「ふう、ここらあたりか?」
飛行機でもないのに、上空から地面をのぞくような不思議な視点。
そんな鳥のような視点から下を眺める。
その目線の先は、四車線はあろうかと思えるほどの幹線道路。
今の時間は昼の真中、その道路は歩行者天国にでもなっているのか、道路の中央にまで通行人がいる。
そんな人だかりの中で1人、空に何かを気付き、
「なんだ・・?、あれ?」
頭上を見上げる者がいて、不思議なものを見つけたような声に釣られて、周囲も空を見る。
そんな人だかりの中に、見上げる者など気にする事もないように、少し人間離れした姿の者が空中から降りてくる。
「なんだ、なんだ。空を飛んで来たぞ」
人が空を飛ぶ。
驚きながらも、おかしな状況に
通行人が地面に降り立った男に近付く。
奇妙なものを見るような目付き、異常な者を見物するような雰囲気。
そんな状況に嫌気を覚える空を飛んできた男。
その男は緑の顔色しており、その人間離れした顔色も分かるが、一般人と比べて高すぎる身長。
そして、ターバンに白いマント、更に空を飛んできたという状況が男を目立たせる。
「テレビ局の撮影か?」
興味だけで寄ってくる無遠慮な通行人。
そんな周囲に緑色の男は眉間にシワがより、一層の不機嫌、そして不快感しか覚えず。
おそらく短気であろう性格により、こぶしに力が入り、怒りの言葉を吐く間際に通行人の方から声が上がる。
「違う!。俺、知っているぞ!」
驚きと恐怖を伴うような声。
その声は、空を飛んできた者に向けた言葉であり、
「そっ、そいつ。ピッ、ピッコロ大魔王だー!!」
それは空を飛んできた男の名前なのか、しかしながら呼ばれた名前は正しいらしく。
「ひぃっ、逃げろ!」
「きゃー!、助けて!」
何かをしている訳もないにも関わらず、悲鳴を吐きながら逃げ惑う民衆。
そんな状況を知ったことではないように、周囲を睨み付けるが、それでも面白くはないのか、口元は歪む。
「ちっ」
舌打ちしながら、どうでもよい民衆を見回す。
明らかに不機嫌な様子を滲ませるピッコロと呼ばれた男。
しかしながら逃げ惑う周囲の中から、歩みより声をかける者がいる。
「待たせたな、ピッコロ」
その男は、これもまた目立つ髪型をしていて、盛大な寝癖頭というよりも、紙をハサミでジグザグに切り裂いたような髪型。
「遅い、孫 悟空」
「悪りい、先にクリリンと待ち合わせてたんだ」
悟空(成人)と呼ばれる男の隣に、今度は随分と背の低い男がいる。
「よっ、ピッコロ」
この髪が無い坊主頭をしている男がクリリンなのだろう。
二人は大魔王と呼ばれる男と知り合いでもあるのか、気軽に過ぎる態度ではあるが、ピッコロは返事を口にしない。
ただ、面白くもないように、遅れてきた二人に視線を向けるだけだ。
「悪りいって言ってんだろ。しかし、ずいぶん賑やかじゃねえか」
「毎回、毎回、この調子だ。」
と、ピッコロは言い。
まだ、眉間のシワは戻らないが口は開く。
返事をした位なので、そこまで機嫌を害していないのだろうが、愛想が無いのは変わらない。
「はははっ、天下武道会で有名になりすぎたんだろ」
と、クリリン。
「それはお前達も同じだ。そもそも、こんな所を待ち合わせ場所にするお前らが悪い」
「しょうがねぇだろ。無人島みたいな場所で顔を合わせてどうすんだ。住所みたいなもんが無えと、場所が分からねぇし」
「じゃあ。毎回、こんな調子か・・」
今も騒ぎが収まらない周囲を見渡す。
そんな事を気にするつもりはないが、ただ居るだけで騒ぎが起こるのは面白い事ではない。
「何で、お前達は騒がれない?」
と、ピッコロは聞く。
悟空とクリリンも空を飛ぶ事は出来る。
二人が住む所も、今の場所から遠く離れている。
ならば、飛んできたのは想像が出来て、しかし二人が現れた時に騒ぎが大きくなった様子は無かった。
「オラ達は歩いてくるからな。遠ければ、途中まで飛んできて、そこからは車を使うし」
と、言って、ホイポイカプセルを見せる悟空。
そのカプセルのボタンを押してから、道路に放り投げると、一瞬で車が現れて、要するに大きな物を持ち運びするための道具だ。
「でも、俺も飛ぶときはあるけど、そんなには騒がれないぞ」
と、クリリンが言い。
「格好が問題なんじゃないのか?」
と、引き続きクリリンは気付く問題点を口にする。
「・・・。俺に、お前達の様な格好をしろと言っているのか?」
悟空とクリリンの服は、スタジアムジャンパーにジーンズ。
ジャンパーの下に何を来ているのかは分からないが、互いにオレンジ色のシャツらしき物が見えるが、いわゆる普通の格好である。
それに比べて、ピッコロの格好は目立ち過ぎる。
そして、薦められる服を検討する余地が全く無いのか、否定という気持ちが、誰にでも分かるような苦虫を噛み潰したような顔に浮かび、その表情から今の会話に必要性の微塵もない雰囲気だけしか伝わらない。
「でもよ。どうしたって、空を飛んだらバレちまうに決ってるじゃねえか」
悟空が言うには、スタジアムジャンパーで空を飛んでも意味が無いと言い、クリリン曰く「そんなに騒がれない」という言葉は、悟空にしてみればピッコロには通用しないらしい。
「じゃあ、車でも手に入れるしかないだろ」
飛んで驚かれるならば、歩いてから車。
無難過ぎる方法論。
悟空とクリリンが実際に使っている移動の手段ならば、問題は無いはずだか、ピッコロに同意する様子はない。
「待ち合わせ場所を変える気はないんだな?」
と、周りの見回しながらピッコロは言う。
もう周囲は静まりかえっている。
もっとも、騒ぎが収まった訳ではなく、三人の周囲から人が逃げ失せただけで、何の問題も解決した訳では無い。
故の、ピッコロから出た待ち合わせ場所の移動だか、
「まぁな。でもよ、何処に行っても、その顔色じゃあ目立っちまうのは、しょうがないねぇだろ」
人間離れした様相ならば、服を替えても仕方がないと言う理屈。
目立ち過ぎる男、ピッコロ。
故に、待ち合わせ場所の問題では無いのだろう。
悪い意味で有名に成りすぎて、かつ人並み外れた姿の持ち主。
それは、威圧感の塊でしかない。
しかしながら、その威圧感は、今の状況では意味も無く、興味も無い民衆を惑わすだけの姿でしかない。
「ほっとけ!!」
と、悟空とクリリンという親しげな相手だからこそ、怒るというよりは文句を言う姿を見せる。
その、両肩を上げつつ、目を見開いて怒鳴る姿は威圧感というよりは、すこしだけの安心感を漂わせた。