トビカガチは実質セクレト   作:HR217の一般ハンター

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トラップ

 

 

 アンジャナフとジンオウガの連続狩猟を終えた私は、村で開かれた宴を終えてドンドルマへと戻ってきていた。ギルドへ報告すると、この功績が認められハンターランクは飛び級で5になった。

 

「おや、ライデン殿」

「サント君! おいおい聞いたぜ、アンジャナフとジンオウガを連続狩猟だって? やるじゃないか、もう一流ハンターの仲間入りだな。こいつァ、すぐに抜かれちまいそうだな」

「ふふっ、貴殿等にはまだまだ及ばんよ。だが、その気概でやらせて貰っている」

 

 ドンドルマを歩いていると、私は偶然ライデン殿と鉢合わせた。完全装備であり、狩猟を控えている事が見てとれる。

 

「ライデン殿は、どちらへ狩りに?」

「東の方で、リオレウス亜種とリオレイア亜種の番が出たらしくてな。俺達に声が掛かったんだ」

「ほう、かの蒼と桜を」

「サント君は……加工屋か?」

「然り。ジンオウガの素材で防具を作って貰おうと思ってな」

「そんじゃ、俺はもう行くよ。40分後にはドンドルマを出る予定なんでな」

「健勝を祈る」

 

 ライデン殿を見送り、私は加工屋の中に入る。鉄と火の臭いが充満する、野郎共の溜まり場である。カウンターで黙々と剣を研ぐ店主のオヤジの前に、ジンオウガの素材が入った袋を渡す。

 

「おはよう、オヤジ。ジンオウガの防具を作ってくれ」

「……サントか。昇進祝いだ、全部合わせて5000ゼニーで良い」

「良いのか? ありがたい」

「ふんっ……余った金で、義妹と美味ぇモンでも食いな。2日後、また来な」

 

 

 

 

 

 

 

「来たぞ、オヤジ」

「もう出来とるぞ」

「おぉ、そうか。早速見せてくれ」

「あぁ? ほれ、そこにあんだろ」

「そこ?」

「ほら、そこの水色の」

「水色……? ……えぇと、まさかコレの事を言っているのか?」

「そうだ」

 

 オヤジの見せたジンオウガ装備は、私の想像を絶する品であった。

 

 腕は良い。頭も別に構わん。だが、それ以外が明らかにおかしい。この、狩猟を舐め腐ったような露出度……

 

「……何故、女性用の防具を?」

「何故って……そりゃ、女には女の防具を作るだろうが」

「私は……男だが……?」

「…………ほへぇ?」

「どいつもこいつも……名前、身長、筋肉量……完全に男のソレだろう? 確かに声や顔や髪は中性的だが、それだけだ。貴殿は、私を今まで女性だと思っていたのか!?」

 

 ということは……まさか、あのフルフル防具も女性用だったのか? クッ……ジェンダーレスな見た目のせいで気付かなかった。

 

「そっ、そそそんな馬鹿な!?」

「ギルドカードを見ろ! 男だと書いてあるだろう!?」

「……本当だ。ぇっ、じゃあ……お、俺が今までやってきたサービスは……無駄? や、野郎にあんなサービスを……?」

「防具を作り直してくれ」

「え、やだ」

「はぁ?」

「もーお前なんか知らん! 作り直して欲しかったら、今までやってやったサービス分の金と、新しい素材を持ってくるんだな! さっさとどっか行け!」

 

 な、なんだ……? 急に態度が豹変したぞ。加工屋からも閉め出されてしまった。

 

「これ、ギルドに訴えたら勝てるんじゃないか?」

「グォウッ!」

 

 ……いや、あのオヤジはギルドからの信頼が篤い。変に揉め事を起こすのはマズいか? 裁判まで行ったら、金や時間もかかる。

 

「……この防具、どうするか」

 

 流石に、これを着るのは抵抗がある。だが、私は金欠。そもそも今使っているフルフル防具も女性用である事が判明したし、自家製ジンオウガ防具は損傷が激しく廃棄した。義妹と騎乗戦闘をする為には、極めて電気に強い防具は必須。

 

「…………着る、べきか。見た目と違い、男女の防具で性能は全くの同一らしいしな……」

「カロロッ…………ッ!?」

「どうした?」

 

 義妹の様子がおかしい。怯えている……? もしや、モンスターが襲撃に来たのか!?

