転生したら腕が六本あった   作:らびどっぐ

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 高評価が続いて嬉しい限りです、ありがとうございます!
 キッド、時期的にも成長機会を取られた点でも、仕方ないと擁護の声が上がってますね。


正義超人の矜持(プライド)!!

 3つの阿修羅面には、それぞれファイトスタイルに特徴がある。

 基本である笑い面は、主に様子見や心理戦、それから悪魔の気質を最も抑えられる状態であるためクリーンファイトを意識するのにも用いる。

 怒り面は逆に暴力性が強くなり、純粋なパワー戦、残虐ファイトの時に使用する。

 そして冷血面は主に、笑い面で戦う中で把握した弱点を冷徹に躊躇無く攻める時に用いる……言わば『動』の暴力性を全開にするのが怒り面で『静』の氷の精神で無慈悲に相手を仕留めるのが冷血面というわけだ。

 

「この冷血面を見せた以上、お前は死ぬぞ……遺言があるなら聞いておいてやろう」

「そんなものは……無い。死ぬつもりなんて無いんだからな」

「そうか。では、先に教えてやるか……俺の超人強度は1100万パワーだ、この意味が分かるか?」

「ば、バッファローマン先生の1000万パワーを超えてるだって!?」

「何も不思議じゃ無いだろう、俺の父アシュラマンの超人強度もまた1000万パワー、新世代超人は超人強度が増加傾向にある……ケビンマスクだって親父の超人強度を超えているんだ。俺も同じさ……だが、超人強度とは超人が内包するエネルギーの指標だ。そこの仔馬(ポニー)ちゃんの超人強度はせいぜい100万パワーそこそこだろう? 10倍以上の超人強度を持つ俺がそのエネルギーを全開にして技を決めれば、どうなるかな?」

 

 答えが理解出来た正義超人陣営が青ざめる……正解は『並みの超人なら』ほぼ確実に死ぬ。無論、これ以上の超人強度の差をひっくり返して来た例は幾つもあるので『並みの超人なら』という枕詞が付くが、超人強度の差というのは決して小さくない差として表現されてきた面もあるのもまた事実だ。

 

「き、キッドー! ギブアップするんだ、このままじゃ本当に殺されるーー!!」

 

 万太郎が叫ぶ。だが、コイツには避けられない呪いの言葉がある。逃げる選択肢を潰す言葉を続けてやる。

 

「お前の親父は、同じ状況でしっかり生還したが、お前はどうかな?」

「ぐっ……!」

 

 むしろ、腕が機能しなかった分なお悪く、銀のマスクも『確実に死ぬ』と言った状況で奇跡的に生き延びたんだよなあ……比較するのは酷ではある。

 

「説明は以上だ、死刑執行と行こうか」

 

 既に散々打撃を浴びせてフラフラのテリー・ザ・キッドはタックルをかければ簡単によろめく……そのまま担ぎ上げるのはわけはない……やはり、万太郎に見せつけてやる意味でもこの技がベストだろう。

 

「キン肉万太郎よ、お前の父キン肉マンのキン肉バスターは素晴らしい完成度を誇る技だ……だが、我がアシュラ一族にはその上位技がある」

「あ…ああ……」

 

 この技の存在も、その威力も良く知るミート君は完全に震えあがっている。

 

「キン肉バスターの、上位技だって……!?」

「魔界の王族、アシュラ一族伝家の宝刀を見せてやろう」

 

 そのまま飛び上がる。この時点であれば『改良・阿修羅バスター』にシフトして脱出を困難にする代わりに威力を若干落とす事も不可能ではない……実際ここで死なれるとK・K・D(火事場のクソ力)チャレンジや時間超人編に支障が出る可能性は否定出来ないので、あえて技を加減するというのはありと言えばありの選択肢だ。だが、氷の精神はそれを否定する……この場で死ぬなら、コイツはそこまでだ。僅かに悩むが、そのまま己の内にあるパワーを解き放つ。師匠(マスター)サンシャインも『都合の悪い事は忘れよ』と言っていたしな。

 

「1100万パワー全開! これが阿修羅バスターだ!!」

 

 そのままリングに着地。フルパワーで決めた阿修羅バスターが、キッドの全身をくまなく破壊したのを感触で理解する。手を放し、リングに崩れ落ちたキッドを見下ろす……白目を剥き、痙攣しているが悪運が強いというべきか、苦しむ時間が長引く分哀れと言うべきか、どうやら即死は免れたようだ。

 観客の悲鳴が響く中、じっとりと体にまとわりつく汗の感触を感じる……なるほど、これがスカーフェイスの言う『ヘドロのような汗』か。確かに嫌な感じだ。

 

「……今のうちにお別れを言っておけ。聞こえちゃいないだろうがな」

「ま、まだだ! キッドが簡単に悪行超人に殺されたりするものかよ!!」

 

「キッド、死なないで!」

「頼む、立ち上がってくれ!!」

 

 観客のキッドコールが響く……もう無駄だ。見てわからないのか?

