トビカガチは実質セクレト   作:HR217の一般ハンター

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勿論です、プロですから

 

 

 ハンターとなってから、5ヶ月が経過した。私はこの間に19回という高頻度で、大型並びに準大型級の狩猟または捕獲クエストを受注。その全てを、ネコタクを使うことなく成功。私のハンターランクは3になり、装備も強化された。

 

 ギルドから支給された貧弱なへビィボウガンや、お手製のジンオウガ防具は既に卒業した。今では、スティールアサルトⅠというヘビィボウガンと、フルフルというヤツメウナギを白くして飛竜にしたようなモンスターの防具を着ている。

 

 

 現在は、顎つよ炎恐竜──アンジャナフを狩猟しに農村に来ている。巨大牧場の乳牛エリアに住み着き始めた個体のようで、多額の報酬がかけられている。ドンドルマで消費される生乳の六割とチーズの四割がこの村の商品であり、迅速な狩猟が要求される。

 

「よくぞいらっしゃいましたハンターさん! 是非、お願いします!」

「あぁ、任された。アンジャナフは、私が仕留める。できる限り牧場の外に誘導して戦うつもりだが、牧場内で戦わざるを得ないケースも起こり得る。設備破損は覚悟してくれ」

「アンジャナフさえ居なくなってくれるのなら、そんなことは気にしません! どうせ既に奴が設備にダメージを与えているでしょうし、設備を使うことも出来ませぬ!」

「よし、誰かアンジャナフの方へと案内してくれ」

「その任、村長である私が!」

「分かった、すぐに行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「アレが、例のアンジャナフか」

「はい……専属ハンターが病床の今、我々には貴女方ドンドルマのハンターに頼らざるを得ません」

「牧場の外は森か。あの森にモンスターは?」

「草食の小型と、虫が数種程度です」

 

 体長は平凡だが身体は大きい。また、故郷の森で見たアンジャナフと比べて筋肉よりも脂肪が目立つ。きっと、乳牛を目一杯食ったのだろう。体表に幾つか大きな傷が見受けられ、それらは塞がりたてといった所。牧場に来たタイミングとも照らし合わせると、電気属性のモンスターとの縄張り争いに敗走して牧場に辿り着いたと見られる。

 

「貴殿は戻ってくれ。これより、アンジャナフを狩猟する」

「お願いします……ッ!」

 

 双眼鏡を仕舞い、村人がアンジャナフ監視用に設置した茂みを出る。義妹に乗り込み、アンジャナフの視界に入る。

 

「ヴェギゥアァァァ!!!」

「こっちだ」

 

 モンスターの咆哮なんて、嫌という程聞いてきた。アンジャナフ程度の咆哮では、何の効果も無い。奴は完全に私達を獲物として判断したようで、突進してくる。尤も、こちらの方が速い故に追い付かれることないが。

 

「ノロマめ」

 

 アンジャナフが追跡を諦めないよう、弾を顔に当てて苛立たせる。有効射程外でダメージは極めて小さいが、実に鬱陶しいことだろう。

 

「そうそう、こっちだこっち。牧場の外で戦おう」

 

 牧場での戦闘は、村の被害を抜きしても望むところではない。デカくて恐竜骨格のアンジャナフ、大型モンスターの中では小柄でイタチと爬虫類のミックスのようなトビカガチ。牧場の外に広がる森林地帯で動きやすいのがどちらであるかは、考えるまでもない。

 

 薬室を開き、ドラムマガジンを直付け。銃口をアンジャナフの顔面に向け、機関竜弾を放つ。しかし、奴も木偶の坊ではない。サイドステップで回避を試み、それでも私の狙いが乱れないと分かれば体勢を変えて傷口や急所への直撃を避ける。割り切りの姿勢だ。

 