 

《緊急事態発生! 緊急事態発生! 戦闘街方面より、バゼルギウスの番が襲来! 全ての住民は、直ちに避難をして下さい!》

「番だと……? 一体でも大きな被害が発生するバゼルギウスが? そもそも、番の発見例なんて……」

 

 いや、考えるのは後だ。私はドンドルマギルドのハンター、この街をモンスターから守る義務がある。マティーニ殿達が居ない今、戦力は少しでもかき集めねばならない。今すぐトニック殿の庭に戻り、支度をせねば!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……酷いな」

「クソッ、なんだあのモンスター……。俺達の街を滅茶苦茶にしやがって……」

「随分と高い所を飛んでやがるな……こうも何百もの爆弾を落とされちゃ、ドンドルマはとんでもねぇダメージを受けるぞ!?」

 

 戦闘街に、ドンドルマ中のハンターが集結する。数は120に満たない程度、マティーニ殿達に匹敵するレベルのハンターは居らず、最高ハンターランクは8が1人、次点の7も1人、6が5人、ハンターランク5は私だけ、ハンターランク1が半分以上を占めているだろう。普段は裏方をやっている方も、何人かは武装をして戦いに来ている。大変、厳しい戦いになる事が予想される。

 

「大砲とバリスタの準備が完了しました! ハンターの皆さんは、直ちに装填を! 私の合図で、左側のメスのバゼルギウスへ弾幕をお願いします!」

「よし!」

「やってやる……! 俺達が、この街を守るんだ!」

 

 全速力で駆け、大砲の前に立つ。義妹はその長い身体を巧みに動かし、高速で砲弾を装填する。装填を終えた大砲を動かし、バゼルギウスへ狙いを付ける。

 

「弾幕用意! 撃ち方はじめ!」

 

 一斉に矢弾が放たれ、弾幕が展開される。命中弾は一桁、しかしそれでも十分。

 

「命中! 命中! 傷口の展開を4ヵ所観測! ハンターランク4以下のハンターは、装填を行い次の斉射へ備えを! ハンターランク5以上のハンターは前に出て、バゼルギウスの攻撃を!」

 

 義妹に乗り込み、ヘビィボウガンを抜く。砲と人の間を走り抜け、8人のハンターと11のオトモが前線を構築する。攻撃を受けたバゼルギウスとその夫は激昂し、接近戦を仕掛けてくる。

 

「サントちゃん、だっけ? ガンナーは俺と君だけ。俺は回復弾メインでオス班を支援する。メスの方は頼んだぜ」

「任された」

 

 性別の訂正をする余裕は無い。今は兎に角、弾を撃つ。普段と違い集団戦なので些か急所は狙いにくいが……

 

「剣士の時間稼ぎで、一発一発を普段以上に時間をかけて狙える」

 

 眼球を狙った射撃は、少しズレながらも顔面には命中。半開きの口の中に入り込み、舌を傷付ける。痛みで一瞬怯んだ隙を突き、ギルドエース装備のハンターランク8のハンターが頭部へ渾身のハンマー。

 

 小さな怯みは、大きな怯みへ。ハンター7の片手剣とハンターランク6の大剣が溜め攻撃を更に頭に叩き込む。機関竜弾をセットし、私の撃った大砲で受けた翼の傷口に2マガジン一気に撃ち込む。本当は頭を狙いたいが、誤射をする訳にはいかないからな。

 

「流石は古龍級生物……しぶとい奴だ! まるでダメージを感じさせない……」

「メス側の皆さん! 次弾装填が完了しました! 伏せて下さい!」

 

 後方の動きを察したのだろう。バゼルギウスは一気に浮上、3マガジン目の機関竜弾を咄嗟に放つもドンドンと高度を稼ぐ。そして、私達前線組を無視して後方に爆撃を開始した。

 

「クッ……反応が遅れた、ここからじゃ閃光弾を使っても利敵にしかならん!」

 

 二回目の斉射は何とか通ったが、被害が大きい。砲撃指示を無視して、一目散に逃げ出した者も居る。しかし、初回よりも遥かに近い位置で斉射が行われた事に違いは無い。メスのバゼルギウスは地に落ちる。

 

「後方は後方で対処します! 前線組は、バゼルギウスへの攻撃に集中して下さい!」

「了解!」

「その尻尾、貰ったァ!」

 

 大剣と片手剣が、尻尾に集中攻撃。バゼルギウスが起き上がろうとしたタイミングで、ハンマーと4回目の機関竜弾で猛攻。尻尾に集中していた2人が距離を取る時間を作る。

 

「助かった!」

「後もう少しで尻尾を落とせる! 畳み掛けるぞ!」

 

 機関竜弾は、後1マガジン。バゼルギウスは消耗し、動きは鈍くなってきている。今なら……

 

「やれる」

 

