を待っていた。

 

「よっ、ネエちゃん。すごいじゃねぇか、アンタ筆記満点なんだって? オレもハンター試験には35回挑んでいるけどよ、満点を見るのは三回目だ」

「それはどうも」

 

 性別を間違われるのはもう慣れた。おそらく、短髪刈り上げにでもしなければずっと女性と誤認されるのだろう。しかし、私はハゲ散らかしていた前世の影響で髪への強い執着がある。短髪刈り上げだなんて……そんな、恐ろしい……。

 

「失礼な事を聞くが……貴殿は、何故35回も?」

「まっ、今となっちゃ殆ど習慣みたいなモノさ。オレもこの年、本気で受かるとは思っちゃいねぇ。化学者っていう本業もあるしな」

 

 私に話し掛けてきたのは、受験番号16番の中年男性。一見すると太っているように見えるが、実際には猪や細めの力士のような体型に思える。走ったら案外速いタイプだろう。

 

「オレの名はトンバ、よろしくな」

「私はサントだ。よろしく頼むよ」

「おっと、そうだ。じゃんっ、お近づきの印ってことで。オレの故郷の技術で作った容器でな、ここの金具を……こう!」

 

 トンバと名乗った男は、懐から二本の缶ジュースと思わしき物を取り出す。……缶の技術あったんだ、この世界。缶を開け、普通に飲んだフリをしながら舌先に一滴だけジュースを垂らす。

 

「ところで、トンバ。缶を交換しないか?」

「……え?」

「海水に塩基性物質を混ぜ、水酸化マグネシウムを析出。濾過等の行程を踏み、粉体を確保して加熱」

「……嘘だろ」

「このジュースに混入している下剤の製法は、こんな所かね。警戒して正解だった。貴様はコイツを無味無臭とでも思っているのかもしれないが、それは半分不正解だ。強い味のジュースと合わせることで万全を期したつもりなのだろうが、私の鼻と舌は誤魔化せんぞ」

「と、トビカガチみてぇな見た目してると思ったら、感覚器官までモンスターかよ……」

「二度と私に近寄るな、下衆め」

 

 周囲の人々が私達を見ている。反応を見るに、どうやら試験番号16番は初犯ではないようだ。このタイミングで、ようやく試験官が喋りだした。

 

 

「えー、ンン! それでは、これより二次試験を開始する! 内容は至ってシンプル! この闘技場の外周を、一時間走り続けるだけ! しかし、諸君と共に一定速度で走り続ける私から見て周回遅れとなった者は即座に脱落とする!」

 

 筆記試験を通過した404人の受験生が、試験監督の後ろに陸上競技の長距離走のように列を作る。筆記試験成績一位の私は、最前列である。

 

「3! 2! 1! スタートォ!」

 

 ドンッ、空砲が鳴る。それと同時に試験官は走り出す。その速度はかなりのモノであり、時速は30kmを間違いなく超えている。地球の高校陸上なら、男子でも100m走のメダルが狙える速さだ。これを一時間同じスピード、しかも足場は舗装も何も無い闘技場であり、身に纏うのは防具と来たものだ。

 

 

 

 

 

 

「終了ォー!」

「ハァーッ……! ハァーッ!」

「ぅ゛っ、あぁ……」

 

 試験は無事終わり、300人近くが居なくなった。地球なら陸上のプロですら諦めるような試験に100人も残っているのは、流石モンスター蔓延る世界といったところか。前世の私なら、開始一分以内にリタイアしていただろう。

 

「そして、これより三次試験を開始する!」

「クソッ……鬼試験官め……」

「き、キツすぎる……これが現役プロハンターの体力って奴か……」

 

 私と同じように平静を保っているのは……半分か。意外と多いな。所詮は、私も11歳にしては強いだけ。決して、己が猛る戦士である等と思い上がってはならない。

 

「今年度における三次試験の内容を発表する! 四人でパーティーを組み、ジャギィノス一体とジャギィ一体を討伐してもらう! 二次試験を突破した者が四人も集まれば、十中八九突破できる試験! しかし、それは万全の状態での話! 万全の状態で狩猟に挑める等と思うなよ! 三次試験に挑むパーティー編成を発表する! 第一パーティーは、1番、3番、8番、11番! 第二グループは───」

 

 

 

 私は第四グループに振り分けられた。メンバーは71番、84番、91番、そして99番の私だ。71番は、ムッノリーニという名の大変疲労している男性。84番は、疲労のあまり話す事も出来ない若い女性。91番は、私と同い年程度と思われる幼さながらそれなりに落ち着いた呼吸をしているフィズという少年。

 

「ふむ、事実上二人か」

「そうみてーだな」

「ばっ、ばか……言うんじゃねぇ……俺ァ、やれるんだ……。ハンターになって……二度と……二度とだ……無能のムッノリーニ……なんて、呼ばせねぇ、男に……!」

「…………。」

 

 私達は試験官の誘導に従い、ギルドの用意した鉄の武器を手に取る。今回選んだのは、ボーンシューターというヘビィボウガン。使い方は、以前受けたギルドの講習とマティーニ殿の指導で理解している。

 

 最近は投石紐と剣ばかり使っていたが、私は22歳の頃に若ハゲを理由に彼女を寝取られ自棄になって自衛隊に入ってから35年間銃を握り続けていた男だ。

 

 投石紐なんていう狩猟道具は勿論ギルドには無いし、剣も私が自作して使っていたモノとは使い勝手が違うように見える。元々高火力の砲が欲しくて人間社会に来た訳でもあるので、選ぶ武器はヘビィボウガン一択である。

 

 因みに、ムッノリーニはランスを選ぼうとするも現在の自分の体調を考え渋々片手剣。フィズは双剣を選択し、名も知らぬ84番は試験続行不可と判断され回収された。代役は居ない。

 

「嘘だろ……さ、三人でやれってのか……」

「おいオッサン、心配しないでいーよ。そこで寝てな、オレが一人で全部片付けるから」

「なに……言ってんだ……テメェ、みてぇな子供に……戦い押し付けて、休んで……られっ、かよ……」

 

 闘技場が、ちょっとした簡易な仕切りで八つに分けられる。そこに、試験官達がジャギィノスの入った檻とジャギィが入った檻を持ってくる。第九グループ以降は今すぐ戦わないようだが、疲労を維持する為に筋トレをさせられている。

 

「試験官諸君、檻を開けろ。狩猟開始だ!」

 

 

 

 

 

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