 ドラムマガジンを回収し、斬裂弾を装填し放つ。アンジャナフの足首に取り付いた二発の弾丸は内包したエネルギーを炸裂させ、無数の斬撃を放つ。その傷口に、集中特殊弾【竜吼】。反転し、怯んだ奴の真横を通りすぎながらlv2散弾を顔面に叩き込む。

 

 痛みを堪えながらアンジャナフは振り向く。その隙を見逃さず、lv2貫通弾で右目を破壊。視界の急激な変化と鮮烈な痛みから発生した、若干の硬直。その隙を見逃さず、左目にも狙いを付ける。

 

「ギャウゥッ……ァウゥ……」

 

 アンジャナフは酷くふらつき、何度も何度も木々に身体をぶつける。その姿は、正しく弱者であった。後はもう、介錯してやるだけだ。

 

 lv2貫通弾を再装填。奴の顔面を執拗に狙い撃つ。機関竜弾を装填。奴の顔面を執拗に狙い撃つ。竜吼を装填し、奴の顔面を執拗に狙い撃つ。撃って、撃って、撃ちまくる。ただ、ひたすらに。撃ち続ける。奴の顔面を、完膚なきまでに破壊し尽くす。

 

 

 

「呆気ないものだ。だが、驕るんじゃないぞ。私達はまだ、半年前より少し強くなっただけに過ぎないのだ」  

 

 倒れて動かなくなったアンジャナフへ銃口を向け、死体撃ち。動く様子は一切無い。死んだと見て良いだろう。

 

 義妹から降りた私は、剥ぎ取り用ナイフを抜いてアンジャナフの爪を……

 

「ッ!?」

 

 以心伝心。瞬時に私と義妹は動き、速やかに騎乗状態に戻る。ナイフを鞘に戻し、lv2貫通弾を薬室に送る。

 

 この足音、雷光虫の羽音。私達はコレを知っている、何度も何度も聞いた。この音が鳴る度に義母が咆哮を響かせ、その爪を振るったのだ。

 

「ジンオウガ!」

 

 何故、ここに居る。村長は、小型モンスターぐらいしか本来は居ない森だと言っていたが…………そう言えば、アンジャナフには電気属性と思われる傷跡があった。

 

 あくまでもコレは憶測だが……アンジャナフはこのジンオウガに敗れ、そしてゆっくりと追跡を続けられていたのだ。痩せたアンジャナフの肉ではなく、太ったアンジャナフの肉を喰らう為に。

 

「クッ……」

 

 機関竜弾のマガジンと竜吼は残り1つずつ。強力なlv2の弾丸も、貫通弾が20発と散弾が8発。潤沢なのはlv1通常弾だけ。火力が、火力が足りない。

 

「結局、私は火力不足に悩まされ続けるハメか。義妹の移動速度が下がるかもと、あまり弾を持って来なかったのが響いたな」

 

 目的のアンジャナフは狩猟できた。だが、伝書鳩を使って報告してもドンドルマからハンターが来るのは3日後。ここでジンオウガを見過ごせば、村に更なる被害が発生する可能性が高い。

 

「ドンドルマギルドハンター、サント・リー・スピリツ・シーコウの判断に基づき、モッツァレラ村への甚大な被害が発生する可能性を排除する為、ジンオウガを狩猟する!」

 

 私達を警戒したままアンジャナフの死体に近付くジンオウガへ発砲。lv2貫通弾は適正距離で顔面に命中するも、ほんの小さな掠り傷にしかならない。だが、いきなり顔面に掠り傷を付けられて痛みと怒りを抱かぬ者はそうそう居ない。ジンオウガは咆哮し、突進してくる。

 

 アンジャナフやドスジャギィとは訳が違う。ジンオウガの移動速度は、義妹とも同等かそれ以上。ただ無策に逃げるだけでは、追い付かれる。しかしね、故郷で私達が何度お前達から逃げ仰せたと思う。

 

「土を握り締め、地を這い回っていろ」

 

 トビカガチは、樹上で生活するモンスター。ジンオウガも山間で過ごすモンスターだが、登攀力は身体の軽いこちらが勝る。木々の上へと一蹴りで登り、突進を回避しながら発砲。流石に空中では眼球に当たらんか。