 貫通弾を装填。少し距離を詰め、跳躍。高さ10m、再度飛翔を試みようとしているバゼルギウスと同じ目線の高さ。

 

 クイックショット。

 

 バゼルギウスの両目に、貫通弾を撃ち込んだ。

 

「両目を破壊したぞ!」

「よくやった!」

「これでも喰らえ!」

 

 大剣の全身全霊の一撃が、バゼルギウスの尻尾を切断した。鮮血が舞い、ダメージは強烈。目と尻尾を同時に失った奴は、もう二度とマトモに飛べないだろう。

 

「爆鱗なんて撒かせねぇよ!」

「ハァッ!」

 

 片手剣が尻尾の傷口から剣を入れ、マグロでも捌くように刃を振るう。ハンマーがズタボロになった頭を更に叩きのめし、脳を揺らす。私は更に接近し、最後の機関竜弾をセット。バゼルギウスの口の中に銃口を突っ込み、ぶっ放す。義妹も奴と密着し、電流を流す。

 

「デザートだ! 鉄の味と火薬の香りを楽しめ!」

 

 マガジンを捨て、竜吼を三連射。しかし、それでもバゼルギウスは立ち上がる。とは言え、流石に厳しかったようだ。ハンマー使いが背中に乗り、何とか振り落とそうとしている所に片手剣の連撃。バゼルギウスは限界を迎え、再び地に伏す。そこに、各々が総攻撃を仕掛け……バゼルギウスは、討伐された。

 

 しかし、バゼルギウスもタダでは死なない。死ぬ間際に、溜めていた爆鱗を一気に射出。クラスター爆弾のように起爆し、剣士達を襲う。

 

「悪ィ……ちょいと腕をやっちまった。力が入らねぇ……」

「俺もっ、脇腹の止血をしねぇと……」

「分かった、お前達は休んでいろ。トビカガチ乗り、戦えるか?」

「リソースは消耗したが、負傷は0。まだまだヤれる」

「よし、オスの方に行くぞ!」

 

 オスの方は、私達よりも遥かに苦戦していた。ライトボウガン使いに至っては、ピクリとも動かず倒れている。世界一勇敢とも名高いネコタクが来ていないという事は……そういうことなのだろうな。

 

「メスは倒した! 加勢する!」

「早くしてくれ! こっちはもう限界だ!」

 

 オスのバゼルギウスは翼を動かし、飛び上がる。爆鱗が完全に生成され切っている所を見るに、空爆を行いたいのだろう。

 

「閃光玉を投げる!」

 

 効果抜群。バゼルギウスの目と頭は強烈な閃光にダメージを負い、体勢を崩して地面に落下。その隙を突いて猛攻撃。

 

「砲が撃てます! バゼルギウスを怯ませて下さい!」

「分かった! トビカガチ乗り、サポートを!」

「あぁ!」

 

 ハンマー使いは少し無茶な動きでバゼルギウスの顎下に潜り込む。奴はその隙を狙って攻撃しようとするが……そこをカバーするのが、私の役目だ。義妹から飛び降り、奴の耳元の傷口へと空中で竜吼。仰け反った隙に、大振りのハンマーが顎をかっ飛ばす。

 

 バゼルギウスは怯み、それと同時に前線組全員が伏す。

 

「撃て!」

 

 最初の弾幕と比べれば、随分と少なく感じる砲の音。しかしその命中率は、比べ物にならない程上がっている。バゼルギウスの身体を傷口が覆い、私達は素早く立ち上がる。

 

「鱗を起爆させるな! 背面に回り込め!」

「マーカスの仇!」

「テメェは死ぬんだよぉ! そこに転がってる、かつて妻だった肉塊のようになぁ!? ヒャハハハァ!」

 

 

 連射、連射、ひたすら連射。貫通弾を撃ちまくる。砲も次弾が装填され、また斉射。それから、バゼルギウスが動くことは無かった。

 

 

「バゼルギウス二頭、狩猟成功です! ハンターの皆さん、お疲れ様でした!」

「や、やった……!」

「俺達の勝利だ!」

「やったな、トビカガチ乗り! 見事な狙いの射撃だったぞ! 私の名はオリヴィア、君は?」

「サントだ。オリヴィアも、実に素晴らしい重厚な打撃だった」

 

 安堵と、喜びと、達成感。ハンターや応援のギルド職員達が、天を震わす程の歓声を上げる。

 

「それでは、治療と遺体の回収を…………いえ、待って下さい!」

「……なんだ?」

「何かがドンドルマに接近しています! これは……イビルジョー!? 南西より、イビルジョーが向かって来ています!」

 

 

 

 

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