 

「もういいか? 審判、さっさとゴングを……」

 

 そう言ったところで、予想外の声が後ろから聞こえてきた。確実に死ぬと思っていたキッドが、体を起こして立ち上がってきたのだ。

 

「誰が死ぬって……? 正義超人を、バカにしちゃ、いけないな……」

「こいつは驚いた……」

「オレ一人じゃ、立ち上がれずくたばっていたかもしれない……薄れゆく意識の中で、観衆と、仲間のコールが聞こえた。それが、オレを立ち上がらせてくれた」

 

 その言葉に、少しだけ感心する。実力差を見せつけてやったのが響いたのか『自分一人では死んでいたかもしれない』と認め『仲間と人々の声で立ち上がった』と言ったのだ。

 

「無駄な悪あがきだな」

「無駄だろうが、何だろうが……仲間と、人々のために立ち上がる……それが正義超人の、矜持(プライド)だ!!」

 

 決めに行く前の、一瞬の迷いのために精度が落ちたのかもしれない。死にぞこないに今度こそとどめを刺してやるか……そう思ったが手を下すまでも無いとわかり、目を伏せる……現実は非情だ。

 

「審判」

 

 キッドが、そのまま前のめりに倒れる。立ち上がっただけでも大したものだが、啖呵を切ったところで意識を失っていたのだ……ゴングが俺の勝利を告げる。

 

「根性だけは認めてやる……暴れ馬」

 

 リングを降りると、サンシャインが実に嬉しそうに労いの言葉をかけてきた。

 

「ご苦労。悪魔超人のデビュー戦としては上々であったぞ」

「試合は勝ったかもしれませんが、勝負は俺の負けです……俺は確実に殺すつもりで阿修羅バスターを決めた。それなのに生き延びた挙句、あそこまで吼えられたとあっては……」

「……プライドが傷ついたか? そういう所も、父親に似てきたな。だが、見ての通り正義超人と言うのはしぶといし、超人レスリングというのは思い通りにはいかないものだ。仕留められなかった、と悔やむよりも勝利を喜べ」

 

 確かに、その方がずっと建設的だ。悪魔超人というのは思いの外ポジティブだな……そうでないとやってられないくらい過酷だからか。

 

 その後はやはり史実通り……いや、史実を超えた。仲間が死の淵に追いやられながらも正義超人の矜持を見せた事で万太郎は驚く程果敢にチェック・メイトに挑んでいったのだ。

 実力の差はやはり大きかったものの、そのガッツに思うところはあったのかチェックも史実のように正義超人を見下し、それに敗れたサンシャインを非難するという事は無かった。

 

 そんな経緯もあり、やはりチェックは勝利できず原作通りにd・M・p(デーモンプラント)は崩壊。その様子が会場モニタに映し出されるが、俺はただその様子を見ていた。

 

「やっぱり、こうなったか」

「……え?」

「本当にものを知らない奴だな、そんなんで本当にあのキン肉マンの息子か?」

「や、やかましい! キッドのお返しはそのうちしてやるからな!」

「……すぐ戦うと言い出さないだけまだマシか。そうなったら、チェック・メイトと一戦交えてボロボロのお前にはあんな奇跡が起こるわけが無い……確実に殺してるところだ」

「ひ、ひえええ!」

「ミート殿、アンタならわかるだろ? 悪行超人と一括りにされてはいるが、そもそも残虐超人、悪魔超人、完璧超人は完全にその在り方が噛み合わない。内輪揉めの兆候は前からあったんだ」

「あなた達が敗れ、パワーバランスが崩れるのを他の勢力は待っていたのでしょう……それで、これからどうするんですか?」

「とりあえず、生存者の確認かな……そこまでは悪魔超人に付き合うさ、それが今まで俺を鍛えてくれて、正義超人と戦わせてくれた師匠(マスター)サンシャインへのせめてもの礼だ。そこからは適当にフリーで旅でもしながら戦って回るよ、最初に言ったが俺は正義だの悪行だのはどうでもいいんだ。ただ、自分に合った生き方を探している……それが正義超人なのか、悪魔超人なのかはわからないけどな」

「そうですか。なら、これだけは言わせてください」

「?」

「あなたの父がそうであったように、他の超人達と分かりあうリスペクトの精神を持つ事が出来たのなら、正義超人はあなたを受け入れるでしょう」

「俺は、まだ自分の残虐性の制御に苦労してるんでね……難しいだろうが頭の片隅には入れておくよ」

 

 サンシャインと同じように、チェック・メイトに肩を貸して会場を後にする。ああは言ったが、次に考えている行き先は1つある。敗戦処理の後はそちらへ行こう。




 完璧超人始祖編アニメ観てのスタートというのもあるので、テリーマンのオマージュでキッド生還でございます。
 いっぺん冗談抜きに死にかけたキッド、仲間の危機を目の当たりにして正義超人の矜持を見せられた万太郎は本編より成長……してると良いけどどうでしょうね?
 ここからHF入替え戦は手を出す意味も無いので、その間にとある超人の元を訪ねるルートを考えております。
 K・K・D(火事場のクソ力)チャレンジは沖縄には行っても良いかも知れない
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