 

「塵も積もれば山となる。掠り傷も百個重なれば致命傷だ。火力が低かろうと、その程度で人命を未然に救助できる道を諦めるつもりはない」

 

 ジンオウガは共生している雷光虫に静電気を与え、活性化。雷光虫達を一塊にし、ドスジャギィ程度簡単に飲み込んでしまうような巨大な雷の玉を形成して私達に放つ。驚異的なホーミング性能の雷玉は回避しても食らい付き、背後から直撃。

 

 

 しかし……

 

 

「効かないな、ゴムだから」

 

 電気を操るトビカガチと過ごす毎日、幾度となく襲撃してくるジンオウガやライゼクスと義母の迎撃戦による余波、私は電気への耐性が人一倍強い。その上、極めて高い絶縁性のゴム質の皮膚を持つフルフルの素材で作った防具で全身を包んでいる。また、義妹の皮膚は絶縁体。一般的なジンオウガの放電なんてものは、真正面から受け止められるのだよ。

 

 自慢の電撃が全く効いていない事に動揺したのだろう、ジンオウガの思考が一瞬フリーズする。電気耐性のあるモンスターが少ない環境で育ったのだろう。

 

「隙だらけだ」

 

 貫通弾を連射。ジンオウガの両目を破壊した。怯んだ隙に再装填。今度は鼻に二発。更に最後の機関竜弾をセットし、全ての弾を顔面に撃ち込む。即座にマガジンを投げ捨て、最後の竜吼を装填し放つ。

 

「……アンジャナフとは、格が違う」

 

 ここまでやって尚、ジンオウガの頭は原型を留めていた。その背には、猛烈な怒りが立ち上っている。奴は電流を辺り一帯に広げることで、電流を通さない絶縁体──つまり、私達の位置を特定する。目も鼻も失って尚、奴は私達を殺す為に頭を巡らせていた。

 

「だが、消耗は激しかろう」

 

 不格好な姿勢ながら全力を尽くして猛追するジンオウガと、木々を利用して何とか距離を取る。身体を後ろに捻り、発砲。

 

「ッ、あれは……北北西に移動!」

 

 銃は35年間握っていた。だが、ヘビィボウガンは半年も握っていない。銃から流用できる技術は山程有るが、リソースを殆ど使い果たした今では些か物足りない武器である。

 

 ただ、私のはもう一つ武器がある。それは、ギルドの認めた正式な狩猟道具でない故に使用を控えさせられた、十年間振り回し続けた武器。

 

 

 ──投石紐。

 

 

 その、投射物。

 

 

 森の中に生えていたのを見付けた、天然のバクレツの実。それを見付けた私は薬室に散弾を装填し、もぎ取って後方へ三つ纏めて投げ付ける。

 

 狙いはジンオウガではなく……雷光虫。雷光虫達は爆発に巻き込まれ、即座に死亡。ジンオウガが雷光虫が狙われている事に気付いて保護しようとする前に、散弾で更に撃墜。

 

 ジンオウガは咄嗟に雷光虫を自分の後ろに隠すも、もう遅い。雷光虫は減り、先程と同等の索敵を行おうと思えば雷光虫一匹一匹の負担は跳ね上がる。更には、絶縁体の毛皮を持つ自分が邪魔で上手く索敵もできない。

 

 

 恐怖。何も見えない、何も嗅げない、何も聞こえない、何も見付けられない。あぁ、自分はここで死んでしまうのか。

 

 闘志に満ちたジンオウガの心に、一滴の墨が落ちた。

 

 逃げたい、楽になりたい。墨は広がり、闘志を汚染する。

 

 

「父ベネットが、幼き私に語った教えを授けてやろう。『迷えば敗れる』」

 

 

 精彩を欠いたジンオウガは、ただのカカシに成り下がった。

 

 

 

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