猫を拾えばなんとやら   作:金色のくじら

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一番手は房太郎にしました。
季節は今くらいの設定 

房太郎夢、初書きなんで口調が分からん。
解釈違いでしたらごめんなさい:( ´◦ω◦`):

イメソンつけるとしたら、ヨ/ル/シ/カさんの「春/泥/棒」です。
私の大好きな曲。

居酒屋メニューとお酒の銘柄は完全に私の好みです(笑)

匿名感想箱作りましたので、コメントいただけると嬉しいです(*´`)

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猫を拾えばなんとやら‪√‬房太郎【前編】

 

 

「久しぶりだな、元気だったか?」

『あ、戻ってたんだ』

 

 

 

土曜日の昼、ひと足早く咲く河津桜の開花宣言のニュースが流れ、それを起き抜けの頭でぼーっと聞いた私は、川辺の桜並木を見に行こうと外に出た。

部屋の鍵をかけてふと奥の部屋の方を見ると、こちらへ向かって来たのは特徴的な眉毛とヒゲの大男だった。

 

春の風に靡かせた艶やかな長い髪がさらりと揺れ、その情景はまるでドラマのワンシーンのようだった。

 

彼が近付くほど私との身長差が際立ってそれを眺めていると、私の目線まで屈んで人好きする笑顔をにゅっと突き出してきたので、彼の胸に手を押し当てた。

 

『近いっ、心臓に悪い!』

「つれないな、結月に会いたくて真っ先に戻って来たってぇのに」

 

ついさっきまで漁港にいたんだなと分かるほど、頬を掠めた髪からふわりと海の匂いがした。

 

相変わらず距離感が近い房太郎。

彼は同じアパートの住人だ。

 

房太郎は漁師をしていて、一年の内の数ヶ月は船の上で生活している。

季節が一つか二つ変わった頃、ふらっとアパートに戻って来ては私の部屋の戸を叩き、一ヶ月ほどしたらまた海に帰って行く。

自由奔放な海の男とは入居してからの長い付き合いで、彼の長い休暇の間はしょっちゅう飲みに行く仲だ。

房太郎行きつけの居酒屋さんに獲った魚を持ち込んで、新鮮な魚料理を味わうのが定番。

 

『ふふっ、嬉しいよ。今回もお魚持って来てくれたの?』

「もちろん、ジイさんのとこ送っといたから今日行くか?」

『やった!房太郎のお魚と土方さんの料理は私にとってのモルヒネだよ〜』

「ははっ、もう中毒で手放せないな。・・・・・・桜、咲いてるの戻って来る時に見えたから、誘おうと思ったんだ」

 

くしゃっした顔で笑うと、自然に私の腕を掴んで引っ張る房太郎。

しばらく歩いて、まだ上着が必要な寒さだったと身を縮めると、房太郎のコートにふわりと包まれた。

 

『あ、ありがとう・・・それだと房太郎が寒くない?』

「海の男をナメないでくれよ。結月が寒い方が嫌なんだ」

 

そういうとこだぞ〜、人たらしめ。

 

「桜、色濃くて綺麗だな。この時期に戻って来たのは正解だった」

『いっつも戻る時連絡ないよね、白石くんも心配してたんだよ?』

「白石はタカりに来たいだけだろ」

 

それはそう。

同じ職場の白石くんは、房太郎の古い友人らしい。

どういう繋がりが未だによく知らないんだけど。

二人とものらりくらりとかわして、掴めないヤツなのは似ていると思う。

 

『何となくそろそろ戻って来るとは思ってたよ』

 

ざあっと木々が揺れて、花びらが房太郎の髪に絡まった。

 

「一緒に見たかったから戻ってきたんだよ」

 

風が背中を通り過ぎて、房太郎の言葉が聞こえなかった。

 

『?、なんか言った?』

「んー」と濁した房太郎は、髪から花びらを取って風に流し、桜を見上げていた。

 

時々、房太郎は何を考えているのか分からない表情をする。

私はただの友達で、それ以上踏み込む関係でもない。

言いたくないならそのままでいっかと思い、花びらを捕まえようと空に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

『あっそうだ!図々しくてごめんなんだけど・・お魚の血合い、ちょっと分けてくれないかな?』

「いいけど、どうした?」

『えっとね、今家に子猫が居るんだけど・・・食べさせてあげたいなって』

「あぁ、ばあちゃんが言ってたヤツか。保護してんだってな。隣のおっさんに煙たがれて困ってるんだろ?」

『そうなの・・・一ヶ月だからペットOKのマンスリーマンションとかも探したんだけど、ここら辺は無くて・・・』

 

私が項垂れていると、房太郎は「んー」と唸った後に、にんまりと笑って顔を近付けてきた。

 

「俺の部屋でいいだろ」

 

 

◇◇◇

 

 

『土方さん、お久しぶりです』

「おぉ、お嬢さん。待っていたぞ」

「久しぶりだな、ジイさん。例の物届いただろ?」

 

土方さんが頷いて冷蔵庫から取り出したのは、目に潤いがあって鮮やかな紅色の鯛。身が引き締まった鰹だった。

 

「今回も上等だな。鯛は刺身で鰹はたたきでどうかね?」

『最高です、土方さん大好きっ!』

「私もまだまだ捨てたものではないらしい。結月ならいつでも迎え入れる準備は出来ているぞ」

 

くっ!顔がいい!!

お世辞と言えど、渋いおじ様からの甘い言葉に震える。

そんな私の肩を房太郎が掴んできて、グッと引き寄せてきたのでびっくりして彼を見上げた。

 

???

 

心做しか房太郎は土方さんを睨んでいるし、土方さんは含み笑いをしている。

 

『ちょっ、房太郎どうしたの?』

「・・・何でもないさ。日本酒でいいだろ?」とにっこり笑って、バイトの夏太郎くんに「磯自慢でお猪口二つ持って来て」と注文していた。

 

さっすが、分かってる〜。

 

土方さんの作った鯛のお造りには、刺身を塩昆布で和えた物も添えられていて、鯛の旨みに奥行きがありお酒がどんどん進む。

鰹のたたきには甘夏が敷き詰められていて、甘酸っぱさと香味が調和して鰹の味を引き立たせていた。

 

『はぁ・・・毎日食べたい。土方さんは私を骨抜きにしてどうする気ですかっ!』

「土方さんの料理は世界一っスよ!オレ、賄い食べたくてここに居ますもん」

「調子がいい奴め。もっと修行せんとこの店は任せられんぞ」

「夏太郎も長いよな〜、店いつか継ぎたいんだろ?頑張れよ」

 

 

 

お酒も時間も進んでほろ酔いになった頃、私達はさっきの話の続きをしていた。

 

『いいの?本当に房太郎の部屋で』

「角部屋で隣は居ないし、おっさんと部屋離れてるしな。それに、しばらく休みで家に居るから適任だろ」

「何の話っスか?」

 

夏太郎くんがお冷を持って来てくれたので子猫の話をすると、爽やかな笑顔で「預け先見つかって良かったっスね!」と言ってくれた。

あぁ、笑顔が眩しい。

 

「だから血合いが欲しいと言っていたのか。ほら、持って行きなさい」

 

土方さんがラップに血合いを包んで、ビニール袋に入れてくれた。

夜も更けてきたし、そろそろお会計をお願いしよう。

 

『ありがとうございましたっ。また来ますね!』

「じゃあなジイさん、長生きしろよ〜」

「私はあと百年生きるつもりだ」

「あざっした!今度オレにも猫見せてくださいっ!」

『もちろん!またね〜』

 

 

◇◇◇

 

 

──────次の日の朝、ゲージやらトイレやらの猫グッズを房太郎の部屋に運び込んで、アポロとご対面をしてもらった。

キャリーから出たはいいがすぐにソファーの下に隠れてしまったので、房太郎にはドアの隙間からそおっと覗いてもらった。

いつものおやつで何とか私の傍まで誘導出来たので『この子がアポロだよと』紹介すると「タキシード着てるみたいだな。ツルツルで可愛い」と言ったのでほっとした。

 

「なう〜」

 

アポロは少し気を良くしたようで、この部屋に来て初めて鳴いてくれた。

 

この子の柄は、背中としっぽは艶やかな黒い毛で覆われていて、首元からお腹にかけてと手足の先は白。

確かにタキシードを着ているみたい。

手足の骨格が意外とがっちりしているので、将来は大きくなる子なんだと思う。

 

『見た目もそうだけど、房太郎に似てるよね。寂しがり屋な癖に、誰にでも懐かないとことか』

 

軽い感じで言ったつもりだったのに、房太郎が一瞬目を見開いたので、気を悪くしたかなと心配になった。

すぐに何ともないような顔をして「なら、将来有望だな。立派な猫の王様に育ててやるよ」と笑い飛ばしたので、ほっと胸を撫で下ろした。

 

『ふふっ、房太郎はいつも王様になるって言ってるよね〜。・・・・・・ねぇ王様、仕事終わったら毎日来るし休日は朝からお邪魔するけど・・・迷惑じゃない?』

 

彼女でもないのに毎日押し掛けるのって、よくよく考えれば鬱陶しいよね。

 

「そんな事ないさ。寧ろ大歓迎だよ」

 

無理してないかな?と思ったが、房太郎が目を細めて悪戯っぽく笑ったので、胸の奥がきゅうっと鳴った。

 

何これ、房太郎は親切で預かってくれるのに。

寂しがり屋な房太郎は、上辺だけはみんなに優しい。

だから本当に私に懐いてくれているのかなんて、未だに見分けられなかったりする。

 

この気持ちに名前を付けたら沼にハマってしまう気がして、慌ててお茶と一緒に飲み込んだ。

 

 

・・・一ヶ月耐えられるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に鋭いよなぁ。通ってもらうより、妃になって一緒に住んで欲しいんだけど。・・・・・・さて、どう攻めるか」

 

房太郎の呟きも、鮫のように暗くギラついた目にも気付かない結月は、春一番がカーテンを揺らす中でアポロの鼻にキスをした。

 

 

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